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農林水産省

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土地改良法の一部を改正する法律の施行について

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32農地第4263号
昭和32年12月12日

農地事務局長あて
都道府県知事あて

農林事務次官


土地改良法の一部を改正する法律は、昭和32年4月20日法律第69号をもつて公布され、同年7月18日から施行された。これに伴い土地改良法施行令の一部を改正する政令(昭和32年政令第194号)及び土地改良事業団体連合会登記令(昭和32年政令第195号)がそれぞれ同月17日に公布され、翌18日から施行され、土地改良法施行規則の一部を改正する省令 (農林省令第40号)が8月9日に公布され、同日から施行された。また、特定土地改良工事特別会計法は、昭和32年4月20日法律第71号をもって公布され、同日から施行され、昭和32年度予算から適用された。これに伴い、特定土地改良工事特別会計法施行令(昭和32年政令第196条)が7月17日に公布され、同日から施行された。
これらの法令の施行に当つては、下記事項を十分御了知の上、その取扱に万全を期されたく、命により通達する。
なお、下記事項中、「法」とあるのは土地改良法(昭和24年法律第195号)を、「令」とあるのは土地改良法施行令(昭和24年政令第295号)を、「則」とあるのは土地改良法施行規則をそれぞれいうものとする。

第1 団体営土地改良事業の実施手続
1 事業開始手続
土地改良区の設立手続及び農業協同組合、同連合会、共同施行者又は市町村が行う土地改良事業(交換分合を除く。以下同じ。)の開始手続番については、従来土地改良事業計画の概要による事業の適否の認定及び土地改良事業計画の審査の2段階の審査手続をとってきたのであるが、これらの者が行う土地改良事業すなわちいわゆる団体営土地改良事業のごとき比較的小規模の事業については、土地改良事業計画の概要と土地改良事業計画による審査がほぼ同様の内容となることが多いので、手続簡素化のため、これら2段階の審査手続を廃して、審査は土地改良事業計画についてのみ行うこととした(法第7条から第9条まで、法第95条第3項、法第96条の2第3項)。これに伴い専門技術者の報告は、土地改良事業計画の審査の際にのみ必要とされることとなる。このように審査手続が変更されたので、この改正の趣旨に基き、審査に当つては、適正かつ迅速に事務を処理するとともに、関係権利者の利益保護について十分な考慮を払われたい。なお、農業協同組合、同連合会又は共同施行者が行う土地改良事業の開始手続については、関係者全員の同意をとる場合において土地改良事業計画の概要等を公告しなければならないように改正されたことに注意されたい(法第95条第2項)。
2 不換地処分
従来換地計画においては、従前の土地に照応する換地を必ず定めなけれはならなかつたが、このたびの改正で、一定の条件の下に、すなわち当該換地計画に係る地域内において合計して2畝以下の面積の従前の土地を所有している者の申出があり、かつ、その土地についての関係権利者の同意が得られた場合においては換地を与えないことができることとした(法第53条の2、法第54条、令第48条の2)。この不換地処分は土地兼併の弊害を生ずるおそれがあるとして、従来土地改良法で不換地処分を認める規定が設けられなかつたのであるが、この不換地処分を認めなかつたために換地処分自体に支障を及ぼす場合も少くないので、一定条件のもとにこれを認めることにしたのである。改正の趣旨にかんがみ、これが運用に当つては、従前の土地の所有者の申出は自発的になされるものでなければならず、また関係権利者の同意を得るに当つては強制的にわたることがないように留意されたい。
第2 土地改良区の管理
いうまでもなく、土地改良区は土地改良事業実施の母体となる農業者の団体であつて、土地改良区の適正かつ円滑な運営こそ土地改良事業推進の要素である。このたびの改正においては、従来の経験にかんがみ、土地改良区の管理に関する諸規定の整備を行つた。
1 役員の任期
役員の任期は従来は2年以内において定款で定めるものとされていたが、このたびの改正で4年以内において定款で定めるものとされた(法第18条第6項)。役員が土地改良区の事務に精通し、これを適確に処理できるようになるには2年の任期は短かきに過ぎ、かつ役員の任期を総代の任期に合わせることが適正である場合もあると考えられたからである。
