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農林水産省

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18年9月号 文字情報

aff(あふ)agriculture forestry fisheries:September 2018

平成30年9月3日発行(毎月1日発行)


[表紙]
今月の「手」

シェフパティシエ 岩村 周平さん
スイーツショップ「たまごCOCCO」の厨房にて。
撮影/キッチンミノル


CONTENTS

  • 連載 私のおもいで弁当[岡山県]vol.5 … 2ページ
  • 特集1 たまごのチカラ … 4ページ
  • 特集2 こだわり☆たまご飯 … 14ページ
  • 全国の日本一を訪ねて vol.5 … 18ページ
  • MAFF TOPICS … 20ページ
    News
    飼料用米で畜産物をブランド化
    子どもたちが霞が関を体験
    世界中の旅情報が一堂に
    おいしいお肉が集合
    なくそう食品のムダ
  • 読者の声 … 23ページ

今月のクイズ

卵殻の主成分は何でしょう。(答えは23ページ)



広報誌『aff(あふ)』について
農林水産業や農山漁村は、食料の安定供給はもちろんのこと、国土や自然環境の保全、良好な景観の形成などの多面的機能の発揮を通じ、国民の皆さまの毎日の生活において重要な役割を担っております。また、農林水産行政は、生産などの現場に密着したものであると同時に、毎日の生活に深く関わっています。農林水産省では 「aff」を通じ、農林水産業における先駆的な取り組みや農山漁村の魅力、食卓や消費の現状などを紹介しております。

Webサイトのご案内
「aff」は農林水産省のWebサイトでもご覧になれます。
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/

本誌に掲載した論文などで、意見にあたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。


私のおもいで弁当

子どもたちに伝えたい郷土料理や懐かしいふるさとの食材を使ったお弁当を、著名人が、お弁当へのあふれる想いと共に紹介します。全国のふるさとの美味を、あなたもお弁当に入れてみませんか?


【vol.5】岡山県 サワラ

産卵のために春になると瀬戸内海にやってくる「春告げ魚」だが、秋から冬にかけてとれるサワラは脂がのっておいしいといわれる。岡山県は一大消費地でもあり、他県では焼くことの多いサワラを刺身でよく食べる。

[写真1]
サワラ

[写真2]
有森裕子
Yuko Arimori

1992年のバルセロナオリンピック女子マラソンで銀メダル、アトランタオリンピックでは銅メダルと2大会連続でメダルを獲得。現在は国際オリンピック委員会で委員を務めるほか、NPO法人の理事を務めるなど幅広く活躍。

[写真3]
有森裕子さんの鉄分弁当


母が作ったお弁当で足りない栄養をサポート

私は岡山県出身です。陸上競技を始めたのも岡山での高校時代からで、高校を卒業するまで地元で過ごしました。

陸上の強豪校だったので、練習はとてもハード。もともと貧血だったこともありますが、陸上部に入ってからはウエイトコントロールのために食事制限をしたり、大量に汗をかいて鉄分が失われたりすることもあって、貧血にはかなり悩まされました。

そこで母が鉄分をたっぷり摂れるように食材を選んだお弁当を作ってくれました。おかずには、鶏のレバーやひじきを煮たものが多かったかな。

ほかにもよく覚えているのは、岡山の特産物でもあるサワラをマリネにしてお弁当に入れてあったことです。私は酸っぱいものが好きなので、良質のタンパク質と鉄分を一緒に摂れるサワラとの組み合わせを考えて作ってくれたのだと思います。たまねぎと一緒に甘酢であえてあって、とてもおいしかったです。


バランスの良い食事が健康な体を作る

母は私が物心つくころから、必ず食事のときには「これは今が旬だからおいしいよ」とか「こんな栄養が摂れるんだよ」と食材の情報を話してくれました。また子どものころは偏食で、食べられないものが多かったのですが、食材を分かりにくくして食べさせてくれるなど工夫していたのを覚えています。おかげで、成長と共に好き嫌いも減って何でも食べられるようになりました。オリンピックでメダルを獲れるまでの体のもとを作ってくれたのも、今こうして健康でいられるのも、母が食事に気を配ってくれたおかげです。

ずっとスポーツを生業にして体と向き合ってきて感じるのは、食事は良質のタンパク質と、カルシウムや鉄分、ビタミン類、炭水化物などをバランス良く摂り、健康を維持することが大切だということです。

岡山県は「晴れの国」という別名があるほど日照に恵まれた実り豊かな場所です。岡山県の特産物だけで料理を作っても非常にバランスの良いものができるのではと思うほど。これからも豊かな土地であり続けてほしいと心から願っています。


[レシピ]サワラとたまねぎのマリネ

【材料(4人分)】

サワラ…3切れ
たまねぎ…2分の1個
パプリカ(赤・黄)…各1個
しょうゆ…大さじ1
塩…少々
小麦粉…大さじ2
サラダ油…適量

マリネ液
 酢…100cc
 きび砂糖…大さじ2
 塩…小さじ2分の1
 輪切りとうがらし…少々
 オリーブオイル…大さじ1

【作り方】

  1. サワラは一口大に切り、しょうゆ、塩で下味をつけ、小麦粉をまぶす
  2. たまねぎ、パプリカは5mm幅の薄切りにしておく
  3. フライパンにサラダ油を入れて熱し、1をからっと揚げる
  4. マリネ液に2と3を入れてよく混ぜこみ味をなじませる。器に盛りつけて完成

監修/飯倉孝枝  取材・文/柳澤美帆  撮影/三村健二


特集1 たまごのチカラ 可能性ふくらむ玉手箱

子どもからお年寄りまで、みんなに愛されるたまご。和食から洋食、中華、スイーツまで、あらゆる料理で活躍するたまごのチカラを解き明かします。

[写真1]
卵加工品一覧
(1)メレンゲクッキー、(2)マシュマロ、(3)マドレーヌ、(4)マカロン、(5)ブリオッシュ、(6)クロワッサン、(7)ミルクセーキ、(8)カルボナーラ、(9)サウザンアイランドドレッシング、(10)マヨネーズ、(11)ホットケーキ、(12)スコッチエッグ、(13)プリン、(14)レモンカード、(15)タルタルソース、(16)伊達巻き、(17)卵豆腐、(18)ちらし寿司、(19)かに玉、(20)キッシュ(2種)、(21)卵スープ、(22)シュークリーム、(23)エッグタルト

栄養豊富で加工品も多種多彩
たまごのチカラは偉大です!

