市民農園の整備の推進に関する留意事項について(平成18年3月26日)
17農振第2038号
平成18年3月28日
各都道府県知事
全国農業協同組合中央会会長
全国農業会議所会長 殿
農林水産省農村振興局長
特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律(平成元年法律第58号。以下「特定農地貸付法」という。)及び市民農園整備促進法(平成2年法律第44号。以下「市民農園法」という。)に基づくいわゆる市民農園で生産された農作物の販売が可能な範囲については、これまで「市民農園の整備の推進に関する留意事項について」(平成16年3月26日付け15農振第2643号農林水産省農村振興局長通知) 等においてその考え方を示してきたところである。
一方、昨年7月に都市と農山漁村の共生・対流に関するプロジェクトチームにおいてとりまとめられた「都市と農山漁村の共生・対流の一層の推進について」(提言) においては、「滞在型市民農園における生産物を直売所等で販売できるよう現場の実態を踏まえながら検討を行う」こととされたほか、本年2月に決定された「構造改革特区の第8次提案に対する政府の対応方針」(平成18年2月15日構造改革特別区域推進本部決定)の別表3の事項番号1001においては、「営利を目的としない農作物の栽培において、自家消費量を超える余剰農作物を直売所等で販売することについて、現場の意見等を踏まえ検討しており、今年度中に考え方を示す」こととされたところである。
これらを踏まえ、このたび、市民農園で栽培された農作物の販売が可能な範囲について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4の規定に基づく技術的助言として示すこととしたので、下記事項に留意の上、引き続き市民農園制度の円滑かつ適切な運用に特段の御配慮をお願いしたい。
なお、これに伴い、「市民農園の整備の推進に関する留意事項について」(平成16年3月26日付け15農振第2643号農林水産省農村振興局長通知)は廃止することとしたので、併せて御了知願いたい。
おって、このことについては、貴管下関係機関に周知願いたい。
記
第1 基本的な考え方
現在の市民農園制度の運用の実態を概観すると、市民農園において栽培された農作物を直売所等で販売することについては、「原則として認められていない」という理解がされているが、市民農園利用者の間から自家消費量を超える農作物の処理に難渋するなどの理由から、また直売所に関わる生産者グループの間から市民農園利用者との交流の一環として、市民農園において栽培された農作物の直売所等での販売を認めて欲しいという要望があるところである。
この点については、第2に示すとおり、市民農園において趣味的な目的で農作物の栽培を行い、栽培された農作物のうち自家消費量を超えるものを直売所等で販売しても、市民農園制度の趣旨には齟齬を来すものではなく、むしろ地産地消や食育の推進、都市と農山漁村の交流体験の促進、都市部の利用者による農地の遊休化の防止という観点から望ましいとも考えられる。
第2 特定農地貸付けにおける販売可能な範囲
(1)特定農地貸付法第2条第2項第2号に規定されているとおり、農地法等の特例が適用される「特定農地貸付け」は、「営利を目的としない」農作物の栽培の用に供するための農地の貸付けであることとされている。
(2)「特定農地貸付け」により行われる農作物の栽培に関し、想定される多様な事例のすべてを明記することは困難であるが、趣味的な動機、目的によるものを想定しており、
ア 純然たるレジャーないしレクリエーション
イ 心身の健康の回復、維持又は増進
ウ 野草や花などを自ら生産するという充足感
エ 子供の情操教育
オ 共通の趣味を持つ仲間との交流
カ 老後の生きがいや一つの生活スタイルとして
キ 擬似ふるさと体験
などが該当する。
(3)このため、市民農園において、上記に掲げるような趣味的な動機による農作物の栽培のために農作業を行う場合であれば、市民農園を円滑に運営していく観点から、自家消費量を超える農産物の直売所等における販売など、その他の副次的な行為まで制限を課すものではないと解される。
なお、市民農園法第2条第2項第1号ロにおいても、市民農園は「レクリエーションその他の営利以外の目的で行なわれる農作業の用に供される農地」であることとされているが、当該規定が置かれた趣旨についても、上記の考え方と同様である。
第3 留意事項
市民農園利用者においては、一般の農家と同様、農薬の使用に関する義務等一定の責務が課されているところであるが、農作物を販売する場合は、JAS法に基づく表示の義務等より一層の責務が生じるものと考えられることから、市民農園開設者は利用者に対し、利用者が遵守すべき事項を適切に周知することが望ましい。
また、農薬散布を行う場合には、「住宅地等における農薬使用について」(平成15年9月16日付け15農安第1714号農林水産省消費・安全局長通知)及び「農薬の飛散による周辺作物への影響防止対策について」(平成17年12月20 日付け17消安第8282号農林水産省消費・安全局長、生産局長、経営局長通知) が発出されており、これらの通知等について、十分に周知することが望ましい。
なお、JAS法に基づく表示の義務等の周知徹底等が市民農園の管理上、市民農園開設者にとって負担となる場合は、貸付規程において、貸付の条件を設定し、農作物の販売を制限することも考えられるので、地域の実情に応じ、適切な措置を講じられたい。
お問合せ先
農村振興局 都市農村交流課都市農業室
担当:都市農村交流課都市農業室
代表:03-3502-8111(内線5448)
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