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漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法の運用について

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14水漁第741号
平成14年7月1日
改正:平成17年4月1日 16水漁第2399号

都道府県知事あて
関係団体あて

農林水産事務次官


漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律(平成14年法律第73号。以下「改正法」という。)が、第154回国会において成立し、平成14年6月19日に公布された。また、改正法の施行日については、漁業再建整備特別措置法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(平成14年政令第228号)により平成14年7月1日とされた。
ついては、改正後の漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法(昭和51年法律第43号)、農林漁業金融公庫法(昭和27年法律第355号)及び中小漁業融資保証法(昭和27年法律第346号)の運用に当たっては、下記の事項に御留意の上、その適切かつ円滑な運用について、格段の御配慮をお願いする。
以上、命により通知する。

第一 趣旨
漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法(旧漁特法)(昭和51年法律第43号以下「法」という。)は、第1次石油危機による漁業用資材価格の高騰、200海里経済水域の設定の動き等により漁業経営が極めて困難な事態に直面したことを背景として昭和51年に制定された。
同法は、再建計画制度、中小漁業構造改善計画制度及び整備計画制度の3制度等からなっており、これまで漁業の再建整備を図るための基本的な制度として重要な役割を果たしてきた。
しかしながら、法の制定から長期間が経過し、国際的な200海里体制の定着、水産資源の悪化等、我が国漁業を取り巻く環境も法制定当時からみて大きな変化が生じている。
また、平成13年6月には水産基本法(平成13年法律第89号)が制定され、効率的かつ安定的な漁業経営の育成のためには、経営意欲のある漁業者が創意工夫を生かした漁業経営を展開できるようにすることが重要であり、国はそのために必要な施策を講ずるものとするとして、経営政策の基本的な考え方が明らかにされた。
このような状況の変化に対応するため、漁業経営再建整備特別措置法等の一部を改正する法律(平成14年法律第73号。以下「平成14年改正法」という。)により、効率的かつ安定的な漁業経営の育成を図るための仕組みが整備されたところである。
また、漁業経営維持安定資金に係る都道府県向けの補助金については、平成17年度において、事業を廃止し、税源を都道府県に移譲することとしたため、国の補助金等の整理及び合理化等に伴う農業近代化資金助成法等の一部を改正する等の法律(平成17年法律第16号。以下「平成17年改正法」という。)により、都道府県知事による再建計画の認定及び都道府県に対する国の利子助成に係る規定が削除されることとなった。
第二 漁業経営改善制度
1 漁業経営改善制度の仕組み
(1)漁業経営の改善に関する指針の策定
漁業経営の改善の促進についての国の基本的な考え方を明らかにするため、農林水産大臣が、水産政策審議会の意見を聴いて、漁業経営の改善に関する指針(以下「改善指針」という。)を策定し、公表することとされれている(法第3条)。
(2)漁業経営の改善に関する計画の作成
[1] 漁業経営の改善を図ろうとする漁業者や、直接又は間接の構成員(以下単に「構成員」という。)である漁業者の経営改善を支援しようとする漁業協同組合等は、単独で又は共同で行おうとする漁業経営の改善に関する計画(以下「改善計画」という。)を作成し、これを農林水産大臣又は都道府県知事に提出して、その改善計画が適当である旨の認定を受けることができることとされている(法第4条第1項)。
