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農林水産省

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19年3月号 文字情報

aff(あふ)agriculture forestry fisheries:March 2019

平成31年3月1日発行(毎月1日発行)


[表紙]
今月の「手」

駅前直売所八〇八の中越節生さん
藤沢名産の野菜を手に。
撮影/千倉志野


CONTENTS

  • 連載 私のおもいで弁当[三重県]vol.11 … 2ページ
  • 特集1 食品流通 … 4ページ
  • 特集2 朝市 … 14ページ
  • 全国の日本一を訪ねて vol.11 … 18ページ
  • MAFF TOPICS … 20ページ
    News
    6次産業化で地域の未来をつくる
    10月から消費税率が変わります
    東北の今~復興・創生~
  • 読者の声 … 23ページ

今月のクイズ

貨物輸送をトラックなどの自動車から鉄道や船舶へ転換することを何と言うでしょうか。(答えは23ページ)



広報誌『aff(あふ)』について
農林水産業や農山漁村は、食料の安定供給はもちろんのこと、国土や自然環境の保全、良好な景観の形成などの多面的機能の発揮を通じ、国民の皆さまの毎日の生活において重要な役割を担っております。また、農林水産行政は、生産などの現場に密着したものであると同時に、毎日の生活に深く関わっています。農林水産省では 「aff」を通じ、農林水産業における先駆的な取り組みや農山漁村の魅力、食卓や消費の現状などを紹介しております。

Webサイトのご案内
「aff」は農林水産省のWebサイトでもご覧になれます。
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/

本誌に掲載した論文などで、意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。


私のおもいで弁当

子どもたちに伝えたい郷土料理や懐かしいふるさとの食材を使ったお弁当を、著名人が、お弁当へのあふれる想いと共に紹介します。全国のふるさとの美味を、あなたもお弁当に入れてみませんか?


【vol.11】三重県 豚肉

豚肉はたんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルが豊富。特に疲労回復効果が高いビタミンB1の含有量が多く、ミネラル分は、骨密度を高めるカリウムや鉄分が多い。三重県ではさまざまなブランド豚が開発・飼育されている。

[写真1]
豚肉

[写真2]
浅尾美和
Miwa Asao

1986年生まれ。三重県鈴鹿市出身。中学・高校時代はバレーボール部に所属。三重県立津商業高校時代には全国大会にも出場。卒業後、プロのビーチバレー選手に転向。引退後はタレントとして活躍。

[写真3]
浅尾美和さんの勝つ弁当


母親の愛情の塊
それがお弁当!

ビーチバレーを引退して、間もなく結婚し、今は2人の子どもがいます。長男は幼稚園に通っていて、月に1回あるお弁当の日をとても楽しみにしているようです。まだ4歳なのに、「何が食べたい?」と聞くと「唐揚げとれんこん!」とか「梅干しのおにぎり」などとしっかり答えてくれます。このため、リクエストに合わせてお弁当を作っています。

思い返せば、私が中学・高校時代にバレーボールに打ち込んでいた時にも、母がお弁当を作ってくれました。大事な試合の日には、いつも縁起を担いで、とんかつや一口ヒレカツなどをお弁当に入れてくれていたことを思い出します。「勝つ」という意味はもちろんですが、豚肉はビタミンB1が豊富なので疲労回復にぴったりな食材。体のことも考えて入れてくれたのだと思います。さらに私の大好物・牛肉ときのこの混ぜご飯もよく入っていました。我が家は5人兄弟なので、朝ご飯を作るだけでもとても大変だったと思います。それに加えて手の込んだお弁当まで作るというのは、母からの愛以外の何物でもないですよね。今、お弁当を作る側になってつくづくそう思います。


牛肉のみならず豚肉も美味な三重県

三重は古くは「御食国(みけつくに)」と呼ばれていた海と山の幸の両方に恵まれた土地で、おいしい食材が豊富にあります。特に松阪牛が全国区で知られているので、牛肉の聖地のように思われているかもしれませんが、実は豚肉もとてもおいしいです。特に大のお気に入りが「さくらポーク」。名前の通りピンク色をしたキレイな豚肉で、脂身が赤身にも細かく入っています。そのため柔らかくてジューシー。三重以外では見掛けないので、帰省した時には必ず食べますし、買って帰るようにしています。私も最近まで知らなかったのですが、三重ではほかにもいろいろなブランド豚が生産されているようです。

