漁港法の一部改正による放置艇対策の推進について
12水港第4843号
平成13年3月30日
関係都道府県知事あて
水産庁長官
漁港法(昭和25年法律第137号。以下「法」という。)については、平成12年5月19日に公布された漁港法の一部を改正する法律(平成12年法律第78号。平成13年4月1日施行。)により、近年社会問題化しているプレジャーボートの放置や投棄に対する規制を強化するとともに、これら、いわゆる放置艇に対し漁港管理者が適正な措置を講じることを可能とする制度の新設等の改正を盛り込んでいるところである。
今般の制度改正により、今後の漁港における放置艇対策が円滑に運用されるよう、下記のとおり通知するので参考とされたい。
なお、貴管下関係市町村に対し、貴職よりこの旨周知方お願いする。
また、漁港における漁船以外の船舶の利用について(平成9年10月3日付け9-3121水産庁漁港部計画課長通知)は、廃止する。
記
漁港は、漁業根拠地となる水域及び陸域並びに施設の総合体であり、漁港を利用する船舶は主として漁船であるが、法制度上、プレジャーボート等の漁船以外の船舶の利用が排除されているものではないことから、漁港管理者が各々の漁港において、法第39条第5項、法第39条の2等の規定を運用することにより、以下のとおり、漁港の利用調整を図り、適正な維持・管理を目指すことが肝要である。
1.漁港の基本施設の損傷、汚損を禁止する規定の新設(漁港法第39条第5項第1号関係)
本規定は、漁港の基本施設を損傷・汚損する行為について、漁港の保全の観点から速やかに当該施設の効用を回復させるため、漁港管理者自ら現状回復命令等の措置を講じることができるよう、措置の前提となる当該施設への損傷・汚損行為を禁止としたところである。
プレジャーボート等の所有者が、漁港の基本施設に係船環等を打ち付けて穴をあける行為等については、本規定の禁止行為に該当するものであることから、漁港管理者においては、今後そのような行為に対し、法第39条の2第1項に規定する措置等を講じられたい。
2.漁港の区域内における、船舶等の放置等を禁止する規定の新設(法第39条第5項第2号関係)
本規定は、漁港区域内において、放置艇や放置物件の存在が漁港施設の機能の低下の原因となり、漁港の管理上問題となることから、漁港管理者が漁港の保全上特に必要があると認められる区域を指定し、何人も、みだりに船舶等を捨てること又は放置することが禁止されたところである。
今後、各漁港管理者においては、それぞれが管理する個々の漁港の実態等に応じて、法第39条第5項の規定に基づき、放置等を禁止する物件及び区域の指定の公示を行う場合は、漁港法施行規則第14条第1項及び第2項に規定された所定の手続きにより実施されたい。
3.監督処分規定の整備(漁港法第39条の2関係)
上述のように、法第39条第5項において、新たに漁港の区域内における禁止行為を規定することにより、漁港管理者自らが放置船舶等の所有者等に対して移動を命じたり、損傷・汚損した行為者に対して現状回復を命じることができることとしたところである。
従前の監督処分規定では、命令を受けた者が当該命令を履行しない場合は、行政代執行法の手続に委ねられていたが、放置船舶等については、そもそも所有者が不明の場合が多いことから、行政代執行法による手続では的確な対応をとることが困難と考えられることから、監督処分の実効性をもたせるために新たに、監督処分を行う際、命ずべき者を確知することができない場合であっても、漁港管理者自らが放置船舶等の移動等を行うことを可能とする、いわゆる簡易代執行制度について規定したところである。また、併せて簡易代執行を実施した後の手続き(保管、売却等)についても規定したところであるので、これらの規定に基づき運用されたい。
4.模範漁港管理規程例との関係
模範漁港管理規程例は、今回の法改正により、漁港の区域内における船舶等の放置等を規制する等の規定が設けられたこと等から、法律と条例(漁港管理規程)との規制措置の適用関係を整理し所要の改正を行い、平成12年9月20日付け模範漁港管理規程例の一部改正についてにより通知しているところである。よって、その趣旨にかんがみ、適用関係について齟齬が生じないよう運用されたい。
5.放置船舶等に関する規制の適正な運用について
漁港管理者は、上記の漁港法の改正の趣旨を踏まえ、管理する各々の漁港の実態等に応じて、船舶等を捨て、又は放置することを禁止する区域を指定し、当該禁止区域内に存在する船舶をフィッシャリーナ等適切な係留保管施設等に誘導するとともに、当該禁止区域内において、監督処分を実施することにより、漁港の適正な管理に努められたい。
6.係留保管施設等の整備
漁港管理者は、船舶等の放置等の規制の強化と併せて、それらの受け皿となる適切な係留保管施設等の整備を図っていくことが肝要であり、その際、漁港利用調整事業、漁港漁村活性化対策事業等、係留保管施設整備事業の活用のほか、PFI手法の導入や民間事業者等の活用について検討することが重要である。
また、既存漁港施設において漁港管理者が漁船の漁港利用に支障がないと判断する場合には、プレジャーボート等漁船以外の船舶の適正な受け入れに努められたい。
7.隣接する漁港管理者及び他の水域管理者との連携
今般の法律改正では、放置船舶に対し漁港管理者が適正な行政措置を講じることを可能とする規定を盛り込んでいるところであるが、漁港管理者による本法に基づく措置のみでは近年社会問題化している放置艇問題を解消することは困難であるため、隣接する漁港管理者及び他の水域管理者との一層の連携を図られたい。