日本人の卵の消費量は一年で331個。ほぼ一日に1個の割合で卵を食べている計算になります。家庭での一人当たりの購入量が増えていることからも、食卓に欠かせない食材であることがうかがえます。

実は鶏は、弥生時代に朝鮮より伝来し、当初は観賞用でした。仏教の影響下で、天武天皇による殺生禁断の詔(675年)により、牛、馬、豚などと同様、卵食も避けられていました。

しかし桃山時代に入ると、ポルトガルとの交易により、卵を用いた南蛮渡来のお菓子や料理が紹介され、かの豊臣秀吉も天ぷら、玉子素麺、カステラなどをたしなんだことが、宣教師ルイス・フロイスの著した『日本史』に紹介されています。

江戸時代になると『万宝料理秘密箱 卵百珍』なる料理指南書が人気を博し、明治には商業的採卵養鶏場が登場。オムレツなどの洋食も紹介され、アレンジ上手の日本人がオムライスを作ると大人気となりました。

とはいえ、卵が一般家庭に普及するのは、第二次世界大戦以降のこと。鶏卵の生産数が増加し、低価格での安定供給が実現。1960年代に入ると年間200個以上を消費するまでになります。

現在では、卵の特性を活用した多彩な料理やお菓子が作られるようになりました。また、良質なタンパク質や脂質、ビタミンやミネラルなどを含み、栄養満点。今月号では、そんないいことづくしの卵についてご紹介します。

[グラフ1]
1人当たりの卵の年間購入量
2013年:9,812グラム、2014年:9,899グラム、2015年:9,892グラム、2016年:10,408グラム、2017年:10,491グラム
出典:総務省「家計調査」(二人以上の世帯)より作成

[グラフ2]
世界の1人当たりの卵の消費量(上位5カ国)
1位:メキシコ(371個)、2位:日本(331個)、3位:ロシア(295個)、4位:中国(282個)、5位:アルゼンチン(273個)
出典:国際鶏卵委員会の国別資料をもとに鶏鳴新聞社が作成した数値(2017年公表)

フードコーディネート/石黒裕紀  撮影/三村健二


栄養

タンパク質、脂質、ビタミンにミネラルと、栄養価が豊富なたまご。ここでは1日に必要な栄養素のうち、卵1個で摂取可能な量と割合を紹介。

卵は「完全栄養食品」
コレステロールも心配無用

私たちが生きていくために必要な栄養素は五大栄養素と呼ばれ、タンパク質、脂質、炭水化物(糖質・食物繊維)、ビタミン、ミネラルに分類されています。卵はビタミンCと食物繊維以外のほとんどの栄養素を摂取することができることから、「完全栄養食品」と呼ばれています。

一方で、卵の食べ過ぎは体内にコレステロールが溜まり、疾病リスクが高まるといわれていましたが、厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2015年版)」でこのリスクは裏付けがないとし、摂取制限を撤廃しています。

さらに、タンパク質を構成するアミノ酸の中でも、体内で生成できない9種類の必須アミノ酸を中心に、栄養素が過不足なく、かつバランス良く含まれています。これにより、アミノ酸スコアは100点満点となっています。

たくさんの食材と一緒に食べることにより、複数の栄養素をバランス良く摂取する助けになるのも、卵の素晴らしい機能のひとつ。和洋を問わず、朝食に欠かせないのもうなずけます。

[図]
5大栄養素の図。
ミネラル:骨や歯を作り、身体の機能を調節・維持する
ビタミン:身体の機能を調節・維持する
炭水化物:エネルギーになる
脂質:体の熱やエネルギーになる
タンパク質:筋肉など体を作る


構造

一見簡単な構造のように思われるたまご。しかし実際は、生命の源としてのさまざまな機能を担う器官で構成されています。

卵殻

気孔と呼ばれる小さな穴が無数にあり、胚の呼吸に必要な酸素を取り入れます。においの強い食品を近くに置かないようにしましょう。


卵白

粘度の低い「水様卵白」(内外2種)と、粘度の高い「濃厚卵白」からなります。カラザは卵黄の位置を一定に保つ役割があります。


卵黄

約50%の水分と脂質・タンパク質で構成。「ラテブラ」、「胚」を有し、新鮮な卵ほど卵黄膜に張りがあり、卵黄自体が盛り上がります。


気室

殻の丸い方にできる空気の層。卵黄が殻に直接触れるのを避けることで鮮度を保てるため、卵は尖った方を下にして保管しましょう。


[イラスト1]
卵の構造図


色や形の疑問

知っているようで意外と知らない、たまごについての疑問にお答えします。
[イラスト2]
卵のイラスト

なぜ形がまん丸じゃない?

卵を産むときに体内を通りやすいよう、卵の形が球形から細くなったといわれています。また、何かのはずみで卵が巣から転がっても、遠くまで転がらないようにこの形になったという説もあります。


卵の殻の色は栄養と関係がある?

実は関係ありません。白いたまごを産む鶏の数が多く、褐色の卵の生産量が少ないために割高になること、ブランド卵に褐色が多いことなどが要因でしょう。しかし、殻の色そのものは栄養価にも味にも影響していません。


黄身の色は栄養や味と関係がある?

日本では濃い黄身色が人気ですが、色と味・栄養は直接には関係ありません。黄身の色の多くはカロテノイドという色素で、とうもろこしなど鶏のエサによるもの。JA全農たまごの場合、商品ごとに黄身色を定めた上で、通常の飼料配合に加え、卵黄の色素成分を多く含むパプリカやマリーゴールドなどの粉末飼料を用いて、濃厚な黄身を目にも感じられるようにしています。

また、最近では、鶏のエサに飼料用米を使う取り組みも進んでいます。飼料用米は黄色の色素が極めて少なく、エサに多く配合すると黄身の色が薄くなります。キユーピーでは、白い卵料理や洋菓子などをカラフルに加工したいといった要望を受けて、黄身色の薄い卵も開発しています。

[写真1]
「とくたま」:JA全農たまごが、生のおいしさと色味にこだわって開発した卵

[写真2]
「ふつうのたまご」:JA全農たまごが、毎日食べることにこだわって開発した卵

[写真3]
「ピュアホワイト(R)」:キユーピーが飼料メーカーと開発した卵。加熱すると真っ白になる

[写真4、写真5、写真6]
(左から)黄身色に影響を与えるパプリカ、とうもろこし、黄身色が薄くなる飼料用米

資料協力:JA全農たまご、キユーピー


採卵鶏の一生

私たちが食べるたまごを採取するための鶏たち、採卵鶏は、どのようなサイクルで育てられ、たまごを産んでいるのでしょうか。

まずは採取された有精卵をふ卵舎へ。ここで割れた卵などを取り除き、汚れを落とした後、消毒。そして卵を温めるふ卵器に入れます。入卵から約10日後に卵の発育状況を調べ、状態の悪いものを選別した後、新たなふ卵器へ。

