土地改良法の一部を改正する法律の運用について
48構改B第193号
昭和48年2月8日
地方農政局長あて
北海道開発局長あて
沖縄事務局長あて
都道府県知事あて
構造改善局長
土地改良法の一部を改正する法律(昭和47年法律第37号)の施行については、すでに「土地改良法の一部を改正する法律の施行について(昭和48年2月8日付け48構改B第192号農林事務次官通達)」(以下「施行通達」という。)によることとしているが、その細部運用について「土地改良法の一部を改正する法律の運用について」を別紙のとおり定めたので通達する。
(別紙)
土地改良法の一部を改正する法律の運用について
第1 換地制度の改善
1 非農用地区域の設定
(1) 施行通達第2の1の(3)により非農用地区域を設定して新規非農用地需要に充てようとする場合には、その非農用地の取得予定者がほぼ定まつており、かつ、その取得予定者においてその非農用地を取得するための予算上の措置がすでに講ぜられているか、または講ずることが見込まれることを要するものとする。とくにその非農用地の取得予定者を土地改良区としている場合には、土地改良区の健全な事業運営を確保する見地から、その資金手当および最終需要者の意向等につき慎重な配慮が必要であることに留意されたい。
(2) 施行通達第2の1の(3)のウにより関連制度との調整を行なう場合の具体的手続については、別途定めることとしているので了知されたい。
2 換地基準等
(1) 施行通達第2の1の(4)のアについて、従前地が特定用途用地以外の非農用地を非農用地区域内に換地を定める場合には、法第53条第1項ただし書の同意を要することとなる点に留意されたい。
(2) 異種目換地の方式により、新たな非農用地を捻出して一定の用途に供しようとする場合において、その換地の取得者以外の者がその土地を一定の用途に供しようとするときには、換地処分後に予定した権利の設定または移転が円滑に進まないおそれがあるので、換地処分前に契約等によりその実効性を担保しておく必要がある。
(3) 特定用途用地についての換地の運用に当たつては、これらの土地の用途および土地改良事業の施行地域内に含めることにつき同意を徴収している等の点を考慮して、その換地の地積、位置等につき特別の配慮をすることとされたい。
(4) 別途の事業により集落移転を行なう場合等特別の事情があるときに、換地処分により非農用地の位置の移転等を行なう場合は、あらかじめその旨を土地改良事業計画の概要に明示して同意を得ることはもちろん、関係権利者の納得のもとに行なうものとする。また、建築物の移転については、とくに慎重に取り扱われたい。
3 創設換地制度の拡大
施行通達第2の1の(5)の不換地みあいの創設換地の取得者としての営利を目的としない法人には、民法第34条の規定により設立された法人が含まれることになるが、その場合は、その社員である地方公共団体の有する表決権の数が当該法人の表決権の過半を占めるもの、または地方公共団体の拠出した寄付財産の額が当該法人の寄付財産の総額の過半を占めるもの(これらの法人が民法第34条の規定により設立した法人であつて、当該法人の表決権の総数または寄付財産の総額の過半をこれらの法人が占めるものを含む。)ことを要するものとして指導されたい。
4 その他
(1) 施行通達第2の4の(1)の不換地処分地の事前指定についての仮清算金を支払う場合には、当該土地につき先取特権、質権、抵当権等の担保権が設定されている土地については、その担保権者等の債権者の権利保護に問題があるので、その対象とはしないようにされたい。
(2) 不換地処分予定地等の事前指定は、換地計画をたてる場合において、不換地または異種目換地が円滑に行なわれるようにするための制度であるから、土地改良事業計画(変更土地改良事業計画を含む。)の確定後、できるだけすみやかに行なうものとするが、指定について調整を図る必要がある場合にはあらかじめ指定の期日等について周知を図ることとされたい。
(3) 施行通達第2の4の(2)の工の改正に関連して国営土地改良事業の場合においては、造成される土地改良施設の用地については、土地改良財産として国が保有するものを除き、土地改良区、市町村、農業協同組合等当該土地改良施設を管理するのに適した者に取得させるよう国営土地改良事業の計画樹立の段階から措置するものとし、現在継続中の地区でもできるだけこの方針により処理するものとする。
