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17年10月号文字情報

味の再発見! 昔ながらのニッポンの郷土料理 第6回

宮城県 芋煮

里芋の鍋を河原で囲み、皆で楽しむ、季節の味
虫の声が聞かれ、秋の風が感じられるようになると、宮城の人々はこぞって河原にくり出してゆく。芋煮会をするためだ。芋煮は秋の行楽には欠かせない料理である。と、こう書くと「山形の郷土料理じゃないの?」と思われる方もいるだろう。確かに山形県の芋煮は有名で、直径6メートルもある大鍋で芋煮を作るお祭りもあって、毎年のように報道される。しかし宮城県でも同様に芋煮は愛されている。さらには味つけが違うのだ。

山形も地方によって味つけは異なるが、代表的なのは、しょうゆ味で牛肉入りの芋煮。それに対して宮城では、みそ味で豚肉入りが一般的だ。ここに里芋をたっぷりと、にんじん、だいこん、ごぼう、ねぎ、きのこなども入れて具だくさんにする。「他県の方からは『豚汁とどう違うの?』ってよく言われます。まあ豚汁といえば豚汁ですが(笑)、あくまで主役は里芋。だから大きく、ごろっと切るのが大事です」とは地元のお母さんの声だ。

芋煮というのはあくまで行楽の食であり、それだけを楽しむものではない。つまり芋煮を家で作って楽しむ……ということはないのである。

宮城人が秋になって「芋煮食べたいなあ」というのは、大勢で河原で大鍋を囲みたいという意味なのだ。秋にはコンビニでも、芋煮用のまきや着火剤が売られることからも、人気のほどがうかがえる。他県に越した県人からは、「秋になるとやっぱり芋煮をしたくなります。でも、煮炊きのできる川がなかなかなくて」という悩みが多く聞かれた。

ふるさとの味は遠くにありて思うもの。私も小学生時代を仙台で過ごした。杜(もり)の都が秋になって木木が色づき、その自然美を眺めながら芋煮を食べた思い出は一生の宝物である。

[写真1]
撮影/島 誠 料理制作/三好弥生

[写真2]
広瀬川(宮城県仙台市)

[写真3]
宮城県はみその名産地。仙台みその名で全国に知られている。やや赤みがかった色が特徴の米みそで、きりりと辛め。伊達政宗公が生産を奨励したと伝わる。

文/白央篤司
フードライター。研究テーマは日本の郷土食と「健康と食」で、月刊誌『栄養と料理』(女子栄養大学出版部)などで執筆。著書に『にっぽんのおにぎり』(理論社)『ジャパめし。』(集英社)などがある。
ブログhttp://hakuoatsushi.hatenablog.com/[外部リンク]

特集1 もったいない

食べられる食品を捨ててしまう「食品ロス」は今や世界的な課題となっています。
この削減に向け、わたしたち一人一人はどのような行動がとれるのでしょうか。

[イラスト1]
もったいないの精神で食品ロスを減らそう

問題なく食べられる食品がどれだけ無駄になっているか
日本では年間2775万トンもの食品が廃棄されています(平成26年度推計)。これはすべての食品の約3分の1に当たる膨大な量。しかも、この中には、問題なくおいしく食べられるにもかかわらず、廃棄される食品も含まれています。これを「食品ロス」と呼びます。

日本の食品ロスは年間621万トンで、内訳をみると、食べ残しなど家庭系のロスもありますが、多いのが食品の製造・流通・販売の過程で生じる事業系のロスです。これらの一部を「フードバンク」活動を通じて福祉施設などに寄付する事業者もいますが、その量は年間4000トン程度に留まります。

世界に目を向ければ、人類の9人に1人、約8億人が栄養不足の状態にあるといわれます。こうした貧困に苦しむ人々に援助される食品は年間320万トンです。つまり日本だけで、この倍の量に当たる食品が、食べられるにもかかわらず廃棄されているのです。

食品廃棄物の削減目標が国連で採択された
世界の食品廃棄量は年間13億トンに上ります。これを生産するには世界の農耕地の3割の面積が必要です。せっかく作った農作物、そして、これを原料に製造した食品を棄ててしまうことは土地や水など限られた資源の浪費にほかなりません。

食品廃棄は今や世界的な課題です。2015年9月の国連サミットでは、2030年までに1人当たりの食料の廃棄を半減させるという目標を定めた「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。各国は合意された内容を守る努力が求められます。

「もったいない」という言葉を生んだ国として
2012年に開催されたロンドン五輪パラリンピックでは、大会期間中に2443トンもの食品廃棄物が発生しました。調理した食事は、そもそも2時間以内に提供するという衛生機関の指導があるうえに、各国の選手のために多様な料理を用意する必要があったからです。これを受け、2020年の東京五輪パラリンピック組織委員会は、食品廃棄物を減らす方法の議論を始めています。

日本語の「もったいない」は、環境活動の大切さを一言で表し、資源や食べ物に対する尊敬の念が込められた言葉として世界でも称賛されています。2020年の大会は、資源や食べ物を大切にする文化をもつ国として、日本の「もったいない」精神をPRする機会になります。

日本政府も「食べものに、もったいないを、もういちど。」を標語に、「食品ロス削減国民運動」を推進しています。また、この運動と連携して日本の食品を扱う事業者なども、食品ロス対策を講じています。

では、食品ロスの削減のため、わたしたち一人一人はどのようなことができるのでしょうか。この特集を機会に、ぜひ考えてみてください。

[画像1]
食品ロス削減国民運動のロゴマーク(愛称:ろすのん)は、食品ロス削減に取り組んでいるみなさんに使っていただけます。

[図1]

取材・文/下境敏弘
イラスト/あべかよこ、中山ゆかり

食品ロス削減のために:1 商慣習を見直して廃棄される食品を減らす
食品が消費者の元に届くまでの流通のプロセスで生じるロス。
この要因の一つとなっている商慣習を見直そうという動きが始まっています。

