農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律の施行について
10構改D第274号
平成10年3月31日
地方農政局長あて
沖縄総合事務局長あて
都道府県知事あて
農林水産事務次官
農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の一部を改正する法律(平成10年法律第22号)が平成10年3月31日から施行され、同日以後に発生した災害から適用されることとなったので、下記事項に御留意の上、改正後の農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律の適正、かつ、円滑な運用に特段の御配慮をお願いする。
以上、命により通達する。
記
第1 法改正の趣旨
農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号。以下「暫定法」という。)は、昭和25年に制定されて以来、農林水産業施設の災害復旧事業についての国庫補助の制度を通じて、農林水産業の維持と経営の安定を図る上で大きな役割を果たしてきたところである。
近年の農林水産業施設の災害復旧事業を取り巻く状況は、工事価格に代表される物価の上昇等による災害復旧事業規模の拡大に応じて、国が補助すべき災害復旧工事の規模も引き上げていく必要性が生じているなど大きな変化が生じている。他方、平成9年12月に成立した財政構造改革の推進に関する特別措置法(平成9年法律第109号)においては、地方公共団体に対して交付される災害復旧に係る補助金等についても、制度の見直し等を行うことにより、当該補助金等の削減・合理化を図ることとされている(同法第35条第1項)。
今回の暫定法改正は、これらの諸事情を踏まえ、農林水産業施設の災害復旧事業の効果的な実施を図るため、国の補助対象となる災害復旧事業について、一箇所の工事の費用の最低額を引き上げるとともに、一箇所の工事とみなす範囲を拡大する所要の改正が行われたものである。
第2 改正の内容
(1) 一箇所の工事の費用の最低額の引上げ
補助事業としての一箇所の工事の費用の最低額については、昭和59年の暫定法改正により10万円から30万円に引き上げられたが、当時と比べ、平成8年の工事価格は約1.5倍に上昇しており、これに応じて、国の補助対象となる災害復旧事業の規模を見直す必要性が生じてきた。このため、農家の負担能力等をも勘案しつつ、一箇所の工事の費用の最低額は30万円から40万円に引き上げられたところである(暫定法第2条第6項及び第7項)。
(2) 一箇所の工事と見なすことができる間隔の拡大
暫定法は、災害にかかった箇所が連続している場合において、これらを一箇所の工事とみなす制度を設けているが、その間隔は昭和59年の暫定法改正により50m以内から100m以内(漁港施設にあっては20m以内から50m以内)に拡大されたところである。今回の暫定法改正においては、ほ場の大区画化の進展等を踏まえ、災害復旧制度の運営の合理化を図るため、一箇所の工事とみなす間隔が100m以内から150m以内(漁港施設にあっては50m以内から100m以内)に拡大された(暫定法第2条第8項)。
このことにより、申請件数が減少するとともに、40万円未満のいわゆる小災害箇所であっても、災害箇所が150m以内にある場合に合併して申請すれば、暫定法の国庫補助の対象となることから、一箇所の工事の費用の最低額の引上げによる影響が緩和されるものと見込まれる。
(3) 激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の一部改正
今回の暫定法改正により、暫定法の対象となる災害復旧事業の一箇所の工事の費用の最低額が引き上げられたことに従い、激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(昭和37年法律第150号。以下「激甚法」という。)が改正され、
ア 激甚災害により被災した共同利用施設の災害復旧事業であって政令で定める地域内のものの一箇所の工事の費用の最低額は特例措置として、この額が10万円とされていたが、13万円に(激甚法第6条)、
イ 開拓者等の施設の災害復旧事業は、激甚災害に限り特例として、国が補助することとされていたが、その一箇所の工事の費用の最低額が10万円から13万円に(激甚法第7条)、
ウ 甚災害による災害復旧事業のうち、農地、農業用施設、林道に係るものは、国の補助対象とならない小災害に対しては地方財政措置の適用とされているが、その対象事業費の範囲が10万円以上30万円未満から13万円以上40万円未満に(激甚法第24条第2項)、
それぞれ引き上げられた。
第3 補助対象とならない小災害への対応
補助対象とならない小災害については、
ア 激甚災害による災害復旧事業のうち、農地、農業用施設、林道に係るものは、第2の(3)のウで示したとおり、事業費が13万円以上のものについて、小災害債の起債が認められており、また、共同利用施設に係るものは、第2の(3)のアで示したとおり、一箇所の工事の費用の最低額が40万円から13万円に引き下げられていること、
イ 激甚災害以外の災害による災害復旧事業(農地に係るものを除く。)については、地方債の起債が認められていること、
ウ このほか、災害復旧のための各種融資制度があること等に十分留意され、災害復旧事業が円滑に行われるよう指導願いたい。
第4 その他
災害査定設計に対する国の補助制度に関しては、従来激甚災害に限定されていたが、平成10年3月1日以後に発生した災害については、災害復旧事業の地方公共団体の負担を軽減するため、激甚災害以外の災害の一部も対象とするように拡充されたので、これも活用し災害復旧が迅速に実施されるよう指導願いたい。