漁業協同組合合併助成法の一部を改正する法律の施行について
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10水漁第1674号
平成10年5月18日
都道府県知事あて
農林水産事務次官
漁業協同組合合併助成法の一部を改正する法律(平成10年法律第32号)が別添1のとおり平成10年3月31日に公布され、同日から施行された。
また、これに伴い、漁業協同組合合併助成法施行令の一部を改正する政令(平成10年政令第107号)及び漁業協同組合合併促進法施行規則(平成10年農林水産省令第25号)が、それぞれ別添2及び3のとおり同日公布され、施行された。
ついては、改正後の漁業協同組合合併促進法(昭和42年法律第78号)の運用に当たっては、下記の事項を御了知の上、貴管下の漁協系統組織の合併推進の取組につき特段の御指導をお願いする。
以上、命により通達する。
記
第1 法改正の趣旨
1 漁業協同組合合併助成法は、昭和42年、適正な事業経営を行うことができる漁業協同組合(以下「組合」という。)を広範に育成して漁業に関する協同組織の健全な発展に資するため、組合の合併の促進を図ることを目的として制定されて以来、5次にわたり延長措置が講じられ、今日に至っているところであり、第5次延長期間においては68件、参加242組合の合併が行われるなど、組合の事業規模の拡大が図られてきた。しかしながら、組合の現状を見ると、全国的には市町村区域未満の組合が約7割を占めるなどいまだ経営基盤のぜい弱な小規模組合が多数存在している状況にある。
こうした中で、我が国の漁業を取り巻く状況は、資源水準の悪化に伴う漁獲量の低下、漁業就業者の減少と高齢化が進展する等、組合の経営環境は厳しさを増している。
一方、組合は、組合員の志向の多様化等に対応した健全な事業運営を図るとともに、水産物の安定的供給、水産資源の保護・管理、漁業の振興及び漁村の活性化等に積極的に取り組んでいくことが従来にも増して強く要請されているところであり、中でも、国連海洋法条約の批准とこれに伴う国内関係法律の整備によって、平成9年から漁獲可能量制度が導入され、水産資源の適切な管理と有効利用の推進等に関して、組合はその中心的役割を果たすことが期待されており、その円滑な実施のためにも体制の整備が急務となっている。
2 組合の経営基盤の強化を図るためには、漁協系統が自らその問題を十分自覚した上で、組織を挙げて自主性と創意にあふれた幅広い活動を積極的に展開していくことが不可欠であり、とりわけ、組合の基礎的な体力を高める合併を喫緊かつ最優先の課題として取組を行っていくことが肝要である。
このような状況から、漁協系統では、
[1] 組織維持にかかるコストの削減、事業機能の充実による組合員の負託に応えられる事業展開
[2] 事業の複雑化・高度化に対応した業務執行体制の確立
[3] 安定的な事業利益の確保と財務内容の健全化
を実現する「自立漁協」の構築を目標とし、平成9年5月に「漁協系統事業・組織改革のための指針」を全国漁業協同組合連合会において組織決定する等、合併の推進に取り組んでいるところである。
3 政府としても、従来から組合の合併の促進を図るため、漁協系統の取組を支援してきたところであるが、特に近年、これを喫緊の課題として位置付け、平成9年度には支援措置を抜本的に見直して「漁協経営強化総合対策事業」を創設し、平成10年度においても、広域合併漁協の金利負担軽減措置として「漁協経営基盤強化推進基金造成事業」を新たに実施する等、漁協系統の取組を積極的に支援していくこととしている。
4 今回の改正は、このような情勢にかんがみ、組合の合併のより一層の促進を図るため、合併及び事業経営計画の提出期限を延長し、この認定を受けて合併した組合に対する共同漁業権に係る漁業権行使規則の特例措置及び税制上の特例措置を引き続き適用するとともに、新たに、全国の区域を地区とする漁業協同組合連合会であって、会員の指導の事業を行うもの(以下「全国連合会」という。)が作成する合併の促進に関する基本的な構想及び都道府県の区域を超えない区域を地区とする漁業協同組合連合会(全国連合会の会員に限る。)であって、会員の指導の事業を行うもの(以下「都道府県連合会」という。)が作成する組合の合併の促進に関する基本的な計画について定めたほか、合併を推進する法人の指定等の措置を講ずることとしたものである。
