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農林水産省

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18年3月号文字情報

味の再発見! 昔ながらのニッポンの郷土料理 第11回

愛知県 どて煮

煮込むほどに味わい深い、名古屋めしの代表格
「所変われば"食"変わる」と、旅するごとに思う。そう強く感じさせるものの一つが、みそである。東北なら仙台みそに代表されるキリッと辛めのみそ、関東甲信越ではまろやかな信州みそが愛好される。九州なら軽やかで香ばしい麦みそが定番。そして東海地方の愛知・岐阜辺りは、八丁みそ(豆みそ)文化圏である。

独特の渋みがある八丁みそは、愛知県で多くの料理に使われている。みそ汁、名物のみそカツ、みそ煮込みうどんにも欠かせない。そして今回のどて煮も八丁みそをたっぷりと使う煮ものだ。

具材は牛すじ、豚モツ、大根にこんにゃく。下ゆでしたすじやモツに、八丁みそとみりん、砂糖を加え、じっくりと煮込んでゆく。そしてこの料理に必要なものは気長さだ。「半日加熱して半日やすませ、三日は煮込みたいですね」とは地元の方のご意見。「冬は親がストーブにかけて根気よく"育てて"いました」なんて声も。実際やってみると、確かに一日二日の加熱では、どて煮独特のコクが出ない。

逆に考えると、時間をかけただけうまくなる料理とも言える。水や酒を足し足し気長に煮れば、次第に渋みと甘みが溶け合って、なんとも言えないまろみが生まれてくる。ちなみに白砂糖ではなく、ざらめでやる人も多い。よりこってりした甘みが出るのだ。みりんはケチらず、たっぷりと使うのもポイント。

よく「みそは煮えばな」と言われるように、長々加熱すると風味はとんでしまうもの。しかし八丁みそは煮込むほどに不思議とうまみが増す。県内の飲食店、ことに居酒屋ではどて煮は定番メニュー。店ごとに個性があり、出来栄えを競っている。訪れたらぜひ、味わってみてほしい。

[写真1]
撮影/島 誠 料理制作/三好弥生

[写真2]
名古屋城(愛知県名古屋市)

[写真3]
八丁みそとみりんは、共に愛知県の特産物。八丁みそは旧八丁村(現岡崎市八帖町)でつくられたことからこの名になった。みりんは200年以上前から三河地方などでつくられている。


文/白央篤司
フードライター。研究テーマは日本の郷土食と「健康と食」で、月刊誌『栄養と料理』(女子栄養大学出版部)などで執筆。著書に『にっぽんのおにぎり』(理論社)『ジャパめし。』(集英社)などがある。
ブログhttp://hakuoatsushi.hatenablog.com/[外部リンク]

特集 農業で働く

今、就職先として農業を選ぶ人が増えています。その経歴は、新卒や他分野からの転職などさまざまです。

[画像1]
生産者の皆さん

他の職業にはない魅力を持つ農業
卒業シーズンを迎え、これから新たな道に歩み出そうとする人も多いことでしょう。自分の価値観を大切にしながら、どういった働き方をするか。そこには、さまざまな選択肢があります。

四季を感じながら、自然とともに生きられる仕事の一つが農業です。人間が生きていくうえでなくてはならない食物をつくり、また、地域社会に貢献できるという生きがい、やりがいもあります。創意工夫を活かせる創造的な仕事でもあります。

多様な魅力のある農業を始めてみたいという人は少なくありません。49歳以下で新たに農業を仕事にする人は、年間で2万人以上います。中でも目立って増えているのが、農業を事業とする法人に新たに就職する「新規雇用就農者」です。家族経営の法人化に加えて、他の産業からの参入もあって、農業法人そのものも急増しているのです。

[図]
農業で働く魅力とは?
自然とともに生きる
地域のために働く
創意工夫が活かせる

[グラフ1]
49歳以下の新規就農者数の推移
新規参入者については、平成26年調査から従来の「経営の責任者」に、「共同経営者」を加えている。
出典:農林水産省「新規就農者調査」

[グラフ2]
農業法人数の推移
出典:農林水産省「農林業センサス」

サラリーマン的農業のススメ
初めから自営農家を目指すのではなく、農業法人に就職するという方法には多くの利点があります。家業が農業でなくても大丈夫です。自分で農地を確保しておく必要がなく、農業機械などの初期投資もいりません。雇用されるということでは一般の会社に勤めるのと同じで、福利厚生の充実した農業法人もたくさんあります。独立を目指す人なら経験を積みながら知識やノウハウを蓄えられるほか、そのまま長く勤めるという選択肢もあります。

農業には農作業だけでなく、企画、営業、経理・財務、労務管理などの仕事もあり、専門性を持つ人なら、それを活かすという働き方もできます。また、商品開発やレストランの経営、海外市場への展開を図ったりと、積極的な経営を行う法人もあります。

こうした法人を舞台に自分の新たな可能性を追求する人々を紹介します。

取材・文/下境敏弘


女性だからこそできることがある
【富山県】株式会社アグリたきもと

農業法人は女性にとってもアクセスしやすい農業の入口。富山県の米どころでは、女性の社長が女性の働きやすい環境の整備に力を入れています。

[写真1]
アグリたきもとの従業員のうち、海道さん(中央)を含む3人が女性。

女性経営者のもとで急成長する株式会社
黒部川の河口近く、北アルプス連峰を望む地で、米と大豆を中心とする大規模な農業を展開しているのが、アグリたきもとです。

代表を務める海道瑞穂さんは「もともとは1.5ヘクタールの田畑があっただけ。脱サラした父と母、私の3人で始めた小さな農業法人でした」と振り返ります。

平成22年に法人を立ち上げて代表に就任したとき、20代前半だった海道さんは、近隣の人たちが所有する田畑の作業を請け負う形で事業規模を拡大しようと決めます。「昔の農業は体力頼みだったかもしれないけれど、今は優れた農業機械がある」と自ら大型特殊免許を取得しました。小柄な女性がトラクターやコンバインなどの大型農業機械を乗りこなす姿はまだ珍しく、メディアでたびたび取り上げられることに。また近隣の人からは「仕事が丁寧だから、瑞穂さんが耕した田んぼはきれいだ」と評されるようになりました。

