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農林水産省

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土地改良法の一部を改正する法律の施行について

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59構改B第1901号
昭和59年12月22日

地方農政局長あて
北海道開発局長あて
沖縄総合事務局長あて
都道府県知事あて

農林水産事務次官


第101回国会で成立し、昭和59年7月13日に公布された「土地改良法の一部を改正する法律(昭和59年法律第56号)」は、同年12月21日公布の「土地改良法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(昭和59年政令第344号)」により同年12月22日から施行された。これに伴い、土地改良法施行令(昭和24年政令第295号〉及び土地改良法施行規則(昭和24年農林省令第75号)にも所要の改正措置が講ぜられることとなり、それぞれ「土地改良法施行令の一部を改正する政令(昭和59年政令第345号)」及び「土地改良法施行規則の一部を改正する省令(昭和59年農林水産省令第45号月として同年12月21日に公布され、同年12月22日から施行(政令改正事項のうち、土地改良区の総代の選挙手続の改善に係る部分は、昭和60年2月1日から施行)された。
これらの法令改正の趣旨及び留意事項等は下記のとおりであるので、十分御了知の上、土地改良事業制度の適切な運営に遺憾なきを期せられたい。
以上、命により通達する。
なお、下記事項中「法」とあるのは改正後の土地改良法(昭和24年法律第195号)を、「令」とあるのは改正後の土地改良法施行令を、「規則」とあるのは改正後の土地改良法施行規則をいうものである。

第1 法改正の趣旨
1 土地改良法は、昭和24年に制定され、以来本法に基づく農業生産基盤の整備は、農業の生産性の向上、農業の構造改善等に大きく寄与してきたところである。
しかしながら、近年、農業及び農村をめぐる情勢は、いわゆる兼業化、混住化等の進展に伴い大きく変化しつつあり、特に、農業生産の基礎となる土地・水に関して非農業部門からの影響が強まつていることから、その農業上の利用と他の利用との円滑な調整を図り、良好な農業生産環境を確保していくことが、農業生産基盤の整備を進めていく上で最も重要な課題となつている。また、、生産性の高い農業の確立、農業構造の改善等を図るため、昭和58年度を初年度として策定された第3次土地改良長期計画に基づき土地改良事業の一層の効率的な推進を実現することが強く要請されている。
2 このような農業及び農村をめぐる情勢に的確に対処しつつ、農業構造の改善を更に強力に推進するため、農業振興地域の整備に関する法律の一部改正による諸制度の改善措置と相まって、土地・水の農業上の利用と他の利用との調整手法の拡充を図るとともに、土地改良事業の効率的推進を図るための事業実施手続の改善等を内容とする制度改善を行つたものである。
その主要点は、次のとおりである。
(1) 混住化の進展等に伴う農業用用排水施設の水質汚濁や管理費用の増嵩等に対処するため、次の2点の改善を行った。
[1] 市町村等協議制度への知事裁定制の導入
[2] 土地改良区が農業集落排水施設整備事業を行う場合の実施手続の法定化
(2) ほ場整備事業等に伴う換地制度を通じて、優良農用地を確保しつつ・公用・公共用施設用地等の非農業用地需要に的確に対応していくため、共同減歩による創設換地の対象として生活環境施設用地を加える等の改善を行つた。
(3) 土地改良事業の効率的推進を図るため、一定の施設更新事業等に係る同意徴集手続の簡素化を図るとともに、国営・都道府県営の施設更新事業の施行について、その対象施設を管理する土地改良区が申請できるものとした。
(4) 土地改良団体の組織運営の強化を図るため、土地改良区の総代会の設置要件を緩和するとともに、都道府県土地改良事業団体連合会の会員に対する指導事業を法律上明記することとした。
なお、このほか、今回の法律改正と併せ、政令改正事項として、土地改良区の総代の選挙手続の簡素合理化を図るための改善を行つた。
第2 市町村等協議制度への知事裁定制の導入
1 趣旨
(1) 昭和47年の土地改良法改正において、農村部における都市化の進展等に即応し、農業用用排水施設等についての農業上の利用と他の利用との間の円滑な調整を図るための措置の一環として、市町村等協議制度が設けられた(法第56条第2項)。
これは、生活雑排水の流入増等により下水道と兼用することが適当となつた農業用用排水施設等の管理方法、管理費用分担等について土地改良区が関係市町村等に協議を求めることができる旨を定めたものであり、これまで本制度を基礎として土地改良区と関係市町村との円滑な協議調整が図られる等一定の成果を挙げてきたところである。
(2) しかしながら、一方でこのような利用調整を要する問題の複雑化や広域化に伴い、個別の地域段階のみでは対応策が見出せないケースや調整が図られても地域間の不均衡が生じて円滑な施設管理が確保し難いといつたケースもみられるに至つている。このような状況の下で、本問題が解決策のないままに放置されれば農業生産はもとより地域全体の排水管理にも多大の影響を及ぽすおそれがあることから、利用調整を円滑に推進するための一方策として、広域的観点から都道府県知事の公平かつ適正な判断による調整をも期待することとし、新たに知事裁定制を導入することとしたものである。