第2 改正の内容
1 題名及び目的の改正
法律の題名が「漁業協同組合合併促進法」に改正されるとともに、法律の目的に組合の合併の促進に関する基本的な構想及び組合の合併の促進に関する基本的な計画に関する事項が追加された。(改正後の漁業協同組合合併促進法(以下「法」という。)第1条)
2 基本構想
全国連合会は、当該全国連合会を直接又は間接に構成する組合の合併の促進に関する基本的な構想(以下「基本構想」という。)を作成し、これを農林水産大臣に届け出ることができることとされ、基本構想においては、組合の合併の促進に関する基本的な方向及び組合の合併を促進するために講じようとする措置の基本となるべき事項を定めることとされた。また、国は、全国連合会に対し、基本構想の作成及びその円滑な実施につき必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めなければならないこととされた。(法第1条の2)
3 基本計画
都道府県連合会は、基本構想に基づき、当該都道府県連合会を直接又は間接に構成する組合の合併の促進に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を作成し、これを都道府県知事に届け出ることができることとされ、基本計画においては、[1]組合の合併の促進に関する目標、[2]組合の合併の促進を図るための措置に関する事項、[3]合併に係る組合が行う事業の強化に関する事項、[4]その他必要な事項を定めることとされた。また、都道府県は、都道府県連合会に対し、基本計画の作成及びその円滑な実施につき必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めなければならないこととされた。(法第1条の3)
4 合併及び事業経営計画の拡充
合併及び事業経営計画に定めることができる事項として、固定した債権の償却に関する方策が追加された。(法第3条第2項)
これは、合併に参加する組合の中に多額の固定した債権を有する組合が含まれる場合に、合併後の組合の経営の健全性についての懸念から合併に係る話合いが進展しないケースがみられることにかんがみ、固定した債権の計画的な償却ができるよう措置されたものである。
5 合併及び事業経営計画の提出期限の延長
合併しようとする組合が、合併及び事業経営計画を立て、その計画が適当であるかどうかにつき都道府県知事の認定を求めることができる期限が、平成15年3月31日まで5年間延長された。(法第3条第4項)
これに伴い、次の特例措置を講じ、組合の合併の円滑化を図ることとされた。
(1) 第1種共同漁業権に係る漁業権行使規則の変更又は廃止についての特例措置
ア 法第4条第2項の規定により認定を受けた合併及び事業経営計画に従い平成16年3月31日までに合併した組合については、法第6条第1項に規定する漁業権行使規則の変更又は廃止についての特例措置を適用することとされた。(法第6条第1項)
イ 法第4条第2項の規定により認定を受けた合併及び事業経営計画に従い平成5年4月23日から平成11年3月31日までの間に合併した組合が、同項の規定により認定を受けた合併及び事業経営計画に従い平成16年3月31日までに更に他の組合と合併した場合、当該合併後の組合については、法第6条第1項に規定する漁業権行使規則の変更又は廃止についての特例措置を適用することとされた。(法第6条第3項)
(2) 税制上の特例措置
法第4条の規定により合併した組合については、法人税、登録免許税、地価税等の税制上の特例措置が講じられることとされた。
6 合併及び事業経営計画の樹立等に関する援助
