牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法の運用について(平成15年7月2日)
15生畜第2072号
平成15年7月2日
21消安第6243号
21生畜第1072号
平成21年9月11日一部改正
消費・安全局長生産局長連名通知
第1 定義
1 法の対象から除かれる牛
(1) 出生直後に死亡した牛
規則第1条第1号に規定された「出生直後に死亡した牛」については、法の対象となる牛の範囲から除外することとされたところであるが、これには、出生後おおむね1週間以内に死亡した牛が該当するものとする。
(2) と畜場直行牛
規則第1条第2号に規定されたいわゆる「と畜場直行牛」については、動物検疫所における輸入検疫(係留期間5日)終了後に家畜伝染病予防法施行規則(昭和26年農林省令第35号)第50条の規定に基づき、家畜防疫官が指定すると畜場に家畜防疫官が指定する方法及び経路に従って輸送されると畜場直行牛が該当するものとする。
2 管理者
(1) 牛の管理者に該当する者
法第2条第2項に規定する「管理者」の考え方は施行通知で示されたところであるが、具体的には、以下のような者が想定される。
ア 牛の飼養者
イ 共同哺育・育成センター、繁殖センター又は肥育センターの管理者ウ 牛の飼養を行う公共牧場の管理者
エ 試験・研究機関
オ 牛の飼養を行う教育機関
カ 荷受業者(と畜場における牛のとさつ・解体を「と畜者」に委託することを請け負って牛の飼養者等から牛の引渡しを受け、当該牛がとさつされるまでの間、当該牛を管理する者をいう。以下同じ。)
(2) 農協、家畜商等の取扱い
農協、家畜商等の家畜の売買若しくは交換又はあっせんの事業を営む者は、その事業を単独で営む限り、牛の飼養を行う主体として想定されないことから、一般的には「管理者」に該当せず、法第11条の規定に基づく牛の譲渡し等又は譲受け等の届出義務が課せられるものではない。しかしながら、「管理者」に該当しない場合であっても、牛の個体識別情報の正確性を確保するため、必要に応じ、これらの者の保有する家畜の取引に関する情報を独立行政法人家畜改良センター(以下「家畜改良センター」という。)に提供していただくよう関係者への指導方お願いする。
(3) 家畜市場等の取扱い
家畜市場(家畜取引法(昭和31年法律第123号)第2条第3項に規定する家畜市場をいう。)及び臨時市場(家畜取引法第27条第1項の規定による届出に係る市場をいう。)(以下「家畜市場等」という。)は、家畜の売買又は交換のために開設される市場であって、その事業を単独で営む限り、牛の飼養を行う主体として想定されないことから、「管理者」に該当せず、法第11条の規定に基づく牛の譲渡し等又は譲受け等の届出義務が課せられるものではない。しかしながら、家畜市場等における牛の売買又は交換に関する情報については、牛個体識別台帳に記録される牛の個体識別情報の正確性を確保するため、家畜改良センターに提供していただくよう関係者への指導方お願いする。
3 死亡した牛の譲渡し等の相手方
死亡した牛の譲渡し等の相手方については、具体的には、化製場等に関する法律(昭和23年法律第140号)に規定する化製場及び死亡獣畜取扱場、家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)第22条に基づく化製場等に関する法律の特例に該当する施設(家畜保健衛生所等)が該当するものと想定される。
4 販売業者
「販売業者」は、牛肉の販売を継続かつ反復して事業活動として行っている者であり、このような者は、食品衛生法(昭和22年法律第233号)第21条第1 項の規定により「食肉販売業」(食品衛生法施行令(昭和28年政令第229号)第5条第9号)の営業の許可又は卸売市場法(昭和46年法律第35号)第15条第1項若しくは第58条第1項の規定により卸売市場における卸売業務の許可を受ける必要があることから、「販売業者」に該当する者であるかどうかについては、当該許可を受けている者であるかどうかを基準として判断するものとする。
5 特定料理提供業者
(1) 「特定料理提供業者」に該当する者の要件
ア 「特定料理提供業者」に該当する者の要件の一つとして、令第2条第1号に規定する「料理の提供を主たる事業としていること。」が設けられたところである。これは、「特定料理の提供の事業」を行う者の中でも、「特定料理提供業者」は「料理の提供の事業」を主たる経済活動とする者であって、「遊興飲食や酒類を含む飲食の提供の事業」を主たる経済活動とする者などは対象とはならないことを明らかにする趣旨であることが施行通知おいて示されているところである。