したがつて、この知事裁定制は、土地改良区と市町村等との協議ができず、又は調わない場合に、問題の円滑な解決へ向けての都道府県知事による適切な指導がまず行われ、その前提に立つて、個々のケースに応じ最終的には知事裁定による解決が図られるという性格のものとして運用する必要がある。
(3) なお、利用調整のための措置としては、この市町村等協議制度のほか、土地改良法上、非農地受益者賦課制度や管理規程・差止請求制度が設けられており、また、都市計画法における開発行為の際の同意権付与等の調整制度があるが、地域における土地改良施設の農業上の利用と他の利用との円滑な調整を進めていくためには、これら各般の措置を事案に応じて総合的、有機的に活用していくことが必要である。
このため、これらの措置に関する運用指針についても、逐次充実を図つていくこととしている。
2 裁定の申請
(1) 申請の対象範囲
知事裁定の申請については、いくつかの点で法第56条第2項の規定による市町村等との協議の対象範囲よりも限定されているが、これは、次の考え方によるものである。
ア 裁定申請の対象となる土地改良区管理施設の範囲は、広域的観点から知事の調整を要する問題が実態的にみて農業用用排水施設の管理面で生じていることから、これに限ることとした。
イ 裁定申請の対象となる事項は、知事裁定に当たって客観的な判断が行え、実行性のあるものとする意味で、市町村等の分担の範囲が客観的な指標に基づいて定型的に定めることができ、また、協定として具体的対応が可能な事項に限定することが適切であることから、[1]農業用用排水施設を下水道その他の土地改良施設以外の施設(以下「他用途施設」という。)の用に兼ねて供にすること、[2]その兼ねて供する場合における当該農業用用排水施設の管理の方法及び管理に要する費用の分担、とした。
ウ 裁定申請の対象となる他用途施設の範囲については、[1]下水道法(昭和33年法律第79号)による公共下水道、流域下水道又は都市下水路、[2]河川法(昭和39年法律第167号)が適用され、又は準用される河川及び[3]都道府県が条例の規定により管理する普通河川は知事裁定の対象から除くこととされている(令第48条の8)が、これは、[1]、[2]にあつては、それぞれの法律で指定基準、費用分担等に関する規定が設けられており、[3]にあつては都道府県が自ら管理するものであるからである。
(2) 申請に際しての留意事項
ア 知事裁定制は、土地改良区と関係市町村等との間の協議をすることができない場合又は協議が調わない場合に、その解決を図るための措置として設けられたものである。したがって、土地改良区は、まず、関係市町村等との間で十分な協議を進め、当事者間同士での解決が図られるよう努力する必要がある。
また、裁定申請に移行する前に、都道府県担当部局の実質的な調整を要請することも適当であるほか、裁定を申請するに当たつては、相互の十分な協議に基づいたそれぞれの立場と意見を明確にしておくことが、本制度の有効な運用を確保する上で不可欠である。
イ 裁定を申請する場合において、その申請に係る農業用用排水施設を土地改良区が委託を受けて管理しているときは、あらかじめその委託者の同意又は承認を得なければならない(法第56条第3項後段)。
ウ 法第56条第2項の規定による協議及びこれに係る同条第3項の規定による裁定申請の相手方となる者は、基本的には、農業用用排水施設を下水道等の他用途施設の用に兼ねて供することが適当であると認められるに至つたことについての原因者としての立場が明らかで、かつ、特定できる者であり、一方、不特定多数の者の家庭雑排水等の流入により農業用用排水施設の管理に支障が生じ、他用途施設の用に兼ねて供することが適当であると認められるに至つた場合には、関係地方公共団体を相手方とするものとなる。
エ その他、知事裁定の申請に際して留意すべき細目については、構造改善局長が別に定めるところによるものとする。
3 知事の裁定
(1) 裁定の手続及び基準
ア 都道府県知事は、土地改良区から裁定の申請があつたときは、その申請の内容・理由を十分に審査することはもちろんのこと、協議を求められた相手方である関係市町村等の意見も聴いて、公平かつ客観的な結論を導き出すことが必要である(法第56条第4項)。
また、事案の内容に即して、例えば、関係機関の代表者や学識経験者や構成員とする協議会を随時開催し、これに諮つて合理的な解決方向を見出していく等により円滑な処理を図ることとされたい。
なお、都道府県担当部局は、知事裁定による問題処理を図る前に、極カ当事者間での協議が円滑に進められ、解決がなされるよう、必要な調整に努めることが望ましい。
イ 都道府県知事の裁定は、申請に係る農業用用排水施設の管理に支障を生じないようにするため必要があると認めるときに、その必要の限度において、行うことができるものである(法第56条第4項)。これは、この裁定制の趣旨にかんがみ、農業用用排水施設の管理に支障を生じないようにするための措置として最も合理的かつ有効と認められるものを、当事者の対応可能性をも考慮して必要最小限の範囲内で裁定することが適切であることによる。
したがつて、この裁定制は、都道府県知事の裁量に委ねられるところが大きいものであるので、事案の事実関係、当事者の立場等を十分踏まえつつ実情に即した適切な処理が図られるよう努めることとされたい。
ウ その他、調整手続、裁定基準等の細目については、構造改善局長が別に定めるところによるものとする。
(2) 裁定の効果