都道府県は、組合に対し、合併及び事業経営計画の樹立及びその円滑な実施につき必要な助言、指導その他の援助を行うよう努めなければならないこととされた。また、都道府県は、当該援助を行う場合において、関係市町村に対し、必要な協力を求めることができることとされた。(法第4条の3)
これは、合併の円滑な推進のためには、都道府県及び市町村の積極的な協力と援助が極めて重要であることから規定されたものである。
7 施策の実施に当たっての配慮
国及び都道府県は、漁業の振興等を図るための施策を講ずるに当たっては、組合の合併が促進されるよう適切な配慮をすることとされた。(法第7条)
これは、合併後の組合を健全に育成していくためには、地域の漁業振興による組合の経営基盤の強化が必要不可欠であること等から規定されたものである。
8 合併の協議に関する助言及び指導
都道府県知事は、漁業の振興等を図り、かつ、漁業に関する協同組織の健全な発展を図るため特に必要があると認めるときは、組合に対し、合併に関する協議を行うことにつき、必要な助言及び指導をすることができることとされた。(法第8条)
これは、合併協議への参加は、本来、組合及び組合員の自主的な意思によるべきものであるが、他の組合から合併協議の申出が行われた場合において、当該組合にとって合併に参加することが極めて有為であると判断される場合であって、特に必要があると認められる場合等に合併協議に参加するよう必要な助言及び指導を行うことにより、合併の円滑な推進に資するよう規定されたものである。
9 都道府県漁業協同組合合併推進法人
(1) 都道府県知事は、組合の合併についての援助及び合併に係る組合の事業経営の基礎を確立するのに必要な助成を行うことを目的として設立された公益法人を、その申出により、当該都道府県に一を限って、都道府県漁業協同組合合併推進法人(以下「推進法人」という。)として指定することができることとされ、推進法人の指定手続及び業務に関する規定が整備された。(法第9条及び第10条)
この制度は、組合の合併を推進していくためには、固定した債権を有する組合を含む合併における合併参加組合間の財務格差の調整等を円滑に進めることが必要となっている状況にかんがみ、固定した債権を有する組合を含む合併に対し支援・指導を行う専門機関として推進法人を設置し、推進法人の業務を通じて合併推進に資することをねらいとして設けられたものである。
(2) 推進法人は、固定した債権の取得、管理及び回収、固定した債権の償却に関する措置につき必要な資金の貸付けを行う金融機関に対する利子補給金の交付、固定した債権の償却に関する措置の計画的な実施に関する指導等組合の合併を総合的に支援する公益性の高い業務を行う法人であることから、毎事業年度の事業計画及び収支予算の作成及び変更については都道府県知事の認可が必要とされ、毎事業年度の事業報告書及び収支決算書については都道府県知事への提出が必要とされている。(法第11条)
また、報告徴収、改善命令、指定の取消し等の規定を設け、都道府県知事の指導監督の下で、推進法人の業務が適正に行われるよう措置されている。(法第12条)
(3) 都道府県知事の認定を受けた合併及び事業経営計画において、固定した債権の償却に関する方策を定めた組合は、当該方策に従い実施しようとする措置が、推進法人に対し固定した債権を譲渡しようとするものであるとき又は金融機関が推進法人から利子補給金を受けて行う資金の貸付けを受けようとするものであるときは、推進法人の承認を受けなければならないこととされた。また、都道府県知事は、当該組合が推進法人の承認を受けていない場合には、水産業協同組合法(昭和23年法律第242号)第69条第2項の合併の認可を行ってはならないこととされた。(法第13条)
(4) 推進法人が行う法第10条第1号から第5号までに掲げる業務(以下「法定業務」という。)に係る基金に充てるために支出された負担金については、租税特別措置法(昭和32年法律第26号)で定めるところにより、損金算入の特例の適用があるものとされた。(法第14条)
