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農林水産省

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明日をつくる 東日本の復旧・復興に向けて vol.6

施設園芸と地域木材活用で地元の農業を守る

岩手県陸前高田市 農業生産法人株式会社JAおおふなとアグリサービス、岩手県農業研究センター




被災した農地を復興し、農業の担い手を育成するために立ち上がった農業生産法人株式会社JAおおふなとアグリサービス。岩手県農業研究センター南部園芸研究室とともに、先進的な事業に取り組んでいます。
岩手県陸前高田市


船田秋美津統括部長(左から2人目)とJAおおふなとアグリサービスのみなさん 船田秋美津統括部長(左から2人目)とJAおおふなとアグリサービスのみなさん


岩手県のJAおおふなと(大船渡市農業協同組合)の管内(大船渡市、陸前高田市、気仙郡住田町)は、東日本大震災の津波により460ヘクタールもの広大な農地が浸水被害を受けました。

JAおおふなと自体も19の本支店中12店が流出、全壊しましたが、震災後ただちに災害復興営農対策会議を立ち上げました。


担い手として津波被害の復旧・復興に取り組む
「これまで支え合い、助け合ってきた仲間として、できるだけのことをするべきだ。そのためには自ら地域農業の担い手となれる農業生産法人を作り、復旧・復興を牽引し、地域に貢献しよう」

思いを一つに、平成24年8月に設立したのが、株式会社JAおおふなとアグリサービスです。

農業振興、雇用創出、人材の確保と育成を事業の3本の柱として、水稲の育苗や菌床しいたけの栽培などからとりかかりました。当初2人だった従業員は、現在30人以上になっています。

「設立当初、復旧・復興に手間取れば、農家の生産意欲を減退させかねないという危機感があった」と統括部長・船田秋美津さんは言います。 「仕事の内容としては復興整備された農地での農作業の受託が多いと見込んでいたのですが、想定したほどありませんでした。農家が想像以上のがんばりで、自ら復興を進めてくれたためです」

その代わりに積極的に作業受託に取り組みました。その取り組みが食料生産地域再生のための先端技術展開事業(先端プロ)です。


中山間地の施設園芸と 地域木材の有効活用
先端プロとは、被災した岩手県、宮城県、福島県の食料生産地再生を目的とする農林水産省の委託事業であり、産学官の共同組織が事業を受託し、地域の生産法人と連携して最新技術を組み合わせ最適化し、体系化するための実証研究の取り組みです。

岩手県では、県農業研究センター南部園芸研究室が共同組織の一員として実施にあたっています。

「25年度から三陸の沿岸部に多い狭隘(きょうあい)な農地に適した施設園芸の技術開発を進めています。この地域に多い気仙杉の間伐材や規格外材などを有効活用して、農業振興だけでなく林業の活性化を図る狙いもあります」と語るのは、研究室長の川村浩美さんです。

具体的には、軽量鉄骨並みの強度が確保できることを実証する「木骨ハウス」や、間伐材を燃料にした木質バイオマス加温器(薪ストーブ)による暖房コスト低減の実証などに取り組んでいます。

「木骨ハウスでは、坪単価5万円以下の建設費を実現し、軽量鉄骨ハウスに比べて導入コストを約30%削減することができました。狭い農地でも、コストを抑えながら高収益施設園芸品目の促成栽培や周年生産で安定した収益を上げられれば、地域における雇用の創出が期待できます。 こういう農業形態を構築し、普及拡大につなげたい」と川村さんは語ります。

26年10月、岩手県の支援を受けた陸前高田市が営農拠点施設を整備するとともに、浜田川地区の10戸の被災農家の農地2ヘクタールを集約した園芸施設を建設しました。ここで南部園芸研究室の技術開発を生かし、JAおおふなとアグリサービスがトマトやいちごの栽培を始めています。

作業受託する船田さんは、「技術を吸収し、地域農業の将来を担う指導者を育てることに力を尽くしたい」と顔をひきしめます。

「地元の農業を何としても守り、発展させる」

この熱意が人と人をつなげ、地域に新たな農業技術を根づかせようとしています。


木骨ハウスで収益性の高い四季成り性いちごの周年栽培実用化に取り組む 木骨ハウスで収益性の高い四季成り性いちごの周年栽培実用化に取り組む

先端プロ実証研究で、水稲育苗施設の遊休期間を利用したパプリカの栽培を行っている
先端プロ実証研究で、水稲育苗施設の遊休期間を利用したパプリカの栽培を行っている
川村浩美室長(右から2番目)と岩手県農業研究センター南部園芸研究室のみなさん
川村浩美室長(右から2番目)と岩手県農業研究センター南部園芸研究室のみなさん
薪ストーブで灯油の暖房機並みの保温効果が得られた。「薪を自己調達できるならコストをかなり削減できます」(川村さん)
薪ストーブで灯油の暖房機並みの保温効果が得られた。「薪を自己調達できるならコストをかなり削減できます」(川村さん)
 


文/下境敏弘