子どもの成長とともに「私が作った料理を食べて、この子たちは大きくなっているんだ」と、うれしく思いながらも責任をひしひしと感じています。子どもたちが健康で、いつでも自分の力を存分に発揮できるように、バランスが良くておいしい食事を、これからも作っていきたいと思います。


[レシピ]サックサク とんかつ

【材料(4人分)】

豚ロース…4枚
塩・コショウ…少々
薄力粉…適量
A
 卵…1個
 サラダ油…小さじ1
パン粉…適量
揚げ油…適量

【作り方】

  1. 豚ロースの両面に筋切りをし、塩・コショウをふる
  2. 1に薄力粉をまんべんなくつけたあと、Aをよく混ぜたものにくぐらせる
  3. 2にパン粉を押しつけるようにつけたあと、ふわっとパン粉をまぶす
  4. 150度の揚げ油に3を入れ、衣の色がほんのり色づき始めたら、一度油から取り出す。揚げ油の火を強めにし、180度になったら入れ直し、きつね色に揚げて完成

監修/飯倉孝枝、取材・文/柳澤美帆、撮影/三村健二


特集1 食品流通 近づく食卓と生産地

[写真1]
市場の様子

広がりをみせる多種多様な流通の形

私たちの生活に欠かせない野菜、果実、水産物などの生鮮食料品。これらを産地から集荷し、公正な値決めを行い、消費者に安定して供給するなど、さまざまな機能を持ち、役割を果たしているのが卸売市場です。

卸売市場は食品流通の中心的役割を担っていますが、一方で、市場外流通がその比率を上げています。大手スーパーが契約農場から直接買い付けはじめ、生産者の側でも集約農業化が進み大型化してきたことなどがその要因です。また、生鮮食料品もネット販売や宅配による購入が増えるとともに、道の駅やJA直売所、マルシェなどでの対面販売も人気に。こうしたニーズの多様化を受けて、食品の新しい流通形態に注目が集まっています。

食品流通に欠かせないのが、コールドチェーンによる鮮度を保ったまま低温輸送する仕組みです。また、輸送に欠かせないコンテナや保冷容器も驚くほど進化を遂げています。一方で、深刻なドライバー不足に加え、二酸化炭素の排出量抑制など環境問題も課題です。このため、幹線輸送を長距離トラックから鉄道や海運に置き換えるモーダルシフトが注目を集めています。競合企業による共同での物流会社の設立、旅客列車やバスを物流にも活用する貨客混載など、関係各所が知恵を絞った取り組みも行われています。

このほか、新しい技術と発想で食品流通に未来を見いだしている企業やアイデアが続々と登場。進化する流通のさまざまな形や現状を見ていきましょう。


[写真2]
私たちの生活を支えている食品流通。輸送の技術進化や効率化、そして新しい発想により生産者と消費者をつなぐ形が多様化しています。

食品の業態別販売額の推移

[図1]
食品の業態別販売額

[図2]
販売額の伸び率

出典:宅配:矢野経済研究所「食品宅配市場の展望と戦略」、チェーンストア:日本チェーンストア協会「チェーンストア販売統計」、コンビニエンスストア:日本フランチャイズチェーン協会「コンビニエンスストア統計」、通信販売:日本通信販売協会「通信販売企業実態調査報告書」、農産物直売所:農林水産省「6次産業化総合調査」
※2014年度は推計値


トラックドライバー 需給の将来予測 (単位:人)

[図3]
2010年度:
需要量:993,765/供給量:964,647
29,118人不足

[図4]
2020年度:
需要量:1,030,413/供給量:924,202
106,211人不足

[図5]
2030年度:
需要量:958,443/供給量:872,497
85,946人不足

出典:(公社)鉄道貨物協会「大型トラックドライバー 需給の中・長期見通しに関する調査研究」2014年5月


品質・鮮度を保つ

健康的な生活を送るために欠かせない、新鮮な食料品。冷凍、冷蔵技術が進歩した現代だからこそ、より鮮度の高い状態で消費者に届ける努力が行われています。その中で、生産者から消費者に至る一連の物流の流れを低温で管理し、輸送する仕組みをコールドチェーンと呼んでいます。