第3 合併推進に関する指導についての留意事項
組合の合併は、合併に参加する組合及び組合員の自主的な意思により実現されるものであるが、合併の円滑な推進のためには都道府県漁業協同組合連合会をはじめとする漁業協同組合系統組織(以下「系統組織」という。)及び都道府県、市町村等の積極的な協力と援助が極めて重要である。
ついては、今後の合併の推進に当たっては、特に次の事項に留意するとともに、これ以外の事項については、
[1] 「漁業協同組合合併助成法の施行について」(昭和42年7月27日付け42水漁第5486号農林事務次官依命通達。以下「通達」という。)の記の第2
[2] 「漁業協同組合合併助成法の一部を改正する法律の施行について」(昭和63年5月13日付け63水漁第1871号農林水産事務次官依命通達)の記の第3
[3] 「漁業協同組合合併助成法の一部を改正する法律の施行について」(平成5年4月23日付け5水漁第1774号農林水産事務次官依命通達)の記の第3に準じて積極的な御指導をお願いする。
(1)合併推進体制の強化等
組合の合併は、組合の自主的な発意により行われるものであり、その推進も自主的な取組により行われるべきものであるが、合併が円滑に推進されるためには、その合併推進体制の整備・強化が極めて重要である。このことから、都道府県におかれても、合併推進の支援体制の整備に努められたい。また、今後とも、系統組織と一体となって常時継続的に合併についての啓発・指導を行い得るよう、体制の一層の整備・強化を図るとともに、合併しようとする組合の関係地区ごとに合併推進協議会等が設置されるよう系統組織を指導し、設置された合併推進協議会等に積極的に参加して、合併に係る啓発、財務格差の調整、漁業権の取扱い等について助言等を行うことにより関係組合間の合併に関する協議を促進し、合併の円滑な促進が図られるよう一層の指導をお願いする。なお、この場合、市町村等の協力も得つつ、系統と行政が一体となって取り組まれたい。
(2) 基本計画の作成及び実施
ア 基本計画の作成に当たっては、都道府県内の組合をめぐる諸情勢と組合の果たすべき役割を踏まえ、系統組織の十分な意見集約が図られたものとなるよう指導されたい。
また、基本計画の内容は、全国連合会が作成する基本構想及び「漁協経営強化総合対策事業実施要領」(平成9年4月1日付け9水漁第966号農林水産事務次官依命通達)に基づき都道府県知事が定める都道府県漁協経営強化基本方針の内容と整合性がとれたものとなるよう留意されたい。
イ 基本計画の届出又はその変更の届出を受理した場合には、その写しを速やかに水産庁長官あて提出されたい。
ウ 基本計画の円滑な実施を図るため、特に次の事項について留意されたい。
[1] 届出のあった基本計画の実施状況については、随時検討が行われ、合併推進の具体的取組に反映されるよう指導すること。
[2] 合併を推進するためには、産地市場統合の構想を策定する等、合併後の組合のビジョンを組合員等関係者に示すことが肝要であるので、そのビジョン作りを指導すること。
エ 基本計画の作成及び円滑な実施に当たっては、都道府県連合会に対して、必要な助言、指導その他の援助を行うよう努められたい。
(3) 施策の実施に当たっての配慮
合併後の組合を健全に育成していくためには、地域の漁業振興による組合の基盤強化が必要不可欠であることから、水産関連施策の計画の樹立及び実施に当たっては、合併が促進されるよう、合併実施組合に係るものを優先的に採択する等の配慮をお願いしてきたところである。
今回の法改正においては、系統の取組と行政庁の援助が法律上明確に位置付けられたところであり、その趣旨にかんがみ、水産関連施策の計画の樹立及び実施に当たっては、基本計画において定められる合併に係る組合が行う事業の強化に関する事項、(2)のウにより作成される合併後の組合のビジョン、第4の合併及び事業経営計画に特に留意し、合併実施組合に係るものを優先的に採択する等、より一層の配慮を行うこととされたい。
