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農林水産省

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土地改良法の一部を改正する法律の施行について

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40農地B第850号
昭和40年3月22日

地方農政局長あて
都道府県知事あて

農林事務次官


昭和39年6月2日法律第94号をもって公布された土地改良法の一部を改正する法律は、同年11月30日公布の土地改良法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(昭和39年政令第357号)による同年12月1日から施行された。これに伴い、土地改良法施行令(昭和24年政令第295号)および土地改良法施行規則(昭和24年農林省令第75号)にも所要の改正措置が講ぜられることとなり、それぞれ土地改良法施行令の一部を改正する政令(昭和39年政令第358号)および土地改良法施行規則の一部を改正する省令(昭和39年農林省令第59号)として同年11月30日に公布され、土地改良法施行令の一部改正する政令中土地改良区の総代の選挙に関する規定の改正規定〈昭和40年2月1日から施行)を除き、昭和39年12月1日から施行された。
これらの法令の施行にあたつては、下記事項を十分御了知のうえ、その取扱いに万全を期されたく、命により通達する。
なお、下記事項中「法」とあるのは土地改良法(昭和24年法律第195号)を、「令」とあるのは土地改良法施行令を、「則」とあるのは土地改良法施行規則を、「改正法」とあるのは土地改良法の一部を改正する法律を、「改正令」とあるのは土地改良法施行令の一部改正する政令をいう。

第1 土地改良法の目的
土地改良法は農業基本法(昭和36年法律第127号)第2条に定める国の施策の方向に即応してその政策目標の達成に資することを目的とする旨を明らかにした(法第1条第1項)。
なお、従来、法第1条第2項において土地改良事業全般にわたつてその施行の要件として「その事業は、土地利用、森林その他資源の保全、開発に適切な考慮を払つて政令で定める計画基準に準拠するものでなければならない」旨を規定していたが、土地改良事業の一層の適切かつ効率的な実施を図る趣旨から、この一般的な規定を削除して、次に掲げるように、各事業主体別に、事業施行の審査、事業計画の策定等の基準として規定し、それぞれの段階でより具体的にこの趣旨の基準を適用することとした。
(1) 土地改良区の行なう事業については、法第8条第4項(土地改良事業計画および定款)、法第30条第5項(定款変更)、法第48条第6項(土地改良事業計画の変更等)および法第72条第5項(合併)
(2) 国または都道府県の行なう事業については、法第87条第3項および法第87条の2第4項(土地改良事業計画)
(3) 農業協同組合等の行なう事業については、法第95条第3項(事業開始)および法第95条の2第3項(事業の変更等)
(4) 市町村の行なう土地改良事業については、法第96条の2第5項(事業の開始)および法第96条の3第5項(事業の変更等)
第2 土地改良事業
従来、土地改良法に基づく土地改良事業とは、農地の改良、開発、保全および集団化に関する事業をいうものとしていたが、今後の農業の進むべき方向に即し、畜産の振興を図る見地から草地の改良、開発等の事業も土地改良法に基づく土地改良事業に加え、土地改良事業は、農地のほか草地を含めた農用地の改良、開発、保全および集団化に関する事業をいうものとした(法第1条および法第2条)。
(1) 農用地とは、耕作の目的または主として家畜の放牧もしくは養畜の業務のための採草の目的に供される土地をいう(法第2条第1項)。これには、農地法(昭和27年法律第229号)上の農地と、同法上の採草放牧地のうち肥料用採草地等の主として耕作の事業のための採草の目的に供される土地を除いたその他の採草放牧地(本通達中この採草放牧地を単に「草地」と略称する。)とが含まれる。
(2) 草地の改良、開発等の事業を土地改良事業に加えたことに伴い各土地改良事業の範囲を拡充するとともに、あわせて必要な整備を行なっているので、各土地改良事業の内容につき留意すべき点をあげれば、次のとおりである。
ア 農用地の保全または利用上必要な施設の新設、変更等
草地についてのかんがい排水施設、牧道の新設、変更等農地のみならず草地の保全上または利用上必要な施設の新設、変更等の事業も含まれる(法第2条第2項第1号、則第1条第1項)。
イ 区画整理
本来の区画形質の変更の事業のほか、その事業とこれに附帯して施行することを相当とする農用地の造成の工事または農用地の改良もしくは保全のため必要な工事の施行とを一体とした事業をいう(法第2条第2項第2号)。
ウ 農用地の造成
従来の開田または開畑の事業はこれに含まれるが、農地の造成のみでなく草地の造成の事業も含まれる。
また、現況農用地でない土地から新たに農用地を造成する事業に限らず、草地から畑を、畑から田を造成する事業のように農用地から農用地を造成する事業であっても地目変換の事業であればこれに含まれる。なお、埋立て千拓は、農用地を造成する事業ではあるが、ここにいう農用地の造成の事業には含まれない(法第2条第2項第3号)。
この場合、地目変換の事業とは、必ずしも不動産登記法施行令(昭和35年政令第228号)第3条に規定する地目の変換を行なう事業に限らない。同条に規定する地目の変換を伴わない場合でもその土地の現況を変更しその主たる用途を変換する事業については、第3にのべる事業参加資格者の決定のしくみとの関連でこれを農用地の造成の事業として取り扱うものとする。
したがつて、草地について行なう草地造成事業、畑について行なう樹園地造成事業等にあつては、同条に規定する地目のみならず土地の現況および用途、事業完了後におけるその土地の状況および用途を精査してその取扱いに遣憾なきようせられたい。
工 農用地またはその保全もしくは利用上必要な施設の災害復旧
草地の災害復旧の事業、草地の保全または利用上必要な施設の災害復旧もこれに含まれる(法第2条第2項第5号、則第1条)。
オ 交換分合
交換分合については、農地相互間のみならず、農地と草地の間、または草地相互間においても交換分合を行なうことができることとなつた(法第2条第2項第6号)。
第3 土地改良事業に参加する資格
土地改良事業に参加する資格は、従来の農地については耕作者、農地以外の土地については所有者たることを建前としていたが、今回草地を土地改良事業に加えたことに伴い、農用地については使用収益権者、農用地以外の土地については所有者たることを建前とすることに改められた(法第3条第1項)。これにより、草地については、従来所有者たることを建前としていたのが、今後は使用収益権者を建前とすることになり、その所有者が事業に参加するには農業委員会に当該事業に参加すべき旨を申し出、かつ、その申出が相当であつて農業委員会が承認した場合に限られる。この場合、その「相当」の基準は、さきに昭和24年9月30日付24農地第91号農林事務次官通達(土地改良法の施行について)で示したとおり、農地法第20条の規定により、農地または採草放牧地の賃貸借の解約等が許可された場合その他所有者を参加させることが土地改良法の目的に照らして妥当と認められる場合である。
これに伴い、草地等の把握が容易にできるように、事業参加の申出書においては、当該農用地の所在、地番、地目および地積のほかにその用途をも記載すべきこととした(則第2条~第4条)。この用途おいては、田、普通畑、飼料畑、樹園地、草地、その他の別に記載することとする。
なお、改正法施行の際現に施行中の開田または開畑の事業等についての事業参加資格については、改正法附則第9項の規定により、従前の例によることとされているから注意されたい。
第4 土地改良長期計画
国は、土地改良事業の計画的な実施に資するため、農業生産の選択的拡大、農業の生産性の向上および農業総生産の増大の見通しならびに農業経営の規模の拡大等農業構造の改善の方向に即して土地改良長期計画を樹立することとなつた(法第4条の2~第4条の4)。
土地改良長期計画は、10年を1期として定められ、その改定は、当該計画期間の範囲内においてするものとし(令第1条の2)、また、土地改良長期計画においては、(1)基幹かんがい排水事業、(2)かんがい排水事業、農道事業、区画整理事業等のほ場整備事業、(3)農用地の保全事業および(4)農用地の造成事業の4種別についてその計画期間に係る事業実施の目標および事業量を定めることとつた(則第5条の2)。
なお、最初に定める土地改良長期計画の計画期間は、昭和40年以降10箇年間である
(改正令附則第2項)。
第5 土地改良区の行なう土地改良事業
1 土地改良区の設立
(1) 2以上の土地改良事業の施行を目的とする土地改良区の設立
土地改良事業の総合的かつ効率的な実施を図る見地から、今回各土地改良事業の施行に係る地域の重複その他各土地改良事業相互間に相当の関連性がある場合には、これらの2以上の土地改良事業の施行を目的として、1の土地改良区を設立することができることになつた(法第5条第1項)。