[2] 改善計画の作成主体となり得る漁業協同組合等については、「漁業者を直接又は間接の構成員とする漁業協同組合その他の政令で定める法人」と規定されており(法第4条第1項)、具体的には、漁業協同組合、漁業協同組合連合会及び民法第34条の規定により設立された社団法人が指定されている(漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法施行令(昭和51年政令第132号。以下「令」という。)第1条)。
[3] 個人である漁業者が法人化しようとする場合については、改善計画中に法人が行う漁業経営の改善に関する計画も記載できることとされている(法第4条第1項かっこ書)。
個人経営の法人化とは、経営体としての同一性を維持しながら、個人経営を法人経営に移行することをいい、法は、経営体としての同一性の確保を担保する観点から、設立される法人について、「個人である漁業者又はその者の営む漁業に従事する者を主たる組合員、社員又は株主とする法人(株式会社にあっては、定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがあるものに限る。)」と規定している。
なお、当該規定中「主たる」については、法人の組合員、社員又は株主のうち個人である漁業者自身又はその者の営む漁業に従事する者の有する議決権の合計が総組合員、総社員又は総株主の議決権の過半を占めており、かつ、その組合員若しくは社員のうちこれに該当する者の出資額又はその株主のうちこれに該当する者の有する株式の数の合計が総出資額又は発行済株式の総数の過半を占めている場合をいう。
[4] 改善計画においては、漁業者又は漁業協同組合等が単独で又は共同で行おうとする漁業経営の改善に関する事項を記載する。したがって、改善計画の作成は、これらの者が単独で行う場合と、これらの者が共同で行う場合が想定される。
このうち、漁業者又は漁業協同組合等が共同で改善計画を作成した場合にあっては、代表者を定めることとされており(法第4条第1項ただし書)、代表者の数については3人以内とされている(漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法施行規則(昭和51年農林省令第24号。以下「規則」という。)第1条第2項)。
[5] 改善計画の提出先及び認定主体については、漁業振興が地域産業の振興に関する施策であることから、原則として都道府県知事とされている。
ただし、
ア 我が国200海里外で操業し、水揚げも住所地の属する都道府県以外の市場で行うなど地域との関係が希薄な漁業の業種として政令で定める業種に係る計画
イ 一つの都道府県の区域を超えて実施される計画
については、農林水産大臣とされた(法第4条第1項)。
地元地域との関係が希薄な政令で定める業種の認定を農林水産大臣が行うという考え方は、現行の再建計画制度にならったものであり、令においては、再建計画と同じく遠洋底びき網漁業及び遠洋かつお・まぐろ漁業が指定されている。(令第2条)
[6] 改善計画の記載事項については、
ア 漁業経営の改善の目標
イ 漁業経営の改善による経営の向上の程度を示す指標
ウ 漁業経営の改善の内容及び実施時期
エ 漁業経営の改善を実施するのに必要な資金の額及びその調達方法
とされている(法第4条第2項)。
具体的な改善計画の様式は、規則で定められている(規則別記様式第1号)。
[7] 改善計画の認定基準については、
ア [6]のアからウまでに掲げる事項が改善指針に照らして適切なものであること
イ [6]のウ及びエに掲げる事項が漁業経営の改善を確実に遂行するため適切なものであること
とされている(法第4条第3項)。
都道府県知事においては、改善計画の認定を行うに当たっては、申請に係る漁業をめぐる経営環境の推移、申請者の資産及び負債の状況、申請者の経営実績等を総合的に勘案してその適否を判断されたい。
なお、改善計画の変更及び取消しについては、令第3条及び規則第2条に規定されており、
ア 改善計画を変更しようとするときは、農林水産大臣又は都道府県知事の認定を受けなければならないこと
イ 農林水産大臣又は都道府県知事は、アの認定の申請があった場合において、当該変更が法第4条第3項各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、認定をするものとすること
ウ 変更の認定の申請に当たっては規則別記様式第2号によること
エ 農林水産大臣又は都道府県知事は、改善計画の認定を受けた漁業者又は漁業協同組合等が改善計画に従って漁業経営の改善のための措置を行っていないと認めるときは、その認定を取り消すことができること