入卵から23日目になると、ひよこがふ化します。雄と雌を分別し、雌にはワクチンを接種した後、鶏舎(幼すう舎)に移します。ここでえ付けして育てた後、6週齢を迎えたひよこを別の鶏舎(大すう舎)に移動します。14週齢になると、ニューカッスル病(呼吸器系の病気)などの混合ワクチンを接種します。そして採卵用の鶏舎に移動。23週齢になると、徐々に卵を産みはじめます。

そうして採集された卵はGPセンターへ送られ、鶏は元気に卵を産むために餌を食べ、明日に備えます。また、ひよこを生産するための鶏からは有精卵を採取して、次なるひよこをふ化させるサイクルに入ります。


[写真1]
白色レグホン
イタリア原産で、英米両国で改良された世界で最も普及している採卵鶏。白色鶏卵のほとんどは、この品種に属する系統を使っての交配による。年間産卵数は約280個。病気にも強く、非常に優れた品種。

[写真2]
卵の写真

[写真3]
ふ化(写真提供/家畜改良センター)

[写真4]
ワクチン接種(写真提供/家畜改良センター)

[写真5]
幼すう舎へ(写真提供/家畜改良センター)

[写真6]
え付け(写真提供/家畜改良センター)

[写真7]
大すう舎へ(写真提供/家畜改良センター)

[写真8]
産卵用鶏舎に移動、産卵・採卵

[イラスト]
流通

[写真9、写真10]
育種用の鶏から卵を採取(写真提供/家畜改良センター)


病気予防のための衛生管理は厳重に

安心安全な卵を食卓に届けるために、養鶏場では徹底した管理の下、清掃、消毒、ワクチン接種などにより、サルモネラ菌や鳥インフルエンザなどに感染するリスクを軽減できるよう努力しています。


鶏が年間に卵を産む数は、約300個

鶏が年間に産んでくれる卵の数は、約300個です。数日間連続して卵を産み、1日から2日休んだ後、また産みます。こうして1年半から2年程で生涯を終え、その後ハムなどの加工品となります。

さまざまな採卵鶏の種類

私たちが普段口にしている卵は、96%が国産です。しかしその卵を産んでいる鶏は約95%が外国原産の鶏であることをご存じでしょうか。上記のように多くは白色レグホンですが、ほかにも数多くの品種が存在。その一部をご紹介しましょう。

ロードアイランドレッド

アメリカのロードアイランド州などが原産。日本には1904年にはじめて輸入。濃い褐色卵を年間280個程度採卵できる卵肉兼用種で、主に雄が赤玉卵用鶏の種鳥として用いられている。

[写真11]
ロードアイランドレッドの写真(写真提供/家畜改良センター)

[写真12]
ロードアイランドレッドの卵の写真


名古屋種

旧尾張藩士が同地の在来種とバフコーチンを交雑し「名古屋コーチン」を作出。1905年に国産実用種第1号となり、改良を重ね1919年より「名古屋種」に。現在は「名古屋コーチン」のブランドで流通。

[写真13]
名古屋種の写真(写真提供/家畜改良センター)

[写真14]
名古屋種の卵の写真


横はんプリマスロック

アメリカ東部マサチューセッツ州プリマス原産で、1874年に作出。日本には1886年にはじめて輸入。横はん模様が特徴。年間250個程度採卵でき、肉質も良いので地鶏や銘柄鶏の作出にも用いられる。

[写真15]
横はんプリマスロックの写真(写真提供/家畜改良センター)

[写真16]
横はんプリマスロックの卵の写真


烏骨鶏(うこっけい)

中国、東南アジア方面を原産地とし、17世紀に日本にも渡来したとされる。羽毛は、白色と黒色があるが、皮膚、肉、骨に至るまで黒色。産卵数は年間180個程度。

[写真17]
烏骨鶏(うこっけい)の写真(写真提供/家畜改良センター)

[写真18]
烏骨鶏(うこっけい)の卵の写真


アロウカナ

チリの先住民アロウカナ族が飼っていたとされる品種で、薄い水色の卵が特徴。産卵数は年間90個程度と少ない。これを克服するため白色レグホンと交配させた純国産鶏、岡崎アロウカナが作出されている。

[写真19]
アロウカナの写真(写真提供/家畜改良センター)

[写真20]
アロウカナの卵の写真


改良を重ねてきた国産採卵鶏

外国産の鶏を親にするひよこを養鶏に用いていると、ひな会社は親鶏を常に購入し続ける必要があります。そのため、国産の採卵鶏を普及させることは大きな課題です。日本の気候風土に適した採卵鶏の育種改良が、日々行われています。

岡崎おうはん

家畜改良センターが横はんプリマスロックの雄とロードアイランドレッドの雌を交配。高い産卵能力があり、きれいな赤玉で、卵黄が大きく卵かけごはんに最適。卵肉兼用種で、肉もジューシーで美味。

[写真21]
岡崎おうはんの写真(写真提供/家畜改良センター)

[写真22]
岡崎おうはんの卵の写真


純国産鶏さくら

名前の通り桜色の卵を産む純国産鶏交配種。病気に強く、寒暖などの環境適応能力が高い上、年間産卵数が310個を超える。卵黄が大きく、起泡性に優れておりケーキの原料としても人気。

[写真23]
純国産鶏さくらの写真

[写真24]
純国産鶏さくらの卵の写真


純国産鶏もみじ

さくらと共に、後藤孵卵(ふらん)場が種(遺伝子)を保有し育種した純国産鶏交配種。さくらと同様病気に強く、美しい褐色の卵を産む。年間産卵数300個以上と、高い採卵能力を誇る。

[写真25]
純国産鶏もみじの写真

[写真26]
純国産鶏もみじの卵の写真


食卓に届くまで

養鶏場で産まれたたまごは「GPセンター」で検査やパッキングされた後、店頭や食品メーカーなどへ出荷されます。このページでは、GPセンターの一例を見てみましょう。

[イラスト1]
GPセンター
GPセンターとは「Grading&Packingセンター」の略。つまり卵の「格付(選別)」と「包装」を行う施設です。卵の鮮度は温度による影響が大きいため、GPセンターでは徹底した温度管理を行っています。

(1)作業前の衛生管理

作業員が「清浄区域」に入る際には、専用の作業衣を着用し、粘着ローラーで髪の毛などを除去した後、入念に手洗い・消毒を行います。

[写真1]
作業前の衛生管理の写真


(2)洗卵

農場から運ばれた原料卵は、まず洗卵機で洗浄されます。殺菌効果を持つ「次亜塩素酸ナトリウム」を含んだ温水を流しながら、卵の表面についている汚れをブラシで洗い落とした後、送風で一気に乾燥させます。

[写真2]
洗卵の写真


(3)汚卵検査

洗卵・乾燥が終わった卵は、まず人の目で検査を行い、ひび割れているもの、汚れているものを取り除きます。さらにカメラで撮影した画像を解析し、人の目で見つけられなかった汚れなどを検出します。

