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水産業協同組合法の一部を改正する法律の施行について

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5水漁第3322号
平成5年10月15日

都道府県知事あて

農林水産事務次官


 水産業協同組合法の一部を改正する法律(平成5年法律第23号。以下「改正法」という。)が第126国会において成立し、平成5年4月23日公布され、同年10月15日付けで施行されたところである。
 また、これに伴い、水産業協同組合法施行令(平成5年政令第328号。以下「施行令」という。)並びに水産業協同組合法施行規則の一部を改正する省令(平成5年農林水産省令第56号)及び漁業協同組合等の信用事業に関する省令の一部を改正する省令(平成5年大蔵省・農林水産省令第9号)が同日付けで施行された。
 改正後の水産業協同組合法(昭和23年法律第242号。以下「法」という。)の運用に当たっては、下記の事項に留意し、法律改正の趣旨の実現に特段の指導を願いたい。
 以上、命により通達する。

第1 法律改正の趣旨
水産業協同組合法は、漁民及び水産加工業者の自主的な協同組織の発達を促進し、その経済的社会的地位の向上と水産業の生産力の増進を図ることを目的として、昭和24年に施行され、以来、経済環境や漁業及び漁村をめぐる情勢の変化に対応して、水産業協同組合(以下「組合」という。)の健全な育成を通じ、漁業の振興や漁村の発展に寄与し得るよう、所要の改正が行われてきたところである。
近年における我が国漁業及び漁村をめぐる情勢は、国際漁業規制の一層の強化、我が国周辺水域における資源状態の悪化、担い手の減少及び高齢化、金融自由化の一層の進展等大きく変化しており、漁業者及び水産加工業者の協同組織たる組合は、組合員の負託にこたえるため、その事業活動を通じて、水産業の振興、漁村地域の活性化等の役割を一層適確に果たしていくことが強く求められているところである。
しかしながら、組合の多くは、総じて規模が零細で、取扱事業量の減少・伸び悩み、固定化債権の増大等厳しい経営状況に直面している。今後とも、組合が、社会・経済情勢の変化に適切に対応し、本来の使命を果たしていくためには、その自主的努力にまつところが大きいことはもとよりであるが、制度面においても、組合の行うことができる事業の内容を充実するとともに、執行体制の強化を図る等の改善を進めていくことが緊要となっている。
今回の法律改正は、このような状況に対処するため、[1]漁業振興及び漁村地域の活性化のための組合の事業内容の充実、[2]適切な組合運営を確保するための経営管理体制の整備、[3]組合の経営基盤の強化のための事業譲渡規定の整備等を行ったものである。
第2 資源管理規程制度の創設
1 趣旨及び内容
(1)趣旨
水産資源の減少、国際規制の強化、漁場環境の悪化等の状況の中で、我が国周辺水域における漁業の振興が重要な課題となっているが、特に、最近では、資源管理型漁業の推進の必要性が高まってきている。
漁業協同組合及び漁業協同組合連合会(以下「漁協等」という。)は、従来から、水産資源の保護培養のため、種苗の放流や漁場の整備などを積極的に行ってきたが、今後は、特に、水産資源の管理という観点から、組合員の行う漁業について、その適正な実施を図るため、計画的な漁獲の指導を行っていくことが重要である。
このような状況に対処するため、今回の法改正においては、漁協等の事業について従来の「漁場の利用に関する施設」の一環として、新たに、水産資源の管理に関する事業が明確に位置付けられた。
(2)内容
漁協等は、漁場の利用に関する事業として、水産資源の管理に関する事業を行うことができることとされた(法第11条第1項第6号及び第87条第1項第6号)。また、水産資源の管理に関する事業を行う組合は、水産動植物の採捕の方法、期間その他の事項を適切に管理することにより水産資源の管理を適切に行うため、資源管理規程を定めようとする場合には、行政庁の認可を受けなければならないこととされた(法第15条の2第1項(法第92条第1項で準用する場合を含む。))。
この資源管理規程の内容、認可の基準等は次のとおりとなっている。
[1] 資源管理規程の内容
ア 資源管理規程は、
(ア) 資源管理規程の対象となる水面の区域並びに水産資源及び漁業の種類
(イ) 水産資源の管理の方法
(ウ) 資源管理規程の有効期間
(エ) 資源管理規程に違反した組合員に対する過怠金に関する事項
(オ) 資源管理規程を変更し、又は廃止する場合の手続
(カ) その他必要な事項
を内容とするものであり、資源管理規程には、これらの事項のすべてが記載されていることが必要である(法第15条の2第2項(法第92条第1項で準用する場合を含む。)、改正後の水産業協同組合法施行規則(昭和58年農林水産省令第45号。以下「新規則」という。)第1条の2)。
イ 資源管理規程は、海洋水産資源開発促進法(昭和46年法律第60号)第12条の2第1項に規定する資源管理協定又は漁業法(昭和24年法律第267号)第8条第1項に規定する漁業権行使規則若しくは入漁権行使規則が存する場合にあっては、これらに従った内容のものでなければならない(法第15条の2第4項(法第92条第1項で準用する場合を含む。))。
[2] 資源管理規程の性質
従来から、漁協等の中には、水産資源の管理のため、水産動植物の採捕の規制について、漁協等内部の申合せを自主的に行っているところであるが、資源管理規程は、このような資源管理への自主的な取組を促進するものであり、水産資源の状況を把握し、その回復・増大を図るために漁協等が自主的に行う水産動植物の採捕の規制についての取決めである。
また、資源管理規程制度は、漁業協同組合の広域合併の進展に対応した合理的な資源管理を可能とするものであり、資源管理協定等と併せて、資源管理型漁業の推進に資することとなるものである。
なお、資源管理規程は、一定の水面において同一の水産資源を利用する組合員が水産資源の管理を適切に行うための組合内部の自主的な取決めであり、組合員以外の漁業者等を当該水面から排除するための取決めではない。
[3] 関係組合員の書面同意
資源管理規程の認可を受けようとする場合には、総会の議決(法第48条第1項第2号)の前に、当該資源管理規程の対象となる漁業を営む組合員の3分の2以上の書面による同意を要することとされた(法第15条の2第3項(法第92条第1項で準用する場合を含む。))。
[4] 資源管理規程の認可
ア 認可基準
行政庁は、資源管理規程の内容が、法及び法に基づく命令その他関係法令に違反するものでないときは、認可するものとされている(新規則第1条の4第1項)。
その他関係法令には、漁業法、水産資源保護法(昭和26年法律第313号)、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)、都道府県漁業調整規則等、法律、政令、省令、条例又は規則を問わず、関係する法令のすべてが含まれる。