2 総代の定数
総代は組合員の意思を代表する者であるから、総代会に総組合員の意思を忠実に反映させる意味からは、総代の定数も多数であることが望ましいのであるが、総代が多数であると経済的又は技術的理由により総代会の招集が困難な場合もあるので、このたびの改正において、総代の定数を減少し、土地改良区の運営を円滑ならしめた(法第23条第2項)。もとよりこれは総代の定数の最少限度を定めたものにすぎないから、各土地改良区が、総代の定数を定めるに当つては、当該土地改良区の実情に応じた定数を定めるようにされたい。
3 総代の選挙
総代の選挙については、従来互選制をとつてきたのであるが、公職選挙法その他同種の選挙において立候補制をとつていることと、互選制によると得票が著しく分散すること等の理由により、このたびの改正で立候補制をとることとした(令第12条、第17条から第17条の4まで、第18条、第18条の2、第21条から第25条まで、第27条)。また総代の任期満了による総選挙の実施時期についても改正を加えた。
なお、令には選挙運動、選挙費用その他に関する規制をしていないが、買収その他に関しては旧刑法第233条から第236条までの適用があることに留意されたい。
4 仮理事の選任等
従来総辞職等により役員が全員欠けた場合等役員の職務を行う者がない場合についての規定がなく、土地改良区の運営に支障を生ずることがしばしばあつたので、今回の改正で都道府県知事による仮理事の選任又は役員選挙のための総会招集の規定を設けた(法第29条の3)。仮理事の権限は理事の権限と同様であるが、都道府県知事は、仮理事選任の際に、その権限を予算又は事業計画の決定のための総会の招集のごとき特に緊急を要する事項に限定すべきである。仮理事については法第18条第11項の規定による公告の必要はない。仮理事の理事の就任の時に退任することとなる。また、都道府県知事が招集する総会において役員の選挙以外の事項を議決することができないことはいうまでもない。
5 総会の議決方法
総会の議事は、総組合員の半数以上が出席し、その議決権の過半数で決することを原則とし、その例外として、法、定款又は規約で別段の定をした場合に限り議決の要件を加重し又は緩和することを認めたのであるが、このような重要事項を規約をもつて定めることを認めるのは不適当と考えられるので、法第32条は「規約」を削除した。従つて今後は議決の要件については定款に規定しなければならないこととなつたから、都道府県知事は定款の審査に際して定款に議決の要件につき緩和の規定等がある場合例えば2回(又は3回)総会を招集したにもかかわらず出席者が総組合員の半数に満たないときでも総会の成立を認める等の規定がある場合には、内容を十分審査してこれを認めることとされたい。
6 賦課金等の徴収等
土地改良区の賦課金等の徴収手続については、督促手続と督促による時効中断の効力に関する規定を設けて、その整備を図つている(法第39条)、土地改良事業の推進にとって土地改良区の賦課金等の徴収が適正に行われていることが極めて重要であることにかんがみ、今後とも適切な指導を行われたい。
7 借入金の認可
土地改良区は土地改良事業という公共的事業を営み、かつ、関係農業者の3分の2以上の同意によつて成立する公団体であるから、行政庁としてもその健全な運営を確保し、かつ、組合員の利益の保護を図る必要がある。また最近土地改良区の行う事業については、補助事業、非補助事業を問わず、融資の対象となる事業が著しく増大する一方償還未納額が漸増している。このような情勢にかんがみ、土地改良区又は同連合がその事業資金に充てるために長期借入金をしようとする場合には、都道府県知事 の認可を受けさせることとし、都道府県知事は、借入金の必要性、償還の可能性等について審査を行うこととした(法第40条第1項、則第31条の2)。当該審査に当つては、土地改良区又は同連合の運営の状況、組合員の農業経営の現況等を十分に考慮の上、借入金の必要性及び償還の可能性を検討し、借入の可否を決定することとされたい。
8 監督規定の整備