が定められている。
[8] 以上のほか、改善計画の申請及び認定に関する事務処理方針等については、別途水産庁長官から通知するところによられたい。
2 金融上の支援措置
(1)公庫からの資金の貸付け
農林漁業金融公庫(沖縄県にあっては、沖縄振興開発金融公庫。以下「公庫」という。)は、改善計画の認定を受けた漁業者(改善計画に従って設立された法人を含む。)又は漁業協同組合等に対し、当該認定に係る改善計画に従い漁業経営の改善のための措置を行うために必要な資金(漁業経営改善支援資金(経営改善))の貸付けを行うものとされている(法第9条第1号)。
漁業経営改善支援資金(経営改善)の資金使途については、
[1] 漁船の改造、建造又は取得に必要な資金
[2] 漁業者の共同利用に供する施設の改良、造成又は取得に必要な資金
[3] 漁業の生産力の維持増進に必要な施設の改良、造成又は取得に必要な資金
[4] 漁業経営の改善のためにする漁船その他の施設の整備、生産方式の合理化、経営管理の合理化その他の措置に伴い必要な資金(いわゆる長期運転資金)
が定められている(農林漁業金融公庫法第18条第1項第5号の2、第5号の4、第7号及び第8号並びに別表第2の第4号。沖縄振興開発金融公庫法施行令(昭和47年政令第186号)第2条第1号ヨ、レ、ツ及びネ。)。
この長期運転資金の具体的な資金使途については、漁業者が漁業経営の改善を図るのに必要な次の資金が指定されているところである(農林漁業金融公庫法第18条第1項第5号の4の資金を指定する件(平成14年7月1日財務省・農林水産省告示第24号))。
[1] 漁船漁業用施設、海面養殖施設、内水面養殖施設その他の漁業経営の改善のための措置に必要な施設について賃借権を取得する場合において、当該賃借権の存続期間に対応する借賃の全額を一時に支払うのに必要な資金
[2] 魚種、漁場又は操業の時期若しくは方法の転換に伴い必要となる漁船漁業用施設その他の施設の取得に必要な資金
[3] 水産物の需要を開拓するための新たな水産加工品等の調査及び開発に必要な資金
[4] 漁業経営の改善のための措置の実施によって必要となる薬品費、艤装費その他の費用(水産物の生産、流通、加工又は販売に必要なものに限る。)に充てるのに必要な資金
[5] 漁船の改造、建造若しくは取得又は漁具その他漁業経営に必要な資材若しくは施設の取得若しくは設置のため農林漁業金融公庫法第18条第1項の規定に基づき農林漁業金融公庫が融通する資金(沖縄県にあっては、沖縄振興開発金融公庫法施行令第2条第1号の規定に基づき沖縄振興開発金融公庫が融通する資金)を借り受けたために生じた負債の円滑な支払に必要な資金
(2)漁業協同組合等の民間金融機関からの短期運転資金の貸付け
改善計画に従って漁業経営の改善のための措置を行う中小漁業融資保証法第2条第1項の中小漁業者等が円滑に低利の運転資金(漁業経営改善促進資金)の融通を受けられるよう、漁業信用基金協会が融資機関に対し必要な資金を供給する業務を行うこととされている(中小漁業融資保証法第4条第2号)。
(3)改善計画の認定と融資等との関係
改善計画の認定は、申請者に対して金融、税制、補助事業等の政策的支援を行うための前提であり、申請者は、認定を受けることにより通常の融資等よりも有利な条件での融資等を申請する資格を得ることとなっている。
(4)保証保険のてん補率の引上げ
改善計画に従って漁業経営の改善のための措置を行うために必要な資金について、その円滑な融通が図られるよう、保証保険のてん補率を100分の80(地方公共団体の出資の額が出資総額の4分の1未満である漁業信用基金協会については100分の60)に引き上げ、漁業信用基金協会の保証態度の積極化を図ることとされている(中小漁業融資保証法第76条の2)。
なお、てん補率の特例の対象となる資金とは、「漁業経営の改善を実施するのに必要な資金」(法第4条第2項第4号)として改善計画に記載された資金であり、具体的には、規則別記様式第1号の別紙7に記載された資金をいう。
3 漁業権の移転制限に関する特例
改善計画の認定を受けた個人である漁業者であって定置漁業権又は区画漁業権を有する者が、改善計画に従い法人化する場合にあっては、漁業法(昭和24年法律第267号)第26条第1項本文の規定は適用せず、当該法人に対し漁業権の譲渡ができることとされている(法第10条)。