アグリたきもとでは、受託している農地の地権者への気配りを欠かさないよう、細やかな品質管理で納得のいく作物をつくるよう心がけています。こうした姿勢や海道さんの経営手腕が認められ、今では地域農業の担い手として頼りにされる存在です。作業を請け負う農地を増やしてきた結果、手がける水田は60ヘクタール、大豆畑は41ヘクタールと、合わせれば100ヘクタールの大台を超えるまでに。町特産の「入善(にゅうぜん)ジャンボスイカ」や白ねぎもつくっています。

家族を大切にしながら安心して働ける職場に
法人化するときには、地域の若い人たちのために、家族を大切にしつつ安心して働ける職場をつくりたいという思いもありました。

海道さんは、女性が働きやすい環境づくり、という視点も大切にしていて、産前産後・育児休暇、短時間勤務といった制度を導入したほか、シャワー室を設け、休憩室やトイレは男女別にしました。

会社情報
業種:生産(水稲等)、消費者への直売、作業受託/従業員:7人/勤務時間:8時~17時(シフト制、休憩2時間)/休日:年間85日/その他:介護休暇・育児休暇あり

[写真2]
コンバインやフォークリフトなど大型農業機械もそろう。

[写真3]
パソコンを使い、稲の生育状況や気温の変化に対応した細かい管理を行う。

[写真4]
Webページは女性らしさを前面に出したデザインで、農業のイメージを変えることに挑む。

[写真5]
ネット販売しているボトル入りの贈答用コシヒカリ。

[写真6]
女性用トイレはテーマカラーのピンク。

[写真7]
従業員用のシャワー室も完備。

[コラム]
私が働いてます!

[写真8]
滝本菜摘さん
33歳/平成28年9月入社/夫と子どもの4人家族

夢は栄養士の資格を活かしての6次産業化
以前、管理栄養士として医療や福祉の施設で働いていたのですが、両親と妹が立ち上げた農業法人が手がける農地を増やしたことで忙しくなり、また家事と仕事を両立できる働きやすい環境にしたというので転職を決めました。まだ見習いですが、自分が手がけた作物がすくすく育っていくのを見るのは楽しいですね。アグリたきもとでは、かわいいデザインのWebページをつくっていて、私が撮影した写真を載せています。将来は、育てた果物を利用した加工商品を開発するなど、栄養士の知識や経験を活かした6次産業化に取り組みたいと考えています。

[写真9]
昨年11月、フォークリフトの免許を取得。「苦手意識がありましたが、すぐに慣れました」

[グラフ]
1日のスケジュール

[表]
年間の主な作業

取材・文/下境敏弘
撮影/島 誠
イラスト/ちこ*


目標は100人の社長を育てること
【静岡県】株式会社鈴生(すずなり)

高品質なレタスなどで知られる静岡県の農業法人、鈴生。従業員を育てることを重視しつつ急成長しています。

[写真1]
冬レタスの収穫で力を合わせる鈴生の皆さん。

作物の生長を助ける農業が成功のカギ
静岡市に本社を置く株式会社鈴生は県内に広く分散する計100ヘクタールの畑でレタスや枝豆などをつくっています。

100パーセント契約栽培で、あらかじめ取引先と数量や価格を決めたうえで生産にかかります。社員が一丸となって生産に励み、「契約を必ず守る会社」と取引先からの信頼も厚い鈴生。味と品質に厳しいことで知られるファストフードをはじめ、複数の大手食品企業に食材を供給するようになりました。

社長の鈴木貴博(よしひろ)さんは大学卒業後、山梨県の農業法人で1年間研修を受けたうえで、平成12年に両親から農園を継ぎました。

農業の産業化を図りたいと考え、事業を家業のお茶とみかんづくりから野菜の契約栽培に切り替えたものの、「5年間は利益が出なかった」そうです。

「悩んでいるとき、師と仰ぐ篤農家から『作物は自分で育つ。その手助けをするのが農家の役目だ』と諭され、ハッとしました」

作物がして欲しいことをする。考え方をそのように改めてから、ようやく満足のいく作物が採れるようになったといいます。

「自分の分身」である従業員の育成に力を入れる
前身の鈴木農園を法人化したのは、平成20年のことでした。「鈴生」という社名には「作物も人もたくさん集まる会社にしたい」という思いを込めています。

「100人の経営者を育てたい」とする鈴木さんが進めるのは、鈴生で育った従業員が独立して協力会社の社長になり、鈴生に作物を出荷するという形態です。すでに8人が独立を果たし、協力農家になりました。また、従業員に求めるのは素直さ。「素直な人ほど伸びます」。また、 「従業員は自分の分身」と言い切る鈴木さんは、惜しみなく技術や知識を伝えるようにしてきました。独立してすぐに経営が成り立つよう支援しているうち、理念に共感した独立志向の強い若者が入るようになっています。

他方、鈴生ではゴルフや野球の大会、社員旅行などでチームワークを高め、また生産目標を達成したら賞与を支給するといったことにも取り組んでいます。働きやすく、やりがいのある職場であることから、長く勤める人も少なくありません。

会社情報
業種:野菜の生産、販売/従業員:53人(役員・正社員)/勤務時間:夏7時~18時、冬7時~19時(シフト制、休憩1時間半)/休日:年間86日の公休日。夏季休暇あり/その他:賞与・昇給あり、研修生用の寮・社宅あり

[写真2]
指導に当たる鈴木社長。会社の合言葉は「すべてにおいて手を抜かない」。

[写真3]
鈴生では年2回、従業員参加のゴルフ大会を開催している。

[コラム]
私が働いてます!