この場合の各事業相互間における相当の関連性の有無は、各事業について個別具体的に判断すべきものであるが、たとえば、同一の水源施設の建設工事を内容とするかんがい排水事業と農用地造成事業、かんがい排水事業と減水防止のため行う客土工事業等各事業をあわせて施行することによりそれらの事業の効率が高められる場合、かんがい排水施設の変更事業とその管理事業のように同一の土地改良区が行なうことを相当とする場合等は、各事業相互間に相互の関連性がある場合に該当する。
2以上の土地改良事業の施行を目的として1の土地改良区を設立する場合において手続上留意すべき点をあげれば、次のとおりである(法第5条第2項)。
ア 計画の概要
土地改良事業の計画の概要は、それら2以上の土地改良事業のおのおのについて定め、公告しなければならない
イ 全体構成
ダムその他のえん堤の建設工事が2以上の土地改良事業の工事としてあわせ行なわれる場合には、そのあわせ行なわれる建設工事についての工事の要領、費用の概算ならびに費用の割りふりの方法およびその額を定めた全体構成を公告しなければならない(法第5条第2項、則第6条の2)。
ダムその他のえん堤とは、河川を横断して水流を阻止するために設けられた堤防をいい、通常ダムのほか頭首工がこれに該当する。
なお、ダムその他のえん堤の建設工事のほかこれに附随して水路等の建設の工事がその2以上の土地改良事業の工事としてあわせ行なわれる場合には、その附随して行なわれる水路等の建設の工事についても全体構成を作成し、公告することとされたい。
ウ 事業参加資格者の同意
事業参加資格者の同意は、各土地改良事業ごとにその施行に係る地域にある土地につき法第3条に規定する資格を有する者の3分の2以上の同意を得なければならない。この場合、2以上の事業のうち1の事業について法第3条に規定する資格を有する者の3分の2以上の同意が得られないときは、その他の事業すべてについて 法第3条に規定する資格を有する者の3分の2以上の同意が得られても、その得た同意をもつて、その同意を得られた事業のみの施行を目的として土地改良区を設立することはできない。
(2) 農用地造成事業の施行を目的とする土地改良区の設立
農用地造成事業(法第2条第2項第3号の農用地の造成の事業をいう。)の施行を目的とし、または目的の一部に含む土地改良区を設立する場合には、その事業の施行に係る地域内の土地について法第3条に規定する資格を有する者の3分の2以上の同意のほか、農用地外資格者(農用地以外の土地について法第3条に規定する資格を有する者をいう。)の全員の同意を得なければならない(法第5条第3項)。
これは、その事業が土地の現況を変え、その主たる用途を変換するものであり、とくに農用地以外の土地については、その利用形態を根本的に変換することから、農用地以外の土地についての事業参加資格者の全員の同意をその施行の要件とされたものである。この農用地外資格者の同意というのは法第5条第2項の法第3条に規定する資格者の同意と別個に存するものではなく、その者が1の事業の施行に同意するか否かの表示は常に一個である。
したがつて、同意署名簿は1の農用地造成事業に対して1の同意署名簿を作成すればそれで足りるが、ただその場合には、これらの要件(法第3条に規定する資格を有する者の3分の2以上の同意および農用土也外資格者の全員の同意)の成否を明確ならしむため、法第3条に規定する資格を有する者の総数に加えてその内数として農用地外資格者の総数を記載するとともに、だれが農用地外資格者であるかを判別できるようにしておかなければならない(則第9条第1項)。
また、農用地外資格者の資格に係る土地について所有権者以外の権限に基づいて使用および収益をする者が他へ存するときには、その農用地外資格者は同意または不同意を表示する場合、あらかじめ、それらの者から意見書を得ておかなければならない(法第5条第4項、則第10条)。そして、この意見書は、土地改良区の設立の許可申請にあたり、その申請書に添付しなければならないことを注意されたい(法第14条第2号)。
なお、区画整理の事業の工事の一環として農用地の造成の工事が行われることがあるが、その場合にはその事業の性質上、農用地外資格者全員の同意の要件は不要である。
(3) 農用地外資格者の全員の同意を得るための措置
農用地造成事業の施行を目的とする土地改良区を設立する場合には、(2)においてのべた趣旨から、農用地外資格者全員の同意を要することとされたのであるが、農用地造成事業の施行が一部の者の不同意によつて阻害されることのないよう次の措置が講じられた。
ア まず、農用地外資格者全員の同意を得られないときは、発起人は、その同意をしない者に対して必要な資料、情報等の提供をこよりその事業の必要性、事業の内容等についての周知徹底を図りその事業への参力に勧奨し、なお同意をしないときは関係者との協議により資格の交替、その土地についての所有権または利用権の移転または設定を勧奨する等その全員同意を得るために必要な措置を講じなければならない(法第6条第1項、則第11条)。
イ アの措置によつてもなお全員の同意得られないときは、発起人は、資格の交替、その土地についての所有権または利用権の移転または設定について、資格の交替を受けようとする者や所有権または利用権の移転または設定を受けようとする者からの委託を受けて、都道府県知事にあっせんまたは調停を申請することができる(法第6条第2項)。
ウ イの申請を受けた都道府県知事は、すみやかに、あっせんまたは調停を行ない、その事業遂行のために万全の措置を講じなければならない。なお、調停を行なうにあたつては、農業委員会、市町村長、都道府県農業会議、都道府県土地改良事業団体連合会等の意見をきくとともに、農業委員会の協力を得て調停案を作成して当事者にその受詰を勧告しなければならない(法第6条第3項~第5項、則第12条)。
(4) 審査および公告等
ア 専門技術者の報告
都道府県知事が土地改良区の設立認可申請についての適否を決定するにあたつては、農用地の改良、開発および保全に関する専門的知識を有する技術者からの報告のほか、農用地の集団化に関し専門的知識を有する技術者からの報告に基づき農用地の集団化の点からもこれを審査しなければならない(法第8条第2項、なお、法第7条第4項を参照)。
イ 土地改良事業の施行に関する基本的な要件
第1において述べたとおり、従来令第2条において一般的に規定していた土地改良事業の計画基準を土地改良区の設立の審査において具体的に適用するように整備することとしたので、これに伴い、令第2条の規定を整備し、土地改良事業の施行に関する基本的な要件として規定した(法第8条第4項第1号、令第2条)。
ウ 土地改良事業の遂行のための基礎的な要件
土地改良区の乱立を規制するとともに、将来の土地改良区の運用の基盤の強化を図るうえから、土地改良事業を的確に遂行するに足りる経理的基礎また技術的能力の有無を適否決定の要件とすることとした(法第8条第4項第3号)。すなわち、土地改良区を設立するには、申請に係る土地改良事業に必要な資金および技術者を確保する見込みがあることのほか、業務の執行および会計の経理が適正に行なわれる見込みがなければならない(令第3条)。
これに伴い、土地改良区の設立認可申請書においては、あらたに業務の執行および会計の経理に関する事項を記載した書類を添付しなければならないこととし、また土地改良施設の管理事業についても当該事業の事業費の細目および資金計画を記載した書面を提出すべきこととした(則第14条第3号および第4号)。なお、業務の執行および会計の経理に関する事項とは、設立後の土地改良区の規約において定められるべき事項である。
(5) その他
ア 計画の概要
従来、計画の概要においては、換地計画の内容は何ら示されていなかつたが、今後農用地の集団化を進めていくうえにおいて、関係権利者においてその趣旨を充分に理解し、農用地の集団化の事業が円滑に推進できるようにするため、計画の概要においても換地計画の要領を定めて関係権利者に周知徹底せしめることとした。それとともに、施行地区を数区に分ける場合においてもあらかじめ計画の概要においてその趣旨を明瞭にして関係権利者に充分の周知徹底を図ることとしている(則第6条)。
イ 同意署名簿
同意署名簿については、農用地外資格者の同意のとり方との関連での整備((2)を参照)のほかに、関係権利者の充分の了承を図るため、公告した事項を記載した書面を添付しておかなければならないこととした(則第9条第2項)。
ウ 土地改事業業計画
土地改良事業計画の内容は、従来とほぼ同様であるが、とくに留意すべき点は、次のとおりである(則第14条の2)。
(ア) 土地利用計画(旧則第12条第5号)は、一般計画の内容として定めることとした。
(イ) 工事の年度割の予定は、削除した。
(ウ) 換地計画の概要として定めるべき事項を整備した。
(エ) 事業費については総額のほか、その内訳も定めることとした。この場合内訳とは、少なくとも主要工事計画および附帯工事計画の別に定めなければならない。
2 土地改良区の管理
(1) 役員の選挙
ア 総会外選挙