この特例は、
[1] 漁業権の免許を受けて漁業を営んでいる漁業者の現状をみると、個人又は法人格のない社団による経営の割合が高くなっており、これらの経営の向上のためには法人化が重要な手法の一つと考えられること
[2] 特に、定置漁業を営んでいる網組、大敷組合等の法人格のない社団については、昭和37年以来「当分の間」ということで漁業権の免許に当たって法人とみなし、一定の要件を満たす場合には高い優先順位が適用されてきたが、当該規定が漁業法等の一部を改正する法律(平成13年法律第90号)により廃止されたことから、法人化に取り組む動きも出てきており、法人への円滑な移行を支援するための仕組みが求められていること
から設けられたものである。
本条でいう個人経営の法人化とは、
[1] 定置漁業権若しくは区画漁業権を有する個人又は、
[2] その個人が営む当該漁業権の内容である漁業に従事する者
を主たる組合員、社員又は株主とする法人(株式会社にあっては、定款に株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨の定めがあるもの)を設立し、個人経営から当該法人による経営へと移行することをいうものである。
なお、本条の「主たる」の解釈については、1の(2)の[3]と同様である
4 税制上の特例措置
改善計画の達成を支援するため、税制上の特例措置として、次のとおり減価償却の特例措置(法第11条)及び登録免許税の軽減措置が講じられることとされている。
[1] 改善計画の認定を受けた漁業者(改善計画に従って設立された法人を含む。)が、改善計画に従い新たに取得し、又は建造した船舶については、5年間、普通償却限度額の100分の14の割増償却が認められる(租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第13条の4、第46条の4。租税特別措置法施行令第6条の11、第29条の3の2)。
[2] 漁業者が、認定を受けた改善計画に基づいて建造し、又は取得する漁船については、次のとおり登録免許税の税率が軽減される。(租税特別措置法第79条)
ア 所有権の保存登記 1,000分の3(本則1,000分の4)
イ 所有権の移転登記 1,000分の18(本則1,000分の28)
ウ 抵当権の設定登記 1,000分の3(本則1,000分の4)
5 改善計画に従い設立された法人に対する支援
なお、認定を受けた改善計画に従い設立された法人については、改善計画の認定を受けた漁業者一般と同様に、公庫からの資金の融通(法第9条第1号括弧書)、漁業経営改善促進資金の融通(中小漁業融資保証法第4条第2号)、保証保険のてん補率の特例(中小漁業融資保証法第76条の2)及び税制の特例(割増償却について租税特別措置法第46条の4及び租税特別措置法施行令(昭和32年政令第43号)第29条の3の2、登録免許税について租税特別措置法第79条)の対象となるものとされている。
6 援助措置
国及び都道府県は、改善計画の達成のために必要な助言、指導及び融資のあっせんその他の援助を行うものとされている(法第7条)。
また、改善計画の達成のためには、漁業協同組合を始めとした関係団体による指導・協力が不可欠である。特に、改善計画の作成及び認定の申請については、漁業協同組合等が構成員である漁業者に対し積極的な指導、援助を行うように指導されたい。
第三 再建計画制度
1 制度の趣旨
本制度は、経営が困難に陥っている中小漁業者の経営の再建を図るため、法第5条第1項の規定に基づき農林水産大臣の認定を受けた漁業経営再建計画(以下「再建計画」という。)に従って経営の再建を図ろうとする中小漁業者に対し、固定化債務の整理等に必要な資金(以下「漁業経営維持安定資金」という。)を融通しようとするものである。
この再建計画の認定については、平成17年改正法により、都道府県知事による再建計画の認定に係る規定が法律上削除された。
2 再建計画の認定の申請
(1)再建計画の認定の申請を行うことができる者は、「漁業経営の維持が困難となっており、又は困難となるおそれの大きい中小漁業者」であり(法第5条第1項)、具体的には、最近の収支が通算して損失となっている者又は自己資本が著しく過少で財務内容が極度に悪化している者等である。
(2)農林水産大臣による再建計画の認定は、遠洋底びき網漁業又は遠洋かつお・まぐろ漁業を主として営む者に限り行うこととされている(法第5条第1項、令第2条)。
