漁場計画の樹立について
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19水管第1590号
平成19年8月30日
都道府県知事あて
水産庁長官
平成20年9月から予定されている定置漁業権並びに特定区画漁業権及び漁業法(昭和24年法律第267号。以下「法」という。)第6条第5項第5号に規定する琵琶湖、霞ヶ浦等以外の内水面における区画漁業権(真珠養殖業を内容とする区画漁業権を除く。)の次期一斉切替えに当たり、法第11条の規定に基づきあらかじめ行うこととされている漁場計画の樹立については、「漁場計画の樹立について」(平成14年8月6日付け14水管第1745号水産庁長官通知)を基本として下記に留意しつつ、遺憾のないよう措置されたい。
また、漁業権の免許事務及び漁業権行使規則の認可事務の具体的処理については、「漁業権の免許に関する事務処理について」(平成9年9月10日付け9水振第1702号水産庁長官通知、一部改正:平成14年10月31日付け14水管第2403号水産庁長官通知)を整理補足し、別途通知することとしているので、申し添える。
記
1 基本的考え方
水産基本計画(平成19年3月20日閣議決定)において、沿岸漁業について、漁業生産の維持増大を図るため、資源の回復・管理を推進し、新規就業・新規参入の促進を図るほか、「養殖業について、過密養殖が行われている漁場と利用度の低い漁場が混在し漁業権の利用度合いにアンバランスが生じている場合があることや沖合域が養殖漁場として未利用であることに対応して、より広域を対象とした漁場の総合的かつ効率的な利用を図るための具体的な方策について検討する。」とされている。
次期一斉切替の対象となる定置漁業権及び特定区画漁業権等は、漁況・海況の変化、技術の進歩に応じて漁場計画を見直し、他種漁業との調整を図る必要が高い等の理由から、漁業権の存続期間を他の漁業権よりも短い5年とし、漁業権の内容の固定化を防ぎ、より合理的かつ高度な漁場計画を樹立し易いように措置されているものである。
これらのことを踏まえ、沖合域を含めての次期漁場計画の樹立に当たっては、従来にも増して漁業関係者の要望及び沖合域を含めての漁場条件の調査を徹底して行い、水面の総合利用を図り漁業生産力を発展させるという観点から、適正かつ合理的な漁場計画を策定するよう努める必要がある。
2 特定区画漁業権の免許の適格性及び優先順位
特定区画漁業権の内容たる区画漁業の免許の優先順位については、法第18条第1項に基づき、法第14条第2項及び第6項の適格性を有する組合を第一順位として免許されている。また、これらの規定における漁業者が法人であるとき、世帯数の計算方法については、法第14条第9項によることとなることに留意する必要がある。
例えば、特定区画漁業権の適格性に関する法第14条第2項の規定が適用される、いわゆる既存漁場において、組合管理漁業権として魚類小割り式養殖業を内容とする特定区画漁業権の免許を受けている組合の唯一の行使者が法人組合員であるような場合、当該法人組合員の構成員(漁業生産組合等の組合員、合名会社、合資会社及び合同会社の社員、株式会社の株主)のうち当該養殖業の従事者が、[1]存在しない、[2]存在するが誰も地元地区に世帯住所地を有さない、[3]存在して地元地区に世帯住所地を有するが誰も地元地区の組合の個人組合員ではない等の実態にある地元地区の組合については、明らかに組合管理漁業権として免許を受ける適格性はないので、法第18条第2項に従い優先順位第二位以下の申請者に免許することとなることに注意されたい。
3 漁業権行使料の徴収に関する透明性の向上
組合管理漁業権としての特定区画漁業権の免許を受けている組合が、漁業権の管理に要する経費に充てるために行使者たる組合員から徴収する賦課金の一種である行使料については、漁業法第8条第2項に規定する漁業権行使規則において、当該漁業を営む権利を有する者(組合員)が当該漁業を営む場合に遵守すべき事項として、漁業権管理費の負担(行使料の徴求)を定めることとしている(「漁業権行使規則等の作成について」(昭和37年11月13日付け37水漁第6242号水産庁長官通知、一部改正:平成4年8月7日付け4水振第1761号水産庁長官通知、平成14年10月31日付け14水管第2403号水産庁長官通知)。行使料の徴求は、水産業協同組合法(昭和23年法律第242号。以下「水協法」という。)第22条第1項の規定に従い定款の定めるところにより徴収することができることとされており、その額及び徴収方法については、水協法第48条第1項第4号の規定により総会の議決が必要とされている。