イ 認可の効果等
資源管理規程の認可を受けた場合には、資源管理規程に違反した組合員に対する過怠金については、定款の定め(法第23条)によらず課すことができるという効果が生ずる(法第15条の2第5項(法第92条第1項で準用する場合を含む。))。
なお、資源管理規程は、あくまでも漁協等内部の組合員が、自主的に遵守すべき事項であり、行政庁の認可を受けたからといって、その遵守を行政庁が担保するものではない。
ウ 認可の取消
認可を受けた資源管理規程が、アの認可基準に該当しないと認められるに至った場合には、行政庁は認可を取り消すことができることとされた。(新規則第1条の4第2項)
エ 資源管理規程の廃止
資源管理規程を廃止した場合には、当該廃止が資源管理規程に定める廃止の手続に従って行われたことを証する書面を添えて、遅滞なく、その旨を行政庁に届け出るものとされた(新規則第1条の4第3項)。
2 指導方針
(1)行政庁は資源管理規程の認可に当たっては、総会の議決と関係組合員の書面同意の要件を満たしていても、組合員数が少ない漁業種類の漁業者にとって不利な内容のものであること等その内容が不適切なものとならないよう十分な審査・指導を行われたい。
(2)資源管理規程は、組合員が「漁業を営むに当たって」遵守すべき事項に関する規程であるから、組合員となっている遊漁船業者であっても資源管理規程の対象者とはならない。しかしながら、資源管理規程で定めた事項は当該遊漁船業者もできるだけこれに従うことが望ましいことは当然であるので、その旨指導されたい。
(3)資源管理規程制度、資源管理協定制度及び漁場利用協定制度は、いずれも一定の水面における水産動植物の採捕の自主的な規制を行うものであり、これらがあいまって適切な漁場利用秩序が形成されるよう指導されたい。
(4)資源管理規程制度の適正な運営の推進と併せて、密漁防止対策を強化し、資源管理のための遊漁者の一層の協調を得るため、水産資源の管理の重要性に関する啓蒙活動を行うなど更に努力するよう指導されたい。
第3 福利厚生施設の員外利用制限の緩和
1 趣旨及び内容
(1)趣旨
最近、漁村地域は、漁業の不振等によって、その活力が低下し、漁業就業者も高齢化している。
このような中で、漁村地域の活性化を図るためには、組合員だけでなく漁家の構成員全体の福利の向上を図る必要がある。
このため、今般、組合の福利厚生施設に係る員外利用制限が緩和された。
(2)内容
漁協等の福利厚生事業は、本来、他の事業と同様、組合員のために行うものであるが、施設の性格によっては、組合員の家族も含めて利用させることが望ましいものもあるので、これが員外利用制限に抵触することがないよう、組合員と世帯を同じくする者の利用については、員外利用分量の計算上は、これを組合員の利用とみなすこととされた(法第11条第8項第3号、第87条第9項第3号、第93条第7項第3号及び第97条第8項第3号)。
2 指導方針
(1)組合は、地域の漁業振興だけではなく、漁村地域の活性化においても中核的な役割を果たすことが期待されているところであり、福利厚生事業においても、幅広く事業利用の機会を提供する必要がある。このため、今般、法改正が行われたところであるが、今後とも、組合の地域住民に対する福祉サービスが円滑かつ効率的に進められるよう指導されたい。
(2)福利厚生事業の実施に当たっては、市町村等との機能分担を明確にし、十分な連携を図るとともに、人材の育成等実施体制の整備につき適切な措置を講ずるよう努められたい。
第4 信用事業実施権能の拡充
1 趣旨及び内容
(1)趣旨
組合は、従来から信用事業の実施により地域金融機関としての役割を果してきたところであるが、その事業内容については、社会経済情勢の変化、組合員等漁協信用事業の利用者の金融サービスに対するニーズの変化、組合の信用事業実施体制の整備状況等を勘案しながら、その拡充を図ってきたところである。
先般の金融制度及び証券取引制度の改革のための関係法律の整備等に関する法律(平成4年法律第87号)においては、信託・証券業務への相互参入については他業態と同様の手当てを行ったが、その他の事業範囲の拡大については、組合の内部管理体制の見直しと並行して検討するとの理由で、同法において措置することは見送ったところである。
今回の法改正においては、理事会制の法定化、代表理事制の法定化、員外理事枠の拡大等内部管理体制の整備について措置されたところであり、これに併せて、組合の信用事業の実施権能の拡充を図ることとされた。
(2)内容
[1] 有価証券貸付け業務
厳しい金融情勢の中で、組合が保有している有価証券を有効に運用し、収益効果を高めることは資金運用の効率化・多様化や事業の発展・推進を図る上から有効な手段であり、かつ、組合員等地域住民の供託金差し入れや貸出先法人の商取引のための担保提供などの有価証券借入れニーズに対応する必要があるため、新たに、「有価証券の貸付け」の業務を行うことができるよう措置された(法第11条第3項第4号、第87条第4項第4号、第93条第2項第4号及び第97条第3項第4号)。
[2] 金銭の収納その他金銭に係る事務の取扱い業務
従来から貯金業務の附帯業務として行われてきた地方公共団体の指定金融機関としての支払事務、国税、地方税及び公共料金の自動振替等の業務について、金銭の収納その他金銭に係る事務の取扱い業務として行うことができるよう措置された(法第11条第3項第6号、第87条第4項第6号、第93条第2項第6号及び第97条第3項第6号)。
なお、改正前の法第11条第3項第5号等の有価証券の払込金の受入れ又はその元利金若しくは配当金の支払の取扱い業務については、法第11条第3項第6号等の金銭の収納その他金銭に係る事務の取扱い業務として行うこととなる。
[3] 保護預り業務
保護預りについては、従来から貸付け業務及び貯金業務の附帯業務として国債の保護預り業務が行われてきたところであるが、漁村社会においても金融資産の蓄積が進み、国債の代理窓販開始以来広く保護預りが利用されてきていること等から、農業協同組合法等他業態の規定ぶりに合わせて保護預り業務が明文化された(法第11条第3項第7号、第87条第4項第7号、第93条第2項第7号及び第97条第3項第7号)。
[4] 両替業務
海外旅行の増加等により、組合員やその家族等地域住民の両替のニーズが高まっているが、地域金融機関の店舗が少ない地域又は遠距離にある地域においては、組合が地域住民に対し金融サービスを提供する必要がある。このため、今般、組合が両替業務を行うことができることとされた(法第11条第3項第8号、第87条第4項第8号、第93条第2項第8号及び第97条第3項第8号)。
[5] 債務の保証業務に係る保証対象債務の制限の撤廃
組合が水産業の発展と漁村地域の活性化を推進する団体等に対して組合員が負う債務の保証を行うことは、組合の本来的な事業の一環であり、また、地域住民や関連会社等への債務の保証を組合が行うことは、地域の活性化に資するものであることから、今般、債務の保証の対象先を国、地方公共団体、定款で定める金融機関に限定する規定が撤廃された(法第11条第3項第3号、第87条第4項第3号、第93条第2項第3号及び第97条第3項第3号)。