都道府県知事の裁定があつたときは、当事者は、その裁定の定めるところに従い協定しなければならない(法第56条第6項)。このように、裁定の効果としては、当事者間の協定締結義務が生じるので、裁定を受けた場合には、当事者はその内容に従つた協定を速やかに締結し、農業用用排水施設の適正・円滑な管理・利用を進めることが必要である。
第3 農業集落排水施設整備事業の実施手続の法定化
1 趣旨
(1) 近年、農村における都市化の進展等に伴い生活雑排水等の汚水が農業用用排水施設へ排出され、農業用用排水の水質汚濁、農業用用排水施設の機能障害等の問題が生じていることから、農業生産の基盤を維持・整備する上で有効な水質汚濁の防止対策の確立が不可欠とされている。また、生活様式の高度化等に伴い農村地域においても便所の水洗化等の生活環境の改善に対する要請が高まり、し尿、生活雑排水等を処理する施設の整備が緊要の課題とされている。
このような課題に対処するため、農業用用排水の水質保全を図り、併せて農村における便所の水洗化の要請にも応えることができるよう、昭和48年度から各種総合助成事業の中で農業集落排水施設の整備の事業が実施されてきているところであり、昭和58年度からは予算上独立した農業集落排水事業の確立が図られてきたところである。
(2) 本事業は、これまで市町村が主体となつて推進されてきているが、混住化、都市化等が一層進展する中で早急な施設整備の要請が更に高まつていることから、農業用用排水施設の地域の共益施設の管理主体である土地改良区としても、その適正な管理を確保するため自ら農業集落排水施設の整備を進めていくことが必要な事例も生じてきている。
このため、今後土地改良区が本事業を適正・円滑に実施しうるように所要の事業実施手続を決定化することとしたものである。
(3) 法定化した実施手続の内容は、次のとおりである。
[1] 土地改良区が附帯事業として農業集落排水施設整備事業を実施しうることを明定するとともに、その施設の適切な整備・運営を確保するため事業実施についての知事認可制を導入すること。
[2] 知事は認可に当たつて、事業施行の相当性、土地改良区の技術カの有無等の観点から判断を行うこと。
[3] その施設を利用する者の経費負担の基準等を設けること。
2 土地改良区が行う農業集落排水施設整備事業の性格
(1) 附帯事業としての位置づけ
農業集落排水施設整備事業(以下「集排事業」という。)は、農業用用排水の水質汚濁の防止を通じて土地改良区の本来事業である農業用用排水施設の適正な管理を確保することを目的とするものであるが、その整備手法は集落を対象としてこれから排出される生活雑排水、し尿等の汚染を処理する施設を整備するものであり、土地改良法に基づく手続により土地改良区の地区内の農用地を対象として土地・水の利用条件を直接的に整備する土地改良事業とは異なる面を有している。このような集排事業の特別の性格と土地改良事業を支障なく実施する上での必要性にかんがみ、土地改良区の行う附帯事業として位置づけたものである(法第15条第2項)。
(2) 事業への任意参加方式
土地改良事業は、農用地受益や地区全体での共同施行の必要性等の特質を基盤としていわゆる3分の2強制による事業参加方式・費用負担方式が採られている。一方、集排事業は、水質保全に伴う農用地受益がある反面、生活雑排水等の処理という生活上の受益も存在し、また、事業目的の達成上必然的に一定の組合員以外の者 (非農家を含む。)の参加を求める必要があるが、このような生活上の利益のみを受ける者に対し土地改良事業と同様の強制参加・費用負担方式を採るのは妥当でないことから、土地改良区と事業参加者との契約による任意参加方式によることとした。
3 集排事業の知事認可
(1) 認可申請
[1] 附帯事業とされる集排事業の実施に当たり、土地改良区が特に都道府県知事の認可を受けるべきものとするのは、[ア] 集排事業はその建設に当たり附帯事業としては多額の投資と技術を要し、また、相当の経費を要する継続的な維持管理が不可欠であること、[イ]施行、維持管理が適切でないときは水質保全や生活環境面で多大の影響を及ぼすおそれがあること等から、土地改良区の財務、本来事業の適正遂行等との関連で所要の準則の設定とそれとの適合性を確保する必要があるためである。
なお、(2)で述べる認可基準は、このような観点から所要の事項を定めている。
[2] 土地改良区は、集排事業の認可を受けようとするときは、事業計画及び認可申請書に添付する書類を作成し、総会の議決を得る必要がある(法第57条の4第1項及び第2項、施行規則第48条の5及び第48条の6)。
なお、これらの事項は5で述べる事業参加の求めに際して相手方に示すべきものである。
[3] 土地改良区が行う集排事業は、その附帯事業としての性格から、目的、範囲等の面で自ら管理する農業用用排水施設に関係する部分に限られるものであるが、他方、地域の生活環境整備に資するという機能も有し、市町村が行政事務として行う事業との関連を有するものである。このため、双方の事業の調和のとれた効率的推進が図られるよう、土地改良区は、認可申請に当たり、あらかじめ事業計画について関係市町村と協議すべきものとした(法第57条の4第3項)。
この協議に際しては、事業の実施範囲、実施時期、双方の事業が並行して実施される場合の分担関係等について所要の調整を行うことが適当である。
(2) 知事認可の要件
[1] 認可の要件として次の3つのものが設けられており、これらのいずれかに反するものでない限り知事は認可を行わなければならない。
ア 集排事業の施行の相当性に関する基本的要件(法第57条の5第1号及び令第48条の9)
イ 法令適合要件(法第57条の5第2号〉
