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農林水産省

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特集1 緑茶(3)

新時代の茶づくりに挑戦 味と香りを探究する茶農家 (生産地を訪ねて静岡県静岡市)


新たな味と香りを探し求め、製法にも工夫を凝らす。
山間の名産地で代々続く茶農家の親子は伝統を守りつつ、画期的な商品の開発にも力を入れていました。

丸高農園の高橋一彰さんと先代の達次さん。約2ヘクタールの茶園で年間4トンの茶葉を生産する。やぶきた品種が全体の9割以上を占める静岡県内において、丸高農園ではやぶきた以外の特色ある品種が約4割を占める。
丸高農園の高橋一彰さんと先代の達次さん。約2ヘクタールの茶園で年間4トンの茶葉を生産する。やぶきた品種が全体の9割以上を占める静岡県内において、丸高農園ではやぶきた以外の特色ある品種が約4割を占める。


傾斜地の茶畑で香り茶に行き着く
茶の産出額日本一の静岡県には、掛川茶、川根茶、東山茶などのブランドがあります。

名産地の一つに挙げられる、安倍川とその支流藁科(わらしな)川の流域にある本山は、鎌倉時代の高僧、聖一国師が宋から持ち帰った茶の種をまいたという伝承から、静岡における茶の発祥の地とされます。

「この辺りは良い茶葉を作るのに適した環境です」と言うのは、本山で代々続く茶農家・丸高農園を継いだ高橋一彰さんです。

「玉露やかぶせ茶は収穫前に日光を遮ることで渋みが抑えられ、うまみが増すのですが、本山は山間にあり川霧も多く、日照時間が限られるため同様の効果が望めます。水はけのいい土質も良質な茶葉の生産に適しています」

一方、同じ静岡でも牧之原や富士のような平坦地であれば収穫の際、大型機械を使えますが、本山は傾斜地の小さい茶畑が多く、生産効率を上げにくいという面も。

「一般的に茶は出荷時期が遅いほど値が下がる傾向があり、本山の一番茶の出荷は鹿児島県などと比べると2週間近く遅い。こうしたハンデを克服するため、父が目をつけたのが香りでした」

16年前、先代の高橋達次さんは香りの良い茶葉を探し求め、あらゆる品種を試す中、偶然自らの茶畑の隅に地面に張りつくように生えていた株から採れる葉が強い香りを放つことに気づきました。

「成分を分析してみるとアントラニル酸メチルというブドウやジャスミンにもある香り成分が多く含まれていたのです」と達次さん。
やぶきたと他の種との自然交配で生まれたと思われるこの品種を達次さんは「香寿(こうじゅ)」と名づけました。

製法にも工夫を凝らしています。収穫した生葉を天日干しにした後、室内萎凋(いちょう)(※)しながらかくはんする手間をかけ、香りを高めてつくっています。

(※)萎凋とは、葉の水分が抜けるようにしてしおれさせること。

4月の新茶の摘み取り風景。「自然仕立て」の茶園は近隣の人たち7~8人に手伝ってもらい、手で摘んでいく。 4月の新茶の摘み取り風景。「自然仕立て」の茶園は近隣の人たち7~8人に手伝ってもらい、手で摘んでいく。
4月の新茶の摘み取り風景。「自然仕立て」の茶園は近隣の人たち7~8人に手伝ってもらい、手で摘んでいく。

「化粧ナラシ」の作業の様子。摘み取りを機械で行う際、古い葉が入らないよう新芽が芽生く前に摘採面をなだらかにする。

「化粧ナラシ」の作業の様子。摘み取りを機械で行う際、古い葉が入らないよう新芽が芽生く前に摘採面をなだらかにする。


茶の種類を増やしたことで生まれたメリット
丸高農園では釜炒り茶「べにふうき緑茶」も製造しています。もともと紅茶用に育種された品種を釜炒り茶に加工したもので、収穫をあえて遅らせて十分成長させることにより、メチル化カテキン含有量を高めています。

丸高農園では、「香寿」「べにふうき」をはじめとして特徴の異なる全12種の品種を栽培することで、消費者ニーズに応える多様なお茶を生産できます。また、収穫時期の違いにより労働ピークが分散されるという利点もあります。

茶葉の香りを追い求めてきた達次さんからバトンを受け継いだ一彰さんは「香りとうまみ、両方を追求したい」と意欲を語ります。

丸高農園の香り茶
写真上から時計回りに煎茶、玄米茶、茎茶、ほうじ茶。撮影協力:製茶問屋山梨商店(静岡市)
上/丸高農園の香り茶。
右/写真上から時計回りに煎茶、玄米茶、茎茶、ほうじ茶。
撮影協力:製茶問屋山梨商店(静岡市)。

茶の香りを追求する際、台湾の技術も参考にした。台湾製の籠(かご)で天日に干した後、香りを高める萎凋作業を行う。

茶の香りを追求する際、台湾の技術も参考にした。台湾製の籠(かご)で天日に干した後、香りを高める萎凋作業を行う。

台湾製の釜炒り機。
台湾製の釜炒り機。

高橋一彰さん 高橋一彰さん
1981年生まれ。愛知工業大学卒。6年間、航空機関連の会社に勤務した後、家業の茶農家を継ぐ。「おいしい、とほめていただくことが何よりの励みです」

「日本茶AWARD2016」で日本茶大賞特別賞(香りのお茶部門)を受賞 「日本茶AWARD2016」で日本茶大賞特別賞(香りのお茶部門)を受賞

日本茶インストラクター協会主催の「日本茶AWARD」は消費者に選ばれる茶の発見・発信を目指すコンテストです。昨年12月に東京都で開催された第3回AWARDで丸高農園の煎茶は「日本茶大賞特別賞」を受賞しました。 日本茶インストラクター協会主催の「日本茶AWARD」は消費者に選ばれる茶の発見・発信を目指すコンテストです。昨年12月に東京都で開催された第3回AWARDで丸高農園の煎茶は「日本茶大賞特別賞」を受賞しました。



取材・文/下境敏弘
撮影/島 誠


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