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農林水産省

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土地改良法の施行について(昭和24年9月30日)

 

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24農地第917号
昭和24年9月30日

農地事務局長あて
都道府県知事あて


農林事務次官


土地改良法(昭和24年法律第195号)及び土地改良法施行法(昭和24年法律第196号)は、いずれも本年6月6日に公布され、同8月4日から施行された。これに伴い、土地改良法施行令(昭和24年政令第295号)及び土地改良法施行規則(昭和24年農林省令第75号)もまた8月4日に公布され、即日施行された。
この法律の意義、従来の法律との関係及びこの法律で差し当り問題となる点についての説明は左記の通りであるから、その趣旨徹底を図られ度い。
右命に依り通達する。
なお、この通達中「改良法」とあるのは土地改良法を、「施行法」とあるのは、土地改良法施行法をさす。


1 土地改良法制定の意義

農地改革遂行に引続く農業上の重要問題は、農業経営の合理化と農業技術の革新とを通じて農業生産力の発展を図り、ひいて食糧その他農産物の生産を維持増進することである。このためには、まず、農業経営における基本的な生産手段としての土地と水の利用を合理的にすること、いいかえれば、かんがい排水施設や農業用道路を整備し、農地の区画を整理し、農地を集団化し、未墾地を耕地化し、農地の保全を図り、その災害を復旧する等の事業を実施しなければならない。これらの事業は、国民とくに農民の手に残された最も貴重な資源である土地と水とを有効に開発利用する上にも欠くことのできないものである。
このような事業に関する法律としては、従来明治末年の制定に係る耕地整理法、水利組合法及び北海道土功組合法並びに昭和16年の制定に係る農地開発法があつたが、いずれも今日ではその機能を完全には果し得ず、ためにこの種事業の確実且つ円滑な施行に著しい障害を来していることがとくに終戦後における顕著な事実である。かかる現状にかんがみて土地改良法が制定されたわけであるが、同法は、従来の法律に比し次のごとき5つの特色を有する。
その1は、土地改良事業の施行は、国土資源の総合的な開発保全の立場から計画的になされるべきであり、そのために、一定の計画基準を定めると共に施行の申請に対して予備審査及び本審査という技術的な調査審議をへて採択することとしたこと(改良法第1条第2項その他)、したがって、この事業の施行は、政治的その他の事情に左右されることなく、あく迄も技術的且つ経済的に正しい判断によるよう留意しなければならないことである。
その2は、所有権以外の権限に基き土地を利用する者が事業に参加する資格を得たことである(改良法第3条)。即ち農地については原則として耕作者を参加させるのが法の建前である。これは、耕作者を農業生産の担い手たらしめようとした農地改革の趣旨、土地改良事業が経営の合理化を目的とすること等の理由に因るものであるから、運用に当つてもその趣旨を生かすことが必要である。
その3は、土地改良区という組織は、従来の普通水利組合及び北海道土功組合の性格及び機能を中心とし、あわせて耕地整理組合の機能を有するものであること、つまり、事業の工事を施行するのみならず、その施行によつて生じた水利施設などの管理をも行うものであるということである。したがつて、土地改良区を設立する場合(既存組合の土地改良区への組織変更の場合も含めて)には、後述のごとく、なるべく水系等を基準として、水利施設その他の施設の管理に便ならしめる考慮が必要である。
その4は、土地改良区の民主的運営ということである。土地改良区は、一面つよい公共性を持つと同時に、他面耕作者の自主的組織たる性格を有する。このような性格を尊重するため、その設立にあたつては、手続を技術的に合理化するとともに組合員たるべき者の意見提出の機会を与え、その管理にあたつては総会又は公選による総代会に重要な権限を与え、その行政庁による監督は、最小限の消極的なものにとどめたのである。
その5は、国営及び都道府県営の事業に関する規定を設けてその法的根拠を与え、又従来耕地整理法においては不充分であつた交換分合について詳細な規定を設けたことである。

2 従来の法律との関係

(1) 従来の耕地整理法及び北海道土功組合法は改良法の施行によって廃止され(施行法第1条及び同法第7条)、水利組合法は普通水利組合に関する部分を削除して水害予防組合法に改正せられた(施行法第8条)。又農地開発法は、昭和25年12月31日又は農地開発営団の特殊清算終了の登記をした日のいずれか早い時に、効力を失うこととなつている(施行法第23条)。
(2) 自作農創設特別措置法(開拓用地に関する部分)との関係については、措置法は、用地の取得、管理及び処分に関して規定するもので、その用地について行う開墾その他の土地改良事業の施行については何等の規定を有しないので、その用地(隣接地とあわせて一地域をなす場合も考えられる)についての事業は、それぞれ土地改良区、農業協同組合あるいは国営などによって土地改良法の規定にしたがつて行われることになるわけである。