従来は、土地改良区又は同連合が法で認められた事業以外の事業を行う場合にのみ行政庁の申立によつて裁判所が解散命令することとしていたのであるが、このたびの改正では、法で認められた事業以外の事業を行つた場合のほか、行政庁の監督命令に違反した場合並びに一定期間内総会を招集しない場合及び事業を停止した場合にも土地改良区又は同連合を解散させうることとした。未だこのような解散命令は裁判所よりもむしろ行政庁の判断によらしめることがわが国の法制体系に合致していると考えられるので、農林大臣又は都道府県知事がみずから解散命令を下すことにした(法第 135条第1項)。しかしながらこの規定の運用に当つては、行政庁は特に慎重な態度で臨まなければならないことはいうまでもなく、他の手段によつては監督の目的を達し得ないと認められる場合にのみこれを適用することとされたい。
第3 国営及び都道府県営土地改良事業の施行
1 申請による土地改良事業の手続の簡素化
国営及び都道府県営土地改良事業の開始手続としては、従来予備審査と本審査との2段階の審査を行つてきたのであるが、これらの手続中予備審査における意見の申出と本審査における異議の申立とはほぼ同様の手続の反復であり、しかもこれがため相当の日時を要し、土地改良事業の円滑な実施の妨げとなつていたので、このたびの改正では、予備審査に代えて事業の適否の決定を行うものとし、予備審査に伴つて行われた縦覧、公告、利害関係人の意見の申出等の手続を廃して手続の簡素化を図つた(法第86条)。また、この改正に伴つて国営土地改良事業の申請書は都道府県知事を経由して農林大臣に提出し、都道府県知事は経由の際事業の適否についての意見を附するものとし、事業の適否の決定は農林大臣みずからが行うこととした(法第85条、第86条)。専門技術者の報告が土地改良事業計画の審査の際にのみ必要とされることは、団体営事業の場合と同様である。
2 申請によらない土地改良事業
従来国又は都道府県が申請によらないで行う土地改良事業は、国有未墾地について行う開田又は開畑、埋立又は干拓、これらの事業に附帯して行う事業及び急施の災害復旧であつたが、発電事業、水道事業その他公共の利益となる事業とあわせて土地改良事業を行う場合には、当該発電事業等の計画については関係農業者が容易に把握しえない場合が多いこと、申請をまつて土地改良事業を実施することとすると時間的なずれが生じて総合開発事業の円滑な実施が阻害されること等の理由から、国又は都道府県は自ら計画をたて一定の手続により事業を実施することができることとした。
なお、昭和32年法律第35号をもつて公布された特定多目的ダム法に規定する多目的ダムは、同法の規定により建設大臣が自ら新築するダムをいい、農林大臣が発電・水道等の事業を行うものと共同して新築するダムとは別個のものである。
3 特定土地改良工事
(1) 趣旨
国営土地改良事業は、土地改良事業の基幹となるものであるが、現在多くの残事業量を有している。このような事態に対処するため、このたび法第88条の2の規定で国営土地改良事業のうちに特定土地改良工事として行うものを認め、国営土地改良事業の実施の効率化と事業資金の拡充が図られることとなった。今後特定土地改良工事については別途特定土地改良工事特別会計において経理することとなつている。
(2) 事業内容
特定土地改良工事として取り扱う事業は、改正法の施行の際現に施行中のかんがい排水事業で農林大臣が指定するもの及び改正法の施行後着工するかんがい排水事業(北海道の区域内において行うものについては、いずれも農林大臣が北海道開発庁長官と協議して定める基準に適合するものに限る。)、これらの事業により生じた施設の災害復旧並びに埋立又は干拓の事業の工事である(令第50条の3)。なお、かんがい排水事業についてする農林大臣の指定は、おおむね次の基準に該当する事業で関係農業者の3分の2以上の同意による申請があつたもののうち昭和33年度以降毎年度の予算措置に基いて決定されたものについて行うものとする。
(イ) 残事業量が大なるもの
(口) 技術的計画内容及び事業費が、特別の事情ある場合を除き、今後変更を予想されないもの
(ハ) 発電、河川改修、その他の他種事業とあわせて行われる土地改良事業でこれらの事業との関連で工事を促進する必要があるもの
第4 国営土地改良事業の負担金
1 国が都道府県から徴収する負担金
(1) 負担金額
国営土地改良事業につき国が都道府県から徴収する負担金の額は、令第52条及び改正令附則第3項に規定しているが、このことについて留意すべき事項は次のとおりである。
(イ) 一般会計において取り扱う国営土地改良事業の負担金の額については、法第87条の2第2項第2号の事業(発電事業、水道事業等とあわせて施行される土地改良事業)の負担率を100分の40としたこと(令第52条第1項第1号)及び災害復旧の負担金について農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助の暫定措置に関する法律(昭和25年法律第169号)の規定に準じて国庫負担率の高率適用を認めたこと(同項第3号)を除き、従前どおりである。