食材ごとにその温度や湿度管理を徹底することで、新鮮なままの食材を消費者に提供できるのです。そして、そんなコールドチェーンを支える物流技術は日進月歩。ここではその一部をご紹介しましょう。

コールドチェーンで鮮度を保って届ける仕組み〈モスバーガーの場合〉

[写真1、写真2]
Start:【農場】
モスバーガーで使用する生野菜は、全国約2,900軒の協力農家が供給。レタスの場合、鮮度維持のためにまだ気温が低い時間帯から収穫します。

[イラスト1、写真3]
10度
【野菜センター】
各産地で収穫後、すぐに地域の野菜センターに入庫。

[写真4]
10度の低温貯蔵庫にて需要予測に応じて一時保管。検品後、店舗別に仕分けし出荷します。

[イラスト2]
5度

[写真5、写真6]
【保冷倉庫】
野菜などのチルド(冷蔵)品(5度)の他、冷凍品(-18度以下)、常温品とそれぞれに温度管理された食材を取りまとめ、店舗へ納品します。

[イラスト3、写真7]
5度
店舗への配送は、荷室を冷凍品とそれ以外に区切った低温管理車両を使用して納品します。

[写真8]
【店舗へ】

[写真9]
Goal!:調理
商品は注文が入ってからひとつずつ製造します。熱いものは熱く、冷たいものは冷たい状態で提供しています。

[イラスト4、写真10]
4度
店舗では、丸のまま納品された野菜を冷蔵庫で保管し、必要な分の仕込みをします。レタスやキャベツは4度の冷水に浸すことでシャキシャキ感がアップします。

一番おいしい状態でお客様へ

[写真11]
モス野菜バーガー

モスバーガー
[QRコード1]
https://www.mos.jp/〔外部リンク〕

トラック輸送

[写真12]
冷凍・冷蔵・常温の3つの温度帯の食材を同時に運べる車両で、安定した品質を保つよう工夫すると同時に、物流の効率化も図っています。


鮮魚用保冷容器も進化中

常温輸送でも低温のまま届く

[写真13]
従来生鮮魚介類は、氷詰めした発泡スチロール容器で低温輸送していました。一方、日本通運の「飛び箱/Flying Fish Box」は、見た目は従来と同様の発泡スチロール容器ですが、保冷性能、容器強度を高め、生鮮魚介類を常温の一般貨物扱いで輸送できる優れものです。

[写真14]
中空層を作ることで保冷性能の向上が図られるなど、細かな改良が重ねられています


コンテナも進化しています

低酸素で鮮度をキープ

[写真15]
温度管理ができるリーファーコンテナに窒素ガス発生装置を装備したのが、ONEの「CAコンテナ」。発生させた窒素で、青果物の呼吸により変化する酸素および二酸化炭素の濃度を調整し、鮮度をより長く保ちます。

[写真16]
保存後3週間の春菊。しなびやすい春菊が新鮮な状態に保たれる


凍らせずに長期保存

[写真17]
冷蔵したコンテナ内部に高電圧・低電流で静電場を形成。0度以下でも凍結させずに鮮度維持できるため、食品の組織を壊さず長期保存ができる、オズアンドテックの「氷感SO庫」。米や肉などの場合、熟成効果でうま味もアップします。

[写真18]
通常の状態で10日間保管するとカビが生えましたが(左)、氷感SO庫は新鮮なまま(右)


トレーサビリティ+αの試み

農産物の情報が丸分かり

近畿大学工学部(広島キャンパス)の加島智子講師と学生が開発した「ベジスキャン」。農産物に貼ったバーコードをタブレット端末で読み取ると、生産者や農産物の情報、オススメ料理のレシピなど、さまざまな情報が提供される販売支援システムです。JA広島中央の協力の下で実証実験も行い、近々リリース予定です。

[写真19]
農家の情報やメッセージ、商品の特徴、レシピなども提供されます


仕入れ、販売、在庫管理を一元化

仙台水産が開発した「AMANES」は、仕入れ、販売、在庫管理をペーパーレス化するために、独自に構築された卸売市場向けの総合情報システムです。日々の決算や受発注の情報を電子化しました。また、商品の入出庫履歴や在庫量のほか、産地や賞味期限などの情報も照会でき、徹底した品質管理に貢献しています。