[写真4]
澤田泰三さん
28歳/平成29年4月入社/独身

郷里で自分の農場を持つため野菜づくりの腕を磨きたい
東京農業大学を卒業したのですが、実家が農家でないこともあり、農業法人に就職する道を選びました。鈴生にしたのは、海外の大規模な農場に匹敵する面積の畑を効率的なシステムで管理していること。また社員一人ひとりが多くのことに挑戦し、熱意を持って仕事に取り組んでいる姿に感動したからです。鈴生では、東京大学を卒業した人も働いています。さまざまな経験や技能を持つ人たちと働くのは楽しいですし、団結して目標をクリアした時には大きな達成感が得られます。いずれは独立し、鈴生グループの一員として郷里の岐阜に自分の畑を持ちたいですね。

[写真5]
育苗センターで育てた苗をハウスに運び、水をやりつつ管理。

[写真6]
2~3日かけて現地の気候に慣らした苗を植えつける。

[グラフ]
1日のスケジュール

[表]
年間の主な作業
澤田さんはレタスなどの定植や収穫の作業、およびこれに関わる管理作業を行う。

取材・文/下境敏弘
撮影/島 誠
イラスト/ちこ*


毎年新卒が就職する会社に
【埼玉県】株式会社関東地区昔がえりの会

[写真1]
従業員は30人。正社員18人、パート7人、海外からの実習生5人が在籍している。

関東地区昔がえりの会は、「健康な農産物づくり」と「よりよい農業ができる仕組みづくり」を理念に、平成11年に発足した農業生産法人です。醗酵堆肥と緑肥の活用で地力を維持し、作物の持つ力を活かして、キャベツやレタス、白菜から青ねぎ、小松菜までさまざまな農作物を栽培しています。

販路を確保しながら事業を拡大してきたことも同社の特徴です。外食企業と提携して加工・業務用野菜に着手。販売先の要望に基づいて計画的な作付け、栽培、販売を行うことで、安定した経営を実現しています。

同社は、「就職する」イメージでキャリアをスタートできるよう、研修や福利厚生の充実に力を入れており、独立支援も行っています。平成24年からは毎年新卒を採用し、農業を仕事とする人材を増やすことに貢献しています。雇用時に大切にしているのは、「真面目でやる気があり、向上心があること」。安全・安心・おいしさを追求しながら、魅力ある農業の構築を目指し、努力を続けています。

会社情報
業種:野菜の生産、販売、作業委託/従業員:30人(パート含む)/勤務時間:夏7時半~17時半、冬8時半~18時(シフト制、休憩1~3時間)/休日:年間108日/その他:年1回昇給あり、アパート賃貸あり

[写真2]
青ねぎやキャベツなどの加工・業務用野菜が主力商品。

[コラム]
私が働いてます!

[写真3]
原田幸真(よしまさ)さん
32歳/平成29年4月入社/妻、子どもの3人家族

異業種から転職。農業の可能性を若者にアピールしていきたい
前職では、店舗の立ち上げやメニューづくりなど、飲食店のコンサルティングをしていました。食材や農業への興味があった中、仕事を通じて弊社を知りました。20代前半の社員が多く活気あることに驚き、ここで働きたいと転職しました。今は生産の現場で勉強しながら、外食企業との出荷調整や従業員のスキルアップのための仕事をしています。高齢化と後継者不足は農業界全体の課題ですが、新規就農する若者にとってはチャンスだとも感じます。この会社で自分が頑張ることで、農業は楽しく、新規参入のハードルも高くはないということを世の中に発信していきたいです。

[写真4]
小松菜の調整作業を行う原田さん。

[グラフ]
1日のスケジュール

取材・文/千葉貴子
イラスト/ちこ*


ICTで農業はもっと働きやすく
【宮城県】株式会社GRA

[写真1]
CEOの岩佐さん。広いほ場内の移動は、環境にやさしいセグウェイを使用。

東京でIT企業を経営していたCEOの岩佐大輝さんが、東日本大震災を機に出身地である亘理(わたり)郡山元町へ戻り、イチゴ栽培を行う同社をスタートさせました。総面積2ヘクタール超、7つのほ場を運営しています。

ほ場内は、地元農家が持っていた熟練のノウハウをベースにICT(※)化されています。生育状況は自動でデータ化され、リアルタイムに解析可能。一粒ごとにベストな収穫日を割り出すことができます。また、温湿度や二酸化炭素濃度なども、常に最適になるように制御されています。

このように栽培された同社のイチゴは、形と糖度に優れた高品質の「ミガキイチゴ」として、地域ブランドになっています。

ミガキイチゴは、「とちおとめ」や「もういっこ」などの品種をもとにしていて、ICT化により品種が違っても形や糖度が一定に保たれます。

平成25年度グッドデザイン賞も受賞し、東京の百貨店などでは、一粒1000円程度で販売されることもあるイチゴなのです。

イチゴ栽培以外にも、先端農業技術の研究開発にも取り組むほか、創業から10年間で1万人の雇用創出を目指すなど、新規就農支援の活動も積極的に行っています。

ICT:「Information and Communication Technology」の略。情報通信技術のこと。

会社情報
業種:農産物の生産、販売、輸出/従業員:約60人(パート・アルバイト含む)/勤務時間:8時半~17時半(シフト制、休憩1時間)/休日:シフトによる/その他:交通費支給、社保あり、社員寮完備

[写真2]
高度にICT化された環境で育てられ、季節を問わず高品質のイチゴを栽培できる。

[写真3]
ミガキイチゴのスパークリングワインも販売。

[コラム]
私が働いてます!