[写真3]
汚卵検査の写真


(4)ひび卵検査

綿棒のような小さなハンマーで卵を軽く叩き、発生した音のわずかな違いを解析して、目視検査で見つけられなかった細かいひびを検査します。

[写真4]
ひび卵検査の写真


(5)紫外線殺菌

写真で青っぽく見えている光は紫外線です。洗卵時の次亜塩素酸ナトリウムで殺菌できなかった菌も、紫外線を照射することで殺菌できます。

[写真5]
紫外線殺菌の写真


(6)異常卵検査

卵が検査機を通過する瞬間に光を照射し、卵の中を透かして見ることによって血卵・みだれ卵・無黄卵などの異常卵を検知して除去します。

[写真6]
異常卵検査の写真


(7)自動倉庫で一時保管

検査・選別を終えた卵は、サイズ別・種類別に分けられ、室温20度以下に保たれた自動倉庫に一時保管されてパッキング作業を待ちます。

[写真7]
自動倉庫で一時保管の写真


(8)パッキング後の最終チェック

パッキング前に、人の目でひびや汚れを最終確認したら、賞味期限を印字したラベルを貼り、商品ごとにパック詰めします。パッキング後にもう一度、人の目で最終チェックを行い、箱詰めされたらいよいよ出荷です!

[写真8]
パッキング後の最終チェックの写真


出荷

[イラスト2]
規格外の卵は、各メーカーで加工され、商品として小売店へ出荷されます。

[イラスト3]
きれいな卵は、卵パックとして販売されます。

[イラスト4]
規格外の卵は、パンやケーキなどの材料になります。

[イラスト5]
おいしい卵料理が食卓に並びます。


解説!たまごの安心・安全

私たちにとって、最も身近な栄養食品である卵。安心しておいしく食べるために、ぜひ知っておきたい基礎知識について解説します。

賞味期限

卵の賞味期限は、「生で安心して食べられる期限」を示したもので、産卵日から21日以内と定められています。


パックの表示ルール

店頭に並ぶ卵パックの表示ラベルを見てみましょう。産地や賞味期限、採卵者やGPセンターの名称などのほか、保存方法や、使用方法なども表示されています。この表示は、食品衛生法で定められたルールに基づくものです。

[写真9]
表示様式の例


サルモネラ菌による食中毒の予防

食中毒の原因となるサルモネラ菌を増殖させないためには、10度以下で保管することが大切。購入後、冷蔵庫で保管すれば、賞味期限内は安心して生食できます。賞味期限経過後は、加熱調理(75度以上で1分以上)すれば安全においしく食べることができます。

[写真10]
サルモネラ菌の写真


取材・文/梅澤聡  撮影/大久保惠造  取材協力/株式会社八千代ポートリー


三大特性

たまごには「乳化性」、「熱凝固性」、「起泡性」という三大特性があります。この特性を利用して、とても多彩な料理や加工品を生み出してきました。ここではその特徴を利用して作られる、加工品の製造工程を見ていきます。

熱凝固性

一定以上加熱し、タンパク質などが凝固すること。卵焼き、オムレツ、プリンなど加工品もさまざま。卵白が58度から80度にかけて凝固する一方、卵黄は65度から70度で凝固します。この差を利用したのが温泉卵です。

[写真1、写真2、写真3]
三州食品のゆで卵。左から固ゆで卵、やわらかゆで卵、とろとろゆで卵、それぞれプレーンと醤油味があります。

[写真4]
温泉卵

[写真5]
茶碗蒸し

熱凝固性を生かした加工品:ゆで卵
ボイル時間で固ゆでも半熟も自由自在!
三州エッグ 岩倉工場

愛知県岩倉市八剱町大門出先28
養鶏から加工まで一貫生産体制(Farm to Table)で展開

[写真6]
三州エッグ 岩倉工場

[QRコード1]
http://www.sansyu-egg.co.jp/〔外部リンク〕

愛知県岩倉市は、全国で1、2を争うゆで卵の生産量を誇ります。愛知に本社のある三州食品は、養鶏から鶏卵加工までを手がける大手。子会社の三州エッグ岩倉工場は、なんと1時間に15,000個もの製造能力があるというボイルマシンを持つゆで卵工場です。

[写真7]
ボイル
左右の巨大な機械がボイルマシン。それぞれ1時間に15,000個、合計30,000個も製造可能。固ゆで卵なら100度で16分以上、やわらかゆで卵なら100度で7分45秒から8分15秒間ボイルします。

[写真8]
殻むき
ボイルした後、10度以下の冷却水で卵を冷まして殻をむきしやすくし、専用機により殻割りと殻むきを自動で行います。

[写真9]
冷却
さらに、目視・触手検品を経て再び10℃以下に冷却し、完成。ゆで卵の大行進の後、袋詰めされて出荷します。


乳化性

卵には水溶性と脂溶性という本来混ざり合わない性質を中立する働きがあり、撹拌によって乳化します。マヨネーズ以外に、ドレッシング、カスタード、アイスクリーム、レモンカードなども乳化性を利用した加工品です。

[写真10]
マヨネーズの写真。
細口と星型で使えるダブルキャップ仕様でも人気に。350gは3本の線が描ける3つ穴仕様。

[写真11]
アイスクリーム

[写真12]
ティラミス

乳化性を生かした加工品:マヨネーズ
お酢と油を乳化させるのは、卵黄のチカラ!
キユーピー 五霞工場

茨城県猿島郡五霞町小手指1800
予約制で見学可能(詳細はWebサイトをご覧ください)

[写真13]
キユーピー 五霞工場

[QRコード2]
https://www.kewpie.co.jp/know/openkitchen/goka_01.html〔外部リンク〕

地中海のメノルカ島が発祥といわれるマヨネーズが日本で初めて商品化されたのは大正14年3月でした。なんといってもその特徴は、お酢と植物油という、普通なら混ざり合わない液体同士を乳化させる、卵のチカラがあってこそ。こうしてできたマヨネーズはまろやかでコクがあります。

[写真14]
割卵
自社開発の割卵機。1分間に600個もの卵を割り、卵黄と卵白に分離。衛生面にも気を遣い、2時間に1回洗浄されています。

[写真15]
撹拌
菜種や大豆による植物油とリンゴ果汁やモルトによるマヨネーズ専用酢に卵黄を加え、ミキサーの中で撹拌して乳化します。

[写真16]
乳化
ミキサーの中を真空状態にすることで酸化を防ぎます。また、油の粒を微細にすることでまろやかなマヨネーズになります。


起泡性

撹拌によって空気が混ざり、卵白の表面のタンパク質が空気に触れて固くなる空気変性の性質も利用して、形状が安定します。スポンジケーキ、ムース、パンケーキにマシュマロなどが、起泡性を利用した加工品です。