ウ 財務力、技術力等に関する基礎的要件(法第57条の5第3号及び令第48条の10)
[2] これらの要件のうち、特にアの事業施行相当性要件は、土地改良区の附帯事業として行われる集排事業の性格にかんがみ、土地改良区の本来事業に支障を及ぼさない範囲内で適正に施行されることを確保するために設けられているものである。なお、本要件に関する基本的留意点等は、次のとおりである。
ア 令第48条の9第1号の事業施行区域に係る「農業振興地域内にあること」の要件については、農業振興地域と一体的に集排事業を実施することを相当とする同地域以外の地域を含みうるものであることとする。ただし、原則として市街化区域内の農用地は受益地に含めないこととする。
イ 令第48条の9第3号の事業規模(処理対象人員)に係る「農林水産大臣が定める場合」とは、当該集排事業の目的の達成を図る上で同号に規定する規模を超える規模とすることが必要な場合で構造改善局長が別に定めるところにより認定したときとする。
ウ 令第48条の9第4号の「農林水産省令で定める技術的基準」については、集排事業に関する技術的知見の集積等を踏まえて逐次定めていくものとする。
4 経費の負担の基準
土地改良区が集排事業を行うのに必要な経費について、その施設利用者からの負担を求める際の基準を明らかにした(法第57条の6)。土地改良事業の場合に準じて、排水量その他の客観的な指標により、集排事業によつてその者が受ける利益を勘案することが必要である。
なお、この基準は、農業集落排水施設に生活雑排水等を排出するという施設利用受益についてのものである。
5 事業への参加の求め
集排事業への参加は土地改良区と事業参加者との間の契約によるものであることから、土地改良区は、事業実施に際し、その目的、内容等を関係者に対し十分周知徹底させ、理解を求めることが必要である。また、長期間にわたる費用負担を要する事柄であることから、契約内容についても明確で適切なものとすることが重要である。
このため、集排事業への参加を求めるに当たっては、相手方に対し、事業計画、経費負担、契約事項等を示して行うべきものとした(法第57条の7)。
6 その他
上記のほか、集排事業の認可手続等に関して留意すべき細目については、構造改善局長が別に定めるところによるものとする。
第4 換地制度における非農用地の生み出し方法の改善
1 趣旨
(1) 農村地域における土地需要は、混住化、兼業化の進展等に伴い多種多様なものとなつてきており、これに応じて公用・公共用施設や生活環境施設の用地を適切に生み出していくことが、活力ある農村地域社会を形成していく上で重要な課題となつている。このような要請と調和を保ちながら、併せて優良農用地を確保・保全していくためには、ほ場整備事業等の実施と併せて非農用地需要にも的確に応えていく仕組みの充実を図ることが必要である。
(2) このため、昭和47年の土地改良法改正において、ほ場整備事業等の実施に伴う換地の仕組みについて創設換地、異種目換地等に関する制度改善が行われたところであるが、今般更にその手法の拡充を行うこととし、次のような改善措置を講じたものである。
[1] 事業参加者全員が非農用地に充てるための土地を一律に出し合ういわゆる「共同減歩」について、その対象に農業者の生活上又は農業経営上必要な施設で農業構造の改善を図ることを目的とする等一定の要件に該当するものの用地を加える等の改善を行なった。
[2] 事前の分筆手続を要しない一筆一部不換地手法の実現を図るための「特別減歩方式」を導入することとした。
2 共同減歩による創設換地制度の改善
(1) 改善の内容
今回の改善の内容は、次の2点である。
ア 対象施設用地の範囲の拡大
共同減歩の対象施設用地として、新たに(2)に述べる生活環境施設用地等を追加した。
イ 対象施設の利用分量の割合に応じた生み出し方式の導入
従来の共同減歩においては、事業地区内の農業を営む者が主として利用し、かつ、その大部分が利用すると見込まれる施設用地について、その用地の全部を生み出す方式のみが認められていたが、今回、新たに事業地区内の農業を営む者の大部分が利用すると見込まれる施設用地についても、その利用分量の割合に応じた面積の用地を生み出すことができるものとした。すなわち、例えば当該施設について事業地区内の農業を営む者の利用する割合が3割で、その他の者(非農家や事業地区外の農業を営む者)の利用する割合が7割である場合には、その施設用地3割まで共同減歩により生み出せることとなる。
(2) 対象施設用地
[1] 今回の法改正及びこれに伴う施行規則の改正により、新たに次の施設の用地が共同減歩による創設換地の対象施設用地に加えられた。
ア 当該土地改良事業の施行地域内で農業を営む者の生活上又は農業経営上必要な施設で農業構造の改善を図ることを目的とするもののうち、農業振興地域整備計画その他の地域の振興に関する地方公共団体の計画において種類、位置及び規模が定められているもの(法第53条の3第1項第2号口及び令第48条の5)
イ 当該土地改良事業によって生ずる土地改良施設以外の土地改良施設(規則第43条の9第1号)
ウ 農業集落排水施設(規則第43条の9第2号)
[2] [1]のアの施設について地方公共団体の計画と関連づけた要件を付したのは、地域全体の合意の下にその施設の設置の必要性が認められていることを担保するためであるので、次の点に留意して適切な運用を図ることとされたい。
ア 地方公共団体の計画に当該施設に関する事項を定めるに当たつては、事業地区内の農業を営む者その他の利害関係人の意向を反映させるために必要な措置が講じられていることが必要である。
