生乳流通体制の合理化の総合的な推進について(平成27年10月16日)
27生畜第1115号
平成27年10月16日
別記都道府県知事
一般社団法人中央酪農会議会長殿
別記指定生乳生産者団体長
農林水産省生産局長
指定生乳生産者団体の広域化及び集送乳の合理化については、従来から、「指定生乳生産者団体(以下「指定団体」という。)の広域化の推進について」(平成10年4月16日付け10畜A第880号農林水産省畜産局長通知)及び「集送乳の合理化の推進について」(平成17年5月17日付け17生畜第459号農林水産省生産局長通知)により、推進してきたところである。
しかしながら、平成13年度に完了した指定団体の広域化から一定期間が経過する中で、酪農経営を取り巻く環境や経営規模など生産構造も大きく変化しているところである。このような中で、特に近年は、生産者数の減少とともに生乳生産量も減少し、需給環境が逼迫傾向にあるなど、酪農生産基盤の強化とともに、生乳流通体制の合理化が喫緊の課題となっているところである。
指定団体等の再編・合理化を始めとした生乳流通体制の合理化については、生産者及び生産者団体の主体的な取組により実現することが基本であるが、農林水産省としても、指定団体等の取組を支援し、生乳流通体制の合理化を積極的に推進して行く考えであるので、一般社団法人中央酪農会議会長及び指定団体の長におかれては、下記に従い、指定団体の会員である農業協同組合連合会等及びその会員である単位農協等(以下「会員等」という。)と連携して、生乳流通体制の合理化に向けて強力に取り組むとともに、会員等への周知・指導をお願いする。
また、都道府県知事におかれては、会員等が生乳流通体制の合理化に向けて強力に取り組むよう周知・指導をお願いする。
記
1 指定団体のあるべき姿の検討
一般社団法人中央酪農会議(以下「中央酪農会議」という。)は、指定団体の代表者、学識経験者等を構成員とした検討会を設置し、平成32年度以降における望ましい指定団体の姿を含めた以下の事項を検討の上、その実現に向けた再編計画を平成28年3月中に策定し、農林水産省に報告すること。
(1)平成32年度以降における望ましい指定団体の姿とその実現に向けた工程
(2)(1)における会員等の機能とあり方
(3)指定団体及び会員等の手数料のあり方
(4)生産者への情報開示の具体的な方法
(5)その他必要な事項
なお、検討に際しては、地域によって乳価や控除経費の水準等に差があること、管内の生産基盤の状況に差があること等に留意しつつ、指定団体の更なる広域化に加えて、生産者を直接の組合員とする広域農協化も検討するなど可能な限りの合理化を目指すものとする。
2 指定団体等の生乳取引体制の合理化の推進
指定団体は、会員等と連携し、次の事項からなる平成28年度から5カ年間の生乳受託販売業務の合理化に係る推進計画(以下「業務推進計画」という。)を平成28年3月中に策定し、中央酪農会議を経由して農林水産省に報告すること。
(1)一県一団体化など会員等の組織の再編整備
(2)生乳受託販売業務の指定団体への一元化と会員等との業務・役割分担の見直し
(3)(2)を踏まえた手数料の見直し
(4)集送乳経費、手数料等の控除経費に係る情報開示の徹底
(5)集送乳や手数料等の合理化の数値目標と具体的な方策
(6)集送乳業務における競争入札の導入
(7)その他必要な事項
なお、検討に際しては、都道府県の指導・監督の下で、可能な限りの合理化を目指すものとする。
3 1及び2の推進に当たって留意すべき事項
中央酪農会議及び指定団体並びに会員等は、生乳流通体制の合理化を総合的に推進するため、以下の取組を着実に実施することとし、1及び2に基づき策定する計画に的確に織り込むものとする。
(1)集送乳の実態の把握及び合理化の計画的な推進
ア 集送乳の実態の把握
指定団体から生産者に至るまでに乳代から控除される経費、集送乳の路線数、生乳検査の実施状況、域内の乳質自主基準に関する実態等について、常時正確に把握すること。
イ 今後の生乳生産基盤の予測に基づく計画策定
業務推進計画の策定に当たっては、会員等における平成32年度までの5カ年間の生産者数及び生乳生産量の見通し、乳業工場の再編の進展等の前提条件を設定した上で、それらに見合った組織や必要な業務の見直しを計画的に進めること。
(2)組織体制の整備
組織体制の整備に当たっては、(1)の現状等を踏まえ、生産者団体としての機能を効率的かつ効果的に発揮できる体制となるよう、以下の事項について、組織内で十分協議した上で推進すること。
ア 会員等の組織の再編・合理化
会員等の組織は、生産者数が今後も減少傾向で推移すると見込まれる中、生産者団体としての機能を維持しつつ、組合員の負担を抑制していくため、都道府県の指導の下、組織再編による一県一団体化や生乳受託販売業務の上位団体への集約化等を早急に進めることが重要である。
なお、一県一団体化を直ちに達成することが困難な場合にあっても、指定団体の会員等である農業協同組合連合会については、生産者と生乳受託販売契約を直接契約し、単位農協や酪農専門農協は、飼料購買事業や営農指導等の生乳受託販売業務以外の業務に特化するなど、最大限の合理化を目指して組織間の役割分担を見直すこと。
このため、指定団体及びその会員等は、生産者から生乳受託販売契約の締結を求められた場合には滞りなく生乳受託販売業務が実施できるように、体制整備を検討すること。
また、指定団体は、全国を地区とする農業協同組合連合会(以下「全国連」という。)及び都道府県と連携して、会員等に対し、組織の再編整備や役割分担の見直しの推進について必要な助言等を行うものとする。