従来、土地改良区の役員の選挙は、総会を開催しその議場で選挙することになつていたが、総会の開催をまつまでもなく適正に選挙を行なうことは可能であり、かつ、経費その他の事情から役員選挙のため総会を開くことは困難な場合も想定されるので、今回、総会での選挙のほか、総会外においても役員の選挙ができることとした(法第18条第3項)。
イ 1人1票
農業協同組合、農業共済組合等他のこの種の法人と同様の趣旨で、選挙権の行使の方法として、投票は、1人につき1票とする旨を新たに明定した(法第18条第7項)。
ウ 選挙管理者等の設置
役員の選挙の適正化を期するため、選挙管理者、投票管理者および開票管理者の設置、選挙録、投票録および開票録の作成、総会外選挙の場合の投票所の設置 基準等、選挙の執行方法についての規定を整備した(法第18条第8項~第10項)。
(2) 役員の責任
従来、土地改良区の役員の義務責任については、特別に規定することなく、民法の一般原則によることとしてきたのであるが、これを明確にしておくことが土地改良区の円滑な運営に資するものと考えられるので今回の法改正においてこれを明らかにすることとした(法第19条の2)。
(3) 総代の選挙
土地改良区の総代の選挙の適正化を図るため、次の改正を行なうこととした。
ア 選挙人の所属選挙区の確定基準を従来の住所地主義から受益地主義に改めた(令第4条第4項)。
イ 選挙長が欠けた場合等の職務代理者および職務管理者の選任についての規定を新設した(令第8条第3項および第4項〉。
ウ 同一の氏名等の候補者に対する投票の効力についての規定を新設した(令第17条の2)。
工 当選人の更生決定についての規定を新設し(令第22条の2)、これに伴い、被選挙権の喪失と当選人の決定について規定を整備した(令第23条の2)。
オ その他関係規定の整備を行なつた。
以上の改正措置は、昭和40年2月1日から施行された(改正令附則第1項ただし書)が、同年1月31日までに選挙の告示があったものの選挙については、なお改正前の令の規定の例による(改正令附則第3項)。
(4) その他
法改正に伴い土地原簿に記載すべき事項につき整備した(則第24条)。この場合、土地の用途は第3においてのべた趣旨と同趣旨で草地等の把握が明瞭に行なわれるように記載するものとする。また「その他の使用及び収益を目的とする権利」は、その権利を有する者が換地計画作成の場合の権利者会議の構成員となること(法第52条第3項)。特別換地および不換地の場合にはその者の同意を要件とすること(法第53条第1項ただし書、法第53条の2第1項)、これらの権利について権利関係の調整の規定が適用されること(法第58条~法第65条)にかんがみ、土地原簿においてこれらの権利の存否を明確にしておく必要があることに留意されたい。
3 土地改良事業計画の変更等
土地改良区が、土地改良事業計画を変更し、土地改良事業を廃止し、または新たな土地改良事業を行なおうとする場合の手続について次のとおり規定を整備した。
(1) 変更後または採択後における2以上の事業の施行
土地改良事業計画の変更後または新たな土地改良事業の採択後において2以上の土地改良事業を施行しうるのは、各土地改良事業の施行に係る地域の重複その他各土地改良事業相互間に相当の関連性があるときに限られる点は、土地改良区の設立の場合と同様である(法第48条第2項)。また、その場合における計画の概要の取扱い、全体構成および同意手続についても土地改良区の設立の場合と同様である(法第48条第3項、則第38条の4、2の(1)参照)。
(2) 土地改良事業計画の変更等についての同意
ア 土地改良区の地区の拡張を伴う土地改良事業計画の変更および新たな事業の採択
土地改良事業計画の変更または新たな土地改良事業の施行の結果、土地改良区の地区が拡張する場合には、従来はその変更または事業の採択についての法第48条の規定による法第3条資格者の同意のほか、別途定款変更の認可申請の際にその拡張された部分の土地についての法第3条に規定する資格者の3分の2以上の同意をとるべきものとされていた(改正前の法第66条第1項)。しかし、これらの同意は、本来1の事項を対象としたものであり、同一の手続をもつてすることが望ましい。そこで、今回の法改正により、改正前の法第48条の同意と改正前の法 第66条の同意の要件とを整理統合し、地区の拡張を伴う土地改良事業計画の変更または新たな土地改良事業の採択の場合には、これらの同意に相当するものを同一の手続によりあわせて得るものとして次の同意を得なければならないこととした(法第48条第3項第1号)。
(ア) 当該土地改良事業の施行に係る地域(土地改良事業計画の変更の場合にあつては、その変更後においてその施行に係る地域から除斥される地域を含む。)のうち現在土地改良区が地区としている地域内の土地に係る組合員の3分の2以上の同意。
(イ) 新たに地区に編入される土地について法第3条に規定する資格を有する者の3分の2以上の同意また、これにあわせて、国有地等の編入承認もこの手続きの一環として行なわなければならない(法第48条第6項)。
なお、地区の拡張に伴う定款の変更については別途法第30条第2項の規定による都道府県知事の認可が必要であることはいうまでもないが、その際は、土地改良事業計画の変更等の認可申請と同時に行なわせるようにされたい。
イ 地区の拡張を伴わない土地改良事業計画の変更および新たな事業の採択
地区の拡張を伴わない土地改良事業計画の変更(地区の縮小があってもよい。)または新たな土地改良事業の採択の場合には、当該土地改良事業の施行に係る地域(土地改良事業計画の変更の場合にあつては、その変更後においてその施行に係る地域から除斥される地域を含む。)内にある土地に係る組合員の3分の2以上の同意を要する(法第48条第3項第2号)。
ウ 土地改良事業の廃止
土地改良事業を廃止する場合には、その廃止しようとする土地改良事業の施行に係る地域内の土地に係る組合員の3分の2以上の同意を得なければならない。(法第48条第3項第3号)。
工 農用地造成事業についての計画の変更および新たな農用地造成事業の採択農用地造成事業についてその土地改良事業計画を変更しようとする場合にその変更により新たな地域がその農用地造成事業の施行に係る地域に編入されるときは、その新たに編入される土地についての農用地外資格者の全員の同意が、また 新たに農用地造成事業を施行しようとするときは、その施行に係る地域内にある土地についての農用地外資格者の全員の同意が、アまたはイの同意のほかに必要である(法第48条第4項、なお1の(2)を参照)。
(3) 公告すべき事項
土地改良事業計画の変更等についての同意を得る際に公告すべき事項が次のように整備されたことにも留意されたい。
ア 変更の場合
変更の内容(変更に係る部分についてのその変更前および変更後の事項)、変更を必要とする理由および変更後における計画全体の概要ならびに定款変更を必要とするときは変更後の定款(法第48条第3項、則第38条の3第1項)。
イ 新たな事業の採択の場合
土地改良区を設立するときと同様の計画の概要および定款変更を必要とするときは、変更後の定款(法第48条第3項、則第38条の3第2項)。
ウ 廃止の場合
廃止する旨および廃止の理由ならびに定款変更を必要とするときは変更後の定款(法第48条第3項)。
4 換地処分等
従来、換地計画は、土地改良事業の工事完了後において樹立する仕組みになつていたことの関連から、農用地の集団化のため十分な機能を発揮しえないうらみがあつたことにかんがみ、換地処分が農用地の集団化その他農業構造の改善に積極的な役割を果すものであるとの観点に立つて、換地計画および換地処分に関する規定の整備を行なつた。
(1) 換地計画の認可
土地改良区は、その行なう土地改良事業の性質上必要があるときは、その事業の施行に係る地域につき換地計画を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。
ア 換地計画を定める事業
換地計画を定める事業は、区画整理等、その性質上換地計画を定める必要のある事業である。法第49条の規定により応急工事計画を定めて行なう災害復旧事業は原型復旧を建前とし、関係権利者の同意を得ないで行ないうるものであるから、この事業については、その施行によつて換地計画を定めて換地処分を行なうことはできないこととした(法第52条第1項〉。
イ 換地計画を定める時期
換地計画は、従来、土地改良事業の工事の完了後において定めることとしていたが、換地処分が農用地の集団化その他農業構造の改善に積極的な役割を果すものであるとの観点から、換地計画は土地改良事業の計画樹立と並行して、あるいは工事完了前において定め、これに基づいた一時利用地の指定および換地処分を行なうものとした(法第52条第1項)。
これに伴い、従来、換地計画の認可の公告により換地処分の効果が発生することとしていたのを、工事完了後において認可に係る換地計画に基づいて換地処分を行ない、その処分のあつた旨の公告により効果が発生するものとした(改正前の法第52条第8項および法第54条第1項、改正後の法第54条および法第54条の2)。
ウ 換地計画の内容
換地計画は、耕作又は養畜の業務を営む者の農用地の集団化その他農業構造の改善に資するように定めなければならない(法第52条第3項)。なお、換地計画を定めるため必要あるときは、都道府県の専門技術吏員の援助請求ができることとなつた(法第52条第7項)。
