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農林水産省

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中小漁業融資保証保険制度における保証保険収支の改善について

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57水漁第1532号
昭和57年3月31日
改正:平成16年3月16日 16水漁第2782号

都道府県知事あて
漁業信用基金協会あて

水産庁長官


 最近における漁業経営状況の悪化に伴い、中央漁業信用基金(以下「中央基金」という。)の56年度の保証保険の保険金支払額が約50億円に達し、また引き続き57年度においてもそれ以上の額となることが見込まれることから、保険収支が大幅に悪化することが予想されるため、中小漁業融資保証保険制度について早急に見直しを行い改善を図る必要が生じてきている。
 この保険収支の改善のためには、まず漁業経営それ自体の改善を図ることが基本であり、このため、57年度から業界の自助努力を基本とする計画的な減船、施設の合理化等漁業生産構造の再編整備を推進するため、これに参加する漁業者の負債整理の円滑化のための漁業経営負債整理資金制度の創設等漁業経営安定対策の充実を図ることとしたところであるが、これと併せて、中小漁業融資保証制度に内在する問題についても改善を図ることとした。
 このような観点から、まず緊急融資資金の一部について保証保険料を引き上げることとし、中小漁業融資保証法施行令の一部を改正する政令(昭和57年政令第82号)が昭和57年3月31日に公布され、同年4月1日から施行されることになつた。またこれと併せて、保険料率の引上げに伴う保証料率の引上げ、保証割合の引下げに代替する措置の実施及び被保証人1人当たりの保証の金額の最高限度の設定を行い、昭和57年度から実施する方針とし、このため「漁業信用基金協会業務方法書(例)」(以下「業務方法書例」という。)並びに「漁業信用基金協会と金融機関との間の契約書(例)」及び「漁業信用基金協会と金融機関に指定された漁業協同組合との間の契約書(例)」(以下「契約書例」という。)の一部をそれぞれ別紙のとおり改正した。
 こららの趣旨及び留意すべき事項は下記のとおりであるので、御留意の上、業務方法書の変更認可申請手続等につき遺憾のないように取り進められたい。
 なお、以上の諸処置と併せて別途債務保証対象資金別の収支状況等を明らかにする等により、漁業信用基金協会(以下「協会」という。)の業務等の健全な運営の確保を促進するため、協会の業務、収支状況等に関する協会の業務報告書の様式においては、一般資金を借替資金である緊急融資資金、その他の緊急融資資金及び緊急融資資金以外の一般資金の三つに区分した内訳を作成することとする予定であるが、この業務報告書の様式の改正については、別途通達する。
 おつて、今回の措置は、当面の応急的見直し措置であり、中小漁業融資保証制度の基本的あり方についての抜本的見直しについては、今後予定している「制度金融全体のあり方」、「系統金融のあり方」等に関する検討の一環として、今後早急に行うこととしているので申し添える。

1 保証保険料率の引上げ及びこれに伴う保証料率の引上げ
(1)ここ数年来保証保険収支が毎年赤字であり、累計収支も赤字である「借替資金である緊急融資資金」の保証保険料率が必要最小限の範囲内で次のとおり引き上げられ、本年4月1日以降に成立する保険関係から適用されることとなつた。(中小漁業融資保証法施行令(以下「施行令」という。)第5条)。