(4) 合併の協議に関する助言及び指導
法第8条の規定により合併の協議に関する助言及び指導を行うに当たっては、組合の実態及びその地域における自然的・経済的・社会的諸条件を総合的に勘案する必要があるが、その対象となり得ると考えられる一般的な事例を示すと次のとおりである。なお、これらの場合であっても、組合の合併は、基本的に組合及び組合員の自主的な意思により実現されるべきものである点に十分配慮することとされたい。
ア 当該組合が、経営が不振であることや、事業基盤が零細であること等により今後の健全な組合運営に支障を来すと見込まれる場合であって、合併に参加することが当該組合にとって極めて有為であると判断される場合
イ 当該組合を含む周辺地域で、合併の協議と併せて、産地市場の統合等産地流通の合理化の計画が検討されている場合において、合併に参加することが当該組合にとって極めて有為であると判断される場合
ウ 当該組合を含む周辺地域で、合併の協議と併せて、水産資源の保護、保存及び管理の取組が検討されている場合において、合併に参加することが当該組合にとって極めて有為であると判断される場合
第4 合併及び事業経営計画の樹立等についての留意事項
合併及び事業経営計画については、通達の記の第3によることとするが、今後の合併の推進に当たっては、特に次の事項に留意されたい。
(1) 合併及び事業経営計画の記載事項
合併及び事業経営計画(以下(3)までにおいて「計画」という。)の内容は、法第3条第1項及び第2項に規定されているが、今回の改正により追加された固定した債権の償却に関する方策について、その一般的な記載事例を示すとおおむね次のとおりである。
固定した債権の償却に関する方策
ア 基本的合意事項
イ 債権の譲渡等により合併前の組合で処理する固定した債権に関する事項
ウ 合併組合に引き継ぐ固定した債権に関する事項
エ 合併組合に引き継ぐ固定した貸倒引当金等の総額
オ 固定した債権の償却等に関する計画
(2) 計画の認定要件等
ア 組合の運営は、自然的・社会的・経済的条件や漁場の範囲等に左右されることから、合併後の組合の規模の標準を画一的に定めることは困難である。
しかし、法の趣旨に即して合併の効果が適正に発揮される必要があるため、計画の適否については、通達の記の第3の3の(2)にかかわらず、[1]離島、半島等地理的条件により隔離された地域、漁業の種類・形態が著しく異なる地域若しくは組合員の漁業を営む海域が著しく異なる地域であって、早急に市町村単位以上の合併を行うことが困難と認められる場合又は[2]不振組合の救済を目的とする場合を除き、次の要件のいずれかに該当する場合以外は、原則として認定を行わないこととする。
(ア)合併後の組合の地区が市町村の区域以上であること。
(イ)合併後の組合の組織及び事業の規模が、原則として常勤役職員数、正組合員数、出資金及び販売事業取扱高が次に掲げる規模以上であること。
常勤役職員数 20人
正組合員数 250人
出資金 2億円
販売事業取扱高 20億円
イ 計画の適否は、法第4条第1項の規定により学識経験者の意見を聴いて判断する必要があるが、今回、推進法人制度が設けられた趣旨にかんがみ、計画の財務面の適否を慎重に判断する必要があるケースについては、推進法人が指定されている都道府県にあっては、学識経験者に推進法人の理事を含めることが望ましく、特に固定した債権の償却に関する方策が定められている合併及び事業経営計画については、推進法人の理事から意見を聴いて認定を行うようにされたい。
(3) 計画の樹立等に関する援助
計画の樹立に当たっては、当該組合の特性に十分配慮し、合併後の組合の事業等の円滑な実施に資するものとなるよう、また、その実施に当たっては、計画が円滑に実施され、合併後の組合の財務改善、事業基盤の強化が図られるよう、組合に対して必要な助言、指導その他の援助を行うよう努められたい。
また、第3の(3)による配慮のほか、合併のための水産施策の積極的な推進に努められたい。