工 権利者会議
権利者会議は、従来、換地計画に係る土地につき所有権、地上権、永小作権、質権、貸借権または使用貸借による権利を有する者で構成することとしていたが、その他の用益権を有する者もそれと区別する理由がないので、それらの者のほか、あらたに、その他の使用および収益を目的とする権利を有する者も権利者会議の構成員に加えることとした(法第52条第3項)。これに伴い、土地原簿の記載事項についても規定を整備した(則第24条第2項第2号。なお2の(4)を参照)ので、あわせてその取扱いに遺憾のないようにされたい。
(2) 換地計画の審査および公告等
換地計画の適否決定の基準を法定し、またその適否決定にあたつては、専門技術者からの農用地の集団化その他農業構造の改善の観点に立つての報告に基づかなければならないこととなつた(法第52条の2、則第43条の2)。
また、換地計画は工事完了前に定められることとも関連して、換地計画を適当とする旨の決定をしたときはその旨を公告し(法第54条の2第4項、則第43条の3)その換地計画の決定については、あらかじめ土地改良区の設立の場合とほぼ同様の、利害関係人の異議の申出の制度を設け、これにより関係権利者の権利の救済を図ることとした(法第52条の3)。これに伴い、換地計画に係る異議は行政不服審査法による不服申立てによらずすべてこの異議の申出の制度によることとした(法第52条の4)。
(3) 換地計画の定め方
従来、換地計画において、どのような事項をどのようにして定めるかについては、法令上明確には規定されていなかつたので、これを整備して、換地計画において定めるべき事項およびその定め方を法文上明らかにし(法第52条の5)、換地計画の樹立が適正に、かつ、円滑に行なわれるようにした。
換地設計は所定の原形図および換地図によるものとし(則第43条の4)、各筆換地明細、清算金明細等は、所定の様式(則別記様式第1号)によつてこれを定めなければならない(則第43条の5)。
換地計画を定めるにあたつて留意すべき事項は、次のとおりである。
ア 普通換地
従来、換地は従前の土地の地目、地積、土性、水利、傾斜、温度等を標準として従前の土地に照応するように定めるべきこととされていた(改正前の法第53条第2項)が具体的に照応するものの範囲が明確でなかつた。そこで、換地と従前の土地との照応の要件を明定し、用途、地積ならびに諸条件に基づいて評定した土地の等位を勘案して換地と従前の土地が照応していなければならないものとする(法第53条第1項第1号、則第43条の6)とともに、とくに地積については、換地の地積と換地交付基準地積(換地計画に係る地域全体の換地の総面積と従前の土地の総面積との割合によつて算定した換地交付の基準となる地積をいう。則別記様式第1号の備考4参照。)との増減の割合が2割未満でなければならないものとした(法第53条第1項第1号、則第43条の7および則附録)。
イ 特別換地
従前の土地に照応しない換地いわゆる特別換地は従来耕作者の農業経営の合理化のために特に必要がある場合においてあらかじめ規約にその旨の定めがあり、かつ、従前の土地の権利者の同意を得た場合に限つて認められていた(改正前の法第53条第3項)が、換地計画はすべて農用地の集団化その他農業構造の改善に資するよう定められることおよび普通換地の範囲が明確になったことにかんがみ、従前の土地の権利者の同意のみを要件として特別換地が認められることとなつた (法第53条第1項ただし書)。
ウ 不換地
従来、従前の所有者で、その総面積が2畝をこえないものから申出があつた場合に、その申出のあつた従前地に照応する換地を定めないことができることとされていた(改正前の法第53条の2第1項、改正前の令第48条の2)が、農用地の集団化その他農業構造の改善の見地から必要があり、かつ、土地の所有者および その他の権利者の了承のもとにその不利益に帰するおそれのない場合までもこれを制限する必要はないとの考えからこの所有面積制限を廃止するとともに、所有者からの申出を待つのみでなくその同意による場合も認められることとした(法第53条の2第1項、則第43条の8)。
この不換地における所有面積制限の廃止は、以上の趣旨によるものであるから、これによつて農用地の不当な集中を認め、または、不換地の対象となる権利者に不利益を与えることのないよう留意されたい。
工 土地改良施設の用に供する土地
土地改良施設の新設または変更により新たにその敷地が必要とされる場合には、従来はその敷地となる土地を買受ける等土地改良区において特定の者から譲り受けるほかなく、そのため特定の者の農用地を特に大幅に縮小させ、事業の円滑な施行の妨げともなることが少なくなかつた。そこで、これを施行地区内の土地から、例えば共同減歩等の方法によりその施設の敷地に必要な土地を生み出し、受益者のすべての負担において敷地相当分を確保しうる方法もとりうることとして事業の円滑な実施を図る必要から、新たにこのための規定を設け、従前の土地が存しないにもがかわらず、換地計画において、一定の土地を新たに土地改良施設の敷地に供する土地として定めることができることとし(法第53条の3)、その土地は換地処分の公告があつた日の翌日において土地改良区が取得することとなつた(法第54条の2第5項)。
オ 部分指定
換地処分は、通常、地役権には影響を及ぼすものではない(法第63条)ので、地役権については所有権と同様部分指定をする必要がない旨を明らかにする(法第53条第3項)とともに、担保物件につき部分指定を行なう場合には、交換分合の場合と同様に担保物権者を保護するうえから、従前の土地の価格以上のものを指定しなければならないことした(同条第4項、法第103条第2項および第3 項)。
力 担保物権の及ぶべき清算金の額
清算金を支払う場合においてその清算金に係る従前の土地について担保物件が存するときは、当該担保物権の及ぶべき清算金の額を換地計画において定めなければならない(法第53条第5項および法第53条の2第3項)。この場合において、土地改良区は清算金のうち当該担保物権の及ぶべき額として定められたものを供託しなければならない(法第123条)。
(4) 換地計画の変更
換地計画を土地改良事業の工事完了前にあらかじめ定めることとしたこととの関連から、工事完了後行なわれる換地処分までの間に換地計画の変更を行なうことが必要となる場合が考えられるので、従来、法律上規定のなかつた換地計画の変更についての規定を新設した。すなわち、換地計画の変更には都道府県知事の認可を要するものとし、その場合とくに軽微なものを除いては、その計画の変更に係る部分について換地計画の認可の場合と同様の手続きにより土地改良区がこれを作成して都道府県知事の認可を申請し、都道府県知事がこれを認可するには、審査、公告等の手続、異議の申出の手続を経なければならないこととした(法第53条の4、則第44条)。なお、この場合軽微な変更とは、従前の土地の分合筆もしくは従前の土地に存する権利の変更または地域の名称もしくは地番の変更等に伴う形式的な変更をいう(則第44条の2)。
(5) 一時利用地の指定
一時利用地の指定が農用地の集団化の阻害要因とならないようにとの配慮のもとに、一時利用地の指定は原則とし不換地計画が樹立された後において換地計画において定められた事項に基づいて行なうべきこととし、地域の実情により一時利用地の指定前に換地計画を定めることができない場合には、農用地の集団化に資すること等換地計画において定める事項の基準を考慮してしなければならないこととした(法第53条の5)。
(6) 使用及び収益の停止と仮清算金
一時利用地の指定があつたときは、従前の土地についての使用および収益ができないことは従来と同様である(法第53条の5第5項および第6項)が、さらに、あらかじめ換地計画において不換地として定められた土地について権利を有する者についてもその土地についての使用および収益を停止させることができることとなつた(法第53条の6)。これらの使用および収益の停止により他にその土地について使用および収益をする者が存しなくなったときは、その土地は換地処分の公告の日まで土地改良区が管理することとし(法第53条の7)、また、これらの処分に伴う損失の補償等の規定も整備した(法第53条の8第1項および第2項)。さらに、これらの使用および収益の停止があつた場合には仮清算金の徴収または支払ができることとなつた(同条第3項)が、これは仮に清算するものとはいえ、関係権利者の十分な理解なしに行なうことによつて不公平な徴収または支払いの生ずることがあつてはならないし、かつまた、担保物権者の利益の保全を図る必要もあるので、とくに、あらかじめ換地計画の定めがあり、かつ、施行地区内の従前の土地のすべてについて担保物権が存しない場合に限つて、この仮清算金の徴収または支払ができることとした〈令第48条の2)。なお、換地処分の公告により確定した清算金の額とこの仮清算金の額との間に差額があるときは、その確定後においてこれを徴収し、支払わなければならない(法第54条の3後段)。
(7) 換地処分
従来、換地計画の認可の公告により換地処分の効カが生ずることとなつていたが、換地計画は工事完了前にあらかじめ定めることとしたこととの関連であらたに換地処分の手続きを定め、土地改良区は土地改良事業の工事が完了したのち遅滞なく換地処分を行なわなければならないものとした(法第54条第2項)。