イ 「地方公共団体の計画」の具体的なものとしては、農業振興地域整備計画のほか、山村振興計画、農村総合整備計画、地方自治法(昭和22年法律第67号) 第2条第5項に基づく市町村の基本構想(基本構想を実現するための基本計画及び実施計画を含む。)等で所定の要件を満たしているものが該当する。
[3] [1]のアの施設の具体的種類は、集会施設、農村公園等で農業構造の改善を図ることを目的として設置されるものである。
[4] 施行規則改正により[1]のイ及びウの施設を加えたのは、新たに利用分量の割合に応じた共同減歩による創設換地方式が導入されたこと等に伴い、他の土地改良事業により生ずる土地改良施設等の用地需要への対応が可能となつたことによるものである。
(3) 施設用地の取得主体
共同減歩対象施設用地の範囲の拡大に伴い、その取得主体として、従来の土地改良区、市町村、農業協同組合、農事組合法人及び農業協同組合連合会のほか、新たに国、市町村以外の地方公共団体及びその他の営利を目的としない法人を加えることとした(令第48条の6)。
なお、国営、都道府県営、市町村営及び農協等営の事業の場合にも、これまで取得主体とされていなかつたものについては上記と同様にその範囲が拡大される。
(4) その他
以上のほか、今回の改正事項に係る共同減歩の運用上留意すべき細目については、構造改善局長が別に定めるところによるものとする。
3 特別減歩制度の導入
(1)改善の内容
従来、不換地処分は土地の一筆単位で行うものとされ、一筆の一部を不換地とする場合には、換地処分の前にあらかじめ分筆をしなければならないことから、このために相当の労力と経費が必要とされた。このような煩雑な手続を避け、効率的な換地処分を推進するため、事前の分筆を要せずに一筆の一部不換地を実現する手法として、次の特別減歩方式を導入することとしたものである。
ア 換地計画においては、申出又は同意に基づき従前の土地の地積を特に減じて換地を定めることができるものとする(法第53条の2の2第1項)。
イ 現行の不換地見合いの創設換地と同様に、不換地の場合の従前の土地の地積とアにより特に減じた地積を合計した面積を超えない範囲内で、一定の非農用地を 生み出すことができるものとする(法第53条の3第1項及び第53条の3の2第1 項)。
(2) 換地処分上の関係手続
[1] 特別減歩に関する換地処分上の手続番よ、基本的には不換地の場合と同様であり、特別減歩の対象となる土地の事前指定(法第53条の2の3第1項)等の関係規定が適用される。
ただし、特別減歩の場合には、その性格上減歩された土地の部分を特定しえないことから、対象となる土地について事前指定をした場合でも、その土地についての事業参加資格は消滅せず(法第3条第7項)、また、使用及び収益の停止を行うことはできないこと(法第53条の6第2項)とした。
[2] 換地及び従前の土地の照応についての総合的な勘案(法第53条第1項第2号)を行う場合においては、特別減歩により減じた地積を不換地と同様に従前の土地から控除することとした(規則第43条の6)。
[3] その他、関係手続に関して留意すべき細目については、構造改善局長が別に定めるところによるものとする。
4 その他
(1) 非農用地生み出しに係る他制度との調整
換地制度に伴う非農用地生み出しに当たつては、昭和47年の法改正の際の「土地改良法の一部を改正する法律の施行について(昭和48年2月8日付け48構改B第192号農林事務次官依命通達)」記の第2の1の(3)のウにいうように、農地転用制度(農地法)、農用地区域の線引制度(農業振興地域の整備に関する法律)、開発許可制度 (都市計画法)等との調整を十分に図ることとされているが、今回の法改正に伴う制度運用についても、この調整の趣旨に従い適切に措置していくものとされたい。
(2) 制度改善に伴う経過措置
改正法の施行の際、換地計画の認可を、都道府県知事に申請し、未だ認可又は不認可の処分がされていないものの処理については、旧法の適用があることとした(改正法附則第3項)。したがつて、それ以外の国営及び都道府県営の事業並びに都道府県知事に認可申請中でないものについては、たとえその事業地区につき一時利用地の指定があつたもの等でも新法の適用がある。
(3) 税制特例の適用
今回の改正事項に対する税制特例の適用については、これまでに認められている特例に準じた扱いとなるように措置していくこととしている。
すなわち、共同減歩制度の改善については、譲渡所得税等の各税目上、従来と同様の特例対象とするとともに、特別減歩方式の導入については、譲渡所得税に関し、昭和60年度の税制改正により不換地並みの税制特例(清算金所得の500万円控除)を適用する予定である。
第5 土地改良事業の実施手続の改善
1 趣旨
(1) 土地改良事業の実施手続については、事業の効率的推進を図る観点から、工種の拡大、大規模化等の事業実態の変化に即応して、これまでも法改正の都度所要の改善措置が講じられてきた。今回の改正においても、今後更新期の到来する土地改良施設の増加が見込まれること等の状況にかんがみ、事業参加者の権利保護にも配慮しつつ、施設更新事業に係る実施手続を中心として簡素合理化を行うこととした。
(2) 改善の内容は、次のとおりである。
[1] 施設更新事業に係る実施手続の改善
ア 土地改良施設の更新事業であつて従前の機能の維持を図ることを目的とする等一定の要件に該当するものについては、地域の営農を継続していくために当然必要とされる事業であり、管理事業と同質性を有することから、事業実施の同意の徴集を要せず、総会の議決や知事認可の手続をもつて足りるものとする等の手続の簡素化を行つた。