3 土地改良法で差し当り問題となる点についての説明

差し当り問題になるのは、次の諸点である。

(1) 土地改良事業に参加する資格
土地改良事業に参加する資格は改良法第3条に規定している所であるが、この資格は具体的に言えば、土地改良区の組合員となり、(改良法第11条〉、国又は都道府県の行う事業の申請をし(改良法第85条第1項)、その費用の一部を負担し(改良法第90条第2項及び同法第91条)、共同施行者となり(改良法第95条第1項)、あるいは農業協同組合又は同連合会の行う事業の費用負担者となる(改良法施行規則第70条)資格である。しかしてこの資格者としては農地については耕作者、農地以外の土地については所有者たることを建前としているが、小作地たる農地についてその所有者が市町村農地委員会に参加を申し出、その申出が相当であつて、その農地委員会が承認したときは、その所有者が資格を得ることとなる(改良法第3条第1項第2号)。この場合その「相当」の基準とは、農地調整法第9条により農地の取り上げが許される場合に該当する場合その他所有者を参加させることが土地改良法の目的に照し妥当と認められる場合である。もとより所有者を無方針に参加させ将来の土地取り上げの事前準備に堕することのないよう厳に留意する要があるとともに、所有者の事業参加に伴う小作料の値上げも農地調整法の適用を受けるものであるから、調整法の運用について充分注意する必要がある。

(2) 事業主体に関する問題
[1] 土地改良区の事業と農業協同組合の事業との関係
土地改良区の事業と農業協同組合の事業とをいかに調整するかは、両団体の性格や機能の相違とそれぞれの土地改良事業の性質等から判定すべきである。土地改良区は、地域団体に近い性質を有し、公益を目的とし、且つ公法人的色彩の濃い団体であり、所定の条件がみたされた場合は地区内の参加資格者に対し加入を強制することが出来、又組合員に対し経費の強制徴収権を有する。しかるに農業協同組合は、農民がかれらの協同事業を行うために自由に組織する純然たる人的な団体であり、私法人である。したがって、前者はかんがい排水施設や農業用道路に関する事業、区画整理、大規摸の建設事業を伴う開田や開畑など比較的公共の利害に重大な関係があり、また一部の不同意者があっても一定の地域を確実に包合することを必要とするような事業、比較的長期にわたり、また多額の経費を必要とするような事業、二以上の市町村にわたるような比較的規模の大きい事業に適する。後者は、一般的には、その他の事業、たとえば客土、暗きょ排水、床締などのような事業に適する。また国営や国の委任に基く都道府県営の開拓地区における開墾作業のごときものも、入植者の組織する協同組合が行うを適当とする場合が多いと考える。
[2] 国又は都道府県の行う土地改良事業
国又は都道府県の行う土地改良事業は、従来と異なり、改良法第87条第7項及び同法第88条の場合を除き、所定の資格を有する農民の申請をまって行われることとなる(改良法第85条)。この場合には、それぞれ改良法施行令第49条又は同令第50条に定める規模を要件として、この要件をみたすもののうちから、一定の計画基準による順位により、予算を考慮して採択されることになる。もつとも、これらの規定に定める規模に該当するものはすべて国又は都道府県が行うという意味でないのはもとよりであつて、土地改良区などが行う場合も多いと思われる。
なお、国営又は都道府県営事業の施行に係る地域には、たとえば負担団体として、あるいは国営や都道府県営の幹線路につづく小水路を施設する団体として、土地改良区又は土地改良区連合を設立する必要がある(改良法第85条第3項)。
[3] 数人が共同して行う土地改良事業
数人が共同して行う土地改良事業は、たとえば市町村農地委員会が交換分合を行う場合に、その裏付として道水路を小規模に新設し、あるいは変更する場合のごときものが考えられる。
[4] 以上のほか、改良法は、農地の改良、開発、保全及び集団化を行うもののすべてを規律しようとするものではないから、この法律によらないでこれらの事業を行うことはなんらさしつかえない。ただ、この法律によらない場合には、換地処分のような便宜な手段、地租上の恩典、一部不同意者にたいする強制、交換分合に伴う簡易な権利関係の処理など事業の施行を円滑ならしめる各種の手段は一切適用されないのはいうまでもない。

お問合せ先

農村振興局 整備部土地改良企画課

代表:03-3502-8111

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