[6] 債務の保証業務等に係る員外利用制限の撤廃
組合の信用事業に係る員外利用については、組合員の利用を妨げるものではないものとして、新たに、債務の保証、有価証券の貸付け、金銭の収納その他金銭に係る事務の取扱い、保護預り業務及び両替の業務について員外利用の制限が撤廃された。
なお、債務の保証に係る員外利用にあっては、金融機関等の業務代理に付随する債務の保証、国税の徴収猶予、延納に伴う債務の保証等に限定され、また、有価証券の貸付けに係る員外利用にあっては、確実な担保を備えた利用者に対する有価証券の貸付けに限定された(法第11条第7項、第87条第8項、第93条第6項及び第97条第7項並びに改正後の漁業協同組合等の信用事業に関する省令(平成5年大蔵省・農林水産省令第2号)第1条の2)。
2 指導方針
[1] 有価証券貸付け業務
有価証券貸付け業務は、債権貸借市場向け、組合員等向けがあるが、その業務の性格から、
ア 債権貸借市場向けについては、組合員等への貸付けと異なり、余裕金運用として保有している有価証券の一層の効率化を図ることが目的であるが、当該貸付けは一定以上の有価証券を保有していることが前提であり、かつ、同一の有価証券を一定以上保有していなければ市場への参入が困難なこと
イ 組合員等向けについては、債務の担保や供託のニーズに対応するものであるが、ある程度の有価証券を保有していることが前提となること
等から本業務の実施については与信管理、流動性管理等の能力・体制が整備されたものに限ることとするので、その旨組合に対し指導されたい。
[2] 両替業務
両替業務については、大きなリスクを伴うものではなく、組合員等利用者へのサービスの一環として行われる業務であるが、実際に両替業務を行う場合は、すべての外貨を取扱うことは困難であり、また、外貨の搬送体制の整備等が必要になるため、実施に当たっては、信漁連等との連携を図りつつ慎重に取扱うこととするよう指導されたい。
第5 漁業自営の要件の緩和
1 趣旨及び内容
(1)趣旨
最近、漁業の担い手の不足が問題となっており、漁業生産の継続や漁場の有効利用が図られないおそれが生じているため、今後は、漁業協同組合(以下「漁協」という。)による漁業自営をより積極的に推進していくことが必要である。しかしながら、漁協の組合員等は高齢化しており、組合員等だけでは十分な労働力の確保が困難な場合もあること、漁業技術の発展に伴い設備等の高度化が進展しており、組合員等以外の専門的な従事者も必要になっていること等情勢は大きく変化してきている。
このため、今回の法改正において、漁協の漁業自営の要件を緩和することとされたものである。
(2)内容
漁協が漁業経営を行う場合、漁協の漁業に常時従事する者のうち、組合員及び組合員と同一世帯に属する者の数は、その常時従事する者の3分の1以上でなければならないこととされた(法第17条第1項)。
2 指導方針
漁協が行う漁業自営の要件の緩和に当たっては、従来から当該自営漁業に従事していた組合員及びその家族が当該自営漁業から排除されることのないよう、また、適正な漁利の配分に支障が生ずることのないよう指導されたい。
また、漁業自営を行っている漁協の中には、当該漁業の不振により、漁協経営が悪化している例も見られるので、新たに漁業自営を行おうとする漁協に対しては、その必要性、当該漁業の将来見通し、採算性等を十分考慮して実施するよう指導されたい。
第6 組合の執行体制の整備等
1 趣旨及び内容
(1)趣旨
[1] 金融自由化の急速な進展、漁業をめぐる環境の悪化等組合をめぐる経営環境は今後一層の厳しさを増すものと考えられること、漁協系統自身が漁協合併の推進に積極的に取り組む姿勢を示していること等から、今後、急速に合併が進展することが見込まれる中で、事業・組織ともに拡大した組合を適切に管理運営できる内部管理体制の整備が必要となっている。
また、組合は、信用事業、販売・購買事業、共済事業等各種の事業を組合員のニーズに応じて実施しているが、近年、その内容が一層高度化、複雑化、専門化していること、社会生活の高度化に伴い、組合員の漁協事業に対するニーズが高度化、多様化していること等から、今後、組合事業を適切かつ効率的に実施できる業務執行体制を確立することも必要となっている。
[2] こうした中で、従来の組合の経営管理に関する法制度は、基本的には昭和23年の法制定当時に定められたものであるが、当時は、比較的小規模な協同組織となることを想定していたため、法律上、理事会制が定められていないなど全般的に簡素なものとなっており、事業内容が複雑化、多様化した組合を適確に管理運営していくためには、不十分な点もあると指摘されていたところである。
[3] このような状況を踏まえ、組合の適確な組織・事業運営に資するよう組合の経営管理について、業務執行体制の整備、けん制体制の強化等を主な内容とする所要の改正が行われたものである。
(2)内容
[1] 員外理事枠の拡大等理事に関する規定の整備
ア 員外理事枠の拡大
組合の理事については、従来、その定数の少なくとも4分の3は組合員(准組合員を除く。)でなければならないこととされていたが、今回の法改正により、その定数の少なくとも3分の2が組合員(准組合員を除く。)でなければならないこととされた(法第34条第9項(法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の6第3項で準用する場合を含む。))。
これは、近年、組合の事業内容が複雑化、高度化、専門化していることに伴い、組合の事業運営を適確に実施していくためには、十分な学識経験を有する員外理事の登用を促進していくことが求められていることから、その定数枠を拡大したものである。
イ 理事と組合の使用人の兼職禁止の解除
これまで、理事と使用人の兼職は禁止されていたところである(改正前の水産業協同組合法(以下「旧法」という。)第36条)が、今回、これが認められた。
これは、事業内容の複雑化、高度化、専門化に対応して適確な事業運営を確保するため、使用人を理事に登用することが必要になることが考えられること等によるものである。
ウ 代表理事の設置
これまで、法律上、理事はすべて組合の代表権を有することとされてきたが、今回の改正により、組合は、理事会の決議により組合を代表すべき理事を定めるものとするとともに、数人の理事が共同して組合を代表すべきことを定めることができることとされた(法第44条(法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の6第3項で準用する場合を含む。以下第6において同じ。)で準用する商法第261条)。
また、組合長、専務理事、常務理事等たとえ代表権がなくても外部の者が代表権があると誤認しやすい者の行った行為については、組合は、善意の第三者に対して責任を負うこととされた(法第44条で準用する商法第262条)。