(3)農林水産大臣による再建計画の認定の申請に際しては、申請者が構成員となっている法第8条第1項の農林水産大臣が指定する法人(以下「農林水産大臣指定法人」という。)の意見書を添付することとされている(規則第3条)。
3 再建計画の認定
(1)再建計画の認定の申請があったとき、農林水産大臣は、[1]再建計画が申請者の漁業経営の再建を図るために適切なものであり、かつ、[2]申請者が再建計画を達成する見込みが確実であると認めるときは、その再建計画の認定をするものとされている(法第5条第3項、令第4条)。
(2)なお、再建計画の変更、取消しについては、令第5条及び規則第4条に規定されており、
[1] 再建計画を変更しようとするときは、農林水産大臣の認定を受けなければならないこと
[2] 農林水産大臣は、[1]の認定の申請があった場合において、当該変更が令第4条各号に掲げる基準に該当するものであると認めるときは、認定をするものとすること
[3] 変更の認定の申請に当たっては、2の(3)と同様の手続によることとすること
[4] 農林水産大臣は、再建計画の認定を受けた中小漁業者が再建計画に従ってその漁業経営の再建を図るために必要な措置を講じていないと認めるときは、その認定を取り消すことができること
が定められている。
4 漁業経営維持安定資金の融通
漁業経営維持安定資金の融資機関は、漁業協同組合、信用漁業協同組合連合会、農林中央金庫、銀行又は信用金庫とされている(法第8条第1項、令第10条)。
漁業経営維持安定資金は、「固定した債務の返済その他の漁業経営の再建を図るために必要な債務の整理を行うのに緊急に必要な資金」である(法第8条第2項)。この資金による整理の対象となる債務は、具体的には、返済期限到来後未返済となっている債務、実質的に延滞し、又は固定化している債務その他これに準ずる債務である。
漁業経営維持安定資金の利率については、年6.5%以内、償還期限は10年(特認15年)以内(うち据置期間3年以内)とされている(法第8条第2項、令第12条)。
このほか、再建計画についての事務処理、漁業経営維持安定資金制度の運用、事務処理の方針等については、別途水産庁長官から通知するところによられたい。
5 漁業経営維持安定資金に係る利子補給に対する助成
政府は、農林水産大臣指定法人が、漁業経営維持安定資金の融通を行う融資機関に対し、当該資金について利子補給を行う場合、予算の範囲内で補助を行うものとされており(法第8条第1項)、その額は、農林水産大臣による再建計画の認定を受けた中小漁業者に漁業経営維持安定資金を貸し付ける融資機関に対し、農林水産大臣指定法人が当該資金につき利子補給を行うのに要する経費と同額である(令第11条)。
この漁業者についても、漁業経営の実情、地域産業としての役割等を総合的に勘案し、更に金利負担の軽減が図られるよう、都道府県においても援助方特段の御配慮をお願いする。
なお、「農林水産大臣指定法人」は、日本鰹鮪漁業協同組合連合会、全国漁業協同組合連合会及び社団法人日本トロール底魚協会とする。
6 系統組織の指導協力体制の整備
再建計画の作成及び再建計画に従った漁業経営の再建については、中小漁業者自らの努力はもとよりであるが、これらの適切かつ円滑な実施を確保するためには、漁業協同組合を始め漁業協同組合連合会、信用漁業協同組合連合会、漁業信用基金協会、農林中央金庫支店・事務所等系統組織を挙げた指導・協力体制が不可欠であり、また、関係金融機関、都道府県等の協力を得ることも必要であるので、農林水産大臣指定法人の効果的な取組が期待されるところである。
特に、再建計画の作成及び認定の申請に当たっては、漁業協同組合等が積極的な指導、援助を行うように指導されるとともに、再建計画の作成、再建計画の実質的審査、再建計画の達成のための指導・協力体制の確立のためには、たとえば、漁業協同組合連合会、信用漁業協同組合連合会、漁業信用基金協会、農林中央金庫支店・事務所等関係団体からなる組織を設けること等も適切と考えられるので、農林水産大臣指定法人におかれても、実情に応じ必要な措置を講ずることとされたい。
第四 整備計画制度
1 制度の趣旨
本制度は、国際環境の変化、水産資源の状況等に対応して漁業者が自主的に行う漁業の整備のための取組を支援する制度である。
漁業の整備の具体的な手法について、法は、漁船の隻数の縮減(減船)を例示しているが、その他の手法としては休漁、一時的な業種・漁場転換、漁具・漁法制限等の多様な方法が想定されている。