なお、これらの援助を行う場合においては、関係市町村の協力が得られるよう努められたい。
第5 推進法人の指定等に関する留意事項
1 推進法人の指定
(1) 推進法人は、都道府県知事が、民法(明治29年法律第89号)第34条の規定に基づき設立された公益法人であって法第10条に規定する業務をその主たる業務として適正かつ確実に行うことができるものを都道府県に一を限って指定するものであるが、当該指定を受けるため新たに公益法人が設立されることとなる場合には、法人設立の段階からその定款等や組織体制が的確なものとなるよう指導されたい。
また、既存の公益法人を指定する場合においても、定款等の改正につき適正な御指導をお願いする。
(2) 推進法人が租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)第39条の22の規定に基づき大蔵大臣の指定を受けたときは、法定業務に係る基金に充てるための負担金につき損金算入の特例が認められることとなるが、当該基金は長期間にわたって使用され、推進法人の業務推進上不可欠なものであるので、その設置及び充実方法については特段の御指導及び御配慮をお願いする。
なお、当該指定を受けるための手続等については、おって通達するものとする。
2 推進法人の業務
推進法人の業務の実施に当たっては、公正かつ効果的な運営の確保が重要であるので、次の事項に留意の上、推進法人の適切な業務運営が図られるよう指導されたい。
(1) 債権買取業務(法第10条第1号)
本業務は、固定した債権を有する組合を含む合併の場合において、合併に係る組合が合併及び事業経営計画に定められた固定した債権の償却に関する方策に従い実施する措置として譲渡する固定した債権の取得、管理及び回収を行う業務である。
ア 固定した債権
固定した債権とは、法人税法(昭和40年法律第34号)第52条の規定に基づく貸倒引当金の引当ての対象となる債権のうち次に掲げるものをいう。
[1] 弁済期到来後1年を経過し、その間元本及び利息の支払のないもの
[2] 当初の契約で定められた弁済期がその後延長され、延長後の弁済期到来後なお元本及び利息の支払がない債権で、当初の契約で定められた弁済期到来後1年を経過したもの
イ 買取りの対象としない固定した債権
固定した債権のうち次に掲げるものは、買取りの対象としないものとする。
[1] 損害額が確定し、損金による貸倒償却が必要な債権
[2] 不正融資に係る債権で、生ずべき損失が役職員の補てんにより回収されることが確定している債権
[3] 合併前に回収が可能な債権
[4] 制度保証、金融機関保証等確実な保証のある債権で、最終の回収に懸念がない債権
[5] 実質的に買取価格のない債権
[6] 担保物権に複数債権者の抵当権等が設定され、回収に相当の困難が伴うものや長期間を要すると認められる債権
[7] 成立に欠陥があったり、損失額についての理事の責任度合いについて議論があるなど争いのある債権
[8] 差押え、所有権移転手続中の物権を担保としている債権等係争中の債権
[9] 利害関係者が多数に及ぶ等回収に当たり困難性を伴う債権
[10] その他回収可能性等を勘案し買取りの対象になじまない債権
[11] その他推進法人が買取りの対象とする必要がないと認める債権
ウ 債権買取価格
買取債権の価格決定は、不動産鑑定士の不動産鑑定価格、信用調査等により客観的な回収可能性を評価するとともに、推進法人の機構の中に、社団法人日本不動産鑑定協会や都道府県の不動産鑑定士協会、税理士会、弁護士会の役員等の学識経験者からなる「価格判定委員会」を設置し、適正な価格審査を経て行うこととする。
(2) 利子補給業務(法第10条第2号)
本業務は、固定した債権を有する組合を含む合併の場合において、合併後の組合が合併及び事業経営計画に定められた固定した債権の償却に関する方策に従い実施する措置につき必要な資金の貸付けを行う金融機関に対し利子補給金を交付する業務である。
ア 固定した債権
(1)のアに同じ。