これは、従来は、定款で代表理事を定めていたものの、法律上は、各理事が代表となっていたことからそれぞれの理事の責任関係が明確になっていない等の問題点が指摘されており、また、代表権の制限が善意の第三者に対抗できないことから事業規模の拡大に伴い組合に不測の損害が発生する可能性も高まっているといった状況に対処するため措置されたものである。
エ 理事の報酬
今回の法改正により、理事が受ける報酬は、定款でその額を定めない場合は、総会で定めることとされた(法第44条で準用する商法第269条)。
理事の報酬は、職務執行の対価としての意味を有し、経費として支出される性格のものであることから、理事会において業務執行の一態様として決定されるべきものであるが、適正な組合運営を確保するため商法に準じて措置されたものである。
[2] 理事会の設置及びこれに伴う関係規定の整備
ア 理事会の設置
組合の業務執行の意思決定は、これまでも定款により設置された理事会において行われているが、今回の法改正により、組合は、法律上、理事会を設置し、理事会は、組合の業務執行を決し、理事の職務執行を監督することとされた(法第36条)ほか、理事会について以下のような規定の整備が行われた。
(ア)理事会は各理事が招集するが、招集権者を定めることができるものとするほか、招集通知、招集手続の省略の規定を整備すること(法第44条で準用する商法第259条、第259条の2及び第259条の3)。
(イ)理事会の決議は理事の過半数が出席し、その過半数で決することとし、定款により決議の要件を加重することができるものとすること(法第44条で準用する商法第260条の2)。
(ウ)理事会の議事については、その経過の要領、結果を記載した議事録を作成し、10年間主たる事務所に、その謄本を5年間従たる事務所に備えておくものとすること(法第44条で準用する商法第260条の4第1項及び第2項並びに法第39条第1項及び第2項)。
(エ)総会の招集は、理事会が決定するものとすること(法第51条(法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の6第3項で準用する場合を含む。以下第6において同じ。)で準用する商法第231条)。
これらは、従来から、定款による理事会は定着しているものの、組合の運営は組合長等一部の常勤理事中心のものとなり、理事会の業務執行に関する意思決定機能や業務執行理事に対するけん制機能が十分に発揮されていない組合も見られるとの指摘がなされていることから、このような状況に対応して、理事会の権限を法律上明確化することにより、合議制による意思決定の実をあげるとともに、業務執行理事に対する理事会の監督機能を強化するため、措置されたものである。
イ 理事会の決議と理事の責任との関係
代表理事が、善管注意義務に違反した行為により組合に損害を与えた場合において、その行為が理事会の決議に基づくときは、決議に賛成した理事は、その行為を行ったものとされ、連帯して責任を負わなければならないものとされた。また、その理事会に出席して議事に参画した理事は、明確に反対した旨を議事録に記載していない限り賛成者と推定するものとするとともに、こうした理事の責任は、総組合員の同意がなければ免除し得ないこととされた(法第37条第4項(法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の6第3項で準用する場合を含む。)で準用する商法第266条第2項、第3項及び第5項)。
これは、従来、理事の責任については、組合に損害を生じさせた業務執行についての意思決定を行った理事会において当該理事が賛成したか反対したかを問わず、全理事について責任追及が行われるものとされていたが、今回の改正で理事会制が法定化されたことに伴い、理事会の構成員としての理事の責任を明確化するため措置されたものである。
ウ 組合と理事との契約
従来、組合が理事と契約するときは、監事が組合を代表することとされてきたが、今回の法改正により、理事は、理事会の承認を受けた場合に限り、組合と契約することができることとされた(法第38条(法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の6第3項で準用する場合を含む。))。
これは、組合の取引行為の代表者は、代表理事であり、監査を行う監事を代表者とすることは例外的な方法であると考えられるとともに、理事会が法定化され、理事の職務の執行を監督することとされたことから、その承認を受けた契約であれば、利益相反とはならず、不当でないものと考えられることによるものである。
[3] 監査機能の充実
近年の組合の事業内容の複雑化、高度化等に伴い、組合の事業運営を適確に実施して行くためには、内部けん制体制の強化が必要となっている。
また、今回の法改正により、理事会制が法定化され、理事会が組合の業務執行の意思決定機関として法律上位置づけられたことに伴い、監事監査についても、理事会の業務執行に関する権限を前提とした方式に変更する必要がある。
このため、現行の監事の権限を見直し、監事監査による内部けん制機能が十分に発揮されるよう、以下の内容の改正が行われたものである。
ア 監事は、理事の職務の執行を監査することとし、監事はいつでも理事及び参事その他の使用人に対し、営業の報告を求め又は組合の業務及び財産の状況の調査を行うことができるものとすること(法第44条で準用する商法第274条)。
イ 理事は組合に著しい損害を及ぼすおそれがある事実を発見したときは、直ちに監事に報告しなければならないものとすること(法第44条で準用する商法第274条の2)。
ウ 監事は、理事が総会に提出しようとする議案及び書類を調査し、法令若しくは定款に違反し又は著しく不当な事項があると認めるときは総会にその意見を報告することを要するものとすること(法第44条で準用する商法第275条)。
エ 理事が組合の目的の範囲でない行為その他法令又は定款に違反する行為を行い、これにより組合に著しい損害を生じるおそれがある場合には、監事は理事の行為の差止めを請求することができるものとすること(法第44条で準用する商法第275条の2)。
オ 監事の報酬については、監事の地位の独立性に関連して、監事の報酬が業務執行機関である代表理事又は理事会の意思によって左右されることのないよう、定款又は総会の議決により定めるものとすること(法第44条で準用する商法第279条)。
カ 監事が妥当な額の監査費用を確保し得るよう、監事が職務の執行につき費用の前払を請求したとき、支出した費用及び利息の償還を請求したとき等において、組合はその費用等が職務の執行に必要でないものであることを証明しなければその履行を拒むことができないものとすること(法第44条で準用する商法第279条の2)。
キ 監事は、理事会に出席して意見を述べることができるものとするとともに、理事が組合の目的の範囲内でない行為その他法令若しくは定款に違反する行為を行ったとき又は行うおそれがあると認められるときは、理事会にこれを報告することを要するものとし、この場合、必要があるときは、監事は理事会の招集を請求することができるものとすること(法第44条で準用する商法第260条の3)。
