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伊勢うどん[三重県]




伊勢神宮(三重県伊勢市)
伊勢神宮(三重県伊勢市)


伊勢うどん
三重県伊勢市を中心に食されているうどん。長時間ゆでた極太の麺にねぎなどをのせ、甘辛いたまりしょうゆを絡めて食べる。"もちもち""ふわふわ"の食感で、コシがないのが特徴。三重県の地域団体商標に登録されている。


うどんの概念を覆す驚きの食感!
日本を代表する神社・伊勢神宮は、天照大御神(あまてらすおおみかみ)を祭る内宮(ないくう)(皇大神宮(こうたいじんぐう))と、豊受大御神(とようけのおおみかみ)を祭る外宮(げくう)(豊受大神宮(とようけだいじんぐう))をはじめ125の宮社から成り、約2000年の歴史を誇る。そのおひざ元にある老舗うどん店に入った時のこと。

「いいですか、『伊勢うどん』は頭の中を空っぽにして食べてくださいね」

ご主人の言葉にドキドキしながら待つこと20分。待てど暮らせど出てこない。一体何が? と不安になった頃に登場したうどんを見たら、まさに驚愕! 明らかにコシのない極太麺に、妙に黒々しい、汁というよりタレに近いものがかかっている。「よく混ぜて、絡めてね」と言われたけれど、まずは1本、こっそりそのまま頂いてみた。何だ、この"ふわふわ"感は!!

そこにあったのは、僕が知っているうどんの麺ではなく、ゆで過ぎたすいとんか、棒状の餅といった具合だ。そしてタレが絡んで黒っぽくコーティングされた麺を味わうと、見た目よりもずっと爽やかな、たまりしょうゆの香りとほんのりとした甘味が伝わってくる。「意外」と言っては失礼だが、優しい口当たりもあって箸が止まらなくなった。

江戸時代から食されてきたローカルフード
伊勢うどんの歴史は古く、家庭でみそを作る時に出る「たまり」をうどんにつけて食べたのが始まり。江戸時代、一生に一度の「お伊勢参り」が大ブームとなった際、参道に飲食店が立ち並び、伊勢うどんの店も誕生したのだとか。

本来、伊勢うどんは麺を1時間ほどゆでるらしい。今でも製麺所で数十分ゆでられた麺を、店頭でさらに20分以上ゆでるという。何でも、たまりとうまく絡む麺を追求した結果、柔らかいうどんになったのだそう。つまり、たまりのためのうどん、という訳だ。

しかも、以前は外国産の小麦粉を使用する店がほとんどだったが、十数年前に三重県の地粉「あやひかり」が誕生し、それを用いた麺がどんどん広がっている。外国産は弾力が出るのに対し、こちらはしなやかさと風味が強く、まさに伊勢うどんにうってつけ。さらに地産地消の追い風も……。

是非、「うどんはコシ」という概念を捨てて味わいたい。


文/はんつ遠藤
1966年生まれ。早稲田大学卒業後、海外旅行雑誌のライターを経てフードジャーナリストに。取材軒数は8500軒を超える。『週刊大衆』「JAL旅プラスなび」「東洋経済オンライン」などで連載中。著書多数。

撮影/原田圭介


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