換地処分は権利者に対し、換地計画において定められた関係事項を通知して行なうものとし、土地改良区は換地処分を行なつたときは、その旨を都道府県知事に届け出、都道府県知事はその旨を公告し(法第54条)、換地処分の効果はその公告のあつた日の翌日から発生する(法第54条の2)。
(8) 道路等の用に供する国有地等の帰属
施行地区内に現存する国有または地方公共団体有の道路、かんがい排水路、ため池等にかえて、新たなほ場条件に即応したこれらの施設を造成する必要がある場合、従来法第50条の国有地の譲与、または国有地への編入の規定がこのための手段として考えられてきたが、換地処分を伴う事業は、それを通じて施行地区内の全部の土地について権利関係の改編をはかるものであるから、そのうちの特定の土地のみを対象として国有地の譲与または国有地への編入の手続きにより処理することは困難である。
そこで、これらの施設の用に供する土地についてもこれを換地計画の一環としてその権利を確定させることとして、これらの土地の帰属およびそれらの土地に存する権利を換地処分を通じて確定させることとし(法第54条の2第6項および第7項、則第45条の2)、これに伴ない国有地の譲与または国有地への編入が行なわれるのはその性質上換地計画を定める必要のない土地改良事業の施行の場合に限られることとした(法第50条、則第41条の2)。
(9) 経過措置
換地計画の作成および決定、換地処分の効果および清算金、一時利用地の指定等について以上のような改正が行なわれたのであるが、改正法の施行前に改正前の法第51条第1項の規定による換地計画に係る土地改良事業の施行に係る地域の全部又は一部について一時利用地の指定があつたときは、爾後の法手続きおよび法律効果の混乱を防止し、その安定をはかるためその指定、その指定の効果、損失の補償および受益者からの金銭の徴収、さらに当該土地改良事業の施行に係る地域についての換地計画の作成および決定、換地処分の効果および清算金ならびに土地および建物の登録については、この改正法が施行された後においても、なお、従前の例によるものとされている(改正法附則第12項)。また、同様に、一時利用地の指定はなくても、改正法の施行前において改正前の法第52条第1項の規定により換地計画の認可の申請があったときは、その申請に係る換地計画の作成および決定、換地処分の効果および清算金ならびに土地および建物の登録についても、なお従前の例によるものとされている(改正法附則第13項)。
5 管理規程
土地改良区は、ダムその他のえん堤の管理事業を行なう場合には、その事業の実施の細目について総会の議決を経て管理規程を定め、都道府県知事の認可を受けなければならないこととなつた。また、その管理規程を変更し、または廃止しようとする場合も同様である(法第57条の2、法第30条第1項第2号、則第47条~第48条の3)。これは当該管理事業に係る土地改良事業計画に定めるものを除いて、配水に関する事項、機械、器具等の点検整備に関する事項、緊急措置に関する事項、気象および水象の観測に関する事項等当該管理事業の実施の細目を定めることによって農業水利の合理化と土地改良施設管理の適正化を図る趣旨のものである。改正法施行の際現に土地改良区がこれらの施設を管理している場合には、改正法施行の日から6箇月以内すなわち昭和40年5月31日までに、それらの施設につき管理規程を定めて、都道府県知事の認可を申請しなければならない(改正法附則第14項)。
なお、農業協同組合、市町村等その他の事業主体においても同様である(法第96条、則第76条、法第96条の4、則第76条の18)。国または都道府県がこれらの施設の管理事業を行なう場合にもこれと同様の趣旨により、管理のための規定を(都道府県の場合には、市町村と同様条例をもって)定めるものとする。
6 権利関係の調整
権利関係の調整に関する規定についての改正点は、次のとおりである(第58条~第65条)。
(1) 従来土地改良事業の施行に係る土地についての利害関係の範囲を地上権、賃借権、使用貸借による権利等定型的な権利に限定していたが、その他の用益権もこの関係において区別すべき理由はないことから「その他の使用および収益を目的とする権利」もこれに加えることにした。
(2) 権利開係の調整を図るため、当事者が地代等の増減の請求、契約の解除をすることができる期間について、従来は換地計画の認可の公告があつた日から30日以内としていたが、この期間を1年間とするとともに、換地処分を伴なわない土地改良事業の施行の場合におけるこれらの請求権の除斥期間も明らかにし、換地処分に係るものにあつては法第54条第4項の換地処分があつた旨の公告があつた日から1年以内、その他のものにあつては法第113条の2第2項の工事の完了についての公告があつた日から1年以内とした(法第64条)。
なお、改正法施行前に改正前の法第52条第8項。規定による公告のあった換地計画に係る土地改良事業については、なお従前の例によることとされていることに留意されたい(改正法附則第5項)。
7 土地改良区の合併
土地改良区の合併については、従来、吸収合併にあつて合併後存続する土地改良区の定款変更の手続、新設合併にあつては合併により設立される土地改良区の設立の手続をとることとされていたが、合併について都道府県知事の認可にかからしめている理由は合併の具体的内容の当否を判断することにあるものであるから、土地改良区の合併は、吸収合併、新設合併の如何を間わず、合併そのものについて都道府県知事の認可を要することとした(法第72条、法第73条および法第75条、則第50条)。
土地改良区の合併について留意すぺき事項は、次のとおりである。
(1) 合併ができるのは、各土地改良区の土地改良事業の施行に係る地域の重複その他各土地改良事業相互間に相当の関連性がある場合に限られる(法第72条第5項)。
(2) 合併の認可の申請は、新設合併にあつては法第73条第1項。設立委員が、吸収合併にあつては合併後存続する土地改良区の理事がしなければならない(則第50条第1項)。
(3) 吸収合併にあつては、合併契約の内容に従い合併後存続する土地改良区の定款変更の議決を行ない、合併の認可によつて合併の効カが生ずることに伴つて、合併後存続する上地改良区の定款が変更され、合併により消滅する土地改良区の行なう土地改良事業は合併後存続する土地改良区の行なうべき土地改良事業となる。
(4) 新設合併にあつては、法第73条第1項の設立委員が合併契約の内容に従い定款を作成し、役員を選任し、合併の認可申請を行ない、合併の認可によつて新たな土地改良区が設立され、合併により消滅する土地改良区の行なう土地改良事業は新たに設立された土地改良区の行なうべき土地改良事業となる。
(5) 合併により消滅する土地改良区の行なう土地改良事業は、合併後存続する土地改良区または合併によつて成立した土地改良区の行なうべき土地改良事業となり、その限りにおいて、吸収合併にあつては法第48条の、新設合併にあつては法第7条から法第16条までの規定の手続は必要としない。したがつて、合併の認可申請にあたつては、吸収合併にあつては、合併後存続する土地改良区が従来行なつている土地改良事業計画書と合併により消滅する土地改良区が従来行なつている土地改良事業計画書を、新設合併にあつては合併により消滅する土地改良区が従来行なつている土地改良事業計画書を添付すればよい。ただし、合併を契機として、従来の土地改良事業の計画を変更し、もしくは土地改良事業を廃止し、または新たな土地改良事業を施行する場合には、あらためて法第48条の手続が必要である。
(6) 土地改良区の合併については、土地改良区の設立の適否決定の基準が準用される
(法第72条第5項)。
(7) 改正法施行前に合併の認可の申請のあつた土地改良区の合併については、改正法施行後においても、なお従前による(改正法附則第17項)。
第6 国または都道府県の行なう土地改良事業
1 申請による土地改良事業
(1) 申請の要件
国営または都道府県営土地改良事業として申請すべき事業の範囲が次のように拡充整備された(令第49条、令第50条)。
ア 国営土地改良事業の申請の要件
(ア) かんがい排水事業にあつては、従来、現にかんがい排水施設の利益を受けていない土地について行なうものと、現にかんがい排水施設の利益を受けている土地について行なうものとに分けて、それぞれについてその申請の要件を定めていたが、これを整理統合して、受益面積3,000町歩以上であれば受益他の現在における受益の有無を問わずにすべてこれを申請できることとし、とくに現に利益を受けていない土地について行なうものおよび開田を目的とするものについては従来どおりの特例を認めることとした。
(イ) 新たにかんがい排水事業とあわせて行なう防災ダムの新設または変更で受益地500町歩以上のものは申請できることとした。
(ウ) かんがい排水事業についての(ア)の整理統合に即して総合土地改良事業のかんがい排水事業の要件も同様の整理を行なった。
イ 都道府県営土地改良事業の申請の要件
(ア) かんがい排水事業については、国営土地改良事業の場合と同様の整理統合を行なった。
(イ) 受益地40町歩以上の老朽のため池の補強事業の申請を認めた。