[4] 内部けん制機能の強化等のための関係規定の整備
ア 代表訴訟
6ヶ月前から引き続き組合員である者は、組合に対し理事の責任を追及する訴えの提起を請求できるものとし、組合が請求日より30日以内に訴えを提起しないときは、組合のためにその訴えを提起することができることとされた。併せて、この訴えに関する担保の提供、裁判管轄、訴訟参加、弁護士の報酬の請求、原告たる組合員の損害賠償責任、再審の訴え等に関する所要の規定が整備された(法第44条で準用する商法第267条から第268条の3まで)。
これは、理事又は監事が組合に対し負っている責任は、本来は組合自身が追及すべきものであるが、役員同士の特殊な関係から理事又は監事の責任追及を組合にゆだねていたのでは、実質上、責任の追及が行われず、組合や組合員の利益が害される可能性がある場合に、組合員の役員に対するけん制機能を強化する観点から、組合員が組合に代わって理事又は監事が組合に対して負う責任を追及することができることとするため措置されたものである。
イ 組合員による理事の行為の差止請求権
理事が組合の目的の範囲内でない行為その他法令又は定款に違反する行為を行い、これにより組合に回復できない損害が生じるおそれがある場合に、6ヶ月前から引き続き組合員である者は、組合のために理事の行為の差止めを請求できることとされた(法第44条で準用する商法第272条)。
これは、理事が法令又は定款に違反する行為をしようとしている場合には、組合は、その理事の行為を差し止める権利を有するが、組合と理事との密接な関係から現実に組合がこの差止権を行使するとは限らず、組合や組合員の利益が害される可能性がある場合に、組合員が組合に代わってその理事の行為の差止めを請求できるようにするため措置されたものである。
ウ 総会決議取消し、不存在・無効確認の訴え
組合員、理事、監事等は、総会の招集手続、決議の方法、決議の内容等に法令、定款違反等があるときは、決議の取消し(決議の日から3ヶ月以内)又は不存在若しくは無効の確認の訴えを提起することができることとされた(法第51条で準用する商法第247条から第252条まで)。
これは、総会の決議の成立手続、内容等に何らかの法令、定款違反等の瑕疵があるときに、その瑕疵を理由として決議の効力を否認する訴えを提起することは、従来からも可能であったが、判決の効力が第三者に及ばない、瑕疵の主張がいつまでもできる等の問題があることから、判決の効力の対世的効力、提訴権者、提訴期間等を定めた訴えの制度を導入し、組合の適正な運営の確保に資するよう措置されたものである。
エ 出資一口金額減少無効の訴え
組合員、理事、監事、清算人、破産管財人又は出資一口金額の減少を承認しなかった債権者は、その変更登記の日から6ヶ月以内において、組合の出資一口金額の減少無効の訴えを提起することができることとされた(法第54条第3項(法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の6第3項で準用する場合を含む。)で準用する商法第380条)。
これは、合併に当たって財務調整を行う際、出資一口金額の減少により欠損金のてん補を行うことが考えられるが、その手続又は内容に瑕疵がある場合において、法律関係の安定が図られるよう、本制度を導入し、提訴期間及び提訴権者の限定並びに判決の対世的効力等について定めることとしたものである。
オ 設立無効の訴え
組合員、理事又は監事は、組合の設立の日から2年以内において、組合の設立無効の訴えを提起することができることとされた(法第67条の2(法第92条第4項、第96条第4項、第100条第4項及び第100条の6第4項で準用する場合を含む。)で準用する商法第428条)。
組合の設立が法定の要件を欠く場合には、一般原則によれば無効の組合であるからはじめから法律上存在せず、したがって無効を主張する方法に制限がなく、また、組合を相手とした第三者は組合に対して権利を有しないこととなるが、このような一般原則では、組合の設立無効のような関係を適正に処理することができない場合が考えられる。
このため、設立手続に瑕疵があった場合の法律関係の安定が図られるよう、本制度を導入することにより設立を画一的に確定し、かつ、法律上は無効でも事実上の組合が存在することを尊重して無効の効果を遡及させないこと等を定めることとしたものである。
カ 合併無効の訴え
組合員、理事、監事、清算人、破産管財人又は合併を承認しない債権者は、合併の日から6ヶ月以内において、組合の合併無効の訴えを提起することができることとされた(法第73条(法第92条第5項、第96条第5項、第100条第5項及び第100条の6第5項で準用する場合を含む。)で準用する商法第104条第1項及び第3項、第105条、第106条、第108条から第111条まで並びに第415条並びに非訟事件手続法(明治31年法律第14号)第135条の8)。
これは、合併の手続に瑕疵があれば、合併の無効を期すこととなるが、その解決を一般原則にゆだねると設立無効の場合と同様大きな混乱を生じることが考えられることから、組合の合併が今後一層進展する情勢にあることも踏まえ、無効の効果を遡及させないこと等を定めた合併無効の訴えの制度を導入したものである。
2 指導方針
組合の業務が高度化・複雑化する中で、その執行体制を強化するとともに、内部けん制による適正な事業運営を確保するため、今回の法改正において、理事会及び代表理事の法定化、監事の権限の強化等経営管理体制の強化に関する措置を講じたところであるが、こうした法制度面での整備と併せて、実態面での対応が極めて重要であることにかんがみ、特に次の点につき積極的な指導を行われたい。
(1)経営管理体制の強化に係る法改正の趣旨をいかしていくためには、組合の役職員を始め組合員に対しても改正の趣旨が徹底されるよう十分な啓発等を行い、その実効を期すること。
(2)員外理事枠の拡大、理事と職員の兼職等今回の法改正の趣旨にかんがみ、専門化・高度化する業務への適確な対応を図るため、組合の事業内容につき十分な識見と能力を持ついわゆる学識経験者の理事への登用を一層促進すること。
(3)組合員の幅広い意向を反映させるという観点からも、漁業者の高齢化が進行する中で、漁業の重要な担い手となっている若い後継者や婦人の正組合員加入を進め、併せて役員等への登用に積極的に取り組んでいくこと。
(4)今回の法改正において、代表理事を法定化することにより、その権限と責任が明確になること、また、経営管理体制の一層の充実が求められていること等にかんがみ、適宜適切な研修等により理事等の資質の一層の向上を図ること。
(5)今回の法改正において、理事会が法定化され、業務執行理事に対する理事会のけん制機能が強化されることとなった趣旨を踏まえ、その周知徹底を図るとともに、特定の理事の専横といった事態が生じないように、健全な組合運営及び責任ある執行体制が確保されることを旨として指導すること。