[写真20]
温度・湿度・衝撃センサRFID(無線ICタグ)で品質管理情報を共有します


効率化する輸送手段

モーダルシフトとは、環境負荷の軽減と、慢性的なドライバー不足を解消する手段として、長距離トラックによる幹線貨物輸送を、内航海運や鉄道など、経済効率のいい輸送手段に転換することを言います。荷物の積み替えなど労力が多少増えても、トータルではドライバー要員を半分以下に抑え、交通事故を抑制し、道路の混雑緩和にも寄与します。

また、競合企業が共同で物流を行う取り組みや、乗客を輸送する列車やバスに貨物を載せる貨客混載も各地で行われています。

[図1]
輸送機関別二酸化炭素排出量比較
輸送機関別の二酸化炭素排出量原単位(1トンの貨物を1キロメートル輸送した際の二酸化炭素排出量)2016年度実績
営業用貨物車:240/船舶:39/鉄道:21
出典:国土交通省「自動車輸送統計調査」「内航船舶輸送統計調査」「鉄道輸送統計調査」、国立環境研究所「温室効果ガス排出量(確報値)」から作成(いずれも2016年度)

モーダルシフトとは?

[図2]
産地から市場・スーパーなどの納品先に荷物を輸送する際の方法を経済効率のいい輸送手段に転換する


貨客混載とは?

[図3]
乗客と運送業者の貨物を客室やトランクなどで混載して輸送する


ビールメーカー各社がJR貨物を共同利用

鉄道を利用した共同輸送もはじまっています。キリンビールとアサヒビールは2017年1月、金沢に日本通運が運営する共同配送センターを開設。キリンの神戸工場、アサヒの吹田工場で製造した商品を、日本貨物鉄道(JR貨物)の関西~北陸間で発生する空コンテナを利用して輸送しています。また、2018年4月からは、サッポロビール、サントリービールも含めた4社共同で、関西~岡山~九州間に専用輸送列車を走らせています。

[写真1、写真2]
アサヒとキリンのビールが並んで配送されていきます


定期航路を利用し海上輸送

ハウス食品は、2018年7月から清水から大分間を結ぶRORO船定期航路を利用し、栃木、静岡の2工場で製造したカレールウやスナック菓子などを、九州の配送センターへ海上輸送で運搬。輸送モードを複数保持しておくことで、災害時の安定供給体制の強化にもつながっています。また、持続可能な食品物流を目指し、味の素、カゴメ、日清フーズなど6社が集まり、共同配送体制などを整えるF-LINEプロジェクトにも取り組んでいます。

[写真3、写真4]
貨物を積んだトレーラーを運べるRORO船。「北王丸」(川崎近海汽船)は160台分積載できます


全国の漁場から鮮魚を空輸

食料品の中でも極端に鮮度が落ちるのが海産物。羽田市場(株)は、羽田空港内に鮮魚センターを設け、各地の契約産地・漁師からとれたての鮮魚を最適な手段で直接仕入れることで、卸売市場経由だと水揚げから1日余分にかかるところを、入荷当日に小売店や飲食店に納品できる仕組みを確立。トレーサビリティ情報も提供しています。

[写真5、写真6]
センター内では、鮮魚仕分けや、加工などが行われています

羽田市場
[QRコード1]
https://hanedaichiba.com/order/〔外部リンク〕


高速バスを利用した産地直送便

全国のJAなどで農産物のマーケティングを担ってきたアップクオリティが運営する、高速バスを利用した貨客混載事業が「産地直送あいのり便」です。バスのターミナルに隣接している大手町・丸の内・有楽町地区のオフィスビルや新宿髙島屋に特設されたマルシェで販売することで、各地の伝統野菜や新鮮な果物、中には朝どれ野菜までが午後には並びます。春先までは日本各地のいちごを集めるほか、その後はさくらんぼなども登場予定。

[写真7、写真8]
高速バスのトランクから冷蔵容器に入れたいちごが

産地直送あいのり便
[QRコード2]
http://www.ainoribin.com/〔外部リンク〕


車両の空きスペースを有効活用

過疎化に悩む地方では、列車やバスなどの空きスペースを、貨物の輸送手段に活用する貨客混載の試みが行われています。佐川急便は、南魚沼市と上越市の区間を結ぶ幹線輸送で北越急行の「ほくほく線」を利用し、貨客混載に取り組んでいます。専用のコンテナ設置場所を設け、振動で荷物が飛び出さないよう、しっかり固定して輸送します。

