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農林水産省

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持続的な養殖生産の確保を図るための基本方針にかかる運用通達について

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11水推第1444号
平成11年8月30日

都道府県知事あて
漁業調整事務所長あて
水産研究所長あて
水産大学校長あて
沖縄開発庁沖縄総合事務局長あて
漁業関係団体の長あて

水産庁長官


持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号)第3条第1項の規定に基づき、持続的な養殖生産の確保を図るための基本方針(以下「基本方針」という。)が別添のとおり定められたことに伴い、基本方針にかかる運用通達(以下「運用通達」という。)を別紙のとおり定めたので通知する。
ついては、基本方針の運用に際しては、運用通達を参考に適切な運用に努めていただきたい。

持続的養殖生産確保法(平成11年法律第51号。以下「法」という。)第3条第1項の規定により、持続的な養殖生産の確保を図るための基本方針(以下「基本方針」という。)が平成11年8月30日付けで公表されたところである。
ついては、基本方針の運用に際しては、下記事項を参考に適切な運用に努めていただきたい。
第1 養殖漁場の改善の目標に関する事項
1 水産動物を対象とする場合
持続的な養殖生産の確保を図るための養殖漁場の改善は、養殖漁場環境に対する硫化物や有機物等の負荷を当該漁場の自浄能力の範囲内に抑えるということに主眼をおいている。したがって、給餌養殖である魚類養殖と無給餌養殖である貝類養殖とを区別せず、水質、底質等の各項目について自浄能力の範囲内と考えられる数値等が同一の基準として設定された。
(1)海面養殖
ア.水質
溶存酸素量に関する基準値は、ブリ類をはじめとする養殖飼育生物の健全な生育の確保に必要な溶存酸素量である。溶存酸素量については、当該数値を周年にわたって上回っていることを目標としているものであるが、表層ほど水温が高く海水交換が生じにくい成層期の末期(概ね9月)の小潮の最干潮時の給餌前の観測において、この基準を上回っていることを目安とされたい。
イ.底質
目標とすべき基準として、いけす等の施設直下の水底における硫化物量がその漁場の水底における酸素消費速度が最大となるときの硫化物量(漁場ごとにあらかじめ当該硫化物量を求めておく必要がある。以下同じ。)を下回っていること、又は、いけす等の施設直下の水底においてゴカイ等の多毛類及びこれに類する底生生物が生息していることのいずれかを満たしていることとされた。これは、いずれかの基準が周年にわたって満たされていることを目標としているものであるが、硫化物量については成層期末期の小潮の最干潮時の観測において、底生生物については成層期末期において、それぞれの基準を満たしていることを目安とされたい。
なお、底生生物については肉眼で確認できるものに限ることとする。
ウ.飼育生物の状況
飼育生物の状況に関する基準は、魚類を対象とするものに限定されているが、これは、魚類以外では養殖漁場の悪化と関係する疾病に関する知見が現時点では少ないためである。
なお、年間の累積死亡率については、原則として4月から翌年3月までの年間の合計を対象として計算するものとする。
(2)内水面養殖
ア.水質
溶存酸素量に関する基準値は、コイ等の養殖飼育生物の健全な生育の確保に必要な溶存酸素量である。溶存酸素量については、当該数値を周年にわたって上回っていることを目標としているものであるが、漁場環境が最も悪化すると考えられる時期(概ね8月)の観測において、この基準を上回っていることを目安とされたい。
イ.底質
目標とすべき基準として、いけす等の施設直下の水底における硫化物量が、その漁場の水底における酸素消費速度が最大となるときの硫化物量を下回っていること、又は、いけす等の施設直下の水底においてイトミミズ等の貧毛類その他これに類する底生生物が生息していることのいずれかを満たしていることとされた。
これは、いずれかの基準が周年にわたって満たされていることを目標としているものであるが、概ね8月において、それぞれの基準を満たしていることを目安とされたい。
なお、底生生物については肉眼で確認できるものに限ることとする。
ウ.飼育生物の状況