イ ー定の土地改良施設の更新事業について国又は都道府県が行うべきことを、当該施設を管理する土地改良区が申請できるものとした。なお、この場合にも、アに準じて簡略な同意徴集手続を採ることができるものとした。
[2] 軽微な計画変更に係る同意徴集手続の簡素化
土地改良事業の施行地域の追加のための事業計画の軽微の変更について、同意徴集等の手続を簡素化するものとした。
2 施設更新事業に係る実施手続の改善
(1) 施設更新事業の同意徴集手続の簡素化
[1] 手続簡素化の内容
土地改良施設の更新事業で、[2]又は[3]に述べる要件に該当するものについては、次により同意徴集手続を簡素化できることとした。
ア [2]の要件を満たす施設更新事業で、その施行地域が当該施設の現行の管理事業に係る区域(イにおいて「現行管理区域」という。)内に含まれているもの事業参加資格者のすべてに係る同意徴集手続を要しない(法第48条第3項)。
イ [3]の要件を満たす施設更新事業で、その施行地域に現行管理区域以外の地域が含まれているもの
事業参加資格者のうち、現行管理区域以外の地域に係るものの3分の2以上の同意徴集のみで足りる(法第48条第5項)。
[2] 事業参加資格者のすべてに係る同意徴集手続を要しない施設更新事業の要件
ア この施設更新事業は、次の要件を満たすものでなければならない。
(ア) 事業目的が当該土地改良施設の有している機能の維持を図るものであること(法第48条第3項)。
(イ) 当該施設更新事業の施行により、現行の管理事業の計画について、施行地域の変更(地区除外によるものを除く。)又は管理すべき施設の種類並びにその管理の方法で貯水、放流、取水、導水及び排水の時期及び水量並びに干ばつ時及び洪水時における措置に係るものの変更を要することとならないこと (令第48条の2第1号及び規則第38条の2の2)。
(ウ) 組合員が当該施設更新事業に要する費用及びその施行後の管理事業に要する費用について負担することとなる金額が、当該組合員が現行の管理事業に要する費用及び当該施設更新事業を行わないものとすれば管理事業に要することとなる費用について負担する金額を考慮して、相当と認められること(令第48条の2第2号)。
イ アの(ア)の要件(事業目的要件)は、当該施設更新事業がいわば管理事業と同質の性格を有することを担保するものであり、具体的には、当該施設が老朽化や地盤沈下等の要因により本来の機能を低下したり、又は低下することが見込まれる場合において、その本来の機能を回復し、又は維持するために行うことをいう。この場合、施設の本来の機能とはその種類、受益の態様等により様々なものとなるが、水路にあつては通水量、ため池にあつては貯水量、揚水機場にあつては揚水量等による施設の能カを指標として判断することが適切である。
ウ アの(イ)の要件(管理事業計画の同一性要件)は、当該施設更新事業の実施により事業参加者の受益の態様が基本的に変動しないことを担保するものである。
エ アの(ウ)の要件(組合員負担金の相当性要件)は、組合員の負担が施設の機能維持を図るためのものとして妥当な水準にあることを担保するものである。この要件の具体的内容としては、例えば、当該土地改良施設の更新によりその後の管理費用が減少し、これに伴い組合員の負担額が軽減されるものと見込まれる場合に、当該施設更新事業について組合員が負担することとなる金額が、その軽減される組合員負担額(単年度当たりの額)に更新後の施設の耐用年数を 乗じて得た額の範囲内であることといつたものがあるので、このような考え方に即して適切に運用するものとされたい。この場合、「更新により減少する管理費用」には、新規施設に係る技術革新等に伴い節減される費用及び施設の老朽化等により増嵩していた費用であつて更新により不要となるものの双方が含まれる。なお、個別の事業種類、内容等により種々のケースがありうるので、具体的事案について疑義がある場合には、国の担当部局と所要の連絡調整を行われたい。
[3] 同意徴集手続の一部を省略しうる施設更新事業の要件
ア この施設更新事業は、[2]のアに掲げる要件と同様の要件を満たす必要があるほか(法第48条第5項、令第48条の3及び規則第38条の6の4)、当該施設更新事業の施行地域のうち当該施設の現行の管理事業に係る区域(以下この項及びイにおいて「現行管埋区域」という。)以外の地域内にある土地の地積が現行管理区域内にある土地の地積の100分の10を超えるものでないことを要する(令第48条の3第1号及び規則第38条の6の3)。
このような要件としたのは、当該施設更新事業が現行の管理事業と連続する同質性を有するものであることを担保するため、それぞれの事業施行地域の大部分を一致させる必要があるからである。
イ また、この場合、[2]のアに掲げる要件のうち、(イ)の要件(管理事業計画の同一性要件)にあつては、管理事業計画について現行管理区域以外の地域の変更があつても差し支えなく(令第48条の3第2号イ)、また、(ウ)の要件(組合員負担金の相当性要件)にあつては、現行管理区域内の土地に係る組合員の負担金の額のみについて判断すればよいものである(令第48条の3第3号)ので、留意されたい。
[4] 同意徴集以外の手続等
上記により同意徴集手続が省略される場合であつても、土地改良区としての事業実施の意思決定を行うため総会又は総代会の議決(3分の2以上の出席と3分の2以上の賛成による特別議決)を要することはもちろんであり、また、事業実施についての市町村長からの意見聴取(法第48条第9項において準用する法第5 条第3項)、都道府県知事の認可の申請とこれに伴う異議申出手続等の所要の手続を踏む必要がある。