[写真9、写真10]
台車が一体となった専用什器で搬入出も無理なく行えます


売り手も買い手もバス停を利用
野菜の共同配送システム

食料品の流通方法にもさまざまありますが、中でも飲食店向けの興味深い取り組みが、作り手と使い手をつなぐ「やさいバス」です。

[写真11]
株式会社エムスクエア・ラボ代表取締役社長、加藤百合子さん。農業ロボット開発、地域事業開発、数値解析などに携わる

バス停に野菜を取りに行く!?

大切に育てた野菜を多くの人に味わってほしい作り手と、いいものを少量ずつ選んで使いたい飲食店などの使い手が、共に頭を悩ませるのが上昇傾向にある物流コスト。そこで生まれたのが、生産者と消費者の双方が、バス停を集配所として野菜の受け渡しを行うエコ・ファーストな取り組みである、共同配送システム「やさいバス」です。

このバスを考案したのは農業コンサルタント「エムスクエア・ラボ」の代表・加藤百合子さん。「作り手と使い手の顔が相互に見えないと、作り手は衰退し、いい食材が手に入らなければ使い手も減退します。しかも物流コストが急激に上昇している今、一つのトラックを共有するしか解決方法はないと、やさいバスを発案し、事業化しました」。


地域で循環する野菜需給の仕組み

ネットで注文すると、生産者は市場やJA、地域の商店などに設定した最寄りのバス停に野菜を出荷。集配トラック(やさいバス)が作物を回収し、時刻表に基づいて、利用者指定のバス停で野菜を受け取ることができます。これによって、宅配便だと1箱700円から1,800円ほどする配送料が1箱350円に。現在は静岡地域で2ルートが稼働しており、今後は長野、神奈川地域でもサービスを準備中です。


[図4]
生産者と利用者で現在200軒ほどの登録があり、約50品目の野菜が流通しています

[写真12、写真13]
注文者はやさいバスの運転手から野菜を直接受け取ります

[ロゴ1]
やさいバス

[QRコード3]
https://vegibus.com/〔外部リンク〕



多様化する流通方法

生産者と消費者がつながる「農家の直売所」の仕組みとは

全国のスーパーに「農家の直売所」を展開する農業総合研究所。ITを駆使した流通改革で注目を集める、同社代表の及川智正さんに伺いました。

農業の仕組みを変えるために

東京農業大学の学生時代に書いた卒論で、未来の農業を調べたのです。すると農家の年齢が上がり、農業に従事する人が減り、耕作放棄地が増え、食料自給率が下がるというデータが出て、危機に瀕している農業の現状を目のあたりにしました。農業は食の根幹です。これが衰退していくということは国力が衰退することに直結します。誰かが何かしなければと思いました。

そして、農業を発展させるためには作るだけではなく、口に入るまでをコーディネートすることが重要だと痛感し、これを具現化するために、農業総合研究所を立ち上げました。資金50万円からの何もないスタートでしたが、誰よりも真剣に農業を考え、誰よりも農業に情熱を燃やしたからこそ、今があると思っています。


ITの力で、顔の見える農業を

私たちは「持続可能な農産業を実現し生活者を豊かにする」というビジョンを掲げています。そして、独自のITと物流のプラットフォームを活用し、「ビジネスとして魅力ある農産業の確立」を目指しています。

農家の直売所は独自の流通網を整備し、収穫・出荷から原則1日で産地とスーパーマーケットをつなぎ、鮮度良く、完熟した野菜や果物をお届けしています。商品には生産者の名前が記されているので、お客様からは「今日は木村さんの大根ないの?」って言われるんです。消費者は生産者の顔が見えるおいしい野菜を購入できる上に、弊社のITプラットフォームを活用し、生産者へ「ありがとう」の声を届けることができます。この声が、双方向に届く仕組みを作っていきたいと考えています。