[図1]
流通における商慣習から生じる食品ロス
「メーカー・流通の段階では、規格外品、返品、売れ残りなどさまざまな形でロスが生じます。商慣習も要因の一つです」と言うのは公益財団法人流通経済研究所の主任研究員・石川友博さんです。

食品衛生法で消費期限や賞味期限の表示が定められていますが、このほか、食品流通業界には「3分の1ルール」と呼ばれる取り決めがあります。

製造日から賞味期限までを3等分する。最初の3分の1が過ぎた時点をメーカーや卸企業から小売店への「納品期限」として、これを過ぎたものは出荷しない。次の3分の1の時点を小売業から消費者への「販売期限」として、これを過ぎたら販売しないこととするという慣習です。販売期限は、消費者が購入後、必ずしもすぐに食べるわけではないため余裕をとっているわけです。しかし、納品期限、販売期限を過ぎた商品の大部分は食品ロスとなります。

「海外にも似たルールはありますが、欧米の納品期限は製造日から賞味期限の2分の1か、3分の2が主流。賞味期限にしても、当日まで販売されるのが普通です。日本には厳しいルールがあるのです」

商慣習の見直しが進む中消費者に求められること
現在、こうした商慣習の見直しが進みつつあります。

傷みやすい生鮮食料品と違って賞味期限が3カ月を超えるような食品は品質の変化が緩やかなため、法律でも年月日までの表示は義務づけられていません。これまでメーカーが自主的に表示していたのですが、飲料や菓子について多くのメーカーが、賞味期限が3カ月を超える食品を対象に年月表示へ切り替えつつあるのです。

3分の1ルールについても、コンビニエンスストアや総合スーパー各社が、清涼飲料と菓子の一部を対象に納品期限の3分の1から2分の1への緩和を進めています。

「この取り組みが小売業全体に広がれば、年間4万トン以上の食品ロスの削減が見込めます。また、わたしたちの調査では過去3年間に食品小売り全体の2割が加工食品の販売期限
を延長しています」

こうした商慣習は「品質に対する各社の強い思いから生まれたもの」とする石川さんは、「その背景に賞味期限が1日でも先の商品を買おうとする消費者の行動があります。ぜひ消費期限や賞味期限を正しく理解するとともに食品ロス削減の取り組みの大切さを理解してください」と訴えます。

消費期限と賞味期限の違いと表示

賞味期限
賞味期限とは、袋や容器を開けることなく、その食品の保存方法を守って保存していた場合に、表示されている「年月日」または「年月」まで「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」のこと。この期限を過ぎても、色やにおい、味などをチェックして異常がなければ、まだ食べることができます。

製造日から3カ月以内
年月日表示がされている

[写真1]


[写真2]
ヨーグルト

[写真3]
ソーセージ

製造日から3カ月超
年月日表示もしくは年月表示がされている

[写真4]
しょうゆ

[写真5]
缶詰

[写真6]
インスタント麺

消費期限
消費期限とは、袋や容器を開けることなく、その食品の保存方法を守って保存していた場合に、表示されている「年月日」まで「安全に食べられる期限」のこと。品質が劣化しやすい食品に表示されています。

製造日からおおむね5日以内
年月日表示がされている

[写真7]
そう菜

[写真8]


[写真9]
ケーキ

賞味期限の年月表示で流通廃棄を削減
食品流通では前回に納品した商品より期限が後の物を納品する慣習があります。これも食品ロス発生の要因の一つです。
年月表示にすることで在庫を効率よくさばけるようになるほか、店舗での商品管理や輸送費などの業務コストの削減にもつながります。

[写真10]
写真提供/味の素社

[イラスト1]

取材・文/下境敏弘
イラスト/あべかよこ、中山ゆかり

食品ロス削減のために:2 食品ロスの削減につなげた容器包装
多くの加工食品や包装メーカーでは、食品ロス削減につながる容器包装に取り組み、大きな成果をあげています。主な事例をご紹介します。

酸素吸収ボトルで賞味期間を12カ月に延長
キユーピー
キユーピーハーフ
[写真1]
開発された多層構造容器「酸素吸収ボトル」。

容器の酸素バリア層の間に酸素吸収層を挟み込んだ多層構造によって、外部から透過してきたわずかな酸素も吸収する「酸素吸収ボトル」を採用。原料の配合の変更により品位が向上し、賞味期間を12カ月まで延長することができました。

開封後の鮮度保持を180日程度に
ヤマサ醤油
「ヤマサ鮮度の一滴」シリーズ
[写真2]
開封後30日だった従来の容器(イメージ)。

しょうゆ容器を特殊な注ぎ口「エアブロック弁」を付けたパウチタイプ容器に変更。開封後何度注いでも中に空気が入らないので、酸化を防いで鮮度が180日程度長持ちするようになりました。

顆粒化した小麦粉で無駄なく使える
日清フーズ
日清 クッキング フラワー(R)
[写真3]

[写真4]
すり切りがしやすい。

[写真5]
振り出しが滑らか。

小麦粉を独自の製法で顆粒化することで、むらなく具材にまぶせて、水にも溶けやすくなりました。容器を150グラムの小さいボトルタイプにすることで、無駄なく使うことができます。詰め替え製品もあり、包装資材の削減にも貢献。

動画で解説!【ろすのん】容器で減らそう!食品ロス削減!!
「ろすのん」が、食品ロスの削減につながる容器包装の高機能化の取り組み事例をわかりやすく紹介している動画です。ぜひご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=Olh09KUVkS4&feature=youtu.be[外部リンク]

ヨーグルトがふたに付着しない技術
森永乳業
「ビヒダスヨーグルト 4ポット」シリーズ
[写真6]

[写真7]
従来品(右)とはっ水性機能のあるふた(左)。

平成22年2月より、はすの葉の表面構造を応用したはっ水性機能のある包装材料を採用。容器開封時にヨーグルトがふたに付着しないため、無駄なく食べられます。食後の分別時にふたを洗う手間も軽減。※商品写真は現在の容器