[写真4]
松本英之さん
ほ場管理責任者/39歳/平成27年7月入社/妻と2人暮らし

良質なイチゴを作るために日々、工夫をしています
大阪で勤務していた書店を退職し、次の仕事を探しているとき、東日本大震災が発生しました。ボランティアとして山元町で活動しているうちに土地柄が気に入り、移住を決意。その後、復興の一翼を担えると考えGRAに入社しました。現在は、2つのほ場の栽培管理と収穫・選果・出荷作業を担当。さらに栽培資材や出荷資材の管理を任されています。ICTを活用しつつ、もっと工夫をしてイチゴの環境をコントロールできたら、いいイチゴができるのではないかと思います。

[グラフ]
1日のスケジュール

取材・文/Office彩蔵
イラスト/ちこ*


豪雪地帯で冬も安定雇用を
【新潟県】有限会社グリーンファーム清里

[写真1]
田植えの季節に。若者からベテランまで和気あいあいと働く。

上越市は、米の収穫量全国7位(※)と、米どころ新潟県においてもとくに稲作が盛んな土地です。グリーンファーム清里は、そんな上越市の中でも山深い清里地区で、水稲の生産販売を大規模に行う会社です。

同社は、清里村農業公社を窓口として集積した農地を、実質的に経営する目的で設立されました。積極的に農地を引き受けて耕作放棄地の拡大を防ぎ、集約した農地で効率的な大規模農業を営んでいます。中山間地域の豪雪地帯で、一年を通じて安定した経営を実現していることも特徴的です。冬期間は水稲育苗ハウスでアスパラ菜などの栽培に取り組み、周辺住民に宅配販売しています。

収益性の高い経営により、女性を含めた若者の雇用を創出している同社。求める人材は、農業を通じて地域に貢献したいと考えている人。農業はもちろんのこと、地域の未来を担う人材の育成をしています。

農林水産省「作物統計」。

会社情報
業種:水稲と野菜の生産、販売/従業員:17人(臨時社員含む)/勤務時間:8時半~17時半(休憩90分)/休日:週休2日、祝日、盆、年末年始休暇あり/その他:住居・扶養・通信費手当などあり

[写真2]
無農薬でハウス栽培したタラの芽も販売している。

[コラム]
私が働いてます!

[写真3]
涌井諒子(りょうこ)さん
35歳/平成24年4月入社/新潟県清里地区出身
写真提供/上越タイムス

仲間と助け合いながら、稲作とハウス園芸に取り組んでいます
東京で12年間働いたあとUターンしてきました。地元企業に勤める傍ら実家の農作業を手伝ううちに、自然の中で四季を感じながら働ける農業にひかれ、就農を考えるようになりました。雪深いこの地域で農業となると、冬季の仕事が課題になります。この会社は春から秋は稲作、冬はハウスで園芸作物と通年で安定して仕事があり、社会保障も手厚かったので安心して就職できました。

会社の一員として、同僚とともに農業ができることはとても魅力的です。田んぼへの施肥を従業員4、5人で一気に行うなど、みんなで協力して作業できることが、効率化やモチベーションの維持にもつながっています。

[写真4]
冬はアスパラ菜などを育て、清里地区内の顧客に販売。配達時の「おいしかった」「ありがとう」という言葉が何よりの励みになるそう。

[グラフ]
1日のスケジュール

取材・文/千葉貴子
イラスト/ちこ*


若者の思いを実現する会社
【香川県】有限会社広野(ひろの)牧場

[写真1]
従業員は20代が中心で、牧場や飲食店など活躍の場は広い。

木田郡三木町で約300頭の乳牛を飼育し、生乳を年間約3000トン出荷、和牛繁殖事業も行うのが広野牧場です。酪農教育ファームの認証を取得し、宿泊用ログハウスも完備。国内外からインターンシップを受け入れるほか、田舎暮らしを体験するアミューズメントファームとしても注目されています。

平成25年には飲食事業に進出。牧場の牛乳を使うジェラート店「森のジェラテリアMUCCA(ムッカ)」を2店舗、チーズとピザの「森のピッツェリアVACCA(ヴォッカ)」も運営しています。

飲食事業を始めたのは、農業のイメージをもっとよくしたいという広野豊社長の思いから。また消費者と接することで、牧場の仕事がどこにつながっているかを従業員に見せられるという理由もあります。

店舗の商品は、従業員の皆さんが開発したもの。商品開発以外でも自主性を重視し、従業員のアイデアには基本的にノーと言わない方針をとっています。多くの従業員は20代で、農業系の学校卒は少なく、ほとんどが他分野からの就農。従業員の約7割が女性のため、結婚・出産・育児・介護などに対応できるように、さまざまなポジションが用意されています。

会社情報
業種:酪農、和牛繁殖、飲食事業/従業員:28人(パート・アルバイト含む)/勤務時間:5時~21時(シフト制、休憩約3時間)/休日:年間約80日/その他:賞与・昇給あり、社保完備

[写真2]
ジェラート店には年間約4万人が訪れる。

[コラム]
私が働いてます!