[写真17]
卵の風味が味わえる、生地がおいしい「しんたまロール」

[写真18]
チーズスフレ

[写真19]
カステラ

※チーズスフレ、カステラはたまごCOCCOの商品ではありません。

起泡性を生かした加工品:ロールケーキ
卵を温めてあげてふわふわ感UP!<br/ >たまごCOCCO

東京都新宿区下落合1-16-7
電話:03-5988-7100/営業時間:11時から18時/日曜定休

[写真20]
たまごCOCCO

[QRコード3]
http://www.tamagococco.com/〔外部リンク〕

JA全農たまごの「しんたまご」をもっと知ってもらいたいという思いから生まれたスイーツショップ「たまごCOCCO」。卵のおいしさを引き出したお菓子たちはいずれもコクがあり、軽やかなのに味わい深いのです。起泡性を生かしたロールケーキ「しんたまロール」を紹介します。

[写真21]
湯せん
全卵にお砂糖を入れた後、40度前後になるまでゆっくりと撹拌しながら温め、生地の起泡性がより高まるよう準備します。

[写真22]
撹拌
気温や湿度に応じて微妙に調節しつつ約20分撹拌。水100立方センチメートルと同体積で20グラム程になるまで、ふんわり泡立てます。

[写真23]
加熱
生地に北海道産の薄力粉を加え、175度のオーブンへ投入。約17分焼き上げると、さらに4割程膨らみます。

[写真24]
成形
生地を冷まし、生クリームを手早く塗って巻き上げます。ペーパーで包み、形を整えたら完成です。


卵は捨てるところなし。殻も大活躍しています。

完全栄養食品の卵。実はその殻、卵殻もさまざまに形を変えて、大活躍しています。卵殻は主成分がカルシウムなので、これを粉砕し、カルシウム強化を目的として育児食に添加する補助食品となっているほか、肥料や飼料の原料、タイヤなどの滑り止めの摩擦材としても活用されています。

また、その内側にある薄皮の卵殻膜は、繊維の原料、さらには皮膚に対する生理活性に着目し、化粧品の原料にも活用されています。

[写真25]
卵の使いみちの写真。(資料協力:キユーピー)


特集2 こだわり☆たまご飯

日本人が大好きな卵料理。汎用性の高い卵は調理方法によって七変化!地域色や個人の好みに合わせて、さまざまな顔を見せてくれます。


あなたはどっち派?

その1:トロトロ?それともしっかり?
半熟or完熟

農林水産省公式Facebook上で、「卵料理」の好みの固さについてアンケートを行いました。その結果をご紹介します。


半熟派:72パーセント

[写真1]
半熟卵のオムライスの写真。

目玉焼きやオムライスは半熟派!ご飯と一緒に食べるときに絡まりやすいです。

半熟派です!ふわとろの食感が大好きです!!

ふわふわのオムレツとちょっと固めのベーコンの組み合わせが大好きです。


完熟(よく焼く)派:28パーセント

[写真2]
完熟卵のオムライスの写真。

よく焼いた方がより卵のおいしさを味わえると思います。半熟よりも保存がきくし、形が崩れないので便利。

厚焼きたまごやゆで卵を食べるときは、よく焼く派。噛みごたえ&食べごたえを感じたいので。

固めに香ばしく焼いた方がソースなどとの相性がいい気がします。あとお弁当にも使いやすい!


両方派

しっかり焼いた目玉焼きの黄身も、とろーり流れ出す半熟の目玉焼きも、それぞれおいしいです♪

普段はよく焼く派ですが、そのときの気分で半熟もいいですね。

自分好みを新発見

ゆで卵はシンプルなレシピ故にゆで加減が肝。ゆで時間によってさまざまな固さに仕上がります。半熟が好きなら6分から9分、固ゆでが好きなら13分以上がおすすめ。右図を参考に、あなたの好みを探してみてはいかがでしょう。

[写真3]
ゆで卵のゆで加減の写真。6分、7分、9分、11分、13分。
※沸騰してからのゆで時間


その2:味の決め手は甘口?それともおだし?
関西or関東

昆布だしの効いた関西流、甘く香ばしく仕上げた関東流など、卵料理にも東西で違いがあります。その違いを名店の味から見てましょう。


卵焼き
関東:江戸前寿司に合わせた、甘みがとろける卵焼き

[写真4]
関東の卵焼きの写真。

創業以来一筋!東京・築地市場の卵焼き

丸武の卵焼きは、ふんわりとした甘味とコクが特徴。大正末期の創業当時、日本橋魚河岸(現・東京築地市場)という立地から近隣にお寿司屋さんが多く、甘いネタがないお寿司で口直しとしても味わえるよう、甘い卵焼きを作るようになったのです。卵焼きは卵とだしの割合がハーフと、多めのだしを使うマイルドな味わい。熟練の職人が毎日丹念に焼き上げています。

丸武
東京都中央区築地4-10-10
電話:03-3542-1919/営業時間:平日は4時から14時30分、日曜は8時30分から14時/休業日:祝日および市場休市日

[写真5]
丸武:伊藤光男さん


関西:濃厚なだしをたっぷり含んだ、黄金色の「だし巻き」

[写真6]
関西の卵焼きの写真。

京都・錦市場の専門店が作る「だし巻き」

味の決め手は、たっぷりの利尻昆布と削り節でとる濃厚なだし。昭和3年の創業以来、長方形の鍋を使い、手前から奥へと巻いて焼く「京巻き」と呼ばれる技法で仕上げています。強い火力で焦げ目を一切つけず、素材の持ち味を最大限に生かすため、一気に焼きあげる技術は職人ならでは。縁起がよいとされる「巻物」であることから、おせち料理にも欠かせない存在です。

三木鶏卵
京都府京都市中京区錦小路通富小路西入東魚屋町182
電話:075-221-1585/営業時間:9時から18時/定休日:年始休業日以外無休

[写真7]
三木鶏卵:本條浩二さん


卵サンド
関東:しっとりした食パンで、濃厚卵をたっぷりサンド

[写真8]
関東の卵サンドの写真。

銀座で愛される、16時以降のサンドイッチ

昭和58年の創業以来、レシピを変えていない卵サンドイッチは、ふわっとしたやわらかさが身上。ゆで卵をエッグカッターで切り、塩こしょうをして混ぜてからマヨネーズを加え、さらに混ぜることで、なめらかな食感の卵サラダが生まれます。1人分LL玉を2個半から3個と、卵をたっぷり使い、お酒にも合うように塩こしょうをやや強めにきかせているのが特徴です。

みやざわ
東京都中央区銀座8-5-25 西銀座会館1階
電話:03-3571-0169/営業時間:11時30分から14時30分、16時から翌日4時※サンドイッチは16時から/定休日:土曜日、日曜日、祝日

