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農林水産省

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土地改良法の運用について(抄)

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24農地第926号
昭和24年10月5日

農地事務局長あて
都道府県知事あて

農林事務次官


土地改良法の施行については、さきに昭和24年9月30日付24農地第917号をもつて通達したところであるが、土地改良区及び土地改良区連合の新設、総代等の選挙、土地改良事業の開始手続、交換分合の実施並びに現行の土地改良事業あるいは現存の耕地整理組合、普通水利組合又は北海道土功組合の処理等に関する方針は左記の通りであるから、この点に留意の上、法の運用に遺憾なきを期せられたい。
右通達する。
なお、この通達は、法の実施について既に方針の明確となったもの及び緊急を要するものと思われる点のみを示したものである。従って、その他の点については今後逐次通する見込であるから念のため申し添える。この通達中「改良法」とあるのは土地改良法、「施行法」とあるのは土地改良法施行法をさす。

1 土地改良区及び土地改良区連合の新設に関する事項
土地改良区及び土地改良区連合の新設は、耕地整理組合、同連合会、普通水利組合、同連合又は北海道土功組合(以下既存組合という。)の土地改良区又は同連合への組織変更の予定計画並びに農業協同組合及び農業協同組合連合の行う土地改良事業の予定計画との充分な関連において、且つ、今後の水利調整の合理化に資するように指導するものとする。すなわち、将来の土地改良区の配置は土地改良事業の合理的且つ効率的な施行のため、能う限り地区の重畳を避け、且つ、なるぺく水系別に大きい地域を地区とし、農業協同組合の行う土地改良事業と有機的な連関を考慮してなされることが望まれる。このような見地から、土地改良区及び土地改良区連合の新設に当っては次の点に留意の上、計画的に準備及び指導を進められたい。
(1) 既存組合が現に農地の改良、開発などの事業を有効、且つ適切に行っており、今後更にこれを続行しようとする場合には、同組合が土地改良区又は土地改良区連合へ組織替する手続をとればよい(組織変更については7参照)。従って土地改良区又は土地改良区連合を新設する必要があるのは、現在これらの事業を遂行する有力な主体がない場合、既存組合があってもその配置が錯綜しているとか、その債務が非常に多いとかの理由で土地改良区又は土地改良区連合への円滑且つ合理的な組織変更が望まれず、むしろ新たな見地から土地改良区又は土地改良区連合を新設した方が適当と考えられる場合、市町村又は市町村組合の事業が存していても将来そのままでは積極的且つ有効な活動の期待できない場合又は水害予防組合がかんがい排水事業を兼営している場合で水利組合法の改正に伴い水害予防組合としてはかんがい排水事業運営の具体的な法規を失つたので今後積極的活動をするためには当該組合と別個に土地改良区の設立を必要とする場合等である。
(2) 土地改良区連合の設立は、小水系別の土地改良区が更に大水系別に連合組織を作つて水利の合理化を図ろうとする場合又は水系別に大地域を地区とすることが自然的、経済的、社会的その他の条件からしてその運営が困難であり、むしろ個別的な土地改良区の連合による運営が当該土地改良事業の遂行上より妥当であると思われる場合等に必要とせられる。
(3) 土地改良区又は土地改良区連合の新設にあたつては、既存組合の組織変更の場合と同様、その地区となるべき地域内にある土地についての権利関係が明確に把握せられることが不可欠である。したがつて農地改革遂行後の権利関係の収拾整備の問題と関連づけ、都道府県及び市町村の関係農地委員会又は関係市町村と連絡の上、この点の整備を促進する処置が必要である。
2 土地改良区及び土地改良区連合の役員、総代及び議員の選任に関する事項
(1) 土地改良区及び土地改良区連合は、農民の自主的な団体であつて従来と異なり理事については組合員以外の者の就職は不可能とされている。
(2) 土地改良区は農民の自主的な団体であるが同時に公益を目的とする公共的色彩の強い団体であり、且つ、農村民主化の要請よりして、土地改良区の総会に代る意志決定機関たる総代会の構成員としての総代の選挙は、都道府県又は市町村の選挙管理委員会の管理のもとに直接、平等、秘密の一般原則によつて公選されることとなつた。この選挙の規定はおおむね地方公共団体の議会の議員の選挙方法に準拠し、しかも費用の節減と地方的実状への適合を考慮して設けられている。この選挙制度は従来の組合と異なるから組合員にその趣旨を徹底させ無関心に終ることのないようにせられたい。
(3) いわゆる公職追放覚書該当者としての指定を受けた者は、土地改良区及び土地改良区連合の理事、監事、総代及び議員の職についてはならず、又はこれらの職にある者が覚書該当者になったときは、一定期間内にその職を失うものとされ、この規定に違反して就職したときには、罰則の適用があることになつている。(昭和24年総理府令・農林省令第1号参照。)とくに総代の選挙においては立候補制度を採用していない関係上これらの者又はこれらの者に該当するおそれのある者に対する投票の生じないようあらかじめ就職禁止の趣旨を普及せしめられたい。