この「遊興飲食や酒類を含む飲食の提供の事業」を主たる経済活動とする者であるかどうかについては、料亭、バー、酒場など、設備を設けて客に遊興飲食や酒類を含む飲食の提供を行う事業が、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)の規定に基づく「風俗営業」に該当することを踏まえ、同法に基づき「風俗営業」の営業許可を受けている者であるかどうかを基準として判断するものとする。なお、同法によれば、「風俗営業」を営む者は、営業所ごとに当該営業所の所在地を所轄する都道府県公安員会の許可を受け、許可証を営業所の見やすい場所に掲示しなければならないこととされている。
イ 令第2条第2号に規定する「その者の提供する料理が主として特定料理である」かどうかについては、アの要件を満たすものであって、以下の要件のいずれかに該当するかどうかを基準として判断するものとする。
(ア) 1事業所における過去1年間の「特定料理の提供の事業」に係る収入金額又は売上金額の「料理の提供の事業」に係る総収入金額又は総売上金額に占める割合が2分の1を超えること。
(イ) 1事業所における牛肉の仕入れに係る数量又は金額の食材(酒類を除く。)全体の仕入れに係る数量又は金額に占める割合が2分の1を超えること。
(ウ) 1事業所における「特定料理の提供の事業」の計画(例:「特定料理」のメニュー数)の「料理全体の提供の事業」の計画(例:すべての料理のメニュー数)に占める割合が2分の1を超えること。
(2) 「特定料理提供業者」に該当する者の公表
農林水産省消費・安全局は、(1)に基づき「特定料理提供業者」に該当する者を調査し、規制対象者を明確にする観点から、その結果を公表するものとする。
第2 牛個体識別台帳に記録された管理者の氏名等の公表
牛個体識別台帳に記録された事項については、法第6条及び規則第6条 の規定に基づき、牛の管理者、輸入者、と畜者、輸出者及び死亡した牛の譲渡し等の相手方の氏名又は名称、住所及び連絡先については、それぞれ公表しないこととされているが、管理者、輸入者、と畜者、輸出者又は死亡した牛の譲渡し等の相手方が、これらの事項を公表することについて同意した場合には、家畜改良センターが当該事項を公表するものとする。
第3 牛の出生等の届出
1 牛の出生又は輸入の届出
(1) 出生の年月日
出生の年月日は、法に基づく個体識別情報の伝達制度とは別に、牛の登記等でも使用されるものであり、これらに違いが生じると出生の年月日を改めて確認する必要が生じることから、その情報を記帳し、少なくとも当該牛がとさつ等されるまでの間、保存しておくことが望ましい。
(2) 雌雄の別
出生した子牛の雌雄の別の判断の基準は、原則として、出生した子牛の外部生殖器により判定するものとする。なお、フリーマーチン(牛の異性双胎又は異性多胎における雌胎子)については「雌」として取り扱うものとする。
(3) 母牛の個体識別番号
分娩した母牛に装着されている耳標に表示された個体識別番号を母牛の個体識別番号とするものとする。このため、受精卵移植により生産された牛については、分娩をした牛(受卵牛)が母牛であって、血統上の母牛(供卵牛等)ではないことに留意されたい。
(4) 牛の種別
牛の種別の届出が適正に行われているかどうかについて確認する場合は、以下に掲げる種別を証する書類等により行うものとする。このため、牛の種別の届出を行った「管理者」は、これらの種別を証する書類(その写しを含む。以下同じ。)を整理し、少なくとも当該牛がとさつ等により死亡するまでの間、保存しておくことが望ましい。
種別を証する書類としては、以下に掲げるア又はイであることが望ましいが、ウからオまで又はこれらに準ずる書類であっても差し支えない。
ア 子牛登記証明書等
「子牛登記証明書」とは、社団法人全国和牛登録協会、社団法人日本あか牛登録協会又は社団法人日本短角種登録協会が発行する子牛登記証明書をいうものとし、これらに準ずる証明書として、熊本県畜産協会が褐毛和種と黒毛和種との交配を証明するために発行する「和子牛証明書」をいうものとする。
イ 登録証明書
「登録証明書」とは、社団法人日本ホルスタイン登録協会、日本ジャージー登録協会、社団法人全国和牛登録協会、社団法人日本あか牛登録協会、社団法人日本短角種登録協会又は社団法人北海道酪農畜産協会が発行する登録証明書等をいうものとする。
ウ 授精証明書