[写真9]
みやざわ:外塚信一さん


関西:卵の旨味がたっぷり詰まった、ふわふわだし巻きサンド

[写真10]
関西の卵サンドの写真。

パンも卵もこだわりあり!京都の香ばし卵サンド

喫茶アマゾンでは、コーヒーや紅茶と合わせる軽食として、サンドイッチを出すようになったのが始まり。店の一番人気は卵サンドで、卵を4つたっぷり使っただし巻き卵を挟んだ、ボリュームたっぷりのサンドイッチ。卵は昆布などからとった白だしを加え、仕上げにバターで香ばしく焼き上げるのがポイント。パンはサンドイッチ用の薄めのパンで、焼かずにしっとりと包みます。

喫茶アマゾン
京都府京都市東山区七条鞘町通上る下堀詰町235
電話:075-561-8875/営業時間:7時30分から17時30分(ラストオーダーは17時)/定休日:水曜日

[写真11]
喫茶アマゾン:立石裕則さん


取材・文/本吉恭子 撮影/高橋真人


ふるさとたまごはん

卵を使った郷土料理は、全国各地にあります。ここでは、食文化研究家の向笠千恵子さんに紹介してもらいました。

青森県:卵味噌

[写真12]
卵味噌の写真

津軽のおふくろ料理。味噌、砂糖、だしか水(鰹節、酒を用いることも)を小鍋で混ぜ、溶き卵を加えてとろとろの半熟に熱したら、ご飯やお粥にのせます。帆立貝殻を鍋代わりにすることが多いので、貝焼き味噌ともいい、卵が貴重な滋養食材だったことを伝える味です。

[イラスト1]
ねぷたのイラスト


宮城県:ほやたまご

[写真13]
ほやたまごの写真

その形から海のパイナップルとも呼ばれるほやは、ミネラル豊富な健康食材。新鮮なものは海のエキスを集めたような風味が癖になるほど。養殖の本場、三陸・女川町ではゆで卵を包んで甘辛煮にしたものが家庭の味。東日本大震災後は商品化され、人気を集めています。

[イラスト2]
伊達政宗像のイラスト


千葉県:花椿

[写真14]
花椿の写真

海苔養殖が盛んで米どころの千葉では、この二つを使った太巻きずしが発達しました。すし飯をでんぶなどで色付けした細巻きを何本も用意し、漬物と組み合わせて断面を華やかな柄に仕上げるのが特徴で、なかでも傑作は薄焼き卵で巻き、艶やかな椿の花に見立てた花椿です。

[イラスト3]
犬吠埼のイラスト


静岡県:たまごふわふわ

[写真15]
たまごふわふわの写真

東海道袋井宿があった袋井市のご当地グルメ。大阪の豪商が食べたという古い記録に基づき、観光協会が地元飲食店の協力のもと復活させました。熱いだしにしっかり泡立てた卵を入れて蒸らすだけですが、蓋をとると不思議なほどふわふわ。ケーキなど応用編のアイデアメニューも生まれています。

[イラスト4]
茶畑のイラスト


京都府:衣笠丼

[写真16]
衣笠丼の写真

丼物は奥が深い。その土地だけの献立名があり、熱愛されています。京都なら衣笠丼。甘めに炊いた油揚げを短冊に切り、刻んだ九条ねぎと卵でとじてご飯にのせてあります。卵とじのこんもりした様子を洛北の衣笠山に見立てたのです。なお、同様なものを大阪ではきつね丼と呼びます。

[イラスト5]
金閣寺のイラスト


石川県:べろべろ

[写真17]
べろべろの写真

溶き卵の寒天寄せで、加賀のおせちや祭事につきもの。溶かした寒天をしょうゆ、砂糖、みりんで調味し、生姜を隠し味にします。卵の黄身がしょうゆ色の寒天液に映えて見事。べろべろという名はつるつる食感のたとえで、えびす、べっこうとも呼び、旧加賀藩領の富山にも伝わっています。

[イラスト6]
兼六園のイラスト


福岡県:鶏卵素麺

[写真18]
鶏卵素麺の写真

長崎から小倉の砂糖街道は鎖国時代に砂糖が運ばれたルートで、南蛮菓子も伝わりました。福岡の鶏卵素麺は煮立った糖蜜に卵黄を糸状に流し入れ、素麺のように固めた銘菓。とても甘いため、コーヒーにも合います。同様な菓子がマカオやタイにもあります。

[イラスト7]
屋台のイラスト


山口県:岩国ずし

[写真19]
岩国ずしの写真

郷土ずしには錦糸卵が不可欠。彩り、やさしい味、栄養の三つがそろっているからで、その好例はかつて殿様用だった岩国ずし。酢飯に魚のほぐし身を混ぜて木枠に詰め、錦糸卵、酢蓮、味付け椎茸などを飾り、芭蕉の葉を挟みながら五段に重ねて、重石をして仕上げ、切り分けます。

[イラスト8]
錦帯橋のイラスト


兵庫県:明石焼

[写真20]
明石焼の写真

たこ焼のルーツとされ、別名玉子焼とも言います。薄口のだしで食べるのがおきまり。明石はかつて模造サンゴが地場産業で、卵白を接着材に使ったため、余った卵黄と特産の明石ダコで名物を創り出しました。小麦粉でん粉のじん粉を入れるのがふんわりした食感の秘密です。

[イラスト9]
明石海峡大橋のイラスト


沖縄県:ポーク卵おにぎり

[写真21]
ポーク卵おにぎりの写真

ポークとは米軍が広めた缶詰のポークランチョンミートのこと。この薄切りと薄焼き卵を、ご飯と海苔で挟んだのがポーク卵おにぎりで、おにぎりと名が付くのにご飯の上に具材をのせているのが特徴。今ではコンビニでも買えるようになり、沖縄の新名物になりつつあります。

[イラスト10]
シーサーのイラスト


おいしく、栄養価も高く、使い勝手の良い万能食材

昭和初期から中期ごろまで、卵は籾殻を敷いた箱の中に入れて贈答する貴重な食べ物でした。「食べると健康になる」と、病人へのお見舞いの品にしたり、ハレの日に食べる贅沢品として大切にする意識を多くの人が持っていたのではないかと思います。それに加えて、卵は汎用性が高く、衣笠丼のように具材をひとつにまとめたり、花椿のように薄焼きにして料理を包むこともでき、岩国ずしのように華やかな彩にもなります。味の良さにこうした使い勝手の良さも加わって、どこの地域でも食べられ、愛される食材になったのではないでしょうか。

監修:向笠千恵子(むかさ ちえこ)さん
フードジャーナリスト、食文化研究家
日本の本物の味、安心できる食べもの、伝統食品づくりの現場を知る第一人者。農水省「ディスカバー農山漁村(むら)の宝」有識者懇談会委員、「本場の本物」審査専門委員、郷土料理伝承学校校長。