3 土地改良法による事業開始手続に関する事項
改良法第5条から第10条第1項まで、第48条、第85条から第87条まで並びに第95条に定める手続は次のように運用するものとする。
(1) 土地改良区、土地改良区連合、農業協同組合、農業協同組合連合会並びに共同施行の場合
[1] 都道府県知事は予備審査の申請及び本審査の申請を適当とする旨の決定を行う。この際国の補助金を交付するのを適当と認めるものについては、本審査の申請を適当とする旨の決定を行う前にあらかじめ農地事務局長(北海道知事にあっては農林大臣)に打ち合わせるものとする。
[2] 予備審査及び本審査いずれの場合も、その調査を行い、報告を提出すべき技術者(改良法第6条第2項、第8条第2項48条第5項、第95条第3項及び第5項) は、都道府県知事の指定する技術者とする。
(2)都道府県営の場合
[1] 都道府県知事は、予備審査に基く決定(改良法第86条第2項)をする前に、あらかじめ農地事務局長(北海道知事にあっては農林大臣)に打ち合わせるものとする。但し、申請に係る事項が都道府県営事業として採択することが不適当であることの明らかな場合はこの限りでない。
[2] 都道府県知事が土地改良事業計画を定める場合(改良法第87条第1項)及びこの計画に対する異議申立に対して決定をする場合(改良法第87条第5項)もまた[1]に準ずる。
[3] 予備審査及び土地改良事業計画のいずれの場合も、その調査を行い、報告を提出すべき技術者(改良法第96条第2項、同法第87条第2項)は、都道府県知事の指定する技術者とする。
(3) 国営の場合
[1] 都道府県知事が予備審査に基き申請を適当とする旨を決定し、その旨を進達する場合(改良法第86条第3項)の相手方は、農地事務局長とする。
[2] 右の進達に係る事項の当否の認定及び土地改良事業計画の決定(改良法第87条第1項)並びに異議申立の受理及び申立に対する決定(同条第4項、第5項)は、農地事務局長が行うものとする。この場合農地事務局長は、農林大臣にそれぞれ事前に打合せをなし、その承諾をうけるものとする。
[3] 予備審査の場合、その調査を行い報告を提出すべき技術者(改良法第87条第2項)は、都道府県知事の指定する技術者とし、土地改良事業計画についての調査を行い報告を提出すべき技術者は、都府県における事業の場合にあつては農地事務局長の、北海道における事業の場合にあつては農林大臣の指定する技術者とする。
4 交換分合に関する事項
交換分合を促進するには、まずその趣旨をすみやかに全農家に徹底させて、農民意識をその面に昂揚せしめなければならないことはいうまでもない。次に交換分合の計画をたてる場合には、次に掲げる点を特に留意せられたい。
(1) 一部の農家や一部の地域のみの単なる耕作上の利便だけによらないでなるべく広い団地を選定して合理的に進めること。
(2) 既に区画整理事業を終了した地域及び単作地帯等比較的農業経営の安定性を欠く地域を第1次として逐次実施すること。
(3) できるだけ水利施設、農業用道路などの工事をあわせ行つて、農地の集団化の目的を円滑に果たすように配慮すること。
5 農業水利調整に関する事項
(1) かんがい排水施設の管理は、農業用水の配分規整を行う結果になるものであるから、その計画を定める場合には、その点に留意して水利調整の適正を期せられたい。
(2) 改良法の施行に当つては、右の外、農業用水の配分関係及び農業水利と他種水利との関係を科学的に分せきするのみならず、他の資源の保全開発にも考慮を加えた上で、進んで水源設備などの完備による用水の供給増加の途についても調査検討して、この法律の妥当な運営と今後の水利調整の合理化に資することが必要である。その理由は、第1には、改良法は、土地改良事業の施行の要件として、一定の計画基準を定め、もつて国土資源の総合的な開発及び保全に資すべきことを要請しており、第2には、農業水利制度の整備は近い将来に是非解決すべき問題であり、今回土地改良法を制定し、土地改良区という新たな統一せる組織を設けたのは、いわばこの問題解決への第1歩を意味するからである。従つて、従来とかく不整備なこの種調査及び資料のしう集等については、今後特段の配慮をせられたい。
6 現行事業の処理について
(1) 耕地整理組合、普通水利組合及び北海道土功組合の事業
一般的には次の7にのべるところによつて処理され、これによらないものについては、従前の例によることとなるが、この場合においても改良法制定の趣旨にかんがみ既存組合がそのまま新規事業を開始することのないよう、また現行事業の設計変更についても当初の目的を達するのに直接必要なものに限ることとされたい。
(2) 国営及び都道府県営事業
現行のこれらの事業は、法定の手続を経てこれを改良法による国営土地改良事業又は都道府県営土地改良事業にきりかえなければ、地元負担金の徴収(農地開発営団により引き継いだ国営事業は別である)、国営工事の都道府県知事に対する委任などの法的根拠が得られないのであるが、この点はなお若干の問題を含むので、別途措置を通達するまでさしあたり右のきりかえはさしひかえられたい。