[写真3]
山田 萌さん
酪農部門、子牛担当/22歳/平成28年4月入社

子牛が大きく育ってくれたときがうれしいです
動物に関わる職業に就きたいと思い、専門学校で学んでいました。専攻は動物園コースです。広野牧場との出会いは在学中のインターンシップでした。ほかの場所でもインターンをしましたが、ここでの経験がいちばん自分に合っていたと思い、就農を決めました。今は約60頭の子牛を担当しています。主な仕事は哺乳とエサやり、牛舎の掃除などです。小さな変化も見逃さないように、子牛たちの状態をしっかりみて世話をすると健やかに育ってくれることに、やりがいを感じています。

[グラフ]
1日のスケジュール

取材・文/Office彩蔵
イラスト/ちこ*


農業+スポーツ="農スポ"
【沖縄県】沖縄SV(エス・ファウ)株式会社

[写真1]
練習を終え、午後には島バナナなどの作物を管理。

[写真2]
高原代表は現役選手として公式戦にも出場。

沖縄SVは平成27年、沖縄県に設立されたサッカークラブ。その経営者は、Jリーグやドイツ1部リーグなどで活躍し、ワールドカップにも出場した高原直泰(たかはらなおひろ)さんです。チーム監督と選手も兼任し、設立翌年には、初参加の県3部リーグで全勝優勝。すぐに1部へ昇格して順調に好成績を挙げ、今年は九州リーグに昇格しました。

同クラブはサッカーだけでなく、沖縄県の振興に役立つ、多角的な事業を実施しています。その一つが、農業とスポーツクラブの相乗効果で地域の活性化を目指す"農スポ"です。

県内の休耕地を、高原代表や選手、スタッフが開墾して、島バナナやローゼルなど、沖縄ならではの作物を自然栽培。地域の事業所とともに作業をしています。収穫後は、試合会場や大手ショッピングモールでの販売も行います。

"農スポ"は、後継者不足や若年層の農業離れ、耕作放棄地の増加といった、地域の農業問題を改善するだけには留まりません。所属選手の社会教育や、引退後のセカンドキャリア支援にもつながる、新しい取り組みとして注目されています。

会社情報
業種:サッカークラブ/従業員:32人(選手25人含む)/勤務時間:9時~18時(業務内容により異なる)/休日:基本的に週休2日/その他:寮・社宅あり

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沖縄SVサッカーJr.ユースの子どもたちも参加して、開墾などを行う。

[コラム]
私が働いてます!

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中村裕二さん
マーケティング担当/42歳/平成27年12月入社/妻と子どもの3人家族

農業をはじめ、さまざまな事業に関わるのも楽しみ
東京で広告会社に勤めていましたが、平成27年に家族とともに沖縄へ移住。仕事はマーケティング業務全般で、農作業を手伝うこともあります。地元の皆さんに喜んでもらえることが日々のモチベーションになっています。サッカー以外でも地域に貢献できることや、地元に雇用を生むという面にも、やりがいを感じます。数年後に竣工する新スタジアムに合わせてJリーグに昇格できるよう、クラブ全員で頑張っています。

[グラフ]
1日のスケジュール

取材・文/Office彩蔵
イラスト/ちこ*


農業を幅広く捉え若者の個性を活かす
【千葉県】株式会社アグリスリー

[写真1]
社員は20~30代が中心。活気にあふれる職場。

千葉県北東部、山武(さんぶ)郡横芝光(よこしばひかり)町に位置する株式会社アグリスリー。代表の實川(じつかわ)勝之さんは36歳で、前職であるパティシエの経験を活かし、加工や調理を見据えて農作物を栽培。自社で加工、加工品の販売も行っています。

若者が就農したいと思えるような清潔感ある職場環境づくりにも力を入れる同社。「生産部」「加工部」のほか、農産物や商品を販売PRする「営業部」を持ち、幅広い形で農業に携わることができる組織になっています。また、女性が輝ける職場を目指し「女性だからできること」をテーマにプロジェクトを展開しています。昨年は新たな取り組みとして、飲食店をオープン。自社の農作物はもちろん、地元の農産物を使ったメニューを提供し、地域の農業の魅力を発信する場となっています。

同社が求めるのは「アグリスリーだから活かせる個性を持っている人」。さまざまな個性を持つ人材が活躍できるよう事業を拡大しながら、農業が憧れの職業になるよう挑戦を続けています。

会社情報
業種:水稲、果樹、野菜の生産、加工、販売、直売所やカフェの運営/従業員:11人(パート含む)/勤務時間:7時45分~17時15分(休憩90分)※/休日:月5日、冬期休暇など/その他:独身寮完備
時期、業種により多少の変動あり。

[コラム]
私が働いてます!

[写真2]
本多日向(ひなた)さん
21歳/平成29年5月入社/入社後主に同社の飲食事業を担当

カフェで地域の食材を発信。農業と食でみんなを笑顔にしたい
製菓会社に勤めていましたが、生産に近い現場で働きたくて会社を探していました。若い人が多く、生産から加工まで 一 貫して取り組むアグリスリーなら、自分の経験を活かして働けるのではと転職しました。現在の仕事は、平成29年9月にオープンした地産地消をテーマとするカフェの運営です。

お客様から「横芝光町にこんなにおいしい食材があったんだ」という声をいただくことが多く、とてもやりがいを感じています。課題は広報と集客ですね。新メニューを開発してSNSで発信することも始めています。農業と食を通じてたくさんの方を笑顔にするために、まずはこのカフェを盛り上げていきたいと思っています。