2 整備業種の指定
その業種に係る漁業に関連する国際環境の変化、水産資源の状況等に照らし、当該漁業に使用される漁船の隻数の縮減その他当該漁業の整備を行うことが必要である業種について政令で指定することとされている(法第6条第1項、令第6条)。
3 整備計画
(1)法第6条第1項の規定に基づき指定された業種に係る漁業を営む漁業者を構成員とする漁業協同組合、漁業協同組合連合会又は社団法人は、整備事業(法第6条第1項に規定する整備事業をいう。以下同じ。)について整備計画を作成し、農林水産大臣の認定を受けることができることとされている(法第6条第1項、令第7条)。
(2)整備計画についての農林水産大臣の認定基準は、[1]整備事業の目標、内容及び実施時期が当該漁業の存立を図るため必要かつ適切なものであること、[2]事業実施に必要な資金の額及び調達方法が整備事業を確実に遂行するために適切なものであること、及び[3]当該整備事業に参加する漁業者の数及び当該整備事業の実施の態様からみて当該漁業の整備が的確に実施されると認められることとされている(令第8条)。
(3)なお、整備計画の変更、取消しについては、令第9条に規定されており、
[1] 整備計画を変更しようとするときは、農林水産大臣の認定を受けなければならないこと
[2] 農林水産大臣は、[1]の認定の申請があった場合において、当該変更が令第8条各号に掲げる基準に該当するものであると認めるときは、認定をするものとすること
[3] 農林水産大臣は、整備計画の認定を受けた漁業者団体又はその構成員が整備計画に従って整備事業を実施していないと認めるときは、その認定を取り消すことができること
が定められている。
4 公庫からの資金の貸付け
(1)公庫は、[1]整備計画の認定を受けた法人、[2]その構成員である漁業者であって当該認定に係る漁業を営むもの、又は[3]当該漁業者を構成員とする漁業協同組合に対し、当該認定に係る整備計画に従い整備事業を実施するために必要な資金の貸付けを行うものとされている(法第9条第2号、令第13条)。
(2)本資金の資金使途については、「漁船の隻数の縮減、漁業の休業その他の漁業の整備に伴い必要な資金」とされている(農林漁業金融公庫法第18条第1項第5号の5及び別表第2の第4号(二)。沖縄振興開発金融公庫法施行令第2条第1号ソ。)。
この規定を受け、
[1] 漁船の隻数の縮減に伴う補償金の支払いに必要な資金
[2] 水産資源の回復を目的として、漁船の隻数の縮減、漁業の休業その他の漁業の整備に係る費用を負担するのに必要な資金
の融通が行われている(農林漁業金融公庫法第18条第1項第5号の4の資金を指定する等の件(昭和58年2月21日大蔵省・農林水産省告示第1号))。
5 援助措置
国及び都道府県は、整備計画の達成のために必要な助言、指導及び融資のあっせんその他の援助を行うものとされている(法第7条)。
第五 職業転換給付金等
1 趣旨
減船の実施に伴い、漁業従事者が離職を余儀なくされる事態が発生することが予想されるが、このような離職者について、その有する能力に適合する職業に就くことを容易にするため、就職のあっせん、職業訓練の実施、職業転換給付金の支給等の措置を講ずることとし、このための所要の規定が設けられている(法第12条~第14条)。
2 就職あっせん等
漁業を取り巻く国際環境の変化等に対処するために実施された漁船の隻数の縮減に伴い離職を余儀なくされた者の就職を促進するため、政府は、就職のあっせん、職業訓練の実施その他の措置を講ずるように努めることとされている(法第12条)。
3 職業転換給付金
減船に伴い発生が予想される漁業離職者のうち政令で定める業種に係る漁業に従事していた者で船員になろうとするものに対し、職業転換給付金を支給することができることとされている(法第13条)。
また、この職業転換給付金に対しては、公租公課は課さないこととされている(法第14条)。
なお、船員以外の職業に就こうとする者については、雇用対策法(昭和41年法律第132号)に基づき、離職者に対し、一定の要件の下で、離職者の有する能力に適合する職業に就くことを容易にするための就職促進手当等の職業転換給付金の支給措置が講じられることとなっている。

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