トレーの密封性の向上と新製法により賞味期間延長
Mizkan
納豆「金のつぶ(R) 梅風味黒酢たれ」ほか1品
[写真8]

[写真9]
変更前(左)と変更後(右)のヒンジ部。

トレー容器の折り返し(ヒンジ部)のすき間と、ふたの穴をなくすことで密封性を向上。また、通常より高めの温度で発酵する新製法「高温保持発酵法」を採用し、賞味期間を15日間へと延長を実現。

絞り出しやすくして最後まで使いきれる
ハウス食品グループ
特選 生わさび
[写真10]

[写真11]
従来品(下)に比べ、格段に絞りやすくなった(上)。

平成27年3月より、チューブ容器の口部分をなで肩にして、中身を最後まで絞り出しやすい形状に改良しました。チューブを折りたたむことなく、そのままの動作で絞り出しやすくなり、中身を最後まで使いきりやすくなりました。

個包装化で人数に合わせて作れる
味の素
鍋キューブ(R)
[写真12]

[写真13]
個包装の鍋つゆの素。1個が1人前。

キューブ状の鍋つゆの素を開発し、1人前(キューブ1個)ずつ個包装化して平成24年8月より発売。一人鍋から大人数の鍋まで、作る量を調整することができ、食べ残しによる家庭で発生するロスを減らすことができます。

繊細な果実輸送時の損傷を軽減
エフピコチューパ
ふわりーと
[写真14]

平成11年より販売されている果実(もも)用容器「ふわりーと」は、ももを包み込む不織布とこれを支える成形底容器から構成されたもの。不織布の伸縮により輸送・荷扱いにおける振動・衝撃からももの損傷を抑制。長距離輸送にも適しています。

取材・文/Office彩蔵

食品ロス削減のために:3 事業者・地方自治体での取り組み
企業などの事業者や地方自治体にも"もったいない"の取り組みが広がっています。
ここではその一部をご紹介。いずれも独自の視点やアイデアを活かして、食品ロスの削減に貢献しています。

県ぐるみで取り組む「おいしいふくい食べきり運動」

[画像1]
運動のマスコットキャラ「のっこさん」。

全国に先駆けておいしく食品ロス削減
福井県が平成18年に始めた「おいしいふくい食べきり運動」では、家庭、外食、宴会の3つのシーンで食品ロス削減を進めています。

各家庭には、食品ロス削減のために行えるポイントを記載した「食べきり実践チェック表」を配布。県内の160店舗以上の食品小売店もバラ売りや量り売りといった、家庭でのロスが出にくい販売方法などで応援をしています。

1000店舗を超える外食店では、小盛りなどの食べ残しが出にくいメニューを設定。さらに県作成の「宴会5箇条」を使い、宴席やパーティーでの食品ロスの削減にも取り組んでいます。

運動は広く浸透していて、県民の認知度は70パーセント以上になっています。家庭での食品ロスの量も、減少しています。

「おいしいふくい食べきり運動」とは?
1.家庭やホテル・レストランなどで、おいしい福井の食材を使っておいしい料理を作り、
2.作られた料理をおいしく食べきって、
3.残ってしまった料理は、家庭では新たな食材としてアレンジ料理に活用し、外食時には持ち帰って家庭で食べきろう!

[写真1]
保育園での学習会など、さまざまな啓発活動も。

余すことなく魚を調理する「魚市場もったいない食堂」

規格外の魚もおいしい定食にして提供
近年の水産業界では、仕入れ・加工・販売の効率化の追求で、特定の魚種やサイズがそろったものだけが流通の主体になっています。

それ以外の多種多様な魚は、鮮度もおいしさも変わらないのに値がつかなかったり、売れる見込みの少なさから洋上投棄されたりすることもありました。

このような、新鮮でおいしくても流通に乗らない魚を定食メニューとして提供しているのが、佐世保魚市場内にある「魚市場もったいない食堂」。一般の方が利用できる食堂で、従業員食堂も兼ねています。

その日の朝に漁港に水揚げされた鮮度抜群の魚を吟味して仕入れ、刺身・から揚げ・煮つけなど、一番おいしい方法で調理。野菜などの食材も、形が不ぞろいだったりして流通に乗りにくいものを使用しています。

食材を無駄なく使いきるのも特徴です。魚や野菜の切れ端はスープに、野菜の皮は漬けものにするなどして、廃棄する部位をほとんど出さないようにしています。

[写真2]
ベテランのスタッフが料理をすべて手作り。

[写真3]
魚市場もったいない食堂
長崎県佐世保市相浦町1563 佐世保魚市場ビル

[写真4]
その日の水揚げで決まる日替わり定食630円(税込み)。刺身はサービス品。

[写真5]
仕入れた旬の魚は大きさも種類もバラバラ。

気象データを解析して作成した「豆腐指数」で生産量を調整

「豆腐指数」を活用し廃棄量減少を実現
豆腐を主体とした食品を製造・販売する相模屋食料では、需要予測「豆腐指数」を活用して予測精度を向上させ、食品ロス削減へつなげています。

「豆腐指数」とは、日本気象協会が作成する商品需要予測指数の一つ。実際の気温や湿度データだけでなく、暑さ、寒さに関するツイート数の変動分析なども使って算出されます。こうした体感温度指数と、相模屋食料の過去の売り上げを比較して開発され、毎日、同社に提供されています。

活用しているのは寄せ豆腐と焼き豆腐。いずれも売れ行きが天候の影響を受けやすい商品です。以前は天候や曜日などの条件をもとに生産量を調整していましたが、天候については勘に頼る部分もあり、誤差が生じることもありました。「豆腐指数」導入後は予測の誤差を約30パーセント削減。その結果、食品ロス減少も実現しています。