(口) 特別会計において取り扱う国営土地改良事業(埋立又は干拓の事業を除く。)の負担金の額は、法第85条第1項の申請により又は法第87条の2第2項第2号の規定により行うかんがい排水事業にあつては当該事業費の額の100分の42に相当する額にその額に対応する借入金についての当該事業の施行期間中に係る利息(以下「建設利息」という。)の額を加えて得た額、法第87条の2第2項第1号の事業(埋立又は干拓に附帯して行う事業)にあつては当該事業費の額の100分の42に相当する額をこえず、かつ、その100分の20に相当する額を下らない範囲内で農林大臣が大蔵大臣と協議して定める額に建設利息を加えて得た額、災害復旧にあつては、一般会計の場合と同様の算出方法により算出された額に建設利息の額を加えて得た額である(令第52条第2項)。なお、令第50条の3第1項第2号の規定による指定のあつたかんがい排水事業の負担金について特例が定めてあることに注意されたい(令第52条第3項)。
(ハ) 埋立又は干拓の事業については、従来は、当該事業によつて造成された土地を農地法(昭和27年法律第22号)に基き譲渡していたのであるが、このたびの改正で、土地は無償で配分する一方当該土地の取得者に当該事業費の一部を負担させることとした(法第94条の8第4項、法第90条第3項)。埋立又は干拓の事業の負担金の額は当該事業費の額の100分の20に相当する額に建設利息の額を加えて得た額である(令第52条第4項)。ただし、昭和31年度以前に着工した事業については、当該年度以前に支出した事業費の額の100分の5に相当する額及び昭和32年度以降に支出した事業費の額の100分の20に相当する額に建設利息の額を加えて得た額(反当事業費が5万5千円をこえる場合には5万5千円に当該地区の反数を乗じて得た額、反当事業費が2万5千円に達しない場合には2万5千円に当該地区の反数を乗じて得た額)とする特例が定めてあることに注意されたい(改正令 附則第3項及び第4項)。
(2) 徴収の方法及び時期
国営土地改良事業につき国が都道府県から徴収する負担金の徴収の方法及び時期については、令第52条の2に規定しているが、このことについて留意すべき事項は次のとおりである。
(イ) 一般会計において取り扱う国営土地改良事業の負担金の徴収の方法及び時期については、従来農林大臣が定めることとしていたが、このたびの改正でこれを令に規定することとした。内容についての変更はない(令第52条の2第1項)。
(口) 特別会計において取り扱う国営土地改良事業の負担金の徴収の方法及び時期については、都道府県及び受益農業者(埋立又は干拓の事業以外の事業にあっては当該事業の施行に係る地域内にある土地につき法第3条に規定する資格を有する者をいい、埋立又は干拓の事業にあつては法第94条の8第4項に規定する土地取得者をいう。以下同じ。)負担部分につき、ともに同様の条件により、すなわち埋立又は干拓の事業以外の事業にあつて利率年6分事業完了後10年の元利均等年賦支払の方法、埋立又は干拓の事業にあつては利率年6分、事業完了後25年(3年 のすえ置期間を含む。)の元利均等年賦支払の方法により、支払わせることとした (令第52条の2第2項及び第4項)。なお、令第50条の3第1項第2号の規定による指定のあったかんがい排水事業については特例が定めてあることに注意されたい(令第52条の2第3項)。
2 都道府県が受益農業者から徴収する負担金
(1) 都道府県が受益者から負担金を徴収する場合には、条例を制定しなければならないこととなつたが(法第90条第2項及び第3項)、この条例においては次に掲げる事項を定めなければならない。
(イ) 都道府県が当該国営土地改良事業について受益農業者から徴収する負担金の額の総額の当該国営土地改良事業について都道府県が国に支払う負担金の額の総額に対する割合
(口) 面積割、水量割等賦課金額を算出する基準
(ハ) 当該負担金の徴収の方法及び時期
(ニ) 受益農業者に代えて土地改良区から徴収しようとする場合には、その旨
(2) (1)の(イ)の事項を定めるに当つては、次に掲げる事項に留意されたい。
(イ) 一般会計において取り扱うかんがい排水事業の負担金にあつては、現在大部分の県において県の負担部分と受益農業者の負担部分とを等しくしている実情にかんがみ、特別会計において取り扱うかんがい排水事業の負担金にあつても、都道府県の負担部分と受益農業者の負担部分とが等しくなるように定めることが望ましいこと。