(4) 施行通達第2の4の(3)のアの改正に関連して、換地区の分割合併等においては、主要工事計画の変更を伴わない限り、事業計画の重要な変更とはならないが、その変更によつて換地交付率に影響を及ぼすこともあるので、その変更に関係する区の関係権利者の3分の2以上の同意を得るとともに、土地改良事業計画の変更についての諸手続をとるなど慎重に取り扱われたい。
(5) 施行通達第2の4の(3)のイによりとび換地を行なうに当たつては、各区間の換地交付率に影響を及ぼさないよう相互にほぼ同面積のとび換地を行ない、出入面積を調整する必要があることに留意されたい。
第2 土地改良事業の総合化
1 施行通達第3の2の一体事業の申請についての事業参加資格者の同意は、従来どおり市町村別、大字別の同意率を確保しなければならないことのほか、一体事業を構成する各事業の施行区域別にも同意率を確保するよう指導されたい。
2 従来あわせて行なう総合事業として申請することができたもののうち、施行通達第 3の2の(1)の要件に適合しないものについては、従来どおりあわせ総合事業として実施できることとしている。
第3 市町村特別申請事業
1 市町村特別申請事業の要件
市町村特別申請事業については、施行通達第4の3のアおよびイの要件のほか、とくに次の要件にも適合しなければならないこととしているので留意されたい。
(1) 農業用用排水施設にあっては、現に農業用用排水施設の利益を受けていない土地の面積および末端農業用用排水系統の全面的変更を実施する土地の面積を合計して得た面積が当該市町村特別申請事業の施行地域の面積のおおむね8割以上を占めるものであること。
(2) 国営市町村特別申請事業にあつては少なくとも当該市町村特別申請事業の完了までに末端関連土地改良事業着工され、地元徴収金の徴収にそごを生ずることのないことが確実と見込まれること。
第4 農業用用排水施設等の利用関係の調整
1 土地改良財産の共有持分の付与等
(1) 施行通達第5の2の(2)の手続のうち、河川管理者等との協議の具体的方法については、別途定めることとしているので、了知されたい。
(2) 共有持分の付与に伴う維持管理事業計画の変更で、その変更が重要な部分の変更であるときは、事業参加資格者の3分の2以上の同意が必要であり、その他の軽微なものの変更であるときにも土地改良区の総会または総代会の議決等の諸手続が必要であることに留意されたい。
2 差止め請求等
管理規程を定めないで管理している農業用用排水路については、土地改良法第57条の3の規定に基づく差止請求等を行なうことはできないが一般的に所有権等に基づく民法上の妨害排除請求等を行なうことができることに留意されたい。
3 市町村等協議
施行通達第5の5の市町村等協議については、都道府県知事の裁定制度は仕組まれていないので、土地改良区と市町村等との協議に対しては都道府県知事の積極的な指導調整が必要であることに留意されたい。
第5 農地保有合理化法人
1 施行通達第6の1の農地保有合理化法人営事業の実施手続等については、農業協同組合等の行なう土地改良事の場合と同様であるので、その換地計画の決定手続についても関係権利者全員の同意を要するとともに、その事業により造成される土地改良施設があるときはその施設を原則として自ら管理しなければならないこととなつていることに留意されたい。
2 国営干拓地の農地保有合理化法人への配分の具体的手続については、別途定めることとしているので了知されたい。
3 農地保有合理化法人が法第85条の3第1項の申請による国、都道府県営農用地造成事業により造成された農用地を事業実施中に売り払い、または貸し付けた場合には、当該事業の事業計画の変更にあたつては、当該農用地を買い受けまたは借り受けた者全員の同意を得る等慎重な配慮を要することに留意されたい。
第6 特別徴収金
施行通達第7の特別徴収金制度は、従来補助事業につき行なわれていた受益地の転用等に伴う補助金返還措置の延長として国営事業も含め、その法的根拠が与えられることとなつたものであり、その考え方において従来の補助金返還措置と特段異なるわけではないので、その運用に当たつては遺憾のないようにされたい。