「授精証明書」とは、家畜改良増殖法(昭和25年法律第209号)第22条第2項の規定に基づき、獣医師又は家畜人工授精師が家畜人工授精用精液の注入を受けた雌牛の飼養者に対して交付する「授精証明書」をいう。
エ 種付証明書
「種付証明書」とは、家畜改良増殖法第9条第4項の規定に基づき、種雄牛の飼養者が自然種付けをした雌牛の飼養者に対して交付する「種付証明書」をいう。
オ 体内・体外受精卵移植証明書
「体内・体外受精卵移植証明書」とは、家畜改良増殖法第22条第2項の規定に基づき、獣医師又は家畜人工授精師が家畜体内受精卵又は家畜体外受精卵の移植を受けた雌牛の飼養者に対して交付する「体内受精卵移植証明書」又は「体外受精卵移植証明書」をいう。
なお、「ホルスタイン種」については、当該種別区分に該当することを証する書類がない場合も想定されることから、以下の判定基準に基づき当該種別の適正性を判断するものとする。
(ア) 腹部及び尾房が白色であること。
(イ) 四肢の全ての蹄冠部が黒毛又は赤毛で取り巻いていないこと。
2 届出の時期
牛の出生又は輸入の届出については、その事実が生じた後、遅滞なく届け出ることとされているが、この「遅滞なく」とは、以下のように解するものとする。
乳用種の子牛の出生の届出にあっては、ヌレ子の取引の時期等を考慮し、生後1週間以内を目途に届け出るものとする。出生後直ちに出荷等を行わない肉用子牛の出生の届出にあっては、家畜登録制度の分娩報告時期、肉用子牛生産者補給金制度における個体登録の申込時期等も考慮し、生後1~2か月以内を目途に届け出ることも可能とする。
第4 耳標の装着
1 装着の時期
(1) 出生した牛
「管理者」にあっては、特に乳用種の子牛については、出生直後に売買の対象となる可能性が高いことから、出生後1週間以内に耳標が装着されるよう努める必要がある。ただし、疾病等で獣医師の診療を受け、耳標装着により悪影響が想定される場合には、個体識別のできる措置を講じた上で、耳標の装着が可能になるまでの間、猶予することも可能とする。
(2) 輸入牛
「輸入者」にあっては、輸入検疫期間の終了までに耳標の装着を行うものとする。
2 装着の方法
「管理者」又は「輸入者」は、耳標の装着に当たって、以下に掲げる事項に留意するものとする。
ア 耳標が脱落しないよう耳の中央部に血管を避けて装着器(アプリケーター)を用いて装着すること。
イ 個体識別番号が判別できるよう、耳の内側に大きく文字が印刷された面が来るよう装着すること。
第5 譲渡し若しくは引渡し又は譲受け若しくは引受けの届出
1 届出の義務者
上述したとおり、牛の販売や購買を代行する農協や家畜商については、一般的には「管理者」には該当しないことが多いと考えられるが、実質的に牛を占有している者が「管理者」に該当することを踏まえれば、輸送期間を含めおおむね1週間以上牛を預かる場合は、「管理者」、すなわち届出の義務者に該当するものとする。
2 飼養の終了又は開始の年月日
(1) 譲渡し又は引渡しをした者
「飼養の終了の年月日」は、飼養施設から牛を出した年月日を届け出るものとする。
(2) 譲受け又は引受けをした者
「飼養の開始の年月日」は、飼養施設に牛を入れた年月日を届け出るものとする。
3 譲渡し等の相手方、譲渡し等の年月日等
牛の譲渡し又は引渡し(以下「譲渡し等」という。)をした「管理者」が農 林水産大臣に届け出た「譲渡し等の相手方」及び「譲渡し等の年月日」については、それぞれ、当該牛の譲受け又は引受け(以下「譲受け等」という。)をした別の「管理者」及び「譲受け等の年月日」と一致することになる。
このため、特段の事情がない限り、牛の取引実態にかんがみ、牛の譲渡し等及び譲受け等を行う場合には、譲渡し等をした「管理者」、すなわち譲受け等の相手方の飼養の終了年月日(いわゆる「転出日」)をもって、「譲渡し等の年月日」及び「譲受け等の年月日」とすることを原則とする。
しかしながら、「管理者」と別の「管理者」との間の牛の移動については、「管理者」である飼養者の飼養施設から、家畜の売買代行者等に対して牛の譲渡し等が行われ、当該牛が家畜市場において取引された後に、別の家畜の売買代行者等に譲渡し等が行われた上で、別の「管理者」である飼養者の飼養施設において飼養が開始される場合が多い。このように、「管理者」と別の「管理者」との間に、当該牛を占有する別の主体が存在する場合には、「管理者」が牛の譲渡し等又は譲受け等をした時点において、「譲渡し等の相手方」又は「譲受け等の相手方」である別の「管理者」をにわかに特定することは実態上困難な場合も想定される。この場合には、牛の移動情報を迅速に把握する観点から、以下のように対応するよう関係者を指導されたい。