イ 助成の対象としない固定した債権の額
固定した債権の額のうち次に掲げるものは、助成の対象額に含めないこととする。
[1] 損害額が確定し、損金による貸倒償却が必要な債権の額
[2] 不正融資に係る債権で、生ずべき損失が役職員の補てんにより回収されることが確定している債権の額
[3] 合併前に回収が可能な債権の額
[4] 債権償却特別勘定に計上した債権の額
[5] 制度保証、金融機関保証等確実な保証のある債権で、最終の回収に懸念がない債権の額
[6] その他推進法人が助成の対象とする必要がないと認める債権の額
ウ 利子補給対象額
合併参加組合ごとにアの固定した債権の額からイの助成の対象としない債権の額及び次に掲げる額を控除して得た額の合計額に相当する借入金額を利子補給金の交付対象とする。
[1] 貸倒引当金の法定限度額
[2] 合併日前1年以内に終了した事業年度に係る当期未処分剰余金から剰余金処分によって積み立てられた水産業協同組合法第55条第1項に規定する準備金の額及び同条第4項の規定に基づく繰越金の額並びに同法第56条第2項に規定する配当金の額を控除した額
エ 利子補給の率
利子補給の率は、合併組合に引き継がれる固定した債権の回収の難易度、損害の見込額等を参酌し、推進法人が設置する「審査委員会」で審査の上決定することとする。
オ 推進法人の調整等
推進法人は、利子補給対象額及び利子補給の率を決定するに当たっては、公正かつ適切な業務の実施を確保するため、基金の規模や合併組合間の均衡等を考慮し、必要な限度で利子補給対象額及び利子補給の率の調整を行うことができることとする。
(3) 指導業務(法第10条第3号)
本業務は、(1)及び(2)の業務を行うに当たって、合併前の組合が、固定した債権を、合併前に処理しておくべきものと合併後の組合に引き継いで処理していくものとに区分し、それぞれについてどのような手法で処理していくのかを決定し、これを実行するための指導を行う業務である。このため、推進法人に対しては、当該業務についての専門的な知識を有する人材の確保に努め、積極的な業務の実施を図るよう指導されたい。
(4) 照会・相談業務及び情報資料収集提供業務(法第10条第4号及び第5号)
これらの業務は、合併の円滑な推進に資するため、合併時の財務調整や合併後の組合の財務管理システムの構築、財務診断、経営分析に関する照会、相談等に応じたり、組合の財務管理に関する情報又は資料の情報提供、機関誌の発行等を行う業務であるので、合併予定組合及び合併組合がこれらの業務を十分利用できるよう推進法人の体制整備につき適切な御指導をお願いする。
(5) その他の業務
推進法人は、その他の業務として、上記法定業務及び法定業務に附帯する業務のほか、定款の目的規定の範囲内で公益法人としての業務を行うことができる。ただし、その場合、推進法人は法定業務を主たる業務とする法人である必要があるため、法定業務以外の業務が推進法人の業務全体に占める割合は、相対的に小さなものとならざるを得ない。また、法定業務以外の業務のために法第14条の基金及びその運用益を使用することはできないので、その点に留意の上推進法人を適切に指導されたい。
第6 合併後の組合の指導
組合の合併の意義は、合併後の組合を組合員の負託に応え適正かつ能率的な事業運営を行うことができ、かつ、責任ある業務執行体制が確立されている組合とすることにあるが、合併後の組合は資産規模や事業量等が増大することから、その事業運営には種々の困難が伴うので、都道府県は、系統組織及び市町村等と一体となって合併の効果が十分に発揮されるよう必要な指導及び支援に努めることとされたい。
また、合併後の組合は、その規模の拡大や地区の広域化により組合と組合員、組合と生産部会、青年・婦人部等の組合員組織及び組合と市町村行政との関係が希薄化することのないよう、組合の事業運営に当たっては、組合員等の意向を十分に反映するよう努めるとともに、市町村と広域合併組合との連絡協議会の設置等を図るよう積極的に指導されることとされたい。