水産資源保護法施行規則の一部を改正する省令の制定について
5水研第209号
平成5年4月1日
改正:平成18年3月31日 17水推第1226号
各都道府県知事あて
水産庁長官
水産資源保護法施行規則の一部を改正する省令(平成5年農林水産省令第15号。以下「省令」という。)が、別添のとおり平成5年4月1日に公布されたので、下記事項を御了知の上、関係漁業者等の指導に遺憾のないようにされたい。
記
第1 省令の制定の趣旨
1 近年の世界的な環境問題への関心の高まりの下で、野生生物の保存に関する関心が高まっている。このような状況を背景にして、漁業についても、野生水産動植物の保護について積極的な対応が求められている。
水産庁においては、野生水産動植物の保護に当たっての基本的な姿勢を示すものとして、「野生水産動植物の保護に関する基本方針」(以下「基本方針」という。)を策定し、中央漁業調整審議会において承認を得、告示したところであり、今般、基本方針に基づいて水産資源保護法施行規則を改正し、基本方針に該当する保護を講ずべき水産動物について、試験研究等による場合を除いて採捕を禁止するとともに、これに違反して採捕された野生水産動物の所持及び販売を禁止する等の措置を講じることとしたものである。
2 保護の対象となる野生水産動植物の選定については、今後、データの収集・分析の結果を待って順次行うこととするが、今回対象とした野生水産動物は、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約(通称、ワシントン条約)附属書I記載種(絶滅のおそれのある種)で我が国が留保を行っていないもののうち、資源状況からみて早急に保護対策を講ずる必要があると判断された種であり、採捕行為等の規制を行うこととしたものである。
第2 省令の内容等
1 採捕の原則禁止(第1条第1項)
(1)ひめうみがめ、おさがめ、しろながすくじら、ほっきょくくじら、すなめり及びじゅごん(以下、「保護動物」という。)は、試験研究その他特別の事由によりあらかじめ別記1による許可申請を行い農林水産大臣の許可を受けた場合を除き、第1条第1項の表の禁止区域においては、採捕を行ってはならない(ひめうみがめ及びおさがめにあっては、その卵を含む。)こととされた。なお、区域の範囲については、海面の部分のみならず、産卵域である砂浜等も含まれるので留意されたい。
(2)保護動物の採捕禁止の例外としては、試験研究及び増殖の用に供するために採捕する場合等が考えられる。
(3)保護動物を意図せずに捕獲した場合には、生きているものは生きたまま速やかに海に戻すほか、死んでいるものは埋設又は焼却する等適切に取り扱わなければならない。この場合は、別記2により、捕獲された日から数えて10日以内に関係都道府県知事を経由して意図しない捕獲及び捕獲されたものの処分についての事実を農林水産大臣に報告するよう関係者への指導を徹底されたい。
2 所持又は販売の禁止(第1条第2項)
(1)第1条第1項の規定に違反して採捕された保護動物は、所持又は販売してはならない(ひめうみがめ及びおさがめにあっては、その卵を含む。)こととされた。
(2)第1条第1項ただし書に基づく農林水産大臣の許可により捕獲された当該個体を譲渡(販売を含む)しようとする場合には、当該個体の採捕に係る農林水産大臣の許可証を当該個体に添付しなければならない。
3 罰則(第9条、第10条)
第1条の規定に違反した者は、2年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとされた。
また、法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても同様の罰金刑を科することとされた。
第3 その他
1 漁業調整規則又は海区漁業調整委員会指示によりひめうみがめ及びおさがめの規制を行っている都県又は海区漁業調整委員会においては、これらの規則等と本省令との整合性を図るよう速やかに措置されたい。
2 座礁・漂流している保護動物を発見した場合の報告及び取り扱いについては、上記第2の1の(3)に準ずる対応をすることとされたい。
3 保護動物を意図せず捕獲し又は座礁・漂流しているものを発見しその旨適切に農林水産大臣への報告を行った場合にあっても、その目的のいかんを問わず当該個体(派生物を含む。以下同じ。)の所持又は譲渡は禁止されるので留意されたい。ただし、意図せず捕獲され又は座礁・漂流が発見されたものを試験研究等の学術目的に利用しようとする場合には、死亡している個体に限り、捕獲又は発見の日から3日以内に上記第2の1の(3)又は第3の2に基づく報告と同時に当該個体に係る第1条第1項ただし書に基づく許可の申請を行い、当該申請に基づく許可を得た場合にのみ当該個体を所持又は譲渡することができることとなるので念のため申し添える。
4 「指定漁業の許可及び取締り等に関する省令の一部を改正する省令の制定について」(平成4年3月27日付け4水漁第987号水産庁長官通達)は、廃止する。
別記2(PDF:50KB)