8月4日発表 JWA特別気象予測 相模屋食料様 寄せ豆腐

[表1]
体感温度指数の変化で、寄せ豆腐の需要を予測することができる。

社食で食品ロスの削減に取り組む味の素川崎事業所

[写真6]
白ご飯は160グラム~220グラムの4種。

[写真7]
カレーや丼はハーフサイズ(奥)も。

食べる量を自分で選べるようにメニューを見直して提供
味の素グループでは、社会貢献活動「おいしく食べてエコ」キャンペーンを平成25年度に実施。国内外の各事業所で食品ロスの削減に取り組みました。

川崎事業所はこの取り組みを通じて、社員食堂のメニューの見直しを開始。食堂業務を委託しているエームサービスと連携し、食べ残しが出にくい工夫を行っています。それまでは定食のご飯や丼ものなどで食べ残しがありましたが、定食ではご飯の量を選べるように改善。量の少ないミニ丼やミニカレーの提供も始めています。

出社人数などのデータをもとにロスを減らす
新メニューを考案する際も、過去の食べ残しデータを参考にして、なるべく残されにくい食材を選びます。また、大型連休には出社人数をあらかじめ把握し、適正な食材量を準備。作りすぎも不足もないようにしています。こうした取り組みによって、社員食堂での食べ残しが約18パーセント削減されました。

取材・文/Office彩蔵


食品ロス削減のために:4 わたしたちができる食品ロスの減らし方
家庭から出る食品ロスは、ちょっとした工夫で簡単に減らすことができます。減らすコツを節約アドバイザーの丸山晴美さんに教えていただきました。

節約アドバイザー 丸山晴美 さん
ファイナンシャルプランナー、消費生活アドバイザーなどの資格を持ち、テレビや雑誌等で活動中。
http://www.maruyama-harumi.com[外部リンク]
[写真1]

冷蔵庫に入れっぱなしを防ぐ

冷蔵庫の中に何が入っているかを、いつでも把握しておきましょう。具体的には、食材を買ったときには必ずレシートをもらって、それをマグネットで冷蔵庫に貼っておくのがいいでしょう。レシートにはたいてい購入日、食材名、個数が印刷されていますから、そのまま在庫リストになるのです。食材を使いきったら、レシートに線を引くこと。こうすれば、中に何が残っているか、ひと目でわかります。すべてに線が引けたら、そのレシートは外します。古い日付のレシートの食材から使うのが、ロスを出さない秘訣です。

いつまでもレシートが残り、枚数が増えてしまうなら、それは必要のないものを買っているということになります。

[イラスト1]

家庭での食品ロスの原因
出典:農林水産省「食育に関する意識調査報告書(平成29年3月)」
[グラフ1]

食べる分だけ買って余らせない

買い物へ行くときは、冷蔵庫の在庫を確認して、購入する食材の種類をだいたい決めておきます。何となく買い物に行くと、本当は必要でないものも買ってしまいがち。いつもは100円のものが半額の50円で売っていたら、つい買いたくなりますが、これがロスのもと。冷蔵庫の在庫が増えてしまいます。気持ちや時間に余裕があって、使いきる自信があるとき以外は、特売品には手を出さない勇気を持ちましょう。

食材の種類だけでなく買う量にも気をつけて。料理に使う量はだいたいわかっているはずです。それに見合う分だけ買うこと。必要なだけ少量ずつ購入すれば余らせることもありません。

キャベツやレタスなどの葉物は、1玉ではなく半分や4分の1個にカットされているものを買うようにします。1玉しか売っていない場合は、ザクッと切らず、イラストのように外側から1枚ずつ葉をはいで使い、レジ袋などに入れて保存すると、鮮度が長持ちします。
[イラスト2]

買った野菜は全部使いきる

家庭から出る食品ロスで多いのが野菜類。実際、平成26年度の主要な食品別のロスデータを見ると、野菜類がもっとも高く47.7パーセントを占めています。こうしたロスを減らすには、調理法や切り方を工夫して、極力使いきることです。たとえば大根。葉から先端まで、残すことなく使えます。葉は刻むと、みそ汁や炒めものにできます。葉に近いほうはやわらかく、先端のほうは辛みがあるので、部位によって調理法を変えるのもいいでしょう。大根は皮も食べられます。にんじんも同じ。皮をむくなら捨てずに、きんぴらやみそ汁にしてみましょう。

野菜の切り方を変えると捨てる部分が減らせる
そのほかに、捨ててしまいがちなキャベツの芯やブロッコリーの茎。キャベツの芯は意外と包丁で切れる部分が多く、本当にかたいところ以外は使えます。細かく刻んで炒めものにしてみましょう。ブロッコリーの茎も同じ。本当にかたい部分以外は刻んで、炒めものやシチューに。ピーマンやなすのようなへたのある野菜もギリギリまで使いましょう。頭をざっくり落とすのではなく、へただけ取り除けるように切れば、残りはすべておいしく食べられます。
[イラスト3]

余った食材は冷凍して保存

使いきれなかった食材は、すぐに冷凍保存。肉や魚なら、次に使いやすいよう、小分けにしてラップに包み、空気を抜いてからファスナー付き保存袋に入れて冷凍します。解凍時は、必要な分だけラップのまま、加熱していないフライパンの上にのせて。30分ほどで、均一に解凍できます。

野菜類も上手に冷凍すれば使いきれる
野菜類も冷凍できます。これもファスナー付き保存袋を活用。ブロッコリーやきのこ類は生のまま小房に分けて、キャベツならざく切りにして保存袋へ。ごぼうはささがきにして水につけ、そのあとペーパータオルで水けを取って冷凍します。ほうれん草のようにアクのあるものは、下ゆで→切り分け→味つけをしてから冷凍を。冷凍野菜は、凍ったまま調理できるので便利です。とはいえ、早めに使いきりましょう。だいたい2週間~1カ月を目安にします。

調理済みの料理で余りがちなのが、カレーやシチュー。そのまま凍らせるとスが入ってしまうので、じゃがいもは取り除きます。イラストのようにすれば、解凍も簡単。牛乳パックを破って中身を鍋に入れ、自然解凍したあと温めれば、すぐに完成です。
[イラスト4]