(1) 譲渡し等をした者の対応
「管理者」が牛の占有を他者に移転させた時点において、「譲渡し等の相手方」となるべき別の「管理者」を特定することができない場合には、牛の占有の移転先である牛の売買代行者等の氏名又は名称及び連絡先を家畜改良センターに報告するものとする。
(2) 譲受け等をした者の対応
他者から牛の占有を移転された「管理者」が、当該牛の占有の移転時点において、「譲受け等の相手方」となるべき元の「管理者」を特定することができない場合には、牛の占有の移転元である牛の売買代行者等の氏名又は名称及び連絡先を家畜改良センターに報告するものとする。
第6 死亡、とさつ及び輸出の届出
1 死亡の届出
牛が死亡したときは、当該牛の管理者は、死亡の届出事項として当該牛の個体識別番号、死亡の年月日を家畜改良センターに届け出るほか、死亡した牛を化製場等に譲渡し等をした場合には、死亡の届出事項として当該譲渡し等の相手方の氏名又は名称、住所及び連絡先を併せて家畜改良センターに届け出るものとする。
2 輸送中の死亡の届出
運送業者や家畜商等が委託を受けて牛の運送又は販売を行う途中でその牛が死亡した場合には、その牛の運送又は販売を委託した「管理者」が死亡の届出を行うことになる。ただし、取引の実態上、死亡時点で誰が「管理者」に該当するかをにわかに特定できない場合があり得ることから、牛の個体識別情報における死亡に関する情報の重要性にかんがみ、当該牛の死亡を確認した者が、その情報を速やかに家畜改良センターに提供していただくよう関係者への指導方お願いする。
また、牛が運送又は販売の途中で死亡した場合に、当該運送又は販売を委託等した「管理者」が死亡に係る届出を行う必要があることから、輸送業者等との委託契約等の中で、輸送中に死亡した場合には輸送業者等が輸送の委託をした当該「管理者」に対し「当該牛の個体識別番号」及び「死亡の年月日」を報告する旨を明記しておくことが望ましい。
3 とさつの届出
牛をとさつした者(以下「と畜者」という。)は、「当該牛の個体識別番号」、「とさつの年月日」等を農林水産大臣に届け出るとともに、とさつ・解体された後の牛肉に対応する牛の個体識別番号を正確に表示しうる立場にいる者として、個体識別番号の表示義務も併せて課せられている者であり、「とさつ」という牛の個体識別情報における重要な情報を提供する主体であるとともに、牛肉流通における個体識別情報の伝達の起点になる主体でもある。
他方、飼養者等から、牛のとさつ・解体を「と畜者」に委託することを請け負って飼養者等から牛の譲渡し等を受け、当該牛がとさつされるまでの間、当該牛を管理するいわゆる「荷受業者」については、当該牛と個体識別番号との対応関係を整理した上で、「と畜者」に牛の引渡しを行う者であることから、このような「荷受業者」については、「管理者」として、牛の飼養者等から牛の譲渡し等を受けた時点で、その年月日を「譲受け等の年月日」として、当該牛の飼養者等を「譲受け等の相手方」として、それぞれ当該牛の個体識別番号とともに、家畜改良センターに届け出るものとする。また、「と畜者」に当該牛の引渡しをした時点で、当該引渡しの年月日を「譲渡し等の年月日」として、当該「と畜者」を「譲渡し等の相手方」として、それぞれ個体識別番号とともに届け出るものとする。なお、「管理者」である「荷受業者」が牛の譲受け等をした時点において、「譲受け等の相手方」である別の「管理者」をにわかに特定することが困難な場合における情報提供の在り方については、第5の3の(2)に準ずるものとする。
他方、当該牛の引渡しを受けた「と畜者」は、牛のとさつをしたときは、「当該牛の個体識別番号」「とさつ年月日」等のほか、当該「荷受業者」を「譲受け等の相手方」として届け出るものとする。
なお、上記の「荷受業者」が届け出るべき「譲渡し等の相手方」と「と畜者」が、当該「と畜者」が届け出るべき「譲受け等の相手方」と当該「荷受業者」が、それぞれ一致することがあらかじめ明らかであれば、当該「荷受業者」及び「と畜者」をそれぞれ「譲受け等の相手方」及び「譲渡し等の相手方」として、連名により、「当該牛の個体識別番号」、「譲渡し等の年月日」、「譲受け等の年月日」等の事項を届け出ることも可能である。
附則
この改正は、平成22年4月1日から施行する。
お問合せ先
消費・安全局 畜水産安全管理課
担当:牛トレーサビリティ企画班
代表:03-3502-8111(内線4548)
ダイヤルイン:03-0000-0000




