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農林水産省

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漁業協同組合合併助成法の施行について

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42水漁第5486号
昭和42年7月27日
最終改正:昭和50年3月31日 50水漁第969号

都道府県知事あて

農林事務次官


 今般、漁業協同組合合併助成法(昭和四十二年法律第七十八号。以下「法」という。)および漁業協同組合合併助成法施行令(昭和四十二年政令第二〇二号。以下「令」という。)が、昭和四十二年七月二十四日から施行され、国においては、今後これに基づき漁業協同組合(内水面組合を除く。以下「組合」という。)の合併を促進することとなつた。ついては、法の趣旨にかんがみ、下記事項を御了知のうえ、合併の推進及び指導に遺憾のないようにされたい。

 以上、命により通達する。


第1 法制定の趣旨
水産業協同組合法(昭和二十三年法律第二百四十二号)が制定されてから、組合は、沿岸漁民の協同組織として、その経済的、社会的地位の向上と漁業生産力の増進に寄与してきた。
しかしながら、近時、国民経済の発展と漁業をとりまく諸般の情勢の変化に伴い、販売、購買、信用、利用等各方面における組合の役割はますます重大になつてきているにもかかわらず、組合全般についてみると組合が地先漁業権の管理と密接に結びついていたという歴史的事情もあつてその規模は極めて狭小であり、経営基盤が弱小なため組合としての活動を十分期待できないものも少なくない状況にある。
従来、政府は漁業協同組合整備促進法(昭和三十五年法律第六十一号。以下「整備促進法」という。)に基づき不振組合の整備に努めてきたが、同法はおおむね所期の目的を達成したので、同法に基づく整備計画の樹立の期限が昭和四十二年三月三十一日に終了することを契機に、最近の経済情勢に対応できるような組合を広範に育成する見地から、組合の合併を促進し、漁業に関する協同組織の一層の強化を図ることとした。
いうまでもなく、組合の合併は、組合の自主的な運動によつて実現されるべきものであるが、合併に当たつては種種調整を要する点があるのみならず、組合合併の緊要性にかんがみ、国においても、組合の合併についての援助、合併後の組合の事業経営の基礎を確立するのに必要な助成等の措置を講じて、組合の合併を積極的に促進するため本法が制定されたものである。
第2 合併促進に当たつての留意事項について
組合の合併は、組合の自主的な活動により実現されるべきものであるが、漁業協同組合系統諸団体および市町村等の協力および援助に負うところも大であるので、都道府県は、これら諸団体の協力および援助を得て、とくに次の点に御留意のうえ、組合の合併について積極的な御指導を願いたい。
1 都道府県は第三の三の(1)の合併協議会の開催等の措置を講ずることにより、系統諸団体、市町村等と緊密な連携を保つて、常時継続的に合併についての啓発指導を行ない得る体制を確立すること。
2 合併しようとする組合の関係地区ごとに合併協議会を設置する等の方法により、関係組合間の合併に関する協議を促進し、合併の円滑なる推進を図るとともに地区内の関係団体、市町村等の協力および援助を確保するよう指導すること。
3 合併についての啓発指導に当たつては、過去に行なつた検査結果その他の諸資料に基づいて個々の組合につき具体的に合併の必要性および可能性等を検討して合併指導の対象とする組合を選定する等体系的、計画的に措置すること。とくに漁港、構造改善事業等との関連に留意し、組合合併が地域経済発展の一つの契機となるよう指導すること。
4 合併しようとする組合に欠損金がある場合には、できる限り合併前にその補てん等に努めるとともに、合併後の組合に欠損金を引き継ぐ場合にあつては、その補てん計画等を十分に検討し、欠損金が合併後の組合の事業経営および財務に過大な影響を与えないように指導すること。
5 合併しようとする組合が漁業権を有している場合には、合併を契機として、漁場の高度利用、操業の合理化のために旧組合単位の漁業権の行使方法を改め、新組合の組合員全員が新しい漁業権行使規則の下で平等に操業することがもとより望ましいことではある。