取材・文/Office彩蔵
イラスト/あべかよこ、中山ゆかり

特集2 米粉

米の消費量が年々減少傾向にある中、新しい食べ方として注目される「米粉」。その特徴や、定着に向けての動きなど紹介します。

[写真1]

独特の食感が魅力の「米粉」

お米の新たな食べ方としてパンや麺に使えばもちもちに
日本人の主食である、米。しかし、米の消費量は昭和37年度をピークに減少傾向にあります。要因とされるのが、食の簡便化や食の嗜好の多様化です。人口減少、高齢化も進むと予測されることから、米の消費量はさらに減少するのではないかといわれています。
そんな中、米の新たな活用方法として注目を集めている食材が「米粉」です。製粉技術の開発により、パンやケーキ、麺類などへの利用が可能になりました。パンや麺に配合すればもちもちとした食感が生まれるほか、ケーキに使えばしっとり、クッキーに加えてサクサク、と料理や使う量によってさまざまな食感が楽しめます。油を吸いにくいという特性から、米粉を配合したヘルシーな天ぷら粉なども登場しています。ほかにも、とろみをつけるために使用したり、肉や魚に薄づけでき、そのうまみを包むこともできる米粉。さらには、グルテンを含まない食材としての需要も高まっています。

徐々に普及が進む中定着に向けての取り組みも
多くの食品企業から米粉を使った商品が発売され、メディアでも取り上げられたことから、米粉は消費者にも一定の認知を獲得しています。しかし平成24年度以降の利用量は年間2万数千トン台で推移している状況。これを打破するため、今年5月、米粉製造業者や生産者団体、消費者団体などによって発足したのが「日本米粉協会」です。3月には、農林水産省は米粉を主な用途に応じ、「1番:菓子・料理用」「2番:パン用」「3番:麺用」に区分する「米粉の用途別基準」と、グルテンを含まない米粉を広めるための、「米粉製品の普及のための表示に関するガイドライン」を公表しました。これらの普及を通じ、米粉のさらなる利用を促進するのが同会の役割です。また、大きな需要が見込まれる欧州でのPR活動も視野に入れており、輸出と国内消費の両軸で活動を進めています。

日本の食料自給率向上の鍵を握るともいわれている米粉。さまざまな魅力と特性をもつ新しい食材として、ますますその活用が期待されています。

家庭でできる米粉料理
水を加えてもダマにならず、ふるう必要もない米粉。
扱いやすいので、家庭での料理に活用してみませんか。

米粉のレシピ動画を見てみよう
NPO法人国内産米粉促進ネットワークのWebサイトでは、簡単にできる米粉レシピの動画「米粉の用途別基準」を紹介しています。参考にしてください。
NPO法人国内産米粉促進ネットワーク
http://cap-net.jp/komeko/[外部リンク]

油の吸収を抑えてヘルシーに仕上がる
1番米粉(ミドルタイプ)で作るから揚げ

材料
1番米粉(ミドルタイプ)…40グラム
鶏肉…1枚(300グラム)
下味のたれ…40グラム
油…適量

[写真2]
大きめのひと口大に切った鶏肉に下味をつけておく。
[写真3]
米粉をまぶし、粉っぽさがなくなるまでよく混ぜる。粉っぽさが残るなら、下味のたれや水で調整を。
[写真4]
160~170度に熱した油で揚げる。
[写真5]
器に盛りつけ、完成。

米粉を使ってしっとりとした口当たりに
1番米粉(ソフトタイプ)で作るシフォンケーキ

材料(直径17センチメートルシフォン型1台分)
1番米粉(ソフトタイプ)…65グラム
卵…4個
グラニュー糖…65グラム
牛乳または豆乳…10グラム
米油…20グラム

[写真6]
卵を卵黄と卵白に分ける。卵黄の入ったボウルに、グラニュー糖3分の1量、牛乳(豆乳)、米油を加えてよく混ぜる。

[写真7]
米粉を一度に加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。卵白をハンドミキサーで泡立て、白くふんわりしたら残りのグラニュー糖を3回に分けて加え、つのが立つまで泡立て、メレンゲを作る。

[写真8]
メレンゲを2~3回に分けて生地に加え、なじませる。型に生地が均等になるよう流し入れ、竹串で生地を混ぜて中の気泡を抜く。170~180度のオーブンで、約40分焼く。

[写真9]
焼きあがったらさまし、好みの大きさに切り分ける。

取材・文/千葉貴子

買って食べたい米粉商品
製粉技術の進歩や各食品企業の努力により、多種多様な米粉商品が開発されています。特徴的なものを紹介します。

[写真1]
中山間地の田んぼを守るため地域の農家と連携して作る麺
田守り―TAMAMORI―
[有限会社木村有機農園]
中山間地の耕作放棄地の拡大を止めようと「水田を守りたい」という気持ちで開発。高アミロース米を微粒子に製粉し、塩すらも使わない独自の製法で作る米粉100パーセントの麺。
https://kimura-organicfarm.com[外部リンク]

[写真2]
もちもちっとした食感が魅力のアレルゲンフリードーナツ
ふかふか焼きドーナッツ プレーン
[ミスタードーナツ]
アレルギーをもつ人にもドーナツを食べる楽しさ、喜びを感じてもらいたいとの思いから開発された、特定原材料7品目不使用のドーナツ。米のもちもち感が楽しめる。
http://www.misterdonut.jp[外部リンク]

[写真3]
新潟県産米粉100パーセント使用軽やかな口当たりを実現
えびの風味豊かなふんわり揚
[セブン&アイ・ホールディングス]
セブン&アイのプライベートブランド「セブンプレミアム」の一品。新潟県産米粉を使用し、軽やかさを追求。食感はサクサク、口当たりはふんわり。
https://7premium.jp[外部リンク]