[写真3]
現在はカフェの仕事が大半を占めるが、生産の現場を手伝うことも。

[写真4]
仕込みやメニュー開発まで、幅広く活躍中。いちおしメニューは特製ホットドッグ。

[グラフ]
1日のスケジュール

取材・文/千葉貴子
イラスト/ちこ*


自分に合った農業の働き方を見つける
まずは日帰り体験ツアーや農泊で土に触れるところから始め、段階を踏んでプロを目指すことができます。

ステップ1 農泊を楽しみながら農業を体験
農業に興味や憧れがあり、将来の仕事にしてみたいと思っても、家業を継ぐわけでもない、まったくの未経験者の場合、分からないことばかりのはず。

農業を職業にする前に本当に自分に向いているか確かめたい。試しに農作業を経験してみたい。プロの農家にいろいろ話を聞いてみたい。このようなニーズに応えるのが「農業体験ツアー」です。JA全農や自治体、民間企業がさまざまなツアーを企画しています。

農林水産省が推進する「農山漁村滞在型旅行」、通称「農泊」を利用して農業を体験することもできます。

農泊とは、都市に住む人が農山漁村を訪れて伝統的な生活を体験し、地域の人々と交流しながら土地の魅力を味わうものです。株式会社やNPO法人がそれぞれ工夫を凝らした農泊を主催していますが、中には田植えや稲刈り、野菜の収穫などの農業体験が組み込まれたものがあります。

[写真1]
親子で参加できる日帰りツアー、収穫体験、採れたての作物をいただくランチタイムなど、バラエティに富んだ内容のツアーや農泊が登場している。
写真提供/(公社)ツーリズムおおいた

ステップ2 仕事としての農業を体験
農業ツアーや農泊に参加して農業への興味が増し、より本格的に取り組んでみたくなったら、インターンシップという制度を利用して仕事としての農業を体験することができます。インターンシップとは一定期間、実務を体験する仕組みです。例えば、一般社団法人全国農業会議所は、平成11年度から農林水産省の補助を受け、全国約300社の農業法人で「農業インターンシップ」を実施しています。体験内容は、農作物の栽培、農産物の加工・販売、家畜の飼養などさまざま。この制度は農業法人の採用内定者の事前就業体験として利用することもできます。

このほか、インターンシップを取り入れている農業法人もありますし、募集をかけている自治体も少なくありません。

体験した農業法人にそのまま就職したり、インターンシップを通じて、仕事としての農業のイメージを膨らませ、就農活動に活かすことができます。

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実際に農業法人で働くことで、農業を肌で感じることが可能。農家の人たちとの出会いなど、得ることは少なくないはず。

ステップ3 就職先の 一 つとして農業を選択
農業を仕事にしようと決意し、農業法人への就職を考えている人に向けて、一般企業と同じような相談窓口や説明会、求人情報提供など、さまざまなサービスが用意されています。

全国農業会議所は、各都道府県に「全国新規就農相談センター」を設置。農業法人の求人情報を公開するとともに、各都道府県で開催される就農相談会などの情報発信を行っています。就農や移住希望者の支援に力を入れる自治体も多くあり、総務省は、こうした情報の提供・相談の窓口として、「全国移住ナビ」というWebサイトを提供しています。

民間企業も就農支援事業に参入しています。株式会社リクルートジョブズは農林水産省の補助を受け、全国の主要都市で「新・農業人フェア」という大規模な就農相談会を開催しています。また、アグリコネクト株式会社が主催する「Agric(アグリク)」は、農業法人や農薬メーカー、農産物販売会社など約50社が出展する就農イベント。今年は4月14日に東京流通センター(東京都大田区)で開催が予定されています。

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全国新規就農相談センター
全国新規就農相談センターのWebサイトは農業インターンシップや自治体の就農支援、求人などの情報を網羅している。
https://www.nca.or.jp/Be-farmer/[外部リンク]

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従業員募集、就農支援・相談、研修生募集、生徒募集と4種類のブースが用意される「新・農業人フェア」。

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「Agric」では、農業法人など農業関連の出展企業が自社の魅力をPR。

[コラム]
未来の経営者を育てる農業大学校の模擬会社
42の道府県が設置し、実践的な教育を行っている農業大学校のうち、昨年度は千葉、今年度は埼玉と宮崎で「模擬会社」の制度の導入が相次いでいます。農業法人の経営者や社員として必要な力を身につけてもらおうという試みであり、さきがけは徳島の農業大学校です。

同校で指導に当たる助教の白田英樹さんは「平成22年に、学生の経営力の向上を図るとともに6次産業化を担う人材の育成を目的として模擬会社『徳島農大そら そうじゃ』を設立しました。社名は『同意と共感』を表す経営理念を表します」と説明します。

全学生が社員で、社長や部長も学生です。学生が所属する3つのコース、生産技術・地域資源活用・アグリビジネスそれぞれが事業部となり、農畜産物を生産。ジャムやハチミツなどの加工食品を企画開発し、これを模擬会社が校内の直売所「きのべ市」や徳島市の市場などで販売しています。平成25年には大手量販店への出荷も始まりました。

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学生が営業や経理などの役割を分担。自分たちがつくった農産物などの値段を決め、販売するといった法人運営を経験する。

取材・文/下境敏弘

輝く! 未来を担う生産者 vol.11

農業女子プロジェクト「チーム"はぐくみ"」パートナー校・東京農業大学
農業×女子=無限大! 未来の農業女子を目指す

職業として農業を選択する、未来の農業女子育成に取り組む「チーム"はぐくみ"」。パートナー校・東京農業大学では積極的に活動を行い、着実に若い芽が育っています。

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厚木キャンパスにて。左から高原さん、平野准教授、越地さん、萩さん。

農業女子育成のためのプロジェクトを実施
農学系の学問を専攻している女子学生"ノケジョ"(農学系女子の略)が年々増えています。その学生たちと、現在活躍している農業女子を結びつけ、職業として農業を選択する未来の農業女子育成を目指そうと、農林水産省の農業女子プロジェクトでは「チーム"はぐくみ"」を平成28年から開始。