(ウ) 従来の開田および開畑に草地造成を加えて農用地造成事業とした。
(エ) かんがい排水事業の整理統合に即して総合土地改良事業のかんがい排水事業の要件の整理統合を行なった。
(オ) 受益地20町歩以上の農用地の災害を防止するための湖岸堤の新設、変更等の事業、受益地200町歩以上の区画整理事業、受益地20町歩以上の鉱毒防除事業およびかんがい排水事業とあわせて行なう客土で受益地100町歩以上の事業が新たに申請することができることとなつた。
(カ) 階段工等の農地保全事業および農用地の災害復旧は、受益地20町歩以上であれば申請できることとなった。
(2) 申請の手続
ア 計画の概要
計画の概要において定めるべき事項は、土地改良区を設立しようとする際に公告すべき計画の概要において定めるべき事項と同様である。とくに国または都道府県も換地処分を行なうことができることとなつたので、換地処分を必要とする事業を申請しようとするときは、計画の概要において換地計画の要領を定めておかなければならないことに留意されたい(法第85条第2項、則第54条)。
イ 2以上の土地改良事業の申請
2以上の土地改良事業の施行を申請する場合の手続が整備されたが、その場合の計画の概要、全体構成、同意のとり方いずれも土地改良区の設立の場合と同様である(法第85条第2項、則第56条、則第54条の2、則第56条。なお第5の1の(1)を参照)。
ウ 予定管理方法等
国営または都道府県営土地改良事業によりダムその他のえん堤または揚水施設が生ずるときには、その事業の申請者は、計画の概要のほかに将来のその施設の管理者およびその管理方法に関する基本的事項を定めた予定管理方法等をあわせて公告しなければならない(法第85条第2項、則第53条の4)。これは、その事業によつて生ずる土地改良施設の将来の管理者およびその管理方法に関する基本的事項について事業参加資格者の同意を得て、これを定めておくことにより、施設の完成後におけるその管理の委託を円滑ならしめるとともに爾後におけるその管理 の適正を期そうとするところをその本旨とする。したがつて、国または都道府県がその施設について管理の委託をしようとするときは、この予定管理方法等に従つて行なわなければならない(法第94条の6第2項、法第94条の10)。
なお、予定管理方法等を定めるにあたつて、申請者は、当該予定管理方法等において当該土畑改良施設の管理者として定めようとする者と十分協議しなければならないことはいうまでもない。
工 農用地造成事業の施行の申請
農用地造成事業の施行を申請する場合には、農用地外資格者の全員の同意を要するが、これの取扱いについては、農用地造成事業の施行を目的とする土地改良区の設立の場合と同様である(法第85条第3項および第4項、則第65条、則第57 条。なお、第5の1の(2)を参照)。
オ 申請に伴う土地改良区の設立
従来、国営または都道府県営土地改良事業の施行の申請に際しては、その施行地域内に土地改良区または土地改良区連合を設立すべき旨を表示しなければならないことが法律上の要件として規定されていた(改正前の法第85条第3項)が、必ずしも土地改良区等の設立は要しないこともあるので、この規定を削除して、イで述べた予定管理方法等の設定および3において述べる協議制度をもつてこれに代えることにした。
2 申請によらない土地改良事業
(1) 事業の範囲
国または都道府県が農民からの申請によらないでみずから計画を定めて行ないうる事業は、国有地における開田または開畑と埋立てまたは干拓のほか、従来は、これらの事業に附帯して行なうかんがい排水施設、農業用道路等の新設、変更等の事業または開田もしくは開畑および発電、水道車業等の公共事業とあわせて行なうかんがい排水施設、農業用道路等の新設、変更等の事業または開田、もしくは開畑の事業に限られていた(改正前の法第87条の2第1項および第2項、改正前の令第50条の2)。しかし、国または都道府県における農業基盤整備事業の積極的な推進を図るうえから、この範囲を拡充し、かんがい排水施設、業用道路等の新設、変更等の事業と土地改良施設の災害復旧の事業については、農用地造成事業または埋立てもしくは干拓に附帯して行なうもののほか、受益の範囲が広く、その工事に高度の技術を必要とする等その事業の性質または規模に照らして国または都道府県が行なうことが適当と認められるものについてはその事業を単独で行ないうること、また公共事業に附帯するものについても、その公共事業の範囲および工事の内容についての制限を排して国土資源の総合的な開発または保全の見地から適当と認められるものは、国または都道府県の発意によつて事業の施行ができることとなつた(法第87条の2第1項第3号)。
なお、農用地造成事業については、従来の国有地における開田または開畑を草地造成を含めた農用地造成事業に拡大する一方、民有地について行なうものにあつてはその種の事業の施行手続の改正との関連で、すべて申請に基づいてのみ行ないうることとした。これに伴い改正法施行前に改正前の法第87条の2第2項の規定による公告に係る開田または開畑は改正後においては改正後の法第87条の2第1項第3号の事業とみなすこととした(改正法附則第17項なお改正令附則第4項参照)。
(2) 事業の施行手続
ア 事業参加資格者が存しない事業すなわち法第87条の2第1項第1号および第2号の事業にあつても、国または都道府県は、土地改良事業計画を定めるにあたつて、あわせて予定管理方法等を定めなければならないことになつているが、それを定むべきときおよびその内容は申請により行なう事業の場合において申請者が定むべき予定管理方法等と同様である(法第87条の2第2項、則第60条)。
イ 事業参加資格者が存し、その同意を要する事業すなわち法第87条の2第1項第3号の事業の場合において国または都道府県のとるべき措置(計画の概要、2以上の事業の施行、全体構成、予定管理方法等、同意のとり方)は、申請による場合の申請者のとるぺき措置と全く同様である(法第87条の2第3項、則第61条~第 61条の5)。
3 適否の決定および事業計画の決定
農林大臣または都道府県知事が申請のあつた事業についてその適否を決定しようとするときは、地元の意向を充分に反映させるため関係都道府県知事または関係市町村長および土地改良施設の管理予定者と協議しなければならないこととした(法第86条第2項)。この場合都道府県知事は、国営土地改良事業について農林大臣と協議する場合は、あらかじめ関係市町村長と協議しなければならないこととした(法第86条第3項)から、その協議の内容および結果を示したうえで農林大臣と協議するものとされたい。
この協議は、申請によらないで行なう土地改良事業の計画を定める場合にもこれと同様この手続をとらなければならない(法第87条の2第4項)。
申請により行なう事業、申請によらないで行なう事業ともその事業の計画は、土地改良事業の施行に関する基本的要件に適合するものでなければならないことはいうまでもない(法第87条第3項、法第87条の26第4項)。
4 計画の変更
国営または都道府県営土地改良事業の計画の変更の規定の整備を行なつたが、その場合における変更後の土地改良事業の計画の概要、変更後における2以上の土地改良事業の施行の場合の取扱い、農用地造成事業の計画の変更等は、ほぼ土地改良区の行なう土地改良事業の計画の変更の手続に準ずる(法第87条の3、則第61条の7~第61条の12)。
5 特定土地改良工事
あらたにかんがい排水事業とあわせて行なわれる農用地の保全のために必要な事業のうち防災ダムの新設または変更の事業を特定土地改良工事特別会計で行なうことができることとした(法第88条の2、令第50条の3)。
6 国または都道府県の行なう換地処分等
区画整理事業、農用地造成事業等の施行にあたつては、それが経営規模の拡大、ほ場条件の整備等農業構造の改善に資するものとの観点から、従前の土地に存する権利を、換地処分を通じて改編し、その事業の施行の結果形成されたほ場の利用関係の調整を図ることが必要である。ところが、従来、国または都道府県において換地処分を行なうことは認められていなかつたので、今後、国または都道府県がこの種の事業を積極的に推進できるようその行なう換地処分についての規定を新設した。
国または都道府県の行なう換地処分等については、土地改良区の行なう換地処分等の規定がほぼ準用される(法第89条の2、令第51条の2、則第68条の2~第68条の4の3)。
なお、国営土地改良事業に係る換地処分については、施行地域のすべてが1の都道府県の区域内にあるものについての農林大臣の権限をその都道府県知事に委任することした。(法第89条の2第10項、令第51条3)。
7 国営土地改良事業の負担金
(1) 都道府県の負担額
ア 都道府県に負担させる負担金を定める場合において、その事業の受益者のうちに法第3条に規定する資格を有する者のほかに農林大臣の指定する者があるときは、従来、事業費のうちその者の受ける利益に相当するものとして農林大臣が定めた額についてはその全額を都道府県に負担させることとしていた(改正前の令第52条第1項および第2項)が今回、農用地外受益者(法第90条第2項の省令で定める者をいう。)の範囲を明定しその事業により著しく利益を受ける者から負担金を徴収することとしたこととの関連で、一般的には、これらの者の受ける利益相当額と第3条に規定する資格を有する者の受ける利益相当額との間に従来のような取扱いの差異を設ける理由が失われたので、農用地外受益者のうち農林大臣がとくに必要があると認めて指定した特定農用地外受益者の利益相当額に限つて従来どおりその全額を都道府県に負担させることとし、その他の農用地外受益者の利益相当当額については、法第3条に規定する資格を有する者の利益相当額と同様の割合で都道府県の負担額を定めることとした(令第52条第1項および第2項)。