[5] その他
上記のほか、施設更新事業に係る同意徴集手続の簡素化に関し留意すべき細目については、構造改善局長が別に定めるところによるものとする。
(2) 国・県営施設更新事業の土地改良区申請方式の創設
[1] 土地改良区申請の対象となる事業
土地改良区が現に管理している土地改良施設の更新を国営又は都道府県営の事業として行おうとする場合には、これまで15人以上の事業参加資格者又は市町村の申請によるものとされていたが、[2]で述べる要件に該当する事業については、その対象となる施設の管理主体として事業実施の必要性や内容等を十分に熟知している土地改良区が申請することが適切な場合もあることから、新たに土地改良区申請方式を設けることとした(法第85条の3第1項)。また、これに伴い、当該施設更新事業と有機的な関連の下に施行すべき他の土地改良事業(以下「関連施 行事業」という。)であつて[3]で述べる要件に該当するものについても、併せて当該土地改良区が申請できるものとした(法第85条の3第6項)。
[2] 土地改良区申請に係る施設更新事業の要件
この施設更新事業は、次の要件を満たすものでなければならない。
ア 当該施設更新事業の施行地域の大部分が当該申請に係る土地改良区が現にその地区としている地域に該当すること(令第50条の2の2第1項第1号及び第 2項第1号)。
このような要件を付したのは、土地改良区がその地区を事業活動の基礎とする地域団体としての性格を有することにかんがみ、国・県営事業の施行地域とその地区とが大部分一致することが適切であることによる。
イ 事業種目ごとに一定の事業規模要件を満たすこと(令第50条の2の2第1項第2号、第2項第2号及び第3号並びに第3項)。
これは、従来の15人以上の事業参加資格者又は市町村による申請の場合と同様である。
[3] 土地改良区申請に係る関連施行事業の要件
この関連施行事業は、次の要件を満たすものでなければならない。
ア 当該申請に係る施設更新事業と一体となってその効果が生じ又は増大するものであること。また、その施設更新事業と併せて当該関連施行事業を行うことにより双方の事業の効率が著しく高められ、かつ、当該関連施行事業によりその施行地域における農業経営の合理化に寄与することが明らかなものであること(法第85条の3第6項)。
この要件については、個々の事業の組合わせに応じて実態的な判断を行うこととなるが、例えば、地域営農の合理化のため農業用用排水路の更新に併せてその受益地域内のほ場整備を行うような場合が該当する。
イ 事業種目ごとに一定の事業規模要件を満たすこと(令第49条、第50条及び第50条の2の5)。
これは、従来の15人以上の事業参加資格者又は市町村による申請の場合と同様である。
[4] 土地改良区申請に係る施設更新事業の同意手続の簡素化
土地改良区が国営又は都道府県営の施設更新事業の施行の申請を行おうとする場合には、あらかじめ組合員又は事業参加資格者からの3分の2以上の同意徴集をする必要があるが(法第85条の3第2項)、(1)で述べた土地改良区営の施設更新事業の場合と同様に、一定の要件に該当するものについては、この同意徴集手続を要せず、又は一部を省略しうるものとした(法第85条の3第2項及び第3項)。
なお、この一定の要件は、(1)の[2]及び[3]で述べたものと同様である(令第50条の2の3及び第50条の2の4)。
[5] その他の関係手続等
ア 上記のほか、土地改良区の申請に際しての各種手続は、総会又は総代会の議決( 3分の2以上の出席と3分の2以上の賛成による特別議決(法第33条第2 項))を要することのほか、15人以上の事業参加資格者による申請の場合と基本的に同様である。
また、国営事業の場合の都道府県の費用負担割合、都道府県営事業の場合の国庫補助割合、特別会計事業への移行手続等についても、従来の事業と同様に取り扱うものとして所要の規定の整備を行った。
イ その他、土地改良区申請に係る国・県営施設更新事業の運用上留意すべき細目については、構造改善局長が別へ定めるものとする。
3 軽微な計画変更に係る同意徴集手続の簡素化
(1) 手続簡素化の内容
[1] 土地改良事業の施行地域について事業施行の中途で追加をしようとする場合には、事業計画の重要変更事由に該当し、事業参加者の3分の2以上の同意を得て計画変更を行わなければならないものとされているが、(2)の要件に該当するような特に軽微な地域の追加にあつては、関係者への影響もなく、あえて同意徴集手続を踏む合理性がないことから、これを省略して計画変更が出来るものとした(法 第48条第6項)。
[2] また、この特に軽微な地域の追加へ係る計画変更の認可申請があつた場合において、当該土地改良事業の利害関係人の権利又は利益を侵害するおそれがないことが明らかであつて都道府県知事が適当と認めたときは、法第8条第2項に基づく専門技術者の調査報告についても省略することができるものとした(法第48条 第10項)。
(2) 特に軽微な地域の追加に係る要件
この要件は、次のとおりである。
ア 地域の追加で、規則第38条の6の2に定める軽微な地域変更の要件に該当するものであること(法第48条第4項及び第6項)。
イ その地域の追加により、当該変更前の土地改良事業の施行地域内の組合員が当該変更前の土地改良事業に要する費用について負担する金額を増加させることとならないこと(法第48条第6項及び規則第38条の6の5)。
ウ 追加される地域内の事業参加資格者の全員から事業参加の申出があり、かつ、当該申出に係る変更によりその土地改良事業の効率が高められると認められること(法第48条第6項)。