(3) 農業協同組合、市町村などの事業
これらの事業は、改良法による土地改良事業にきりかえる必要はない。但し、自作農創設特別措置法によつて取得した開拓用地について行っている開田、開畑の事業については、地租に関する恩典(施行法第21条)の関係上、すみやかに売渡を行い(工事完了前に)、改良法による事業にきりかえることが望ましい。
耕地整理法に基き、1人施行又は共同施行によつて現に施行中の事業は、従前通り同法によつて規律される(施行法第2条)。但し、設計変更については、[1]の場合と同様にとりあつかわれたい。
(4) 換地処分(略)
7 既存組合の処理について
この点は、施行法第5条から第10条までに規定しているが、左の点に留意されたい。
(1) 耕地整理組合、普通水利組合及び北海道土功組合
[1] 既存組合は、解散又は組織変更によつて処理される。耕地整理組合で事業終了後管理すべき水利施設などのないもの、かような施設があつても規模が小さくむしろ農業協同組合等に引きついだ方がよいと認められるものは、3年内に事業をなるべく終了して解散することが望ましい。
その他の耕地整理組合、普通水利組合並びに北海道土功組合は原則として、組織変更して土地改良区になるものとする。この場合すでにのべたように、新設する土地改良区と関連づけて、地域的にも年次的にも計画的に進められたい。
[2] 土地改良区への組織変更の資格は、施行法第5条第4項(同法第7条及び第9条において準用する場合を含む。)の規定による公告をした後改良法第3条の規定による土地改良事業参加資格の確定(改良法施行規則第2条参照)をまつて始めて最終的に確認されるのであるから、既存組合が右の公告までの手続を進めるについては、これについて相当な見透しをもつて行うよう指導することが必要である。
[3] 施行法第5条第2項の定款及び土地改良事業計画は現行の規約及び設計書を基準として定めなければならないものであるから、規約及び設計書を改良法による定款及び土地改良事業計画の要件を充足するよう改めることは必要であるが、その範囲を逸脱しあるいは組織変更に乗じて新規事業を試みることは許されない。
[4] 施行法第5条第2項、第3項の手続のみならず、すべて土地改良区に改変されるまでの組合運営は、従前の役員又は組合員が行うこととなるが、これらの者の中には改良法第3条に規定する資格を喪失する者も予想されるので、特に組合運営についても適正を欠き、組織変更後の土地改良区の運営及び事業の施行に困難を来し或は新参加者に不利を来すことのないよう指導監督し特に認可に際しては、この点について充分注意せられたい。
[5] 施行法第5条第3項の手続は、すべてそれぞれ耕地整理法、水利組合法、北海道土功組合法の定める議事手続によつて行うものであるから誤解のないようにせられたい。
なお、会議の議決も耕地整理組合、普通水利組合、北海道土功組合によつて異なつているから、承知せられたい。
[6] 耕地整理組合の債務の処理については、施行法第5条第8項及び第9項の規定があるので明らかであるが、北海道土功組合及び普通水利組合の場合において役員等が個人の資格において債権者に対して保証に立つている者があっても、その債権者に対する関係はあくまで契約によって処理せられるのであつて、以上の規定とは直接の関係はない。耕地整理組合においてもかかる場合は同様である。
[7] 施行法第5条第10項の規定による新参加者に対する経費の賦課禁止を円滑に行うため、組織変更をしようとする組合については、組合経理についてあらかじめ収支を明らかならしめておくように指導する必要がある。
(2) 連合体
耕地整理組合連合会及び普通水利組合連合は、土地改良区連合に組織変更することができる(施行法第6条及び第9条)。
[1] 連合体が土地改良区連合になるには、その所属組合のすべてが土地改良区になるものでなければならないから、これを確認する方法として申請書には所属組合の議決書を添附せしめることとしている(改良法施行規則第98条)が、知事の認可は連合体の組織変更と所属組合の組織変更と同時にしなければならない。但し申請書の受理は、所属組合の申請と連合体の申請といずれが先後してもさしつかえない。
所属組合のみに対し組織変更の認可をしようとするときは、その所属する連合体より脱退せしめるか、又はその連合体を解散した上で行うようにされたい。
[2] (1)の[3][4][5]に記載した事項については、連合体の組織変更の場合にも充分留意されたい。
(3) 地方民事部への報告
既存組合が解散又は組織変更をしたときは、都道府県知事はその旨を地方民事部に報告しなければならない(別に添附した昭和24年経産第1050号「統制団体除去政策についての解釈及び実施に関する件」の1、による。なお、昭和23年4月6日23開局第648号耕地整理組合等と「統制団体除去政策についての解釈及び実施に関する件」との関係処理に関する件を参照のこと。)

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