なお、理事と職員の兼職については、これまで禁止していたものを改め、組合の判断によって認めることも可能となったが、組合の業務運営に精通した職員に理事の権能をも付与することによって、ともすればこうした理事のみの主導による業務運営の傾向が強まるのではないかと懸念する見解もあることから、経営管理体制の強化に係る法改正の趣旨を十分に周知徹底するとともに、このような点についても適切に指導すること。
(6)監事監査については、今回の改正を機に、新たな監事監査制度の趣旨、内容を周知徹底させ、学識経験者の監事への登用や常勤監事の設置が一層促進されるよう十分な指導を行うこと。
また、組合の経営管理における内部けん制体制の充実を図るため、内部検査体制の整備・充実や連合会による監査の活用が図られるよう適切な指導に努めること。
第7 事業譲渡規定の整備
1 趣旨及び内容
(1)趣旨
漁業を取り巻く環境の急速な変化の中で、漁協系統組織においては、平成4年11月に開催された第4回全国漁業協同組合大会の中で、時代の変化に対応して、自立できる漁協づくりの推進を基本テーマに掲げ、合併・事業統合等による規模の拡大と経営基盤の強化を図りつつ、漁協等の組織を再編成して、その持てる力を総合的に発揮できる広域漁協への段階的再編をめざすことを決議したところである。
信用事業については、平成2年に行われた法改正において、金融自由化の急速な進展に対応し、事業譲渡による経営規模の拡大を緊急に図るため、信用事業の全部譲渡に関する規定を整備したところである。
しかし、その後の組合をめぐる情勢の変化を見ると、流し網漁業の全面的停止等国際規制の一層の強化、我が国周辺水域での資源状態の悪化等一層厳しい情勢にあり、組合の事業は販売事業、購買事業等信用事業以外の事業についても取扱高の減少又は伸び悩み、さらには、部門別収益の悪化等総じて困難な状況にあるため、漁協系統組織全体で組織整備を推進し、組合の経営基盤の強化を図ることが喫緊の課題となっている。
このような状況を踏まえ、合併と併せ事業統合等を推進するため、新たに、組合の事業の全部の譲渡、信用事業の一部の譲渡、販売・購買事業及び共済事業の全部又は一部の譲渡並びに共済契約の全部又は一部の移転を行うための規定が整備されたものである。
(2)内容
[1] 総会決議等
組合の事業の全部の譲渡、信用事業、販売事業、購買事業若しくは共済事業の全部若しくは一部の譲渡又は共済契約の全部若しくは一部の移転について総会の決議を要するものとする(法第48条第1項第5号(法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の6第3項で準用する場合を含む。))とともに、事業の全部の譲渡、信用事業、販売事業、購買事業若しくは共済事業の全部の譲渡又は共済契約の全部の移転については総会の特別決議を要することとされた(法第50条(法第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の6第3項で準用する場合を含む。))。
組合の事業の全部、信用事業、販売事業、購買事業若しくは共済事業の譲渡又は共済契約の移転については、これらの事業が利用者が多く、組合員の資産を長期にわたって預かるものであり、組合の事業運営全般に大きな影響を及ぼすことから、総会の議決を経ることを法律上義務づけたものである。さらに、従来からの信用事業の全部の譲渡に加え、事業の全部の譲渡、販売事業、購買事業若しくは共済事業の全部の譲渡又は共済契約の全部の移転は、事実上合併と同様の効果が生じ又は事業を廃止することから、組合の経営に大きな影響を与えることとなることから、特別決議を要することとされたものである。
[2] 債権債務関係を円滑にするための特例措置
ア 信用事業の全部の譲渡については、従来から、債権債務関係を円滑にするための特例措置の規定が設けられていたが、今般、信用事業の一部を譲渡した場合においても、信用事業の全部の譲渡の場合と同様の規定が適用されることとなった。すなわち、信用事業を譲渡した場合、その旨を公告することにより、組合の債務者に対して民法第467条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなすこととされた(法第54条の2第2項(法第92条第3項、第96条第3項及び第100条第3項で準用する場合を含む。))。
これは、信用事業においては、貸付けの相手方が多数にわたるため、事業譲渡に伴い必要となる債権譲渡の手続として、民法第467条の規定に従ってすべての貸付けの相手方に通知することは困難であることから、信用事業を譲渡した旨の公告をもって通知があったこととみなす特例規定が設けられたものである。
また、貯金者が多数にわたるため、事業譲渡に伴い必要となる債権者である貯金者等の同意を個別にとることは困難であるということから、異議があれば一定の期間内に述べるべき旨を公告し、債権者がその期間内に異議を述べなかったときは、当該譲渡を承認したものとみなす債権者保護のための特例規定を適用することとされた(法第54条の2第3項(法第92条第3項、第96条第3項及び第100条第3項で準用する場合を含む。)で準用する第53条及び第54条)。
イ 共済事業においては、共済契約者が多数おり、事業譲渡や共済事業に係る財産の移転を伴う共済契約の移転において必要となる共済契約者(債権者)の同意を個別にとることが困難であるため、信用事業の譲渡と同様、公告手続によって対応できることとする債権者保護のための特例規定を適用することとされた(法第54条の3第3項(法第96条第3項で準用する場合を含む。)で準用する第53条及び第54条)。
ウ なお、販売事業及び購買事業においては、債権債務関係が短期的なものであり、事業譲渡に際して整理できること、また、信用事業及び共済事業と異なり、定型的な契約内容でないこと等から、債権者保護のための特例規定は適用されないこととされた。
[3] 共済事業の全部の譲渡等を行った場合の行政庁への届出等
組合は、共済事業の全部の譲渡、共済契約の全部の移転を行ったときは、信用事業の全部の譲渡の場合と同様に、遅滞なく、その旨を行政庁に届け出るとともに、共済事業を廃止するために必要な定款の変更をしなければならないこととされた(法第54条の3第4項(法第96条第3項で準用する場合を含む。))。
2 指導方針
(1)組合は、販売事業を中心として信用、購買、共済等の経済事業のほか、漁場管理や営漁指導をも行う総合事業体としてその機能を十分に発揮する必要があるが、現在の組合の規模は極めて零細で、人的な面での実施体制も弱く、十分な事業機能を発揮できる状況にない。
組合が組合員の負託にこたえ得る事業運営を行うためには、その基盤強化を図ることが極めて重要であり、今後も、合併を強力に推進し、事業規模の拡大、事業運営の効率化を図っていかなければならない。しかしながら、直ちに合併が困難な組合については、今回の法改正により整備された事業譲渡規定に基づき、組合間での事業統合又は連合会における直営化等による事業規模の拡大を図る必要があるが、この場合においても、県内の漁協系統全体が有機的な連携の下に事業を行い、総合的な機能を発揮できるよう適切な指導を行われたい。