なお、都道府県営事業における国と都道府県との間、土地改良区営事業または市町村営事業における国と都道府県および都道府県と土地改良区または市町村との間ならびに農業協同組合等営事業においては、引き続き補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第7条第3項の規定に基づく補助金等の交付の条件等により補助金の返還を求めることとなることに留意されたい。
第7 その他
以上のほか、今回の法令改正に伴い留意すべき事項は次のとおりである。
1 農業用用排水施設
農用地の保全または利用上必要な施設(土地改良施設)のうち、従来の「かんがい排水施設」を「農業用用排水施設」に改めた(法第2条第2項第1号等)が、これは「かんがい排水施設ではない営農用水施設」をも「農業用用排水施設」として取り扱えるようにしたもので、従来土地改良事業の対象としてし)なかつた営農用水施設をも土地改良事業の対象として取り扱えるようにしたものではない。したがって、改正後の農業用用排水施設はあくまでも農用地の保全または利用上必要な施設(土地改良施設)としてその受益または負担があくまでも土地に着目して考えられるものでけれ ばならないことはかんがい排水施設の場合と同様である。
2 役員の選出方法
従来、土地改良区の役員の選出は、総会を開催し、その議場で選挙する総会内選挙の方法および総会外において選挙する総会外選挙の方法がとりうることとなつていたが、今回これらの選挙の方法のほか定款にその旨を定めておけば総会において役員選任議案を議決する選任の方法をもとりうることとした。なお、従来の選挙の方法についても役員候補者の数が選挙すべき役員の定数以内であるときは投票を省略(無投票当選)することも定款でその旨定めておけばできることを法律上明確にした(法第18条)。
3 軽微な地域の変更手続
従来、土地改良事業の施行地域の変更については、原則として全地域の土地に係る事業参加資格者についての3分の2以上の同意をとらなければならないこととしていたが、その変更により増減する地域の面積およびそれに係る事業費がいずれも変更前の地域の面積およびそれに係る事業費の10パーセントに満たない場合には、残存組合員等に及ぼす影響も少ないと考えられるので、地域の変更により、新規に加入する地域および除外する地域内の土地に係る事業参加資格者だけの3分の2以上の同意で足りることとした(法第48条第4項)。
4 国営干拓地の配分手続
国営干拓事業に係る埋立予定地の合理化法人への配分については第5で述べたとおりであるが、そのほか国営干拓地の配分について次にように改正された。
(1) 合理化法人へ配分される埋立予定地については土地配分計画の作成およびその公告をしなくてもよいこととした(法第94条の8第1項ただし書)。
(2) 農地保有合理化法人へ配分される埋立予定地以外の土地の選定基準(従来の選定基準)を、「自作農として農業に精進する見込みのある者のうちから」としていたのを「農地保有の合理化および農業経営の近代化を図るため」とした(法第94条の8第3項)。したがつて、従来は、個人経営たる農業者しか配分できなかつたが、改正後は農地保有の合理化および農業経営の近代化を図るため適当」であれば、個人経営以外の農業生産法人等にも埋立予定地を配分することができることとなつた。
(3) 配分通知書に記載された事項とくに配分された土地の用途について公告することとした(法第94条の8第4項)。これは、特別徴収金を徴収する相手を埋立予定地の取得者の一般承継人から、承継人全般に広げることとしたことに伴う規定の整備である。
5 測量等の手続の整備
法第118条の規定により土地改良事業に関し立入調査等をすることができる者を次のように拡大するとともに、土地改良事業の申請人等も無償でその事業に関し必要な簿書の閲覧等を求めることができることとした。
(1) 土地改良区の役職員のほかに土地改良事業団体連合会の役職員を加えた。
(2) 土地改良事業を行なう数人共同施行者、農業協同組合、同連合会または農地保有合理化法人については、申請人としてではなく単にその役職員として認めることとした。
6 その他、今回の法改正に伴い、土地改良事業制度についての関係諸通達につき所要の整備を行なう必要があり、逐次改善することとしているので了知されたい。