なお、この申出に際しては、規則第38条の6の6により、追加する土地の所在等を記載した所定の申出書を土地改良区に提出する必要がある。
(3) その他
[1] 農用地造成事業等について特に軽微な地域の追加を行う場合には、簡略な手続としての法第48条第6項の申出のほか、同条第7項の規定により農用地外資格者全員の同意を得ることが必要である。この場合その申出と同意徴集は同時に行うことが適切である。
[2] この手続の簡素化については、土地改良区営事業のほか、国、都道府県、市町村、農業協同組合等の事業についても適用があるものとした。
4 その他
(1) 事業内容の周知徹底等
簡略な同意徴集手続を採る場合であつても、事業の内容等について関係組合員等への周知徹底を図り、理解を求めていくことが肝要であるので、この点に十分留意し、組合員の利益の増進と円滑な事業の推進を図つていくこととされたい。
(2) 制度改善に伴う経過措置
改正法の施行前に、施設更新事業の計画の概要等の公告がなされている場合又は計画変更につき変更計画の概要等の公告がなされている場合には、それぞれ、事業開始手続又は計画変更手続について旧法の適用がある(即ち、同意徴集手続の簡素化の規定が適用されない)こととした(改正法附則第2項)。
第6 土地改良区の総代会の設置要件の緩和
1 趣旨
近年における兼業化の進展等の農村社会情勢の変化に伴い、土地改良区の総会における出席率の低下、代理出席の増加等がみられ、また、会場の調達等の問題もあつて、総会の適期な開催が困難となつている例もみられる。このような状況にかんがみ、土地改良区の業務運営の効率化及び経費負担の軽減を図るため、類似団体の総代制度も勘案しつつ、土地改良区の総代会の設置要件を、組合員の数が300人を超える場合から組合員の数が200人を超える場合に引き下げることとしたものである(法第23条第1項)。
2 制度運営上の留意事項
(1) 土地改良区が新たに総代会を設置する場合にあつては、総代の議決(3分の2以上の出席と3分の2以上の賛成による特別議決)により定款を変更し、総代会を置く旨を定めるとともに、定款変更の知事認可を受けることが必要である。
(2) 土地改良区の総代選挙は選挙管理委員会の管轄とされていることから、今回の設置要件の緩和に伴い新たに総代選挙を行うこととなる土地改良区に対し、総代選挙の実施について当該選挙を管理執行することとなる選挙管理委員会と事前に十分連絡をとるよう指導するものとされたい。
(3) 総代制を採用する場合においては、組合員の団体運営への参加意欲を高めるとともに、その意向が十分に反映されるようにすることが肝要であるので、総代がその選出された選挙区の組合員との間で十分な意思疎通を図り、選挙区における組合員の意見を集約する等により、土地改良区の円滑な団体運営が確保されるよう指導するものとされたい。
第7 都道府県土地改良事業団体連合会の指導業務の明定
1 趣旨
(1) 都道府県土地改良事業団体連合会は、会員に対する技術的援助を行うことを主たる目的とする協同組織として設立されたものであるが、その業務内容は、昭和40年代以降のほ場整備事業等の推進に伴う換地処分の増加、農村環境の変化に伴う土地改良施設の操作、管理の高度化等の状況の下で、会員に対する換地処分、土地改良施設の管理等についての技術的な指導が中心となり、その役割は近年ますます重要なものとなつてきている。
このような連合会の技術指導業務の重要性と熟成度にかんがみ、これを法律上明記して、今後の一層円滑な推進を図ることとした(法第111条の9第1号)。
(2) また、農業集落排水施設整備事業等の附帯事業についても、今後更に技術的側面での適切な指導が重要となることから、技術的指導の対象範囲に附帯事業が含まれることを併せて明記することとした。
2 その他
今回の指導業務の明定に伴い、都道府県土地改良事業団体連合会の定款の変更が必要となるので、可及的速やかに変更手続が処理されるよう努めることとされたい。
第6 土地改良区の総代の選挙手続の簡素合理化
1 趣旨
土地改良区の総代の選挙手続については、昭和39年以来見直しが行われていないことから、公職選挙法に基づく公職選挙等他の類似諸制度に比べて改善合理化を図る余地が生じているとともに、選挙運営の実情にそぐわなくなつている面もみられる。このため、今回の土地改良法の一部改正法の施行に伴う同法施行令の改正と併せて、従来土地改良区、選挙管理委員会等関係方面から提起されていた要望をもとに、類似諸制度をも踏まえつつ、総代選挙の実施手続に関し所要の改正を行い、選挙運営の効率化、合理化を図ることとした。
2 改正の内容等
(1) 改正の主要点は、次のとおりである。
[1] 選挙期日の告示期限の短縮
選挙期日の20日前とされていたものを選挙期日の7日前に改めた(令第6条)。
[2] 立候補及びその辞退の届出期間の短縮
総代の立候補にあつては告示日から選挙期日前10日まで、立候補の辞退にあつては選挙期日の前日までとされていたものを、それぞれ告示日から2日間に改めた(令第17条の3)。
[3] 再選挙・補欠選挙事由(定数2~5人の選挙区)の改善
定数不足数が6分の1を超える場合とされていたものを定数不足数が2人以上になつた場合に改めた(令第24条及び第25条)。
[4] その他
選挙人名簿の調整期日の改善、選挙立会人の補充選任規定の整備等を行つた。
(2) 総代選挙手続の改善に伴う留意点については、構造改善局長が別に定めるところによるものとする。

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