イ 新たに国営土地改良事業として施行することができることとされた防災ダムの新設または変更の事業について都道府県が負担する額は、一般会計事業、特別会計事業ともその事業費の35%に相当する額(特別会計事業にあつては、これに建設利息を加えた額)である(令第52条第1項第2号の3、同第2項第3号)。
ウ その他法および令の改正に伴い各事業についての負担額の規定を整理したが負担額は従未どおりである(令第2条、改正令附則第4項)。
(2) 都道府県の支払方法
ア 都道府県は、国営土地改良事業の負担金について、直接に受益者から、また受益者に代えて土地改良区から徴収する従来の方式のほか市町村から徴収するという方法もとりうることとなつたので、この市町村から徴収する方法をとつたときにおけるその徴収する額に相当する額の負担金を国に支払う場合の支払の方法を規定し、その支払の方法は、法第3条に規定する資格を有する者、またはこれに代えて土地改良区から徴収する場合におけるその徴収する額に相当する額の負担金の支払方法と同様の方法によることとした(令第52条の2)。
イ 都道府県が農用地外受益者から徴収する場合におけるその徴収する額に相当する額の負担金のうち、特定農用地外受益者からの徴収額相当分についての支払の方法はそのつど農林大臣が定めるものとし、その他の農用地外受益者からの徴収額相当分についての支払い方法は法第3条に規定する資格を有する者から徴収する場合におけるその徴収する額に相当する額の負担金の支払方法と同様の方法とした(令第52条の2、昭和39年12月22日農林省告示第1528号)。
(3) 農用地外受益者
都道府県は、法第3条に規定する資格を有する者のほかその国営土地改良事業の施行により著しく利益を受ける者からもその者の受ける利益を限度として負担金を徴収することができる。この場合、その事業の施行に係る地域内の土地以外の土地が著しく利益を受けるときは、その土地を利用し、および収益している者から徴収する(法第90条第2項、則第68条の4の4)。
(4) 市町村からの負担金の徴収
都道府県は、従来の方式に加えて、関係市町村のすぺてがその議会の議決を経て同意したときは、国営土地改良事業の負担金につきその関係市町村に負担させることができることとなつた(法第90条第5項、令第53条の3)。この場合市町村は、都道府県から直接受益者から徴収する場合における徴収の方法に準ずる方法で、都道府県に負担金を支払う(令第53条の4、令第53条の5)。
国営土地改良事業に係る負担金を負担した市町村は、次により、法第3条に規定する資格を有する者および農用地外受益者または千拓地の配分を受けた者から負担金を徴収する(法第90条第6項および第7項)。
ア その事業が排水施設、農業用道路および防災ダムに係るもの(事業の種類、名称を問わず、これらの施設の新設、変更を内容とするものはすべて含まれる)であるときは、それによつて利益を受ける土地で施行地域内にあるものとその他のものとの地積の割合、それらの施設の利用状況を勘案して非農用地効果相当分は控除して法第3条に規定する資格を有する者の負担額を定めなければならない(令第53条の6第1項)。
法第3条に規定する資格を有する者の負担額を定めるにあたつて控除された非農用地効果相当額については、市町村は、その非農用地の受ける利益の態様に応じ、法第90条第6項の省令で定める者から徴収し、またはみずからが負担することになるが、これは、その受益が特定の者にのみ発生するか、一般公共的利益に準ずる形で不特定多数の者に発生するのかを基準として、当該市町村が判断すべきである。
イ 干拓事業の負担金は干拓地の配分を受けた者に全額負担させることを常例とする
(令第53条の7第1項)。
ウ 市町村が受益者から負担金を徴収する場合の方法は、都道府県が直接にこれらの者から徴収する場合の方法に準ずる(令第53条の6第2項、令第53条の7第2 項)。
なお、市町村は、法第3条に規定する資格を有する者に代えて、土地改良区から徴収することはできないことに注意されたい。
(5) 経過措置
国営土地改良事業の負担金については、以上のような改正措置が講じられたが、改正法施行前において、国が都道府県にその負担金の全部または一部を負担させた場合には、その事業の負担金の負担および徴収は、改正法施行後においても、なお従前の例による(改正法附則第18項)。
8 特別徴収金
国営の埋立てまたは干拓の事業によつて造成された埋立地または干拓地がその本来の目的に供されることなく、他の用途に転用された場合、埋立地または干拓地の配分を受けた者が不当に利益を得ることを避けるため、干拓地または埋立地の配分を受けた者がその土地の取得後8年以内にその土地の転用等をしたときは、本来の負担金のほかにその土地の造成に要した費用の一部を徴収することとした(法第90条の2)。
(1) 特別徴収金を徴収する場合は、埋立地等の取得者およびその一般承継人が法第94条の8第4項の規定による土地の取得があつた日から起算して8年以内に配分通知書に記載された用途以外の用途に供した場合および配分通知書に記載された用途以外の用途に供するためその土地の所有権を移転し、またはその土地について地上権、賃借権その他の使用および収益を目的とする権利を設定した場合である。ただし、これらの場合であつても次の場合には、特別徴収金は徴収しない。
ア 一時的に目的外用途に供した場合または一時的に目的外用途に供するためその土地について地上権、賃借権その他の使用および収益を目的とする権利を設定した場合これらの場合は、近い将来において、再び本来の用途に供されることが確実であるからである。したがつて、一時的に目的外用途に供するためであつても 所有権を移転したときは特別徴収金を徴収する。
イ 入植者の生活上もしくは営農上欠くことのできない業務に従事する者、農業協同組合、農事組合法人、土地改良区、市町村その他の地方公共団体または国に対し、所有権を移転し、またはこれらの者に地上権、賃借権その他の使用および収益を目的とする権利を設定する場合であつて、農林大臣が特別徴収金を徴収しないことを相当と認めた場合(令第53条の8)。
これは、埋立地等を目的外用途に供した場合、常に不当な利益を生ずるものとして、一律に特別徴収金を徴収することは必ずしも適当ではなく、入植者の生活上または営農上必要な施設等のために土地を提供する場合等において、客観的にみて不当な利益を生じない場合があることを考慮したものである。したがつて、 特別徴収金を徴収しないことを相当とするか否かの判断は、当面この趣旨によつて、個別具体的に行なうこととするが、先の例のような場合には、徴収しないことが相当と認められることが多いであろう。
この規定は、この法律の施行後法第94条の8第3項の規定により交付される配分通知書に記載する埋立予定地につき造成される埋立地または干拓地について適用される(改正法附則第19項)。
(2) 特別徴収金は埋立地等を転用した埋立地等の取得者または埋立地等の取得者の一般承継人から徴収する(法第90条の2第1項)。
(3) 特別徴収金の額は、その土地の造成に要した費用の額と農林大臣がその土地の時価と認定した額とのいずれか低い額からその土地について埋立地等取得者の負担する本来の負担金の額を控除して得た額とする(令第53条の9)。
(4) その他異議申立て、督促、滞納処分、国税通則法の規定の準用等特別徴収金の徴収に関し規定した(法第90条の2第3項~第8項)。
9 都道府県営土地改良事業の分担金等
(1) 農用地外受益者
都道府県営土地改良事業についても、法第3条に規定する資格を有する者のほか、その事業の施行により著しく利益を受ける者からも分担金を徴収することのできることとした。この農用地外受益者の範囲は、国営土地改良事業についての農用地外受益者と同様である(法第91条第1項、則第68条の4の6)。
(2) 市町村からの負担金の徴収
都道府県営土地改良事業についても、国営土地改良事業の場合と同様の手続で関係市町村からの同意があつたときは、都道府県はその関係市町村から負担金を徴収することができる(法第91条第2項、令第54条第2項)。この場合、その関係市町村は、負担した負担金の全部または一部を、法第3条に規定する資格を有する者および農用地外受者から、都道府県に対する負担金の支払方法に準拠して市町村が定める支払の方法によつて徴収する(法第91条第3項、令第54条第3項、則第68条の4の6)。
(3) 経過措置
改正法施行前において、分担金として徴収する処分をした場合には、その事業の分担金の徴収については、改正法施行後においても、なお従前の例による(改正法附則第20項)。
10 土地改良財産の譲与