保証保険料率
(2)なお、対象とする資金としては、施行令第5条の表第3号に基づき4月1日付けで漁業経営維持安定資金が指定される見込みであるが、57年度予算に計上されている漁業経営負債整理資金についても、おつてすみやかに指定される予定である。
(3)今回の保証保険料率の引上げに当たつては、保険料率算定の基礎とした保険事故率(代位弁済の発生率)及び求償権に係る回収率が2に掲げる保証割合の引下げに代替する措置により相当程度改善されるものと見込んでいることに留意し、2に掲げる措置を実施することが必要である。
(4)保証保険料率の引上げに伴う協会の負担増については、末端漁業者への波及を必要最小限にとどめる範囲内での当該緊急融資資金についての保証料率の改定を認めることとし、その改定については協会ごとにその実情に応じて指導する予定である(業務方法書例第15条)。
なお、この新保証料率は、業務方法書の変更の施行の日以後に成立する保証関係から適用されることとなる(業務方法書例附則第4項)。
2 保証割合の引下げに代替する措置
(1)協会は、債務保証契約における約定に伴い、借替資金である緊急融資資金について代位弁済を行つたときは、当該金融機関から所定の特別出資を受けることとする(業務方法書例第36条の2第1項、契約書例第9条の2)。この措置の趣旨は、金融機関が代位弁済を受けた場合に応分の負担をすることをあらかじめ約定することにより融資等の適正な実施の確保を期することにある。
なお、同様の趣旨のもとに特別出資に代えて、当該金融機関が交付金、負担金等の支払いにより措置することを希望する場合における取り扱いについては、別途通知するので、それによられたい。
(2)(1)の特別出資の額は、金融期間ごとに代位弁済額から特別出資をするときまでに求償権を行使して取得した額を控除して得た残額(以下「対象弁済残額」という。)の合計額の原則として10%に相当する額とするが、例外として当該金融機関(業種別協会の場合には当該協会)に係る当該緊急融資資金の前年度末における累計事故率が協会の当該事故率の全国平均値を下回る場合には5%に相当する額でよいこととした(業務方法書例第36条の2第2項)。
なお、この場合当該事故率の全国平均値は、全国の各協会の累計事故率の加重平均値として毎年度別途通知する数値によるものとする。
(3)(2)の累計事故率は、当該特別出資に係る保証契約に締結された年度の前年度末現在において、当該金融機関(業種別協会の場合は当該協会)に係る当該緊急融資資金につき、その代位弁済額の累計額を当該累計額とその弁済額の累計額(漁業経営安定特別対策事業により現に償還猶予措置の適用を受けている金額を含む。)とを合計した額で除して得た数値により、算出するものとする(業務方法書例第36条の2第2項)。
この場合、次の事項に留意すること。
ア 「漁業経営安定特別対策事業により現に償還猶予措置の適用を受けている金額」とは、同事業により現に措置期間の延長若しくは中間措置期間の設定又は償還期限の延長の措置の対象となつている金額をいう。
イ 事故率の算定に当たつては、減船を行つている業種に属する漁業を主として営む漁業者に係る代位弁済額については、業種ごとに所要の調整係数を乗じて得た金額によることができるものとする。
(4)(1)の特別出資は、当該年度末における対象代弁残額につき毎年度終了後遅滞なく行うものとする(業務方法書例第36条の2第2項)。
(5)協会は、(1)の特別出資が資金の転貸又は他の金融機関との協調融資に係る保証債務に係る場合においては、(1)にかかわらず(1)の金融機関及び当該転貸又は当該協調融資に係る他の金融機関からの申し出に基づき、(1)の特別出資の一部を当該他の金融機関から受けることができる(業務方法書例第36条の2第5項)。
この場合、次の点に留意する必要がある。
ア 「当該転貸に係る他の金融機関」としては、[1]転貸資金についていわゆる末端保証を行つている場合は転貸原資の貸付金融機関が、[2]転貸資金についていわゆる上部保証を行つている場合は転貸原資の供給を受けている金融機関がそれぞれ該当する。
イ 「当該協調融資に係る他の金融機関」としては、貸付限度額を超える部分について協調融資を行つてもらつている他の金融機関が該当する。
(6)(5)により特別出資の分担の申し出をする場合は、当該金融機関及び当該他の金融機関は連名で当該特別出資について分担する旨及び分担の割合を協会に通知しなければならない(業務方法書例第36条の2第6項)。
この場合、分担する旨及び分担割合の通知があつたときは、協会は当該分担割合に従つて他の金融機関が分担することとなる額については第1次的には当該他の金融機関に特別出資の請求を行う。しかし、(1)の当該金融機関はその分担割合に従つて当該他の金融機関に分担させることとした額の特別出資について、特別出資の義務を免れるものでなく、協会が分担に従つて当該他の金融機関から特別出資を受け入れた際にその限りにおいて当該義務を免れるものである。
