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農林水産省

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漁港における漁船以外の船舶の利用について

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6水港第2998号
平成6年9月21日
最終改正:平成9年10月3日 9水港第3836号

都道府県知事あて

水産庁長官


漁港法(昭和25年法律第137号)制定以来40余年を経過し、この間、200海里体制への移行、公海漁場の国際規制等により、我が国漁業を取り巻く情勢は大きく変化してきている。一方、近年における、国民の余暇時間の増大による海洋性レクリエーションの普及に伴い、漁港の利用状況にも漁港整備時には想定されなかった変化が現れている。すなわち、遊漁船、ヨット、モーターボート等(以下「プレジャーボート等」という。)漁船以外の船舶による漁港利用が増大しており、無秩序な放置・係留等による漁業とのトラブルが問題となり、その早急な解決が求められているところである。
プレジャーボート等の受入れについて、当庁では、昭和62年度から漁船とプレジャーボート等との漁港における利用を調整する漁港利用調整事業を実施し円滑な漁港の利用を図るとともに、平成4年度に模範漁港管理規程例の改正を行い、漁港利用の適正化を図ってきたところである。
今般、さらに、既存漁港施設において漁港管理者が漁船の漁港利用に支障がないと判断する場合には、海洋性レクリエーションの施策の拡大を求める国民の要望に対応し、下記により、プレジャーボート等漁船以外の船舶による漁港利用に対応することとしたので、御了知の上、適正な漁港利用が行われるよう努められたい。
なお、このことについて、貴管下、漁港管理者、関係漁協等へ周知徹底を図られたい。

漁港は、漁業根拠地となる水域及び陸域並びに施設の総合体であり、通常は漁船の利用が一般船舶の利用を上回るものであるが、制度上は漁港本来の機能のほか、漁港の利用上又は漁港の保全上の規制等、多目的の利用も想定されていることからみても漁業根拠地以外の利用を全面的に排除しているものではない。
しかしながら、従来は、漁船の数に対して漁港の収容能力が不十分であり、漁船以外の船舶を受入れることが事実上困難な状況であったが、近年では数次にわたる漁港整備計画の実施により、漁港の収容能力が向上する一方、水産業をめぐる諸情勢の変化から地域によっては、漁業活動に支障のない範囲内で漁船以外の船舶を収容可能な漁港も見受けられるところである。
一方、近年都市近郊を中心にプレジャーボート等による漁港利用のニーズが増大しており、漁港本来の目的を阻害しないと判断される漁港においては、公共施設としてこれらのニーズに応えていく必要がある。
従って、漁港管理者は、これら漁船以外の船舶の漁港利用のニーズと漁港本来の目的に鑑み、プレジャーボート等による漁港利用を受入れていくに当たっては、これを漁業と海洋性レクリエーションとの調和ある発展及び活力ある漁村社会の創造に資するよう運用していくことが必要である。
これらを踏まえ、今後、プレジャーボート等の無秩序な放置・係留等を解消し、漁業との共存等を推進するため、以下の具体的な方策を確立し、漁業と海洋性レクリエーションとの漁港利用調整に積極的に対応することとする。
1.対象漁港
漁港管理者が、プレジャーボート等による漁港利用のニーズがあり、かつ、漁業情勢の変化、漁閑期の都合等により、漁港における漁業活動に支障のない範囲内でプレジャーボート等の受入れが可能であると認める漁港とする。
2.受入れ施設
漁港管理者は、既存漁港施設のうち陸揚岸壁、航路等の漁業生産活動上中心となっている基本的な施設以外のもの(護岸前面及び防波堤の背後等の係留可能な静穏域等を含む。)であって、プレジャーボート等の利用(ビジター利用を含む。)が可能な施設を受入れ施設として指定する。
また、泊地以外の漁港区域内の水域のうちプレジャーボート等の係留可能な水域においては、漁港整備計画等との調整を図りつつ、漁港管理者が管理するプレジャーボート等の専用泊地を設定する。
なお、受入れに際して、新たな係留施設等を設置する必要がある場合には、所要の手続きを経てこれを設置することができる。
3.受入れ方法
漁港管理者は、地元漁船及び地元外利用漁船の年間の漁業種類別、階層別等の漁港利用形態を把握の上、漁船の利用に支障のない範囲内でプレジャーボート等の適切な利用隻数を設定するとともに、適正な漁港施設の維持管理を図るため、漁港管理条例に基づき、漁港施設の利用料等を徴収する。また、プレジャーボート等に係る漁港施設利用者は、漁港利用に当たって漁港管理条例に定められた使用の許可を受けるか、又は届出をしなければならない。漁港施設利用者からの漁港利用に係る使用許可申請書の受付、料金徴収等の事務を行うに当たっては、漁港管理者は、必要に応じて管理受託者として地元漁協等に委託を行うなど利用者の利便性を考慮した適正な方法により行うものとする。
4.漁港監視等
漁港管理者が自ら管理することが原則であるが、漁港施設本来の設置目的を達成し、更に良質のサービスを利用者に提供するため、必要に応じて巡回、緊急時の安全対策等について地元漁協等に委託するとともに、監視員などを配置し、常時、適正な漁港の管理を図る。また、漁港の秩序ある円滑な利用を確保するため、岸壁・用地等への案内標識・案内板の設置等、広報啓蒙活動の強化を図る。
5.漁港利用促進協議会の設置
漁港管理者は、漁船以外の船舶による漁港利用に対応するに当たっては、漁協、利用者、公益代表等を構成員とする「漁港利用促進協議会」を別紙により設置し、漁港の管理運営、利用時間、港内での帆走区域、標識の掲示等遵守事項を設定するなど漁港利用に当たってのルール化を推進する。