しかし、当面、漁業権の取扱いの変更が合併の障害になると見込まれるときは、その行使方法は合併後も従来どおりとする等漁業権の取扱いについては関係組合の組合員の意思を十分は握し、とくに慎重に指導すること。
第3 合併および事業経営計画について
1 合併および事業経営計画の内容
合併および事業経営計画(以下「計画」という。)の内容は、法第三条第一項に規定されているが、その具体的記載事項については、都道府県が組合に関し学識経験を有する者の意見をきいて、合併しようとする組合の実態およびその地区における諸条件に即し、最も適当であると認められるものを適宜定めるよう指導されたい。なお、一般的な記載事例を例示するとおおむね別記に揚げるとおりである。
2 計画の樹立
計画の樹立に当たつては、総会において議決する前に部落座談会等により組合員にその趣旨内容を周知させ、組合員の意志を十分に反映するようにすることはもちろん、あらかじめ、系統諸団体、市町村等の意見をも聴取するよう指導されたい。
また、計画を議決する総会は、合併しようとする各組合ができるだけ同じ日に開催するようにし、議決を得たならば、すみやかに、各組合の代表者が連名でその認定申請を都道府県知事に対し行なうよう指導されたい。
なお、計画の議決は、合併の議決を行なう総会において行なうこともさしつかえないが、この場合には、それぞれ個別の議案を提出し、議決しなければならない。
3 計画の認定
(1)令第一条の学識経験者について
法第四条第一項により都道府県知事が計画の認定をする場合に意見をきかなければならない「組合に関し学識経験を有する者」の範囲および人数については、令第一条に規定しているが、法第四条第一項の運用に当たつては、令第一条の学識経験者をもつて合併協議会を開催する方式で意見をきくことが望ましい。ただし、法第四条第一項は、学識経験者個々の意見をきく趣旨であり、多数決による協議会の意見を要求しているものではない。
(2)認定について
計画の適否は、組合に関し学識経験を有する者の意見を十分にきいて、法第四条第二項各号の要件をみたすかどうかを具体的に判定されたい。
この場合における適否の認定の基準については、画一的に定めることは困難ことではあるが、組合の現状からみて、合併後の組合の年間地区内水揚高(組合員の組合の地区内への水揚高と組合員以外の者の組合への水揚高との合計額をいう。)が八千万円以上であり、かつ、常勤役職員の人数の合計が合併の日から起算して一年を経過した日を含む事業年度の終了した日において六人以上であることが一応の目安として適当であると考えられる。したがつて、この基準に適合しない計画につき適当である旨の認定をしようとする場合には、合併後の組合が自然的、社会的、経済的条件及び組合員の営む漁業の状況等からみて、基準に適合はしないが、適正な事業経営を行うことができると認められるときは、基準の趣旨を没却しない範囲において認定しても差し支えない。
第4 助成措置について
助成措置については、法第五条および令第二条に規定されており、とくに施設費補助金については国の補助の額以上の額を都道府県が補助した場合にのみ国は補助することとなつているが、合併を促進することの意義および必要性にかんがみ、組合の合併について、これらの助成措置に係る助成のほか、都道府県、系統諸団体および市町村等においても、できる限りの援助を行うよう御配慮願いたい。
第5 漁業権行使規則の変更等についての特例について
漁業権の取扱いについては、上記第二の五のとおり特段の配慮を願いたいが、漁業権問題が合併の際にその障害となることが多いことにかんがみ、漁業権行使規則(以下「行使規則」という。)の変更等について次の特例を設け、合併の円滑化を期すこととしたので、御了知のうえ遺憾のないようにされたい。
1 法第六条第一項