(口) 埋立又は千拓の事業にあつては、土地取得者が全額負担することを常例とする(令第53条の2第1項)が、特別の事由がある場合には条例で都道府県が一部を負担するものとすることができる(令第53条の2第1項)。
(3) (1)の(ハ)の事項を定めるに当つては、当該徴収の方法及び時期が令第53条及び第53 条の2第2項及び第3項に規定する条件によつたものでなければならないことはいうまでもない。
第5 国有土地改良財産等の管理及び処分
1 土地改良財産の管理及び処分
法第94条に規定する土地改良財産の管理及び処分については、従来土地改良財産の管理及び処分に関する政令(昭和26年政令第347号)に規定していたが、これらの規定中に国有財産法(昭和23年法律第73号)の例外規定があり、これと同法第1条の規定(同法の例外規定は法律によって定めなければならない旨の規定)との関係に疑義があつたので、当該例外規定を法に規定するとともに、同政令を廃止して、その他の規定を令に規定することとした。これらの規定の内容は次の2点を除き、変更されていない。
(1) 土地改良財産の管理を委託する場合における当該管理受託者の責任の発生の時期を当該土地改良財産の引継の時としたこと(令第57条第2項)。
(2) 北海道の区域内にある土地改良財産の管理を委託する場合における当該土地改良財産の引継及び実地監査を行う職員について、北海道開発局の職員に行わせることができることとしたこと(令第57条第1項、第66条)。
2 干拓造成地の管理及び処分
(1) 農地法との関係
従来干拓造成地の管理及び処分は農地法に基いて行い、その経理は自作農創設特別措置特別会計において行つていたが、干拓造成地に係る事業費の一部を土地取得者から負担金として徴収することとしたことに伴い、干拓造成地の管理及び処分も法に基いて行うものとし、その経理は特定土地改良工事特別会計において行うこととした(法第94条第2号、法第94条の8、改正法附則第12項)。
なお、昭和32年4月20日現在農地法の規定により農林大臣が管理している土地及び権利で国が埋立又は干拓の事業のために取得したもの(同日前に、当該土地を含む地域に係る国営土地改良事業が完了した土地及び同法第62条第3項の規定による公示があつた土地を除く。)についても同日以後法第94条第2号の規定により農林大臣が管理及び処分をすることとなる(改正法附則第14項、第15項)ことに注意されたい。
(2) 土地配分手続
土地配分手続については、農業上の用途に配分する場合には法第94条の8及び令第70条から第72条までの規定、農業以外の用途に配分する場合には、国有財産法(昭和32年法律第73号)第29条から第31条までの規定によつてすることとなるが、運用上留意すべき事項は、次のとおりである。
(イ) 農地法は干拓造成地の所有権を一旦国に帰属させ、これを入植者等に譲渡することとしているが、土地改良法においては、農業用以外の用途へ譲渡する場合を除き、直接入植者が所有権を取得することとしている(法第94条の8第4項)。
(口) 土地配分計画の作成及び公示、配分申込、入植者の選定、配分通知書の交付等の一連の土地配分手続は、当該地区における干陸の時から事業完了の時(公有水面埋立法(大正10年法律第57号)の規定による竣功通知の日)までに完了しなければならない。したがつて土地配分計画の作成及び公示の時期は当該期間を考慮して決定されなければならない。
(ハ) 干拓造成地を農業用以外の用途に売却するかどうかは土地配分計画作成の際に決定されなければならないから、売渡の用途、売渡面積等は土地配分計画作成の時以前に決定することが望ましい。
(二) 土地配分計画の作成はすべて農林大臣が行うものとし、その他公告、入植者の選定、配分通知書の交付等法第94条の8に規定する権限は当該都道府県の区域外から入植する者のある地区については農林大臣が、その他の地区にあつては都道府県知事が行うものとする(令第72条)。農業用以外の用途への売却はすべて農林大臣が行うものとする。
(ホ) 入植者が所有権を取得した干拓造成地のうち農地に利用すべきものとして用途を指定したものは、その取得の時においては農地と認められる状況にあるものであるから土地台帳には農地として登載するものとする。なお当該干拓造成地に係る権利移動、転用等については当然農地法により制限を受けることとなる。
第6 都道府県営土地改良事業分担金徴収条例