イ 役割分担の明確化
アの推進に当たっては、以下の事項について指定団体と会員等との間で認識を共有した上で、指定団体と会員等の役割分担を明確にすること。
(ア)指定団体は、一元的な配乳権の下にその販売を行う組織であり、乳業者との生乳取引交渉、乳代請求、販売実績数量の管理、域内生乳流通量の調整等のみならず、生乳検査、生乳の流通に係る情報の集約化及びその一元管理体制の整備を通じ、集送乳路線の管理、施設の管理・運営、個人別乳代精算データの管理等についても実施するものであること。
(イ)会員等は、指定団体と連携し、生産者に対して、乳質管理を始めとする生産面及び経営技術面の指導を行う組織であること。ただし、地域の実情や合理性を踏まえ、その一部を指定団体が自ら担うことも検討すること。
ウ 手数料体系の見直しと経費の一括控除等
指定団体及び会員等は、役割分担の明確化と併せて、生乳受託販売業務とその他業務に手数料を区分するなど手数料体系の見直しを図ること。
また、生乳受託販売業務の指定団体への集約に伴い、会員等の施設等の維持・運営経費、生乳運送経費等の生乳受託販売に必要な経費等について、指定団体が乳代から一括して控除し、経費等を控除した乳代を会員等その他の委託者に支払う仕組みとすること等について検討すること。
エ 情報公開の推進
配乳権を指定団体に一元化すること等により、指定団体が主体となった効率的な集送乳体制を確立するためには、その必要性についての生産者の十分な理解が不可欠である。このため、指定団体及び会員等は、生産者に対し、指定団体の果たす役割、一元化がもたらすメリット等を明確に示すとともに、会員別受託数量、用途別の販売実績数量、販売価格、生産者に至るまでに控除される指定団体、会員等の段階ごとの集送乳等経費の内訳等について情報を公開すること。
また、指定団体は、受託規程に定める生乳受託販売委員会について、委員の概ね半数を生産者とするなど乳業者との生乳取引交渉への生産者の参画に十分配慮するとともに、交渉過程及び内容に関する情報について、交渉に支障を来さないと判断される範囲内において、丁寧に生産者に対して開示すること。
(3)集送乳の合理化のための条件整備
ア 集送乳等経費のプール化
集送乳等経費については、単位農協等ごとに個別に経費を精算するのではなく、管内でプール精算を実施すること。
イ 乳質自主基準の統一等
指定団体の管内における乳質自主基準を統一するとともに、乳質に基づき生産者に支払う格差金も統一すること。
また、管内で乳質の平準化を図るために、会員等に対して生産者に適切な指導を行うよう周知すること。
ウ 広域的な生乳検査体制の効率化
生乳検査効率の向上による検査コストの低減と、検査の内容の充実や精度の向上を図るため、生乳検査体制の充実強化とともに、指定団体間の連携等を検討すること。
(4)集送乳の実施体制の見直し
ア 運送契約の見直し
運送業者との運送契約については、競争入札を基本としつつ、指定団体による契約締結の一元化を図るとともに、契約内容が硬直的なものとならないよう定期的に見直しを実施すること。
イ 集送乳車の大型化等
一輸送当たりの乳量の増加等による集送乳の合理化を図るため、区域内の道路事情等に応じて、集乳車の大型化等を検討すること。
ウ 集送乳路線の合理化と既存の貯乳施設の再編整備
生産者数の減少、交通事情の改善など情勢の変化に応じて、最も効率的な集送乳路線の設定について、常に見直しを行う。また、既存の貯乳施設について、その容量、利用率、集送乳路線との位置関係等を踏まえ、統廃合等の再編整備を行うとともに、指定団体間の連携等も検討すること。
(5)域外流通の合理化の推進
ア 指定団体による域外送乳の一元化
域内の生産状況及び全国的な生乳需給状況を迅速かつ的確に把握し、効率的な域外移送を実施するため、指定団体は、全国連と連携し、需給変動に応じた域外送乳を一元的に実施する体制を構築すること。
イ 拠点的貯乳施設の整備等
一輸送当たり乳量の増加、輸送距離の短縮等によるコスト削減を図るため、域外送乳のための拠点的な貯乳施設の整備とともに、例えばソフトタンクといったような新たな輸送技術の活用等も検討すること。
ウ 全国連と指定団体間との連携の強化
全国的な生乳需給情報を共有し、全国的な生乳需給の安定を図るため、全国連及び他の指定団体との連携を強化し、地域間の生乳流通の合理化に努めること。
4 集送乳等経費の調査報告等
指定団体は、生産者が地域毎の集送乳等経費(各種手数料、集送乳経費、その他の控除経費)の水準を比較できるよう、平成28年度から毎年度、農林水産省生産局畜産部牛乳乳製品課長が別に定めるところにより、自ら及び会員等が徴収する経費を調査し、中央酪農会議を経由して農林水産省に報告すること。
5 関係団体等との連携
生乳流通体制の合理化を進めるに当たり、指定団体は、全国連及び中央酪農会議と密接かつ十分な連携を行うこと。
また、指定団体及び会員等は、生乳検査体制の広域化など都道府県内の関係団体との調整が必要な事項、会員等組織の再編整備など都道府県単位での協議・調整等が必要な事項その他必要な事項について、都道府県と密接かつ十分な連携を図ること。
6 進捗状況等の報告
指定団体は、農林水産省生産局畜産部牛乳乳製品課長が別に定めるところにより、2に基づき策定した計画の進捗状況等について、中央酪農会議を経由して農林水産省に報告すること。
お問合せ先
生産局牛乳乳製品課
担当:生乳班
代表:03-3502-8111(内線0000)
ダイヤルイン:03-3502-5988