本項は、第一種共同漁業を内容とする共同漁業権に係る行使規則を合併後において変更し、または廃止しようとする場合には当該共同漁業権を有していた旧組合の組合員の同意を要することとし、これらの組合員の意志を尊重することとしたものである。すなわち、当該共同漁業権の変更または廃止をしようとする場合には、一般に、次の(1)の各要件に該当する者の三分の二以上の書面による同意を得なければならないこととなつている(漁業法第八条第五項において準用する同条第三項)が、合併しようとする組合が当該共同漁業権を共有している場合には、(1)の各要件のうち、アの要件には該当しないがイおよびウの要件に該当する者が多数存在することが考えられ、このような組合が相互に合併した場合には、合併後はこれらの者はすべてアの要件にも該当することとなるため、組合員数の少なかつた旧組合の組合員の意思に反して行使規則の変更等がなされるおそれが生ずる。共有の場合のみならず、単独有の場合でも、当該共同漁業権に係る関係地区が合併しようとする他の組合の地区と重複しているときには、同様の問題が生ずることが考えられる。そこで、法に基づき合併した組合が当該共同漁業権の存続期間中においてその行使規則の変更または廃止をしようとする場合には、上記漁業法上の手続を経るほか、次の(2)の各要件に該当する者の三分の二以上(当該合併前の組合のうちに当該共同漁業権を共有していた二以上の組合が含まれていた場合にあつては、これらの組合ごとにこれらの者の三分の二以上)の書面による同意を得なければならないこととしたものである。
(1)漁業法第八条第五項において準用する同条第三項の規定による同意を求められるべき者の要件
ア その組合の組合員であること。
イ 沿岸漁業(注1)を営んでいること(当該共同漁業権に係る漁場の区域が河川以外の内水面(注2)である場合にあつては当該内水面において漁業を営んでいること、河川である場合にあつては当該河川において水産動植物の採捕または養殖をしていること。(2)のイにおいて同じ。)
ウ 当該共同漁業権に係る関係地区の区域内に住所を有すること。
(2)法第六条第一項の規定による同意を求められるべき者の要件
ア 合併後の組合の組合員であること。
イ 沿岸漁業を営んでいること。
ウ 当該共同漁業権に係る関係地区の区域内に住所を有すること。
エ 当該合併の際に、合併前に当該共同漁業権を有していた組合の組合員であつたこと。
(注1)沿岸漁業とは、総トン数二〇トン以上の動力漁船を使用して行なう漁業および内水面における漁業を除いた漁業をいう。
(注2)内水面とは、漁業法第八十四条第一項の規定により主務大臣が指定する湖沼(琵琶湖、霞ヶ浦、北浦及び外浪逆浦、浜名湖、中海、加茂湖、猿澗湖、風蓮湖、厚岸湖、温根沼)を除いたものをいう。
整備促進法においても、共有の場合については同様の特例を設けている(同法第十五条)が、法は、共有の場合のみならず、単独有の場合についても特例を認めることとしている。
2 法第六条第二項
本項は、整備促進法により合併した組合がさらに法により合併した場合における行使規則についての特例を規定している。
すなわち、整備促進法第十五条の規定は、同法の規定に基づく勧告により合併した組合が存続する限りにおいて適用されることとなつているが、同条の規定の適用を受けていた組合が法による合併に伴い解散した場合にも同条の適用を認めることとしたものである。
第六 合併後の組合について
組合の合併の意義は、合併後の組合の事業経営が適正かつ能率的に行われるかどうかにかかつているが、合併後の組合は、規模が拡大され事業量も増大する等のことからその事業経営には種々困難な点があるので、都道府県は、系統諸団体、市町村等と緊密な連携を保つて合併の効果が十分に発揮されるようその事業経営につき必要な指導および援助を積極的に行なわれたい。

別記
合併および事業経営計画の記載事例
(1)合併についての基本方針および合併契約の基本となるべき事項
ア 合併しようとする組合の名称
イ 合併の目的、方法および日程
ウ 職員の引継ぎ、財産の評価および整理
エ 設立委員の選出および人数
オ 新定款または定款変更の基本となるべき事項
カ 出資一口金額に対する持分の調整
(2)合併後の組合の事業経営についての基本方針
ア 各事業の実施方針、重点および改善事項
イ 機構および業務分掌など経営管理の改善強化
ウ 増資、欠損補てん、財務の健全化
(3)施設の統合整備に関する事項
ア 施設の種類
イ その施設の統合整備の概要
(4)合併後の組合と組合員との間における利用および協力を強化するための方策
ア 組合員の意思を事業経営に表わす方法
イ 事業経営方針の組合員への徹底方法
ウ 下部組織および協力組織の育成強化
(5)合併後の組合の三事業年度の事業計画
ア 各事業年度別の取扱品目、取扱数量、手数料率、利率
イ 各事業の年度別の損益計画