[写真22]
向笠千恵子さん


解説/向笠千恵子


あっぱれ 全国の日本一を訪ねて vol.5

うずらの卵生産量日本一!愛知県 豊橋市

うずらの飼育に適した穏やかな気候と、長年養鶏で培われた高い飼育技術を生かし、全国一の産地となっている豊橋市。小さな卵には、栄養と生産者の思いがたっぷり込められています。


養鶏の生産技術を生かし一大産地に成長

良質のタンパク質のほか、ビタミン、ミネラルが豊富なうずらの卵。その生産量は愛知県が全国シェアの7割を占め、なかでも豊橋市は、県内トップの生産量を誇ります。

うずらは、大正時代には家禽として全国で飼育されていましたが、戦時中の食糧難でその数が激減。戦後、豊橋市内の農家が、東京でペットとして残っていたうずらを譲り受け、繁殖、飼育を再開させたといいます。豊橋地域は、昔から養鶏が盛んで生産技術が高く、飼料や飼育設備の業者が多かったこともあり、一大産地に成長しました。市内には日本で唯一、うずら専門の豊橋養鶉農業協同組合もあり、卵の出荷、加工品の製造などを行っています。

[写真1]
うずら飼育の様子

[図]
愛知県 豊橋市
【DATA】愛知県の南東部に位置し、東は静岡県と隣接。南は太平洋、西は三河湾に面している。年間を通して温暖で、露地野菜、果樹、畜産などの農業が盛ん。


豊橋市ってこんなところ

その1 手筒花火発祥の地

[写真2]
揚げ手が抱えた竹筒から、巨大な火花が高々と噴き上がる勇壮な手筒花火。市内の吉田神社が発祥とされ、五穀豊穣や無病息災を祈る奉納行事として、多くの祭礼で揚げられています。


その2 歴史ある豊橋筆

[写真3]
江戸時代後期、豊橋地域を治めていた吉田藩主が、下級武士に副業として筆作りを奨励したのが始まりとされ、現在も職人が技法を継承。墨含みが良く、墨はけが遅いのが特長です。(提供:伝統工芸 青山スクエア)


その3 自動車輸入一位

[写真4]
三河港は、国内外の自動車メーカーが拠点を置く自動車輸出入港。2017年の輸入車の取扱台数は約19万台に上り、輸入台数、金額ともに日本一の規模を誇ります。


日本一にズームイン

毎日25万個の卵を出荷。安全な卵を食卓へ

豊橋はうずらの街。多くの家庭にうずらの卵の殻をカットする器具があります。ご当地グルメの豊橋カレーうどんには、必ずうずらの卵がトッピングされているなど、地域に欠かせない食材です。

養豚をしていた父が、周囲の勧めでうずらの飼育を始めて今年で21年。現在、農場では卵を採取する親鳥35万羽と3万5000羽の雛を飼育し、毎日約25万個の卵を豊橋養鶉農協に出荷しています。消費者が安心して口にできる卵作りはもちろん、うずら一羽一羽をしっかり育てて、長く卵を産んでもらうことを重視して生産に取り組んでいます。


餌の配合や飼育環境にこだわって生産

餌の栄養素が卵の質につながるため、餌には特にこだわっています。飼料メーカーと共同で、うずらが消化しやすく、卵の品質を安定させる配合飼料の開発にも取り組んできました。また、鶉舎の床や天井、ケージなどの掃除を毎日行い、病原菌やウイルスの温床となるほこりを取り除き、うずらが過ごしやすい環境を整えています。

うずらの卵の生産という、豊橋ならではの農業を次世代につないでいくためには、収益率アップや労働環境の整備が課題です。養鶉の魅力を高めていくことも私たちの役割と考え、今後も力を尽くしていきたいです。

[写真5]
はたのファーム 幡野喜一さん(左)、幡野真也さん(右)
兄弟で養鶉に情熱を傾ける兄・喜一さんと弟・真也さん。喜一さんは豊橋養鶉農協の組合長も務めている。


ご当地グルメ
豊橋カレーうどん

カレーうどんの下にご飯が隠れたボリューム満点のご当地グルメ!トッピングのうずらの卵は、店舗によって生卵派とゆで卵派に分かれます。

[写真6]
豊橋カレーうどんの写真


人間が飲んでもおいしい水を与える

[写真7]
水温が高いとうずらが飲む水の量が減り、熱中症になることも。夏場は特に水温や水質の管理を徹底している


オーダーメードの餌を使って飼育

[写真8]
季節に応じて栄養の割合を変えるなど、餌にも細かな工夫が。はたのファームではオリジナルの配合で作った餌も使う

[写真9]
白っぽい殻は、カルシウムが豊富な卵の目印


農協に集められた卵は手作業で検査、出荷へ

[写真10]
組合員から集められた卵は、農協の施設で殺菌、洗浄した後、手作業で品質検査やパック詰めが行われる


取材・文/丸山こずえ 撮影/川本聖哉


MAFF TOPICS

「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。

NEWS1

飼料用米で畜産物をブランド化

国産のお米で育ったブランド畜産物を表彰

畜産の飼料用として、米を生産する取り組みが進んでいます。また、そのような飼料用米の生産農家と連携し、“国産のエサ”“米育ち”などを謳って畜産物のブランド化を図る団体なども増えています。そうした畜産物の提供に取り組む団体などを表彰するのが「飼料用米活用畜産物ブランド日本一コンテスト」。昨年度初めて開催され、52点の応募の中から、最高賞の農林水産大臣賞など4つの賞が決まりました。表彰によりこうした優良事例を広く発信することで、他の団体などの参考となり、農畜産業の活性化につながることが期待されます。

農林水産大臣賞

株式会社平田牧場(山形県)
「日本の米育ち平田牧場金華豚・三元豚」

[写真1]
生産するすべての豚に飼料用米を使い、研究機関などとも連携し、肉質の向上などに取り組んでいます。品種や飼料にこだわったブランド豚はとろけるような上質な脂が特長。肉のきめも細かく、料理人から高い評価を受けています。
[写真2、写真3]
生産者とお米育ちの子豚たち


公益社団法人中央畜産会会長賞

株式会社大里畜産(三重県)
「伊勢美稲豚」

[写真4]
飼料用米や植物性タンパクを配合した独自の飼料を使うため、臭みがなくあっさりとした脂身が魅力です。ISO22000を取得し、製品の安全性も高く維持。


農林水産省政策統括官賞

有限会社鈴木養鶏場(大分県)
「豊の米卵」

[写真5]
一般的な卵に比べて、うまみや甘みが強く、ビタミンも豊富です。また、鶏糞を田んぼに還元しており、地域の資源循環や周辺への環境に配慮しています。


全国農業協同組合中央会会長賞

農業生産法人有限会社キロサ肉畜生産センター(岩手県)
「玄米育ち 岩手めんこい黒牛」

[写真6]
自社の飼料工場で、米の配合比率を高めたオリジナルの飼料を製造。黒毛和種に匹敵する味を追求し、ジューシーな赤身と口当たりの良い脂身が特長です。


詳細については
こちら [QRコード1]
http://okome-sodachi.jp/contest2017.html〔外部リンク〕


このマークに注目!