(7)特別出資の額の算出に当たつては、特別出資が協会の体質強化等のために行われるものであることにかんがみ、通常の出資の算出とは別建てのものとして行うものとする。
したがつて、特別出資を行う一方で通常の出資をみだりに減資することのないようにする必要がある。
なお、特別出資の管理等については、通常の出資、繰入金、交付金等と同様に保証債務の弁済に充てるための基金として管理するものとする。
(8)(1)の特別出資をした後において、当該対象代弁残額に係る求償権の残高の全部又は一部が回収された場合にあつては、当該特別出資のうち回収された求償権の額に相応する部分の額は、当該回収のあつた年度の翌年度以降に行われる特別出資の額においては2の(2)により算出される額から控除することができることとする(業務方法書例第36条の2第4項)。
したがつて、当該控除額が翌年度に算出される特別出資の額を上回る場合には更に翌々年度以降に順次繰越して要特別出資額から控除できるという趣旨である。
(9)なお、以上による保証割合の引下げに代替する措置を一挙に実行に移すことに伴う混乱を防止するため、経過措置を設けることとし、今回の業務方法書の改正の際現に協会の保証を受けている借入金債務(漁業経営維持安定資金の借入金債務を除く。)の整理をこの業務方法書の変更の施行の日から1年以内の間に漁業経営維持安定資金の借入れにより行う場合における当該資金の借入れにつき行う債務保証については、今回の保証割合の引下げに代替する措置の対象とせずに従来通りの扱いによることができることとされている(業務方法書例附則第3項)。
(10)保証割合の引下げに代替する措置としての特別出資は、業務方法書の変更の施行の日以後に成立する保証関係について適用される。
(11)以上により、特別出資を受けた協会は、遅滞なく、当該特別出資の額のうち保険関係相当部分の80%相当額を中央基金に対し出えん(以下「特別出えん」という。)するものとする。
この場合において、
ア 特別出えんの実施及び払戻しは、中央基金の保証保険約款の定めるところにより、当該緊急融資資金の保証保険契約においてあらかじめ約定するところに従つて行われるものとする。
イ 協会は、この特別出えんを行うときは、中小漁業融資保証法第43条との関連もあり(1)から(9)までに定めるところにより金融機関から受け入れた特別出資を直接充当できないことに留意する必要がある。
ウ 特別出えんは、信用基金において資本剰余金として会計される。
3 1被保証人当たりの保証の金額の最高限度の設定
(1)1被保証人当たりの債務保証の金額(その者が会員たる漁業協同組合等の組合員として保証を受けている場合における当該保証額及びその者が被保証人である漁業協同組合等から転貸を受けている場合であつて、当該漁業協同組合等が当該転貸資金の借入れにつき保証を受けているときにおけるその者に対する当該転貸額を含む。)が、前年度末における当該協会の基金等現在高(未収保険金を含む。)の5分の1の額を超えている場合は当該被保証人については新たな保証は行わないよう措置することとした(業務方法書例第3条第3項)。
被保証人1人当たりの保証最高限度額をこのように設定することとした趣旨は、少なくとも5人の被保証人が同時に代弁事故に至らない限り、当該協会の基金の著しい欠減により協会の保証業務が著しく不安定となるような事態が発生しないこととなるように措置することにある。
この場合、次の事項に留意する必要がある。
ア この限度額の規制は、組合を除く中小漁業者等に対し適用されるものである。
イ この規制は、[1]会員としての被保証額、[2]会員たる組合の組合員として当該組合の出資の共同利用による被保証額及び[3]組合が転貸に要する資金について保証を受けて転貸する場合の転貸額の合計が対象となる。
したがつて、[1]、[2]及び[3]の合計額が保証最高限度額を超えることとなる場合は、新たに保証はできない。
ウ なお、被保証人たる組合が転貸する場合は、当該組合の転貸資金の元本の残高に係る保証の額の合計額が協会の基金等現在高の5分の1の額に転貸先の中小漁業者等の人数を乗じて得た額を超えることはあり得ないので留意されたい。
(2)経過措置として、今回の最高限度額の設定の際、現に債務保証額が(1)の限度額の100分の85に相当する額を既に超えている者については、今回の限度額設定後2年間に限り、現債務保証額に10分の12(現債務保証額が今回の最高限度額の2倍を超える場合にあつては、その超える部分については10分の11)を乗じて得た額をその者についての経過的な保証金額の最高限度額とする(業務方法書例附則第2項)。
この場合において、はまち・たい等の養殖業のように資金需要が特定の季節に集中する業種でその季節が今回の最高限度額設定の時期とは異なる時期であるものについては業務方法書例附則第2項の経過措置に特例を設けることを認める方針であるが、この種の特別な配慮を要する場合における本経過措置の特例の設定については、別途指導するのでそれによられたい。

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