飼育生物の状況に関する基準は定められていないが、これは、内水面においては、養殖漁場の悪化と関係する疾病に関する知見が現時点では少ないためである。
2 水産植物を対象とする場合
目標とすべき基準として、疾病による被害が、増加傾向にないこととされたが、この場合の疾病とは、自然の気象条件等に起因するものは含まず、密殖などの不適切な管理を原因とするもののみをいう。
3 状態が著しく悪化している養殖漁場の基準
養殖漁場のうち、次に掲げる基準を満たしているものは、状態が著しく悪化し、持続的な養殖生産の確保が困難であると判断されるので、法第15条に規定する指導及び助言を行う場合、さらに法第7条第1項に規定する勧告を行う場合には、これを参考とされたい。
(1)海面養殖
ア.水質
成層期末期の小潮の最干潮時の給餌前の観測において、いけす等の施設内の水中における溶存酸素量が、2.5mL/L(3.6mg/L)を下回っていること(当該数値は、ブリ類をはじめとする養殖飼育生物の摂餌率が低下するとされる3.0mL/Lと、へい死するとされる2.0mL/Lとの中間値である。)。
イ.底質
次に掲げる事項の基準のいずれかを満たしていること。
(ア)成層期末期の小潮の最干潮時の観測において、いけす等の施設直下の水底における硫化物量が、2.5mg/g乾泥を上回っていること(当該数値は、汚染の進んだ都市部の湾内や一部の養殖漁場などで観測され、無生物状態と考えられる値である。)。
(イ)いけす等の施設直下の水底に半年以上ゴカイ等の多毛類その他これに類する底生生物(肉眼で確認できるものに限る。)が、生息していないこと。
ウ.飼育生物の状況
条件性病原体である連鎖球菌又は白点虫による死亡が、通常であれば発生しない低水温期(12月~翌3月)でも毎年のように発生していること
(2)内水面養殖
ア.水質
概ね8月の観測において、いけす等の施設内の水中における溶存酸素量が、2.0mL/L(2.9mg/L)を下回っていること(当該数値は、養殖飼育生物の摂餌率が低下する範囲が2.1mL/L~2.8mL/Lであることを考慮して定められた値である。)。
イ.底質
次に掲げる事項の基準のいずれかを満たしていること。
(ア)概ね8月の観測において、いけす等の施設直下の水底における硫化物量が、2.5mg/g乾泥を上回っていること(当該数値は、汚染の進んだ都市部の湾内や一部の養殖漁場などで観測され、無生物状態と考えられる値である。)。
(イ)いけす等の施設直下の水底に半年以上イトミミズ等の貧毛類その他これに類する底生生物の底生生物(肉眼で確認できるものに限る。)が、生息していないこと。
第2 その他養殖漁場の改善及び特定疾病のまん延防止に関する重要事項
1 養殖漁場の改善の目標とすべき基準に関する観測方法
養殖漁場の改善の目標とすべき基準に関する観測方法は次のとおりである。
(1)溶存酸素量
溶存酸素量は、投げ込み型酸素電極又は採水によるウィンクラー法で測定することとし、施設の中心部付近、施設の最下部水深の1/2~2/3の水深で行う。なお、施設の構造等からそれが困難な場合には、極力その点に近い位置で測定することとする。調査定点は、少なくとも5定点(対象となる漁場の外縁4点と中心部1点)以上とし、対象漁場全体の漁場条件を把握できるよう漁場の形状を考慮し随時増やすこととされたい。
(2)硫化物量
硫化物量測定のための試料採取は、養殖施設の直下でエクマン型採泥器もしくは、それと同等かさらに高機能な採泥器を使用することとし、試料は表面から深さ1cmとする。1定点当たり少なくとも2回の採泥を行い、検知管法で測定し、その平均の数値を観測値とする。なお、施設の構造等から施設直下の水底での観測が困難な場合には、極力直下に近い位置で測定することとする。調査定点は、溶存酸素量の場合と同様とする。
(3)底生生物
底生生物の確認のための試料採取は、養殖施設の直下でエクマン型採泥器もしくは、それと同等かさらに高機能な採泥器を使用することとし、1定点当たり少なくとも2回の採泥を行う。潜水等による観察でもよい。なお、施設の構造等から施設直下の観測が困難な場合には、極力直下に近い位置で測定することとする。調査定点は、溶存酸素量の場合と同様とする。
(4)飼育生物の状況
日常より目視により魚病の発生状況をモニタリングし、へい死魚が発生した場合には、そのへい死魚の状況、日常のモニタリングによる状況からその原因を極力特定する。
2 その他
養殖漁場の改善を促進するため、一般消費者等に対し、漁場改善計画の策定内容等について積極的に情報提供を行うことはもとより、漁場改善に向けた関係者の前向きな取組の紹介や当該漁場で生産される水産物の宣伝普及等についても積極的に行うこととされたい。