[写真4]
外はパリッと中はもっちり国産小麦と米粉で作ったロールパン
ゆめちから小麦と米粉のロール
[敷島製パン(Pasco)]
北海道産小麦ゆめちからと、新潟県産米粉を配合。トーストすると外はパリッとこうばしく、中はもちのような食感に。かむほどにやさしい米の味わいを楽しめる。
https://www.pasconet.co.jp[外部リンク]

[写真5]
秋田県産あきたこまちを使用蒸練製法で、もちもちの食感に
こまち麺[株式会社波里]
地元農家を支援したいとの思いで開発。米粉を一度蒸してからのばし、一昼夜冷蔵庫でねかせてから切るという「蒸練熟成製法」で作った、もちもち感の強い麺。
http://www.namisato.co.jp[外部リンク]

[写真6]
焼いて食べるために作った歯ごたえが特徴
お米のやきそば
[小林生麺株式会社]
アレルギーを持つ顧客からの要望を受けて作られた、歯ごたえがある焼きそば専用の麺。調理の手軽さも魅力。同社の経営するレストランでも提供し好評(要予約)。
https://www.kobayashiseimen.jp[外部リンク]

[写真7]
こうばしさともちもち感が魅力地域再生の要となる玄米の麺
玄米麺[合同会社宮内舎]
地域の若者が食べていける仕組みをつくるため、米の6次産業化に取り組む。耕作放棄地を再生した水田で、農薬を削減して栽培された玄米を使用。
http://miyauchiya.com[外部リンク]

[写真8]
岐阜県産米粉を100パーセント使用学校給食にも選ばれるパスタ
グルテンフリーライスパスタ
ブラウンシリーズ/ホワイトシリーズ
[PLUS株式会社]
岐阜県産米「ハツシモ」を100パーセント使用し、つなぎをいっさい使わずに、米粉だけで作られたパスタ。岐阜県内の学校給食にも採用されている。
https://item.rakuten.co.jp/comecoplus/[外部リンク]

ファストフード店でも食べることができる米粉メニュー
米粉の活用が広がるなか、全国に展開するファストフード店のメニューでも、米粉の商品を見ることができます。

[写真9]
米粉を使用したバンズの低アレルゲンバーガー
モスバーガー
アレルギーをもつ子どもにもおいしいハンバーガーを提供したいとの思いから開発された「低アレルゲンバーガー〈ポーク〉」。山形県産はえぬきを中心とした国産米粉を使ったオリジナルのバンズを使用。ハンバーグと相性のよい、ほどよいもちもち感のある食感に仕上げている。
平成29年9月現在の情報です。

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米粉を加え、サクサクの仕上がり国産にこだわった結果の米粉配合
リンガーハット
「食の安全・安心・健康づくり」を理念とする同社は、食料自給率への貢献をめざし2009年からぎょうざの皮に国産米粉を配合。小麦粉と粒の大きさをそろえることで、食感にそん色のないぎょうざ用米粉を開発した。焼きめがパリッと仕上がり、中はもちもち、さめてもかたくなりにくいぎょうざは、同社の商品の中でも好評。

取材・文/千葉貴子

輝く! 未来を担う生産者 vol.6

農業生産法人有限会社ナガタフーズ/茨城県
おいしく食べてもらえる「つま」にこだわって
刺身の「つま」は飾りでも添えものでもなく、食の知恵に基づいた日本独特の文化。
だからこそ、おいしく食べてほしいと、大根作りからこだわったその取り組みとは--。

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収穫した大根を一時保管している冷蔵庫内で。鮮度を保つための温度・湿度調整がされている。

ただの飾りではないおいしさを求めて
刺身に欠かせない存在ながら、残されがちな大根の「つま」。見た目を美しくするための飾りだと思っていませんか。

「大根がもつ抗菌作用で刺身の傷みを防ごうという、昔ながらの食の知恵がつまった食べものです」と語るのは、ナガタフーズの取締役・永田修一さん。たかが「つま」、されど「つま」、とおいしく食べてもらえるよう、大根の栽培から加工販売までを手掛け、注目を集めています。

もともと干し芋の製造から6次産業化を始めたナガタフーズ。大根の「つま」に取り組むようになったのは、社長である永田さんの父親が、料亭で食べた「つま」のおいしさに感動したのがきっかけでした。おいしく、安心安全に食べられる野菜生産に励んでいただけに、大根から丹精込めて作ればきっと多くの人に喜ばれるものができるとひらめいたのです。 「大根を切っただけの『つま』は味つけもしないため、ごまかしがききません。それだけに、うちでは『つま』に向く品種を常に試験栽培し、栽培する畑の土壌にも細心の注意を払っています」。肉質がかたく、水分があまり多くない大根を、有機質肥料を散布した畑で育てる。そして、作り置きはせずとれたての大根を使って365日、新鮮なものを製造する。それがこだわりです。

「つま」をもっと食べてもらうために
現在では自社農場の大根だけではまかないきれず、他の農家から仕入れるほどに。

「直径7センチメートル以上の2Lサイズの大根が理想。大根を切断し、中に黒くなっている部分はないか、水分含有量や肉質のかたさは適切かといった品質チェックも行い、基準を満たしていない場合は、必ず生産者に知らせます」

厳しい条件を満たした大根だけが一本一本皮むき器を使って皮をむかれ、メーカーと共同開発した特殊技術によってカットされ、手切りに近い食感の「つま」に。

それほどこだわり抜いて作っているものだけに、食べ残され、捨てられてしまうのはもったいないと、永田さんはドレッシングまで考案・開発しています。

「最初は刺身パックに『つま』用ソースとして小袋でつけたらどうかと思ったんですが、生産コストがかかりすぎてしまうため、ボトル詰めしてドレッシングとして販売しています」 大学で経営学を学び、卒業後は食品加工会社で加工技術を学んだ永田さんならではの発想です。

「小さいころから父親が野菜を一生懸命作っているのを見ているので、食べ物を粗末にしてはもったいない、という思いが強いのかもしれません」

皮も汁も捨てるのはもったいない
その思いは、加工後に出る皮にも向けられています。これまでは堆肥加工業者に処分を依頼していましたが、有効活用できないかと今年から牛や豚の飼料化に取り組んでいます。また、ナガタフーズでは業務用の大根おろしも生産しているため、「しぼった大根の汁には栄養がいっぱい含まれているので、何かに使えないか、と考えているところです」。