(2)事業譲渡の推進に当たっては、組合に求められる機能を損なうことなく、かつ、事業の効率的展開、合理的展開を追及していく必要がある。特に、信用事業においては、地域金融機関としての役割、組合員に対する指導金融機能の発揮、販売事業においては、これを利用する組合員の利便性を考慮した事業展開、他市場との機能分担等が担保されなければならない。このため、必要な地域には支所機能を残す等組合員の事業利用に不利益が生ずることのないよう、適切な指導を行われたい。
(3)事業譲渡の目的は、効率的・合理的な事業運営により、組合間全体の経営基盤を安定させ組合員ニーズの多様化にこたえたサービスを展開していくことである。このため、事業譲受組合が本所となり事業譲渡組合に支所機能を残すことも必要であるが、あくまで機能面としての本所・支所の関係であって、組合間に支配関係が生じることのないよう適切に指導を行われたい。
(4)事業譲渡に当たっては、譲渡組合の組合員を始めとする組合事業の利用者に対して不利益が生じないよう、譲渡組合の組合員の事業の利用の方法について譲受組合と譲渡組合との間で十分な検討を行うよう指導されたい。また、事業譲渡に伴い、組合職員の雇用に不安が生ずることのないよう併せて指導されたい。
第8 その他
1 総会の決議事項等に関する規定の整備
(1)総会の決議事項の見直し
貸付金の利率の最高限度及び一組合員のためにする手形の割引金額の最高限度について、総会の決議を要しないものとされた(法第48条第1項(法第92条第3項、第96条第3項及び第100条第3項において準用する場合を含む。))。
これは、最近の金利の自由化の進展や手形割引の与信行為としての性格を踏まえ、機動的・弾力的な事業運営を確保するため措置されたものである。
(2)共済規程の変更手続の簡素化
ア 共済規程の変更のうち事業種類の変更については、定款で、総会の決議を経ることを要しないものとすることができることとされた(法第48条第4項(法第96条第3項及び第100条の6第3項で準用する場合を含む。))。
イ 共済規程の変更については、総会の決議事項とされているが、昭和58年の法改正により、共済の事業種類が変更されないこと及び変更の前後を通じて組合が負う共済責任の全部を共済水産業協同組合連合会の共済に付するものであることとの条件に適合する場合には、定款で総会の決議を要しないものとすることができることとされたところである。
しかしながら、その後の金融自由化の進展、組合員ニーズの多様化等共済事業をめぐる環境が変化する中で、商品開発の都度全国の組合で総会附議を必要とすることは機動性に欠けるものと考えられること、事業種類についての規程変更であっても、共済責任の全部を共済水産業協同組合連合会の共済に付している場合には、組合の事業収益に影響を与えることにはならないこと等から、弾力的な事業運営を可能とするため、一層の変更手続の簡素化が図られたものである。
ウ なお、定款で総会決議を要しないこととしようとする場合には、今回の法改正によりその位置づけが明確となった理事会に付議されるほか、総会決議を要しない共済契約の変更の範囲及び当該変更した場合における当該変更の内容の組合員に対する通知、公告その他の周知方法を定款で定める必要があることに留意され、適切に指導されたい。(法第36条、施行令第7条)
(3)総会における特別利害関係人の議決権
総会においては、その議決の公正を保つため、従来、組合と特定の関係にある組合員が決議に加わることを禁止してきたところであるが、今回の法改正により、総会の決議に特別の利害関係を有する組合員の議決権を認めるとともに、これにより著しく不当な決議がなされたときは、決議取消の訴えを提起することができることとされた(法第51条で準用する商法第247条)。
これは、総会の決議は、組合員の多数の意思で決定するのを建前としており、単に議決権行使の公正が疑われるとの危惧だけで組合員を決議から除斥することは適当でなく、むしろ議決権の行使を認めてその結果不当な決議がなされた場合の救済を別に用意すれば足りるものと考えられることから措置されたものである。
(4)役員の改選請求
組合員(准組合員を除く。)の5分の1以上の連署をもって役員の改選請求があった場合には、その請求につき総会において出席者の過半数の同意があれば、その請求に係る役員は、その時にその職を失うこととされた(法第42条第6項(法第86条第2項、第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の6第3項で準用する場合を含む。))。
2 清算に関する規定の整備
(1)趣旨
今回の法改正において組合の経営管理に関する規定が改正され、理事会制及び代表理事制が法定化されたこと等に対応するとともに、清算の適確な実施を図るため、清算に関する規定について以下の内容の改正が行われたものである。
(2)内容
ア 清算人会、代表清算人の法定化
理事は清算中はその地位を失い、清算人が代わって清算事務を担当するが、理事について理事会制と代表理事制が法定化されたことに対応して、清算人も、個々の清算については直接事務を執行せず、合議体である清算人会を構成してその決議により清算に関する事務執行を行い、執行それ自体は清算人会で選任された代表清算人が当たることとされた(法第77条(法第92条第5項、第96条第5項、第100条第5項及び第100条の6第5項で準用する場合を含む。以下同じ。)で準用する第36条及び商法第261条)。
イ 選任
清算人の裁判所による選任については、利害関係人の請求により行うこととされた(法第77条で準用する商法第417条第2項)。従来は旧法第77条で準用する民法第75条の規定により、利害関係人の請求のほかに裁判所の職権による選任及び検察官の請求による選任であったが、清算に関して組合の管理に関する規定を準用することに伴い、清算の自治的処理の範囲を広げることとし、裁判所による選任は利害関係人の請求に限ることとするものである。
ウ 解任
従来、清算人は、重要な事由があるときに裁判所が利害関係人若しくは検察官の請求又は職権により解任できることとされていた(旧法第77条で準用する民法第76条)が、総会の決議をもって解任することができることとするとともに、重要な事由があるときは、裁判所は組合員(准組合員を除く。)の5分の1以上の同意を得て清算人を解任できることとされた(法第77条で準用する商法第426条)。
エ 組合の財産目録及び貸借対照表の裁判所への提出
商法において裁判所は、債権申出期間内の弁済、弁済期に至らない債務の弁済の清算事務に関し権限を有しているが、今回の改正でこれらの規定を準用することに伴い、組合の財産目録及び貸借対照表を裁判所へ提出することとされた(法第75条第2項(法第92条第5項、第96条第5項、第100条第5項及び第100条の6第5項で準用する場合を含む。))。
オ 債権申出期間内の弁済の制限
