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農林水産省

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地すべり等防止法の施行について

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33林野第6086号
昭和33年5月27日

都道府県知事あて

農林事務次官
建設事務次官


第1  地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域の管理
地すべり等防止法(以下「法」という。)第7条及び第41条の規定により、地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域の管理は、国の機関として都道府県知事が行うこととせられており、この場合における管理とは、地すべり防止工事又はぼた山崩壊防止工事の施行、地すべり防止施設又はぼた山崩壊防止施設の維持、修繕、地すべり防止又はぼた山の崩壊の防止に有害な行為の制限等をいうものであるが、本法の目的を達成するためには、区域全般についてこれらの管理を適正に行わなければならないものであること。
第2  地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域の指定に関する都道府県知事の意見の申達
都道府県知事は、法第3条(法第4条において準用する場合を含む。)の規定による主務大臣の意見の聴取に対し、意見を述べるにあたっては、関係部局間で、十分連絡をとること。
第3  標識の設置
標識の様式については、地すべり等防止法施行規則(以下「規則」という。)第4条に規定するところであるが、各地滑り防止区域又はぼた山崩壊防止区域において、規則別記様式第8に掲げる標識(その1)は1個以上設置し、標識(その2)は適宜設置されたいこと。
第4  地すべり防止工事基本計画
法第9条の規定により作成する地すべり防止工事基本計画に定める事項は、規則第6条に規定するところであるが、この計画は地すべり防止工事に関する基本的事項を定める重要な計画であるから、地すべり防止区域の指定の通知を受けたときは、地すべり防止区域の状況を勘案し、関係市町村長の意見をきいて、すみやかに作成すること。
なお、関係市町村長の意見の聴取については少なくとも20日程度の期間をおくこと。
第5  都道府県知事の施行する地すべり防止工事等
1  地すべり防止工事は、法第12条に規定する築造等の基準にのつとつて行うこと。
なお、ぼた山崩壊防止工事については、別途通達する築造等の基準にのつとつて行うこと。
2  ぼた山崩壊防止工事については、基本計画の作法は法定されていないが、計画的に施行するよう配慮すること。
3  漁港の区域又は港湾隣接地域内において地すべり防止工事を施行しようとするときは、法第48条に規定するところにより、あらかじめ、漁港管理者又は港湾管理者の長に協議すること。また、港湾隣接地域、鉄道用地、軌道用地又は飛行場内において地すべり防止工事を施行しようとするときは、あらかじめ、当該工事の内容を運輸大臣に通知すること。
4  地すべり防止施設又はぼた山崩壊防止施設に係る災害復旧については、これらの施設が公共土木施設災害復旧事業国庫負担法にいう砂防設備、林地荒廃防止施設等に該当するときは同法が適用され、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律にいう農業用施設又は林業用施設に該当するときは同法が適用されること。これらの施設以外の災害復旧については、地方財政法の規定に基づき国庫補助とする場合があるものであること。
第6  主務大臣の直轄工事
主務大臣が直轄工事を施行する場合においては、主務大臣及び国は、地すべり等防止法施行令(以下「令」という。)第2条及び第3条に規定するところにより、都道府県知事及び都道府県の行う権限を代行するので、その代行の範囲内においては、都道府県知事は、その権限を行使することができないこと。この場合において、令第2条第12号又は第13号の規定によって主務大臣が原因者負担金、受益者負担金等を賦課する場合においても、その収入は都道府県に帰属すること。
第7  主務大臣又は都道府県知事以外の者の施行する地すべり防止工事
1  法第11条の指定に基づき、主務大臣又は都道府県知事以外の者が施行する地すべり防止工事の設計及び実施計画について、承認し又は協議に応じようとするときは、地すべり防止工事基本計画を勘案し、かつ、法第12条に規定する築造等の基準に合致するものについて行うこと。
2  地すべり防止工事の承認申請書又は協議書には、少なくとも当該工事の施行区域及びその現況並びに当該工事の種類、配置、構造及び規模を記載するよう指導すること。
第8  地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域における行為の制限
1  地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域における行為の制限は、法第18条及び第42条に規定するところであり、これは、地すべり及びぼた山の崩壊の防止上極めて重要なことであるから、厳正に行うべきであるが、反面不当に国民の権利を制限するものであってはならないこと。
2  地すべり防止区域及びぼた山崩壊防止区域における行為の制限については、次の要領に従つて措置されたいこと。
(1)  法第18条第1項各号は、それぞれ別個の観点から制限行為を規定しているものであるから、2以上の号に該当する行為について処分をしようとするときは、それぞれの観点から検討しなければならないこと。たとえば、2メートル以上の土地の掘さくをして新たに井戸を設け、かつ、1馬力をこえる動力を用いて地下水を汲み上げる行為については、地下水を汲み上げることは支障がなくても、掘さくすることが支障があれば許可を与えてはならないこと。
(2)  鉱業権者又は租鉱権者が鉱物を採掘するために地すべり防止区域外から坑道を掘進して地すべり防止区域内に及び場合は、当該行為は一般的には法第18条第1項第1号に該当する行為であるから、許可を受けるよう指導すること。ただし、すべり面よりおおむね50メートル以上の深さにおける該当行為は道号に該当しない行為であること。