そのパートナー校である東京農業大学では、世田谷・厚木・北海道オホーツクの3キャンパスで活動が行われており、厚木では農学部 農学科 作物学研究室の平野繁准教授のもと、積極的にプロジェクトに取り組んでいます。

「学生たちのうち、農家の後継者は2割もいません。残りの8割以上の学生をどうやって就農へ導くか。本学ではさまざまな取り組みを行っています。昨年の夏休み期間にチーム"はぐくみ"の一環で3キャンパス合同で行ったインターンシップには15名の女子学生が参加し、非常に好評でした」

その内容は、神奈川県、山梨県の農業女子メンバーの農場を見学し、茨城県と北海道の農場で農業実習するというもの。参加した学生たちは、さまざまな農業の現場に触れることで、卒業後の就農をより強く意識したといいます。

女性の感性を受け入れる農業の懐の広さに気づく
3年生の越地彩海(こしじあやみ)さんは、合計9日間のすべてのインターンシップに参加しました。

「うちは農家ではないので、大学で野菜の知識を学んではいても、実際の現場を体験したり、農家さんに話を伺ったことがありません。その未経験の部分を補おうと1、2年時にも農業体験やファームステイに取り組みましたが、男性目線のものがほとんど。今回は女性農家さんの話を伺えて、とても参考になりました」

また、茨城県阿見町(あみまち)のインターンシップでは、農機を使った実習が勉強になったといいます。

「北海道では、畑の規模の大きさや、搾乳ロボットを導入している牧場に驚きました。個人で希望してもあれほどのところは見られません。今回のインターンシップはとても貴重な体験でした」

さまざまな現場を見ることで、女性の感性を受け入れる器が農業にはある、と実感した越地さん。卒業後は、農業法人での就農を目指しています。

1年生の高原草(たかはらかや)さんは日本の農業について多角的に学ぶ「農業ビジネスデザイン(一)」を受講。その一環で、農業女子メンバーである篠崎祭(しのざきまつる)さんのカントリーファーム(埼玉県深谷市)で農家実習を体験。現地の普及指導員の話を聞くこともでき、「卒業後は農業女子に」の思いを強くしたといいます。

できないことはない!女子力を農業で発揮する
最後に紹介する4年生の萩由加里(はぎゆかり)さんは、稲作農家の後継者。兄とともに稲作をやろうと東京農業大学に進学。その夢をこの春から実現させる、まさに未来の農業女子メンバー候補です。

「大型農機を扱う稲作は、女性には大変で向かないといわれますが、祖母はコンバインもトラクターも使いこなしていました。母は女性ならではの細やかな視点で稲を育てていた。女性にできないことなんてない! 稲作農家のトップを目指します」

ノケジョから農業女子へ。若い芽はすくすくと育っています。

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農業女子のインターンシップに参加した越地さん。

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マルイシファーム(神奈川県三浦市)を見学。

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蕎麦播種機についての説明を受ける。

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トラクターの運転を体験。

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新規就農者の畑でブロッコリーの定植を体験
(写真4~6はいずれも茨城県阿見町)。

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株式会社mosir(モシリ/北海道別海町)の牛舎を見学。

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カントリーファームで農家実習をした高原さん。

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土寄せ機の扱いの難しさを実感。

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ブロッコリーの苗に水やり。

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今春、卒業後に実家で就農する萩さん。

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約30ヘクタールの水田を兄と2人で管理していく。

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大型農機も使いこなせるように、実家での実習で経験を積んだ。

Profile
東京農業大学
世田谷・厚木・北海道オホーツクの3キャンパスを有し、農学部は厚木キャンパスにある。「人物を畑に還す」という建学理念のもと、生命、食料、環境など、さまざまな分野から「農学」を探究。3キャンパスで農業女子プロジェクト「未来の農業女子育成 チーム"はぐくみ"」に大学初として参加している。
http://www.nodai.ac.jp/[外部リンク]

取材・文/岸田直子
撮影/泉山美代子

MAFF TOPICS

MAFFとは農林水産省の英語表記「Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries」の略称です。「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。

NEWS1 農業経営でのデータ分析が手軽に
ワンストップで情報の入手が可能に
近年、さまざまな農業ICT(情報通信技術)サービスが生まれていますが、今まではデータやサービスが官公庁、研究機関、民間企業などに散在し、個々で完結していて、相互連携がとれていませんでした。そのため、数多くのデータを農業に活用することが困難な状況にありました。

そこで昨年、誰もがデータを駆使して生産性の向上、経営の改善に挑戦できる環境を整えるため、農業に関するさまざまなデータをまとめるシステム「農業データ連携基盤(データプラットフォーム)」を立ち上げて、試行運用を開始しました。

これによって、バラバラだった多くのデータが統合・分析できるようになり、農作物の収量や品質の向上、戦略的な経営判断が可能になります。さらに、データを活用した新たなサービスの提供も実現できます。

農業データ連携基盤は、来年4月をめどに、サービスの本格提供が始まる予定です。

この新しいシステムの稼働によって、データの力で農業を一層元気にしていくことが期待されています。

[図]
農業データ連携基盤のイメージ
画像提供/農研機構、国土地理院

NEWS2 木のある暮らしをもっと身近に
木の良さや価値を再発見できる取り組み
第3回を迎えた「ウッドデザイン賞」は、木のある暮らしをより浸透させ、木材利用を促進することを目的に始まりました。木材で暮らしと社会を豊かにする「モノ」「コト」を表彰する制度です。