命の糧である農作物を、余すことなく食べきる――。永田さんの姿勢は、忘れがちな大切なことを私たちに伝えてくれています。

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土壌分析に基づき、肥料設計を行って育てられる大根。

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皮むきは、一本一本ていねいに手作業で行われる。

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カットされた大根は2.5キログラムごとに袋詰め。

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鮮度を保つため、箱に氷を詰めて市場やスーパーへ出荷する。

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ナガタフーズこだわりの「つま」。

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永田さんが開発したドレッシング「大根百笑(ひゃくしょう)」には、自社のあらびき大根おろしを使用。全10種類。

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1日2~3トン出る大根の皮。

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奥の粉末状のものは堆肥に、手前の葉の付け根部分などは飼料に有効活用する。

月に一度、妻と一緒にDJを楽しんでいます!

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大学時代からの趣味・DJを今も月一回、笠間市内でやっている永田さん。

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奥様と1時間交代で担当、夫婦で楽しんでいる。

Profile
永田修一さん
1978年生まれ。城西国際大学経営情報学部卒業後、6年間の会社勤めを経て、2006年にナガタフーズに就農。芋スイーツの事業化を手掛けたのち、2011年、ドレッシング「大根百笑」を事業化。2017年から大根の皮を飼料化する事業に乗り出す。2児の父。
所在地/茨城県笠間市福島672
http://nagatafoods.com/[外部リンク]

取材・文/岸田直子
撮影/原田圭介

MAFF TOPICS

MAFFとは農林水産省の英語表記「Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries」の略称です。「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。

NEWS1 10月は「木づかい推進月間」です
「木づかい運動」をご存じですか?
日本は国土面積の約3分の2を森林が占める、世界有数の森林国。中でもその約4割を占める人工林は、今まさに本格的な利用期を迎えており、平成17年度から「木づかい運動」を展開しています。木材を上手に使うことは森林の整備につながり、その結果、国土の保全、水源の涵養(かんよう)といった森林の有する機能が十分に発揮されることで、私たちの生活を守ることにもつながります。

最近では、木づかいを巡るさまざまな活動や、木の効果が注目されています。名古屋で10月に開催される木づかいシンポジウムでは、「木の香りと健康」と題した講演や、多様な分野で活躍する方々によるパネルディスカッションを通じて、木づかいの実践と広がりをご紹介します。

また、森林保全団体more trees(モア・トゥリーズ)が東京で12月に開催するシンポジウム「都市と森をつなぐ」では、同団体が森づくりの一環として取り組む、国産材を活用した製品事例や、木のある暮らしの魅力について紹介されます。森林の産物である木材が、製品として人々のもとに届くまでのストーリーにも、注目していただきたいです。

このように多くの取り組みが行われている「木づかい運動」。林野庁のWebサイトでは、全国各地で行われるイベント情報を掲載しています。年間を通じて多様な取り組みがありますので、ぜひお近くのイベントにお出かけください。きっと、一段と豊かな日々の暮らしにつながるヒントが得られるはずです。

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(一社)more treesの国産材活用製品事例。
シンプルな三角形の「つみき」。建築的要素を取り入れ、積み方しだいでさまざまなオブジェを作り出せる。国産スギの無垢材を使用。デザイン・隈研吾氏。

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輪切りにした丸太をそのまま生かした置時計。国産スギを使用。デザイン・角田陽太氏。

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平成28年度木づかいシンポジウム。

木づかいシンポジウム in 名古屋2017 ~木を知り、木を楽しむ~
開催日時:平成29年10月28日(土曜日) 13時30分~15時30分
場所:ポートメッセなごや ウッドワンダーランド内(愛知県名古屋市港区金城ふ頭2 - 2)
内容:基調講演(東京大学名誉教授 谷田貝光克氏)
パネルディスカッション(東京おもちゃ美術館 馬場 清氏ほか)
問い合わせ:特定非営利活動法人 活木活木森ネットワーク
電話 03-5844-6272
特定非営利活動法人活木活木(いきいき)森ネットワーク
http://www.iki-mori.net/[外部リンク]

more trees シンポジウム「都市と森をつなぐ」
開催日時:平成29年12月19日(火曜日)14時00分~(予定)
場所:木材会館(東京都江東区新木場1-18-8)
内容:基調講演(建築家 隈研吾氏) トークセッション(隈研吾氏、坂本龍一氏)
入場料:無料(事前申込制)
問い合わせ:一般社団法人more trees
Eメール info@more-trees.org
一般社団法人 moreTrees
http://more-trees.net/[外部リンク]

一覧はこちらへ!
全国で開催される木づかいイベント
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/kidukai/gekkan.html[外部リンク]

NEWS2 農林水産祭「実りのフェスティバル」を開催
全国の旬の農林水産物がそろうお祭り
農林水産祭「実りのフェスティバル」は食と農林水産業の祭典です。都道府県・団体のブースでは全国各地の旬の農林水産物が勢ぞろい。試飲・試食・販売が行われます。

そのほかには、今年度の農林水産祭参加表彰行事で、天皇杯を受賞した方々の受賞概要がパネルで紹介される「天皇杯コーナー」もあります。天皇杯等3賞の選賞は、過去1年間の農林水産祭参加表彰行事で農林水産大臣賞を受賞した方の中から、天皇杯、内閣総理大臣賞、日本農林漁業振興会会長賞が決定されます。

また、農林水産省の各種施策を紹介する「政府特別展示コーナー」や都道府県独自の農林水産技術を紹介する「都道府県技術・経営普及展示コーナー」のほか、体験乗馬や全国のゆるキャラに出会えたりと、楽しい催しが盛りだくさんです。