(別紙)
「漁港利用促進協議会設置規程」(例)
(目的)
第1 漁港の利用の円滑化を図るため、◯◯漁港利用促進協議会(以下「協議会」という。)を設置する。
(職務)
第2 協議会は、漁港管理者の諮問に応じ、漁港利用における漁業者とその他一般の利用者との間のトラブルを予防し、もって円滑な漁港利用のためのルール化に寄与するため、必要な事項についての調査、検討を行うとともに漁港管理者に意見を述べることができる。
(組織)
第3
(1)協議会は会長及び委員をもって組織する。
(2)会長は、漁港管理者である地方公共団体の長をもって充てる。
(3)委員は、漁港管理者が選任する次に掲げる者をもって充てる。
(ア)当該漁港を根拠地とする漁業協同組合の代表者
(イ)当該漁港を利用して、遊漁船業を営む者であって、漁業協同組合の組合員以外の者
(ウ)当該漁港を利用する船舶の所有者であって、上記(ア)、(イ)に掲げる者以外の者
(エ)当該地区の公益を代表すると認められる者
(オ)当該地区における漁港の利用に関し漁港管理者が特に必要と認める者
(委員の任期等)
第4
(1)委員の任期は1年とする
(2)補欠の委員は、前任者の残任期間とする。
(3)委員は、その任期が満了しても、後任の委員が就任するまでの間なおその職務を行う。
(会議)
第5
(1)協議会は、定数の過半数にあたる委員が出席しなければ会議を開くことはできない。
(2)議事は、出席委員の過半数で決する。可否同数のときは、会長の決するところによる。
(3)協議会の招集は、会長がこれを行う。
(雑則)
第6 協議会は、本規程のほか、協議会の運営に関して必要な規程を設けることができる。
6水港第2998号
平成6年9月21日
都道府県漁港関係主務部長あて
水産庁漁政部協同組合課長
水産庁振興部沿岸課長
水産庁漁港部計画課長
漁港における漁船以外の船舶の利用について
このことについては、本日付けをもって別途水産庁長官から通達されたところであるが、今後の漁港管理に当たっては、下記事項に留意の上、遺憾のないようにされたい。
1.当該措置は、既存漁港施設について適用するものであるが、国の補助事業により整備されたものは、漁業の根拠地の機能として必要なものを補助目的としており、また、地方自治法上も同一目的の公の施設とされているものであることから、あくまでも漁業生産活動を阻害しない範囲内での有効利用を図ることに留意されたい。
なお、一般的な受入れ基準は、別紙を参考にされたい。
2.公共施設の利用であることから、利用者の決定については、公募抽選によることとし、公平な利用が行われるよう配慮されたい。また、漁港利用の公募抽選を行う際には、漁港が漁船の利用を第一義的な目的とした施設であることについて周知等を行われたい。
3.漁船以外の船舶による漁港利用に関する対応については、漁業者と漁業者以外の漁港利用者との話し合いの場を設定するだけでなく、漁業者以外の漁港利用者に対して広報活動を実施する絶好の機会となるので、利用者の組織化を図り、駐車場等関連施設を含めた漁港利用のルールの周知、ゴミ持ち帰り等マナーの啓発、漁業調整規則、漁場利用協定制度等の周知等漁業と調和のとれた海面利用等について積極的な働きかけを行われたい。
4.対象漁港の設定に当たっては、当該漁港の利用実態を十分考慮した上で、円滑な漁港利用の確保を図るという観点から、事前に地元関係漁協の意見を聴し、十分に調整することとされたい。
5.漁協等が、管理受託者として漁港施設の利用料を徴収する場合とは別に、プレジャーボート等の管理、保管等のサービス等の対価としてプレジャーボート等の所有者から金銭を取得しているケースがみられる。これが漁港施設の利用料の徴収と誤解される等、その内容が不明朗であるとの指摘がある。
このため、漁協等によるプレジャーボート等の管理、保管等のサービス等が民事上の契約として行われている場合には、漁港管理者として、これら行為への直接の関与は困難であるが、漁港利用のルール化の一環として、漁協等からサービス等の実施状況につき報告を求めるとともに、契約内容、料金の開示等の明確化を指導することとされたい。
6.平成5年8月4日付けで「社団法人フィッシャリーナ協会」の設立が認可されたところである。この協会は、漁港施設や海面利用における漁業と海洋性レクリエーションとの調和など、本通達の趣旨等を円滑に推進することを目的にして設立されたものでもあることから、この協会の活用も図られたい。