このマークは、お米で育った畜産物の目印。スーパーや食肉店で探してみてください。

[写真7]
お米で育った畜産物のロゴマークの写真。


NEWS2

子どもたちが霞が関を体験

夏休み恒例の「こども霞が関見学デー」が8月1日(水曜日)、8月2日(木曜日)の2日間にわたり開催されました。農林水産省でも、子どもが楽しめる30以上ものさまざまなイベントを用意しました。

当日は、仮想空間で材料を組み合わせて弁当を再現する「バーチャル・リアリティでお弁当づくり!」や、自分で豆苗を育てる体験ができる「おうちでプチ農業体験!」を実施。ほかにも、道具を使って稲穂からお米を取り出す「もみすり体験に挑戦!」、さかなクンによるお魚セミナー「ギョーさん、おさかなを知ろう!」などのイベントを通じて、子どもたちは、胸をわくわくさせながら、農林水産業について楽しく学んでいました。なお、今年の参加者数は7246人となり、参加府省中1位でした。

[写真8]
狩猟用の銃を重たそうに構える子どもたち

[写真9]
森林で働く機械の操作を疑似体験

[写真10]
猫のぬいぐるみを使って聴診し、気分は獣医師

[写真11]
食堂では子ども向けメニューを用意


NEWS3

世界中の旅情報が一堂に

世界最大級の旅の祭典「ツーリズムEXPOジャパン2018」が、9月20日から23日(一般公開は22、23日)、東京ビッグサイトで開催されます。世界の130を超える国と地域や、日本全国の観光地の情報が集まる旅の総合イベントです。会場では「全国ご当地どんぶり選手権」も開かれ、各地の名物どんぶりの食べ比べもできます。民族衣装やご当地グルメで地域の魅力を感じたり、旬の旅情報を入手したりしながら、次の旅の行先を探してみませんか。

[写真12]
各国も民族衣装で魅力をアピール

[写真13]
日本の伝統工芸を見学、体験

[写真14]
全国各地の特色ある展示が見所

[写真15]
おいしいご当地どんぶりも集結

※写真はすべて昨年度のものです。


ツーリズムEXPOジャパン2018

日時:9月20日(木曜日)から23日(日曜日・祝日)※一般公開は22日(土曜日)10時から18時、23日(日曜日・祝日)10時から17時
場所:東京ビッグサイト
内容:観光産業や地域のブース展示など

詳細についてはこちら
[QRコード2]
http://www.t-expo.jp/〔外部リンク〕


NEWS4

おいしいお肉が集合

食べて買って学べるおいしい畜産イベント

お肉の「おいしさ」と「食べる楽しさ」を体験できるちくさんフードフェアが、10月6日と7日の両日、神奈川県川崎市の日本食肉流通センターで開かれます。多数の畜産関係団体や食肉卸業者などが出展し、毎年大勢の人でにぎわいます。特に人気を集めているのが、フェア「一押し食肉」BBQコーナー。国産の銘柄牛や豚肉をダイナミックに焼いて、来場者に無料で提供。会場にただようそのこうばしい香りは、食欲をそそります。

また、全国味めぐりコーナーでは、各地から集まったさまざまな食肉加工品や乳製品を販売。お家でもご当地の味を楽しめます。牛と豚のお肉の部位をパズルで学べる情報提供コーナーは、子どもだけでなく、親子で勉強できます。ほかにも、地域物産展、肉料理のセミナー、ステージでのショーなどイベントが盛りだくさん。お肉を味わい、買って、学べる「お肉三昧」の一日を過ごしに出掛けてみては。

[写真16]
おいしそうなお肉を見ると思わず笑顔が

[写真17]
大勢の人でにぎわう会場

[写真18]
ブロック肉を大胆にグリル

[写真19]
試食ができる「一押し食肉」BBQコーナー

[写真20]
全国の食肉加工品を販売

[写真21]
イベントキャラクター:ギュウベェ(左)、みーとん(右)

※写真はすべて昨年度のものです。


ちくさんフードフェア2018

日時:10月6日(土曜日)・10月7日(日曜日)10時から16時
場所:日本食肉流通センター

詳細についてはこちら
[QRコード3]
http://www.jmtc.or.jp/event/foodfare.html〔外部リンク〕


NEWS5

なくそう食品のムダ

日本では、年間約646万トンの食品ロスが発生し、これは、国民一人当たりが毎日お茶碗約一杯分のご飯を捨てているのと同じ量。食品ロスとは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。そこで、小売店では、ポスターなどで削減の呼び掛けを実施。家庭でも、買い物前に冷蔵庫を確認する、手前に陳列された食品を買う、といった工夫で減らすことができます。皆さんも、食品ロス削減に向けて行動してみませんか。

また、このほど、食品ロス削減国民運動のロゴマーク「ろすのん」に、泣き顔に加えて笑顔バージョンが誕生。みんなで削減に取り組み、ろすのんを笑顔にしましょう。

[写真22]
食品ロスをなくしてろすのんを笑顔に

[写真23]
お店でもポスターを掲示

[写真24]
手前から買うことも食品ロス削減に

詳細についてはこちら
[QRコード4]
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syoku_loss/〔外部リンク〕


クイズの答え

カルシウム

主成分であるカルシウムの特徴を生かし、本誌12ページで紹介した用途以外に、黒板に文字を書くチョークや靴の底ゴムなどにも活用されています。

また、山梨発祥の新工芸「卵殻モザイク画」でも用いられています。卵の殻に日本画の顔料の水干(すいひ)絵具で着色し、それを指で割って形を作り接着剤で素地に貼り付けて絵を描きます。木や陶磁器、ガラス、革などに施して楽しまれているんだとか。

食べること以外にも、「たまごのチカラ」を生かし、さまざまなところで活躍しているんですね。

[写真25]
チョークの写真

[写真26]
山梨発祥の新工芸「卵殻モザイク画」の写真(写真提供/卵殻モザイク研究所 安藤彩子)


取材・文/丸山 こずえ



編集・発行 農林水産省大臣官房広報評価課広報室
〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1
TEL:03-3502-8111(代表)
FAX:03-3502-8766

編集協力 株式会社文化工房
〒106-0032 東京都港区六本木5-10-31 矢口ビル4F
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編集/中村麻由美、小尾悠梨子、糸瀬早紀、 藤田紫糸、小竹結女、伊藤高
アートディレクション/釜内由紀江
デザイン/石川幸彦、清水桂