従来は、債権申出期間内の弁済制限の規定がなく、期間内も自由に弁済することができることとされているが、一部の債権者に対して弁済をなした後に組合財産がその余の債務の弁済に不足することが判明するという事態が生ずることを避け、債権者全員への公平な弁済を保証するため、期間内は期限の到来した債権についても弁済を原則として禁止することとされた(法第77条で準用する商法第423条)。
カ 弁済期に至らない債務の弁済
期限未到来の債務、存続期間の不確定な債務、条件付債務等の弁済方法については、民法及び水産業協同組合法には規定がなかったが、民法に関して、「期限未到来の債務については、商法第125条第1項の規定を準用し、期限の利益を放棄して弁済すべし。」と判示する判決があり、その他の債務についても、裁判所の選任する鑑定人の評価に従って弁済すべきとするのが通説となっている。このため、商法第125条の規定を準用し、弁済期に至らない債務を弁済できることを明確化することとされた(法第77条)。
キ 組合財産の分配制限の緩和
清算の円滑な進行を図るため、争いのある債務については、その弁済に必要と認める財産を留保して残余財産を組合員に分配できることとされた(法第77条で準用する商法第131条)。
ク 清算結了の届出の廃止
従来は、旧法第77条で民法第83条を準用し、清算が結了したときは、清算人は、主務官庁に届け出ることとされていたが、行政庁は組合の解散を知ることができ(法第68条第2項及び第5項(法第96条第5項及び第100条の6第5項で準用する場合を含む。)並びに第91条の2第2項及び第5項(法第100条第5項で準用する場合を含む。)、解散以後は、裁判所の監督の下に清算事務が行われることから、この届出を廃止することとされた。
ケ 管理に関する規定の準用
清算中における組合の管理を適確に行うため、組合の管理に関する規定を清算人について準用することとされた(法第77条で準用する第36条から第41条まで、第47条、第47条の3第2項及び第47条の4並びに商法第254条第3項、第258条、第259条から第259条の3まで、第260条の2、第260条の3、第260条の4第1項及び第2項、第261条、第267条から第269条まで並びに第272条)。
3 財産目録の一部廃止
財産目録については、従来、毎事業年度の総会前における監事への提出義務や組合員等への閲覧のための備付け義務が課されていたが、今回の法改正により、出資組合の財産目録については、提出義務等の対象から除外された(法第40条第1項(法第86条第2項、第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の6第3項で準用する場合を含む。))。
これは、昭和49年の改正前の商法において、毎決算期に作成する通常財産目録(決算財産目録)及び解散又は破産時に作成する非常財産目録の作成を行うよう定められていたが、昭和49年の商法改正により、一般企業については通常財産目録の作成が廃止されたことから、出資組合の財産目録についても同様の措置が講じられたものである。
4 出資一口の金額の減少等の場合に各別に異議の催告をすることを要しない債権者の追加
出資一口金額の減少等の場合、従来は、貯金者について各別の催告を要しないこととされていたが、今回の法改正により、貯金と同様、大量かつ定型的契約である定期積金の積金者、共済契約に係る債権者及び保護預り契約に係る債権者についても催告を要しないこととされた(法第53条第2項(法第54条の2第3項(法第92条第3項、第96条第3項及び第100条第3項において準用する場合を含む。)、第54条の3第3項(法第96条第3項において準用する場合を含む。)、第69条第4項(法第91条の3第2項(法第100条第5項において準用する場合を含む。)、第92条第5項、第96条第5項、第100条第5項及び第100条の6第5項において準用する場合を含む。)、第92条第3項、第96条第3項、第100条第3項及び第100条の6第3項において準用する場合を含む。)、施行令第8条、新規則第8条)。
5 信漁連の事業利用者範囲の制限の緩和
信漁連が行う貯金の受入れ、資金の貸付け等の信用事業の利用については、従来、会員等(会員及び信漁連の間接構成員のうち定款で定めるもの)に限定されていたが、事業譲渡規定の整備に伴い、今後、漁協の信用事業を信漁連に譲渡することが増加してくると考えられることから、これに対処し、信漁連の事業の機動的な運営や漁協の組合員の利便の向上を図るため、信漁連の利用者を、所属員(会員及び信漁連の間接構成員)とすることとされた(法第87条第1項第1号及び第2号並びに第4項並びに第97条第1項第1号及び第2号並びに第3項)。
6 罰則の改正
新たに、総会議事録等の作成義務違反、組合の監事の調査の妨害等経営管理に係るものや信用・共済事業の譲渡等に係るもの等について過料を科すこととされた。
7 経過措置
経過措置の主な内容は次のとおりとなっている。
(1)理事会制、代表理事制、監事の改正法に基づく権限、清算人会制、代表清算人制等組合の理事、監事又は清算人に関する事項については、改正法施行後最初に到来する決算期に関する通常総会の終了後から適用することとされた(改正法附則第3条)。
なお、この経過措置に関しては、次の点に留意されたい。
ア 改正法施行後最初に到来する決算期に関する通常総会においては、組合の定款を改正後の法に即したものとするため、定款変更の議決を行うこと。
イ アの総会終了後、直ちに理事会(清算人会)を開催し、代表理事(代表清算人)を選任すること。
ウ アの総会の議決を経た定款変更については、直ちに行政庁に認可申請を行うこと。
なお、アの総会終了後、行政庁の認可が行われるまでの間は、改正後の法が適用されているため、変更前の定款のうち改正後の法と抵触する部分は無効となっているので留意すること。
エ イの代表理事(代表清算人)が選任された場合には、直ちに組合の代表権を有する者の変更の登記を行うこと。なお、アの総会終了後、当該変更の登記が行われるまでの間に、変更前の登記を信頼して代表権を持たない理事(清算人)と取引を行った者との関係が問題となるが、このような場合においては、当該取引を行った者が、当該理事(清算人)が代表権を持たないことについて善意であれば、代表権消滅後の表見代理の規定(民法第112条)等によって救済されることがあると解されるので留意すること。
(2)改正法施行前の総会若しくは創立総会の議決、出資一口金額の減少、組合の設立又は組合の合併に関する無効等の訴えについては、改正法施行後も旧法が適用され、判決の対世的効力がない等の取扱いとされた(改正法附則第4条、第5条、第8条及び第9条)。
(3)信用事業、共済事業の譲渡については、事業譲渡の総会議決を改正法施行前に行っていた場合でも、改正法施行後に、改正法に基づく公告手続による債権者保護に関する規定の適用を受けることができることとされた(改正法附則第6条及び第7条)。
(4)改正法施行前にした行為等に対する罰則の適用については、改正法施行後もなお従前の例によることとされた(改正法附則第12条)。

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