今年度は、453点の応募があり、250点の作品が「ウッドデザイン賞」を受賞しました。この中から、最優秀賞(農林水産大臣賞)、優秀賞(林野庁長官賞)、奨励賞(審査委員長賞)に25点が選出されました。表彰部門は、ライフスタイルデザイン(木を使って暮らしの質を高めているもの)、ハートフルデザイン(木を使って人の心を豊かにし、身体を健やかにしているもの)、ソーシャルデザイン(木を使って地域や社会を活性化しているもの)の3つです。

最優秀賞を受賞した「ノーザンステーションゲート秋田プロジェクト」は、産官学が地域と連携して進める秋田駅周辺施設のリニューアルプロジェクト。秋田杉など県産の木材を活用し、木に囲まれて、木に癒やされる空間づくりが高く評価されました。

このほか、木造の床遮音技術の開発など、今後の木材利用の拡大につながる技術・研究も多く見られました。

最優秀賞(農林水産大臣賞)
ソーシャルデザイン部門 建築・空間分野
ノーザンステーションゲート秋田プロジェクト(秋田県)
東日本旅客鉄道(株)、秋田公立美術大学、(有)萩原製作所、(株)ジェイアール東日本建築設計事務所、第一建設工業(株)、鉄建建設(株)
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駅と自由通路を一体的に木質化。

優秀賞(林野庁長官賞)
ライフスタイルデザイン部門 木製品分野
CJシリーズ(奈良県)
studioJig
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特殊な成形技術を使い、家具用材としては不向きとされてきた針葉樹(吉野杉)を利活用した家具シリーズ。

ハートフルデザイン部門 建築・空間分野
木の室内創造あそび場「感性の森」(宮城県)
錦エステート(株)ほか
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商業施設内にある子どもの感性を引き出す木の室内遊び場。

ソーシャルデザイン部門 建築・空間分野
Gビル自由が丘01 B館(東京都)
日本リテールファンド投資法人ほか
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「家」というコンセプトで人々を優しく受け入れ、訪れたくなる居心地の良さをもった商業建築。

詳細はこちらへ!
ウッドデザイン賞運営事務局
https://www.wooddesign.jp/[外部リンク]

NEWS3 東北の復興・創生は着実に前進
東日本大震災から7年 本格復興に向けて
東日本大震災の発生から7年が経ち、地震・津波被災地域では、生活に密着したインフラの復旧がほぼ終了し、産業・生業の再生も着実に進展しています。

また、福島県の原子力被災地域では、避難指示解除準備区域、居住制限区域が解除されたことで、帰還困難区域を除いて、ほぼすべての避難指示が解かれ、避難者の方々がふるさとへ帰還できる区域が増えました。

こうした中、被災地では、将来につながるさまざまな活動が行われています。復興の総仕上げという重要な場面を迎えている岩手、宮城両県、そして本格的な復興に向けた福島県の取り組みを紹介します。

[図]
東北3県の地図

1.「たかたのゆめ」ブランド化研究会[岩手県陸前高田市]

被災後
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陸前高田市では水稲作付面積の7割が被災し、生産者は大きな被害を受けた。

現在
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生産者、市、JA、民間企業等が研究会を立ち上げ、農業の復興のシンボルとして、「たかたのゆめ」を地域ブランド米とすることを目指して、田植え・稲刈り等のPRイベントに取り組んでいる。「たかたのゆめ」の作付面積は平成24年の1農家、0.2ヘクタールから平成29年には46農家、56ヘクタールまで拡大している。

2.ナイス株式会社[宮城県仙台市]

被災後
[写真3]
建築資材の物流業務を行うナイス株式会社の仙台物流センターでは、6メートルを超える大津波で壊滅的な被害を受けた。

現在
[写真4]
被災者の住宅再建等の建築用資材の物流拠点として、仮設事務所で業務を行ってきたが、ようやく平成29年に再建。復興のシンボルとなるように、構造材には宮城県産材のCLT(直交集成板)を使用し、内装材には東北産の針葉樹・広葉樹を使用している。

3.畜産農家 山田猛史(たけし)氏[福島県・飯舘村]

被災後
[写真5]
飯舘村で繁殖用として雌牛約30頭を飼養していた山田さんは、全村避難指示を受けて村から避難した。

現在
[写真6]
山田さんは、平成23年7月に避難先の中島村で経営を再開。現在は福島市に拠点を移し、雌牛約40頭を飼養。30年度からの飯舘村での経営再開に向けて、雌牛6頭を村内の除染された水田に放牧し、飼養実証に取り組んでいる。

4.福島県漁業協同組合連合会[福島県いわき市]

被災後
[写真7]
震災により、福島県漁協連合会は傘下の漁協で魚市場や冷蔵庫などが壊滅的な被害を受けた。

現在
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連合会は大規模な冷凍冷蔵工場を整備。新鮮な魚をその日のうちに加工・凍結することで、沖合で操業する漁船の受け皿となる。また、「さんまのポーポー焼き」などの新商品の開発、福島の魚のPR活動等を行うことで、販路の回復を図っている。
写真提供/小名浜さんま郷土料理再生プロジェクト

[コラム]
ふくしまプライド便
福島県はAmazon、楽天、Yahoo!のオンラインストアと連携し、年間5回の販売促進キャンペーンを行っています。

各ストア内に特設サイトを設置し、県内生産者等の新たな流通ルートを確保するとともに、全国の消費者が福島県産品の魅力に直接触れる機会をつくっています。

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「ふくしまプライド便」特設サイト

福島が誇る食材はこちら
ふくしまプライド便
http://fukushima-pridebin.com/[外部リンク]

取材・文/細川潤子

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