従来都道府県営土地改良事業の分担金の徴収に関する条例を制定する場合には、地方自治法(昭和22年法律第67号)第217条第3項の規定により公聴会を開かねばならなかつたが、土地改良事業の開始手続においては、受益農業者の3分の2以上の同意を得、利害関係人の異議の申立の機会を与える等、関係者の利益保護について十分な措置が確保されているので、同項の規定は適用しないこととした(法第90条第2項)。
第7 土地改良事業団体連合会
1 設立の趣旨
土地改良事業の施行上重要な役割を果している土地改良区、農業協同組合等が行う土地改良事業いわゆる団体営土地改良事業については、従来その事業の施行が必ずしも適切かつ効率的に行われていない場合があつたが、その理由としては、これら団体における毎年度の事業量が不定であること及び規模の比較的小なる土地改良区においては経常費が少ないこと等が原因して事務職員又は技術職員が充実せず、しかも都道府県又は市町村の援助も十分には行われないという事情が挙げられていた。このたび設立を認められた土地改良事業団体連合会は技術面及び運営面にわたる指導体制を確立し、あわせて土地改良事業に関する教育及び情報の提供、調査及び研究その他土地改良事業の推進体制を整備することを目的とする土地改良事業施行者の協同組織であり、これにより、今後団体営土地改良事業のより適切かつ効率的な実施が期待されるのである。
2 種類等
土地改良事業団体連合会(以下「連合会」という。)は都道府県土地改良事業団体連合会(以下「地方連合会」という。)及び全国土地改良事業団体連合会(以下「全国連合会」という。)の2種類とする(法第111条の5)。
地方連合会の地区は、都道府県の区域により、全国連合会の地区は全国とする(法第111条の7)。
連合会の名称は、地方連合会にあっては、何々県(都、道、府)土地改良事業団体連合会、全国連合会にあつては、全国土地改良事業団体連合会とする。
3 会員
地方連合会の会員たる資格を有する者は、地方連合会の地区内において土地改良事業を行うもので定款で定めるものとし、全国連合会の会員たる資格を有する者は、2都府県にわたつて土地改良事業を行う者、1万町歩以上をこえる面積にわたる地域につき土地改良事業を行う者及び地方連合会とする(法第111条の10、則第89条の2)。
土地改良事業を行う者とは、土地改良区及び同連合、土地改良事業を行う旨を定款で定めた農業協同組合及び同連合会並びに現に土地改良事業を行つているか、又は土地改良事業を行おうとする市町村をいう。
土地改良区には、土地改良区の設立の申請人は含まれない。
4 設立及び登記
連合会の設立について法第111条の11から法第111条の15までに規定しているが、設立の認可はすべて農林大臣が行うことに留意されたい。
連合会は、設立その他について登記をしなければならない。連合会の登記は、土地改良事業団体連合会登記令によつてすることとなる。
5 事業
連合会の事業については、次の点に留意されたい。
(1) 法第111条の9第1号の技術的援助は、会員に対して行うことを原則とするが、会員以外の者たとえば土地改良区の設立申請人、共同施行者等に対して行うことを妨げるものではない(同条第5号)。
(2) 土地改良区等に所属していた技術職員を連合会の職員とすることにより、その者の技術の十二分の活用を図る等連合会の運営に特段の努力を払うことが必要である。
(3) 法第111条の9第5号の事業としては、法第111条の4第1号に掲げる要件を充たす範囲内において比較的広く認めることとする。
6 役員及び職員
(1) 連合会の目的にかんがみ、連合会の役職員の数を必要最少限度に留める等連合会の組織はできる限り簡素化し、経常費の節減を図ることが必要である。
(2) 連合会の役職員については兼職禁止の規定はないが、連合会の職務に専念すべきことは当然であり、連合会以外の業務を兼務することが適当でない。
7 定款等
連合会の定款に記載すべき事項は、法第111条の16に規定するところであるが、その他の重要事項に関してこれを定款に記載すること又は別に規約その他の規程をもつて定めることを妨げるものではない。規約その他の規程において定める場合には定款においてその旨及びその決定方法を定める必要がある。
8 経費の賦課徴収
連合会の経費の強制徴収については、法には強制徴収に関する規定がないから、私法上の債権として、民事訴訟に規定する手続によることとなる。
9 監督
連合会に対する監督については、法第132条から第135条までに定められているが、すべて農林大臣が行うことに留意されたい。