なお、地すべり防止区域内における堅坑については、法第18条第1項第1号及び同項第5号(令第5条第3項)に該当する行為として許可を要する行為であること。
(3)  地下水を汲み上げる行為のうち、地すべり防止区域の指定の際別に示すところにより都道府県知事がすべり面の深さ及び地下水の状況を勘案して指定する一定の深さ以上のところから汲み上げる行為については、法第18条第1項第1号に該当しない行為として取り扱うこと。
(4)  電らん、発電用導排水管及び暗渠排水管は、令第4条第1項第3号に規定する「これらに類する物件」に該当するものであること。
(5)  直径35センチメートル以下のボーリングは、原則として令第5条第3項第1号の掘さくには含まれないが、法第18条第1項第2号の制限行為には該当すること。ただし、水の浸透しない地質の土地におけるボーリング又は水の浸透を防止する工法を用いるボーリングは、一般的には、地表水の浸透しない軽微な行為と認められるから、法第18条第1項第2号の許可に当つて、その旨を十分考慮して行うこと。
(6)  令第4条第1項第4号及び同条第2項第6号の規定により都道府県知事が指定する軽微な行為は、それぞれ同条第1項第1号から第3号まで及び同条第2項第1号から第5号までに掲げる全国一律に規定できる行為以外の行為であって、地すべり防止区域の状況を勘案して指定するものであり、行為制限の趣旨を十分考慮して行われたいこと。
(7)  令第5条第2項第3号、同条第3項第1号及び第2号により都道府県知事が指定する載荷重又は距離は、地形、地質その他の地すべり防止区域の状況を勘案して地すべりの防止上支障のおそれのある範囲内でなければならないこと。
(8)  ぼた山崩壊防止区域における制限のうち、法第42条第1項第5号に規定する鉱物を掘採する行為は、鉱業権者又は租鉱権者が鉱業法及び鉱山保安法の規定により十分な監督を受けており、また、地下における掘採は、本質的にもぼた山の崩壊を助長し、又は誘発するおそれは極めて少ないものと認められるから、法第42条第1項第5号の規定の運用に当つてはその点十分考慮すること。
(9)  森林法又は砂防法の規定による許可を受けた行為であって法第20条第1項の規定によつて本法の許可を受けることを要しないものは、それぞれ森林法及び砂防法の許可の内容となつている行為のみ限られ、許可の内容となっていない行為、許可を受けた行為に関連する他の行為、又は許可を受けた行為をするための他の行為を含まないこと。
(10)  電気工作物の設置について、当該行為が地すべり等防止法、砂防法又は森林法の許可を要するものであつて、かつ、河川法による許認可を必要とするときは、関係部局間で連絡をとり地すべり等防止法、砂防法又は森林法による許可と河川法による許認可とを同時に行うこととし、許可申請書に必要以上の手数をかけぬよう配慮すること。
(11)  鉱業に関する行為について、法第18条第1項又は第42条第1項の許可の申請があった場合において、当該申請について条件付許可の処分をしようとするときは、あらかじめ、その理由を附して所轄通商産業局長に協議し、その意見を整えた上、その処分を行うこと。
(12)  河川法の適用を受けていない電気工作物の工事の実施についての法第18条第1項の許可の申請があつた場合には、所轄通商産業局長に十分連絡し、その意見を反映するよう措置すること。
(13)  土地改良法の規定による土地改良事業の計画に係る一連の行為又は電気工作物の工事の実施に関し、法第18条第1項の許可を必要とする場合には、これらの事業の計画に基づいて一括して許可申請するものとし、同行の処分も一括して行えるよう関係部局間において十分連絡をとるものとすること。
なお、土地改良事業についての同項の処分は、当該事業の計画の許可の時期との関係を考慮して敏速に行うこと。
(14)  法第18条第1項又は第42条第1項の許可の申請書には、少なくとも行為の目的、内容、期間、場所、方法及び理由を記載するよう指揮すること。
第9  関連事業計画
1  関連事業計画は、地すべり防止区域及び地すべりによる被害を受けるおそれのある区域において、地すべりによる被害を除去し、又は軽減するため必要があると認められる法第24条第1項から第3号までに掲げる事業並びにこれらの事業と密接な関連を有する事業であって地すべり防止区域外の土地において法第24条第1項第1号から第3号までに掲げるものについて作成するものであること。
2  法第24条第1項の規定により都道府県知事が市町村長に対して、関連事業計画の作成を勧告し、又は同条第3項の規定により当該計画を承認するに当つては、当該計画の内容に関係を有する他の市町村長に対して当該計画の作成について協力を要請すること。
3  法第24条第1項の規定により都道府県知事が市町村長に対して、関連事業計画の作成を勧告し、又は同条第3項の規定により当該計画を承認するに当つては、関係部局間において相互に十分協議を整えた上で行うこと。
なお、当該計画のうち土地改良事業に係る部分について、当該関連事業計画の概要の作成及び同計画の承認に当つて、所轄農地事務局長に協議すること。
4  関連事業計画の作成の勧告をしようとするときは、地すべり防止区域の指定の通知を受けてから、1ヵ月以内に行うことに努めるものとし、その勧告を受けた市町村の長は、すみやかに関連事業計画を作成して都道府県知事の承認を求めるよう関係市町村長に指示すること。
5  関係地方公共団体の長は、関連事業計画に基づく家屋の移転又は建設が、円滑にかつ、適切に行われるよう、財政上及び技術上の援助を努めて行われたいこと。
第10  地すべり防止区域台帳及びぼた山崩壊防止区域台帳の調製その他記載事項等は、規則第11条に規定するところではあるが、この地すべり防止区域台帳及びぼた山崩壊防止区域台帳は、地すべり及びぼた山崩壊の現況、地すべり防止施設及びぼた山崩壊防止施設の状況その他それぞれの区域の概況をは握し得る唯一のものであり、かつ、地すべり防止施設又はぼた山崩壊防止施設に係る災害復旧の取扱いを容易にするためにも重要であるからその正確を期するとともに、すみやかに調製すること。
なお、これらの台帳は、地方交付税の基準財政需要額の算定基準として欠くことのできないものであるから、特に申し添える。