従来、土地改良財産の譲与は、路線認定の得られない道路の条件付譲与、補償施設の譲与、および寄附または管理費用の負担に係る用排水機の譲与が認められていたが、このうち条件付譲与と寄附または管理費用の負担に係る施設の譲与について、譲与しうる施設の範囲を広げた。
(1) 用途を廃止したときは国に無償で返還することを条件として譲与できる施設は、水路、揚水施設、道路、堤、これらの附帯施設および防風林とする(法第94条の3第1項、令第55条の2)。
(2) 寄附または管理費用の負担に係る施設の譲与は、従来の用排水機のみの限定を廃止し、土地改良施設全般をその対象とする(法第94条の4)。
11 その他
国営土地改良事業または都道府県営土地改良事業の施行に伴う事業参加者と関係権利者との間の権利関係の調整について土地改良区の場合と同様とする(法第92条)ほか、都道府県営土地改良事業によつて生じた土地改良施設の管理委託の場合の準則を明らかにした(法第94条の10)。
第7 農業協同組合等が行なう土地改良事業
農業協同組合もしくは農業協同組合連合会の行なう土地改良事業または数人が共同して行なう土地改良事業についての規定を整備したが、その改正の要点は次のとおりである。
1 土地改良事業の開始
(1) 同意をとるべき権利者の範囲を明確にした(法第95条第2項)。
(2) 2以上の土地改良事業を施行する場合の手続を整備したが、この場合における計画の概要、全体構成等は、土地改良区の設立の場合と同様である(法第95条、則第73条の2)。
(3) 事業の施行に関する基本的要件および事業遂行のための基礎的要件(法第8条第4項、令第2条および令第3条)は、この事業の施行のためにも充たされなければならないことはいうまでもない(法第95条第3項)。
2 土地改良事業計画の変更
土地改良事業計画の変更の手続も事業開始手続の場合と同様の整備を行ない、2以上の事業の施行の場合の計画の変更の手続、同意をとるべき権利者の範囲等を明確にした(法第95条の2、則第75条の2~第75条の5)。
3 土地改良区の規定の準用
事業の施行に伴う国有地の譲与または国有地への編入、換地処分等、管理規程および権利関係の調整については、土地改良区に関するそれらの規定が準用される(法第96条、令第73条の2、則第76条)。
第8 市町村の行なう土地改良事業
1 事業の開始
市町村の行なう土地改良事業についての開始の手続については、2以上の事業の施行の場合の手続、農用地造成事業の施行の手続を整備したが、これらは土地改良区の設立手続と同様である(法第96条の2、則第76条の2~第76条の8)。
2 事業計画の変更
従来、この事業の計画を変更しようとするときは、土地改良区の事業の計画の変更の規定を準用することとしていたが、土地改良区とは組織を異にするものであるので、とくにこの際その規定を明確にした(法第96条の3)。なお、この場合の手続は土地改良区が行なう場合とほぼ同様である(則第76条の9~第76条の17〉。
3 土地改良区等に関する規定の準用
(1) 事業の施行に伴う国有地の譲与または国有地への編入、換地処分、管理規程および権利関係の調整については、土地改良区に関するこれらの規定が準用される(法第96条の4、令第72条の2、則第76条の18)。
(2) 負担金の徴収については、従来どおり土地改良区の規定を準用しているが、とくにこの場合市町村も国または都道府県の場合と同様に法第3条に規定する資格を有するのみならず農用地外受益者からも負担金を徴収することができることとなつた(法第96条の4後段、則第76条の19)。なお、改正法施行前において賦課徴収の処分をした事業に係る賦課金等の賦課徴収については、改正法施行後においても、なお従前の例による(改正法附則第21項)。
(3)最近における農村地帯の都市化の傾向から生ずる排水受益地の変化等の状況からみて、土地改良区等の管理する施設を市町村に移管させ、これらの施設のもつ公共的性格をより一層発揮させる必要が認められるので、農用地外受益者からの負担金徴収の途をひらいたことと関連して、あらたに、土地改良区等からの申出に基づいてこれらの施設を市町村が管理することができることとした(法第96条の4における法第93条の準用、則第76条の18における則第68条の4の8準用)。
第9 交換分合
1 農用地の交換分合
従来は、農地と農地以外の土地との交換分合は認められなかつたのであるが、草地の集団化を図り、飼料生産基盤の整備を促進し、畜産部門の生産性の向上に資するものとしての観点から農用地間の交換分合を行ないうることとした(法第2条第2項第6号、法第97条~第110条)。
これにより、従来の農地と農地との交換分合のほか、農地と草地、草地と草地との交換分合も可能となつた(第2の(2)のオ参照)
なお、草地を交換分合の対象とする場合における土地の等位の評定にあたつては農地、草地等の特性を十分に考慮するとともに、交換分合の対象となる農用地の対応関係をみるにあたつてはその用途、地積および等位の総合勘案に遺憾なきを期せられたい(法第102条、則第87条)。
2 その他の使用および収益を目的とする権利
交換分合を行なう場合においても、法第107条の場合を除き、定型的な権利とあわせ、その他の使用および収益を目的とする権利もこれと同様に取り扱うこととした(法第97条、法第101条、法第104条、法第106条等〉。
法第107条については、「その他の使用及び収益を目的とする権利」を同条の規定による所有権以外の権利についての交換分合の対象とするには、その権利の内容が個々に異なつており適当でなく、同条の権利には含めないこととしたので、これらの権利について同条の規定による交換分合を行なうことはできない点に留意されたい。
3 市町村の行なう交換分合
土地改良事業を施行した場合、その事業との関連で交換分合を行なうことがその土地改良事業自体の効率的な実施を確保しうる場合も少なくない。そこで、土地改良事業と交換分合とを同一主体において実施しうる途をひらき、市町村が土地改良事業を施行する場合において、必要と認められるときは、あらたに市町村も交換分合を行なうことができることとした(法第100条の2)。この市町村が交換分合計画を定める場合の手続は、土地改良区が交換分合計画を定めるときの手続とほぼ同様である(法第100条の2第2項、則第85条の2、則第85条の3)。
第10 その他
以上のほか、今回の法改正に伴い留意すべき事項をあげれば、次のとおりである。
1 工事完了等の場合の届出
国または都道両県以外の者が、土地改良事業を施行する場合、その工事に着手し、もしくはその管理に着手し、またはその工事が完了したときは、これを都道府県知事に届け出ることとし、工事の完了に係る届け出があった場合には、都道府県知事は、これを公告しなければならないこととされた。また国営または都道府県営土地改良事業についても、それが工事を伴うものであるときはその工事が完了したときはその旨を公告しなければならないこととされた(法第113条の2、則第90条の2)。
この場合における工事の着手または完了は、事業の開始または完了とは異なり、事業計画において定められた主要工事計画または附帯工事計画について現実にこれを実施に移し、またはそれを完了したことであり、また管理の着手は、その管理する施設が事業主体の支配下におかれ、それに伴う効果が事業主体に帰属される状態におかれることである
2 登記所への届出
換地処分を必要とする事業の施行については、その事業の工事に着手し、またはその工事を完了したときは、その旨を管轄登記所に通知しなければならないが、これは国または都道府県も換地処分を行なうことができることとされたことの関連で、改正前の法第46条において規定していたものを改正後の法第113条の3において規定することとされたものである。したがってその内容は従来とほぼ同様である(則第90条の3、則第90条の4)。また埋立てまたは干拓の事業の場合にあつては、換地処分を必要としないものでも、それが新たに地番設定をし、登記する必要のあるものであるときは、必ずこの手続に準じて管轄登記所に通知されたい。
なお、一筆の土地の分割手続もこれと同様の趣旨から改正前の法第46条の規定にかえて改正後の法第114条第2項において規定することとした。
3 損失補償の協議および収用委員会の裁決の申謂
土地改良事業に関する損失補償のうちそれぞれ公権力の行使にもとづいて生ずるものであるものについての協議の規定が新設され、この協議が成立しない場合には収用委員会に裁決を申請することができることとされた(法第121条、令第74条、則第103条の、則別記様式第2号)。
なお、法第122条の規定による補償は、事業の施行により通常行なわれなければならない補償を一般的に規定したもので公権力の行使によつて生ずる損失の補償とは異なるので、これについては収用委員会への裁決の申請はできないことに留意されたい。
4 一時利用地の指定等の場合の工事の施行
区画整理等の工事を行なう場合において、すでに一時利用地の指定が行なわれ、従前の土地についてこの使用および収益が停止されているときは、その従前の土地の所有者または占有者の権利侵害となるおそれはないので、土地区画整理法(昭和29年法律第119号)第80条の規定と同趣旨の規定を新設し従前の土地の所有者および占有者の同意を得ることなく工事を行なうことができることを明らかにした(法第123条の2)。