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天皇杯の受賞概要を展示する「天皇杯コーナー」。

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政府特別展示コーナー。

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全国各地の特産品が並ぶ。

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全国や各団体のゆるキャラたちが勢ぞろい。

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ポニーの体験乗馬やうさぎとの触れ合いコーナーも。

写真は平成28年度のものです。

平成29年度(第56回)農林水産祭「実りのフェスティバル」
日時:平成29年11月10日(金曜日)、11日(土曜日)
10時00分~17時00分(11日は16時00分まで)
会場:サンシャインシティワールド インポートマートビル4階 展示ホールA(東京都豊島区東池袋3‐1)
入場料:無料

詳細はこちらへ!
公益財団法人日本農林漁業振興会
http://www.affskk.jp/[外部リンク]

取材・文/細川潤子

NEWS3 2地域が「ユネスコエコパーク」に登録決定
昭和51年にユネスコが開始した事業である生物圏保存地域(国内呼称:ユネスコエコパーク)に、「みなかみ」(群馬県、新潟県)および「祖母(そぼ)・傾(かたむき)・大崩(おおくえ)」(大分県、宮崎県)の2地域が平成29年6月に登録されました。

ユネスコエコパークは生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的としており、自然の保護・保全だけでなく自然と人間社会の共生に重点が置かれています。登録には各国からの推薦をもとに、「ユネスコ人間と生物圏(MAB)計画国際調整理事会」で審議、決定がなされます。

なお、現在国内には9つのユネスコエコパーク(只見(ただみ)、みなかみ、志賀高原、南アルプス、白山、大台ケ原(おおだいがはら)・大峯山(おおみねさん)・大杉谷(おおすぎだに)、祖母・傾・大崩、綾(あや)、屋久島・口永良部島(くちのえらぶじま))が登録されています。

[写真1]
「みなかみ」
(群馬県・新潟県)
群馬県と新潟県の境は太平洋側と日本海側の大気がぶつかる中央分水嶺の山稜地帯で、世界でも有数の豪雪地帯。そのため独特な地形地質が見られ、多様で希少な動植物が生息するなどの特徴を有する。
写真は谷川岳肩の小屋から望む谷川連峰。(提供:群馬県みなかみ町)

[写真2]
「祖母・傾・大崩」
(大分県・宮崎県)
九州最高峰の山々が連なり、幅広い植生とともに、ソボサンショウウオなどの希少種が生息する多様な生物種の宝庫。土地固有の民俗芸能 が継承されるなど自然への畏敬の念が地域の文化として根づいている。
写真は傾山。(提供:高野弘之)

NEWS4 「全国ご当地もちサミット2017 in 一関(いちのせき)」を開催
全国には「ご当地もち」が多くあります。もともともち食の伝統が深い日本では、各地域の農産物、商工業資源と結びつけた、地元独自のもちが存在します。

こうしたご当地もちの魅力を伝えることを目的として、今年で6回目となる「全国ご当地もちサミット2017 in 一関」が開催されます。開催地となる岩手県一関市は、300種類以上の多彩な「もちの具」が生み出され、「もちのせき」といわれるほどもち文化が盛んな地域。もち食文化の聖地とも言えるこの地で、グルメの熱い戦いが繰り広げられます。

イベントでは全国各地のご当地もちを集め、模擬店で料理を提供。来場者には1食(400円)につき投票券(もちふだ)が配布され、それぞれがお気に入りのご当地もちに投票するグランプリ形式です。食欲の秋に、日本のもち文化に親しんでみてはいかがでしょうか。

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来場者は試食後、お気に入りのご当地もちに投票。全国から集合した「おもち帰りもち」も販売する。

[写真4]
京津畑やまあい工房(岩手県一関市大東町)の「やまあいのお雑煮」。ひき菜汁の上に手切りしたもちを2切れのせ、煮鶏と三つ葉、なるとをトッピング。

写真は平成28年のものです。
提供:ご当地もちサミット実行委員会

全国ご当地もちサミット2017 in 一関
日時:平成29年11月11日(土曜日)10時00分~16時00分/12日(日曜日)10時00分~15時30分
開催場所:一関文化センター前広場(岩手県一関市大手町2-16)
問い合わせ:ご当地もちサミット実行委員会事務局
電話 0191-21-8413、0191-23-3434
詳細はこちらへ!
全国ご当地もちサミット
http://mochi-summit.jp/[外部リンク]

多面的機能支払交付金[第4回] フクロウがシンボルの里づくり
栃木県で「フクロウの里」として知られる宇都宮市逆面(さかづら)地区。ここは、都市近郊にありながら、フクロウが暮らし、専門家も驚くほどの自然が残る農村地域です。

農家や自治会などで結成された組織「逆面エコ・アグリの里」は、フクロウが暮らせる里山や田んぼを守るため、地元のNPOや宇都宮大学などからアドバイスを受けながら、環境保全の活動を続けています。フクロウが繁殖できるよう、地域住民や子どもたちが巣箱を作って設置したり、エサとなる生きものの生息環境を維持しようと、水路にカエルが落下するのを防ぐためのふたを設置したりしています。

フクロウをシンボルにした活動は、豊かな自然や地域の絆を育むだけでなく、地域ブランド米の誕生にもつながり、経済効果を生み出す取り組みにも発展しています。

地域活動でフクロウを保護・育成

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田んぼの生きもの調査。農村はフクロウだけでなく、地域の子どもも育む。

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田んぼと里山を行き来するニホンアカガエル。フクロウの子育てに欠かせない生きもの。

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狩りに飛び立つ親フクロウ。ヒナは単箱で帰りを持つ。

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水路へのふたの設置作業。コンクリートの水路は、管理の負担を軽減する一方、カエルが落ちると壁を登れず溺れてしまう。

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地域ブランド米「育む里のフクロウ米」

多面的機能支払交付金とは…
農業・農村の有する多面的機能が、適切に維持・発揮されるよう、農用地や水路、農道等の地域資源を保全している地域の共同活動を支援するための交付金です。

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