また、漁業権の管理に要する経費とは、漁業権の管理上必要な組合の負担する経費をいい、具体的には、漁業権にかかる監視取締、漁場環境保全、資源管理、資源増殖、施設維持管理等直接漁場の管理に必要な経費のほか、管理上必要な通信費等の間接的な経費も含めて差し支えない。
しかしながら、行使料は、賦課金の一種であることから、組合員がその徴収の義務に応じない場合には、当該組合員を組合から除名することができるなど厳しい制裁を行うことができることとなっている。
このため、漁業権の管理に要する経費とされる行使料の目的を歪曲した不要の経費が含まれることは厳に避けなければならない。
また、行使料の算定に当たっては、例えば漁場利用の程度を反映するような算定式を用い具体的金額を明示した上で総会で決定する等透明性の確保を図ることが重要である。
なお、特定区画漁業権の内容たる区画漁業が優先順位第二位以下の申請者に免許された場合、組合管理漁業権ではないので当然のことながら行使料を徴収することはできないことに留意されたい。
4 定置漁業にかかる法人以外の社団の法人化
平成13年改正法により、効率的かつ安定的な漁業経営を育成する観点から、定置漁業の免許において優先順位の高い法人として一定の要件を満たす株式会社を加えるとともに、同じ趣旨から従来の人格なき社団を優先順位の高い法人とみなす経過措置を削除したところであるが、網組等の法人化が十分に達成されていない都道府県にあっては、平成18年の会社法制の見直しに伴い法人化の手続きが容易になったことを踏まえた指導を行われたい。
なお、定置漁業等の法人経営化については、漁業経営の改善及び再建整備に関する特別措置法(昭和51年法律第43号)第4条の規定により改善計画の認定を受けた個人である漁業者であって定置漁業権又は区画漁業権を有する者が、当該改善計画に従い法人化する場合には、同法第10条の規定により、知事が委員会の意見を聴いてこれを認可したときは、当該法人に対して漁業権を移転することが認められることとされていることから、この制度の活用により免許期間途中での法人化も可能であることを十分理解の上、法人化の指導に向けて活用することとされたい。
5 都道府県漁業調整規則との関係
従来、知事が法第65条第1項及び水産資源保護法(昭和26年法律第313号。以下「保護法」という。)第4条第1項の規定に基づいて定める規則(以下「知事規則」という。)については、法第65条第2項及び第3項及び保護法第4条第2項及び第3項により6月以下の懲役、10万円以下の罰金等を設けることができることとされていた。この知事規則において知事は、特定の漁業の許可制や漁業の禁止等の制限又は禁止の措置を定めていたところであるが、近年これらに違反した行為が横行しており、その一因として、知事規則に基づく罰則が低いため、違反行為の抑止や再犯防止ができないことがあげられ、全国の地方公共団体及び漁業関係団体からは、罰則引き上げについての強い要請があったところである。このことに対応し、漁業法及び水産資源保護法の一部を改正する法律(平成19年法律第77号)においては、知事規則において知事が定めた漁業の禁止又は漁業の許可制に違反する行為についての罰則を法第138条第6号及び保護法第36条第1号に位置付け、その上限を3年以下の懲役、200万円以下の罰金等に大幅に引き上げる措置が講じられたところである。
この知事規則により知事が定めた漁業の禁止又は漁業の許可制については、共同漁業権に基づき営む漁業に対しても当然適用されることに留意し、知事規則の改正、漁業権行使規則の取扱いにかかる漁業権管理主体への指導に当たられたい。例えば、知事規則に小型定置網漁業を営もうとする者は知事の許可を受けなければならないことが規定されている場合、小型定置網漁業を含む第2種共同漁業権が免許されている漁業協同組合の組合員が、関係法令に従い制定された漁業権行使規則の定めるところにより営む場合であっても、知事規則において、このような場合については知事の許可を受けなくてもよいことが明確に規定されていない限り違反となる。
なお、このことについては、別途、通知している「都道府県漁業調整規則例及び都道府県内水面漁業調整規則例の一部改正について」(平成19年8月30日付け19水管第1589号水産庁長官通知)を参考にされたい。