漁業経営革新円滑化総合融資対策実施要綱の制定について
10水漁第4350号
平成10年12月28日
都道府県知事あて
農林水産事務次官
長引く景気停滞の中で、漁業経営の積極的な取組に向けた投資意欲も減退傾向にあり、漁業・漁村の経済再生が緊急の課題となっている。
一方、消費者等における食料品に対する品質・安全志向の高まり、加工・外食向け需要の増大、販売方法の多様化や都市住民の漁村空間・漁業体験に対する価値観の変化などの情勢変化が生じており、これらの変化を的確に捉え、新たな需要・雇用を生み出すような革新的な漁業経営を育成し、漁業・漁村の活性化を図る必要がある。
このような中で、漁業者が、現下の漁業・経済情勢を踏まえ、漁業経営の革新に向けた新分野への進出、新たな操業方法の導入等を行うことを強力に支援することが必要となっていることを踏まえ、漁業経営の革新を図るために必要な機器・施設等について漁業近代化資金、低利運転資金について農林漁業信用基金の漁業経営革新保証付融資増大資金を活用した漁業協同組合等からの経営資金を融通する総合融資対策を実施することとしたところである。
これに伴い、漁業経営革新円滑化総合融資対策実施要綱を別紙のとおり定めたので、御了知の上、本対策の適正かつ円滑な運用に遺憾のないようにされたい。
以上、命により通達する。
(別紙)
漁業経営革新円滑化総合融資対策実施要綱
第1 目的
本対策は、漁業者が漁業経営の革新に向けて新分野への進出、新たな操業方法の導入等を行う場合に必要な漁業近代化資金等を総合的に融通することにより、漁業者の革新的な取組の支援を通じて資源水準の低下等による漁獲量の減少、魚価の低迷等に直面している漁業・漁村の経済再生に資することを目的とする。
第2 運用方針
1 新分野への進出、新たな操業方法の導入等を行うことにより漁業経営の革新を目指す漁業者が作成する漁業経営革新計画(以下「革新計画」という。)を達成するため、行政庁及び関係金融機関は、当該漁業者が必要とする資金について円滑かつ効率的に融通されるよう、緊密な協調を保つとともに、融資との関連における地域漁業振興方策等や営漁指導等についても十分配慮するものとする。
2 都道府県漁業経営革新円滑化審査会(以下「革新円滑化審査会」という。)による革新計画の承認手続については、漁業近代化資金(以下「近代化資金」という。)の利子補給承認手続等と同時並行的に進める等、簡素化及び迅速化を図るものとする。
第3 漁業経営革新計画
1 革新計画の作成者は、本対策に係る資金の貸付けを受けようとする者(以下「借入希望者」という。)とする。
2 革新計画の作成者は、様式第1号により革新計画を作成し、漁業協同組合(以下「漁協」という。)等融資機関を経由して革新円滑化審査会に提出するものとする。
3 水産業改良普及組織、漁業経営指導組織等関係機関は、革新計画の作成者が革新計画を作成するに当たり、必要に応じ指導・助言・資料の提供に努めるものとする。
第4 漁業経営革新円滑化審査会
1 革新円滑化審査会においては、第3により提出された革新計画について、第5の承認基準に留意して貸付対象としての適格性及び貸付けの適否に係る協議を行い、適当と認められる場合は、当該革新計画の承認を行うものとする。
2 革新円滑化審査会は、革新計画を承認したときは、様式第2号により、漁協等融資機関を経由して革新計画の申請者に通知するものとする。
第5 漁業経営革新計画の承認基準
1借入希望者は、漁業経営の革新に積極的に取り組む意欲と能力を有する漁業者(漁業を営む個人又は法人であって、その常時使用する従業員の数が300人以下であり、かつ、その使用する漁船(漁船法(昭和25年法律第178号)第2条第1項に規定する漁船をいう。)の合計総トン数が3千トン以下であるもの。)であること。
2 革新計画の内容が次の要件を満たす内容のものであること。
(1) 漁業経営の革新に向けた次のいずれかに該当する取組の導入であること。
ア 新分野への進出
水産物処理加工、直販、民宿、遊漁船の導入等
イ 操業方法等の改革
(ア) 漁船・定置漁業にあっては、漁業種類の転換、漁法の転換、新技術の導入、生産行程の協業化等
(イ) 養殖業にあっては、養殖種目の転換、養殖方法の改善、新技術の導入、養殖漁場改善等
(2) 新たな取組によって、漁獲物及びその加工品の生産・需要の拡大効果、雇用の増大効果その他地域漁業の活性化が見込まれること。
第6 貸付対象事業及び貸付条件
本対策により、貸し付けようとする資金は、近代化資金及び独立行政法人農林漁業信用基金から漁業信用基金協会(以下「基金協会」という。)に貸し付けられる資金(以下「漁業経営革新保証付融資増大資金」という。)を活用して漁協等から貸し出される運転資金(以下「低利運転資金」という。)であるが、その貸付対象事業及び貸付条件は、次に掲げるとおりである。
1 漁業近代化資金
本対策における近代化資金の貸付対象事業及び貸付条件は、漁業近代化資金助成法(昭和44年法律第52号)、漁業近代化資金助成法施行令(昭和44年政令第209号)及び漁業近代化資金助成法の制定について(昭和44年8月30日付け44水漁第6359号農林事務次官依命通達)の定めるところとする。
2 漁業経営革新保証付融資増大資金を活用した運転資金
漁業経営革新保証付融資増大資金の貸付条件は、独立行政法人農林漁業信用基金が定めるところによる。
第7 借入手続等
1 借入希望者は、近代化資金の借入申込書に革新計画を添付して漁協等融資機関に提出する。
2 低利運転資金については、原則として基金協会の保証付きで貸し付けることを内容として、融資機関が策定する融資要綱等で定める手続によるものとする。
3 革新計画の審査は、都道府県段階に設ける漁業経営革新円滑化審査会が行うものとする。
4 本対策に係る資金の貸付けは、漁協等の窓口から一括して行うものとする。
第8 漁業信用保証保険制度の活用
本対策に係る資金の貸付けに際しては、漁業信用保証保険制度の活用を図り、資金の融通の円滑化に努めるものとする。
なお、借入希望者が基金協会の債務保証を受けようとする場合には、革新円滑化審査会による革新計画の承認のほか、保証に関する手続も並行的に進めることにより、円滑な融通が図られるよう配慮するものとする。
第9 その他
この要綱の実施に関し必要な細目については、別に水産庁長官が定めるところによる。