[写真1]
及川智正(おいかわともまさ)さん

株式会社農業総合研究所 代表取締役社長

学生時代に農業への危機感を覚え、会社員を6年間経験後、農業界へ転身。農業を3年、八百屋を自ら1年実践し、その経験を活かして2007年に同社を設立。

農家の直売所
[QRコード1]
http://www.nsk-farmer.com/〔外部リンク〕


農家の直売所 事業フロー

登録生産者

[写真2]
8,206名の登録生産者は専用ポータルサイト「農直@生産者」を通じて、専用バーコード発券や栽培履歴管理ができ、売り上げや店舗の相場情報などを確認することができます。

[写真3]
生産者が値付けの際、参考になる相場価格を掲載


集荷場

[写真4]
全国92か所の集荷場へ近隣の生産者が商品を持ち込みます。生産者はそこでスタッフと相談でき、売り場や売れ行きの動向を踏まえ、好きな価格や出荷数、出荷先を決められます。

[写真5]
バーコード発券機と、タブレット上で全ての業務を集約できる「農直@生産者」


全国のスーパー

[写真6]
都市部のスーパーを中心に、1,244店舗に展開している「農家の直売所」。専用アプリをダウンロードして、商品についているQRコードを読み取ると、生産者情報や動画を見ることができ、消費者は生産者にメッセージを送ることも可能です。


注文から1時間ですぐ届く

2013年創業のベジオベジコが行う野菜宅配サービス「VEGERY organics」(ベジリー)。同社は、創業者の平林聡一朗さんと田村健登さんの故郷、宮崎県東諸県郡綾町産を中心とした九州産のオーガニック野菜などの食材を、都内主要エリアで注文後1時間以内にほぼ配達可能という、独自の流通網を確立。農大生など野菜に詳しい宅配スタッフを多数そろえ、対面するお客様とのコミュニケーションも大切にしているという。平林さんは今後の抱負について、「ご注文後すぐに配達できるため、不在による再配達がほとんどありません。今後はさらに販売地域を広げ、宮崎の自社農園も充実させていきたいです」。

[写真7]
宮崎県綾町の青果を中心に、各地の伝統野菜、加工品などが並びます

[写真8]
多くはバイクによる配送ですが、エリアによっては自転車も活躍中

[写真9]
デリバリー拠点でもある渋谷店で、お客さんを迎える平林さん。根津にも店舗があります

ベジリー
[QRコード2]
http://vegeryorganics.com/〔外部リンク〕


スマホで自分の農園が持てる

消費者がスマホを通じて契約農家の作物を栽培できるサービス「Rakuten Ragri」(ラグリ)。作物の成長日記がスマホに届くので、ゲーム感覚で一緒に育てる喜びを共有でき、成長を見守った野菜が届きます。「農業を通じて世の中に大きなインパクトを与え、社会に貢献できる取り組みに挑戦したい」と、事業化のきっかけを語る楽天の梅村周平さん。兼業農家に育ったこともあり、“農家の安定収入を実現する新しい農業の形を提供、インターネットにより農家と消費者を直接つなぐ場を提供、就農を希望する次世代農家を育成・支援”という3つのポイントを定めて協力者と一緒に立ち上げました。

[イラスト1、写真10]
リアル畑をお世話:農家さん

[図1]
・二人三脚で作物栽培
・畑のお世話
・成長が連動:農家さんからリアル畑の成長日記が届きます。あなたはバーチャル畑で、水やり草取りなど農業体験ができます。
・収穫
・産地直送
・お届け

[イラスト2、写真11]
バーチャル畑をお世話:あなた

ラグリには現在約180軒ほど登録生産者がいて、約100品種の中から栽培できる野菜を選べます。また、オーガニック野菜の定期便サービスも提供

ラグリ
[QRコード3]
https://agriculture.rakuten.co.jp/〔外部リンク〕


各地で活躍する移動販売サービス

買い物したいよろこびを提供

近隣に商店街やスーパーのない地域に暮らす住人のため、約400品目、1,200点の商品を軽トラックで移動販売している「とくし丸」。ネット通販や宅配では得られない、自ら選んで買いたい気持ちに応えるには「トラックに商品を載せて家の前まで行き、そこで店開きをして買い物をしてもらうのが一番わかりやすい」と、創業の経緯を語る代表の住友達也さん。とくし丸は、販売を担当する軽トラックのオーナーが、それぞれ地域のスーパーと提携し、商品を販売代行するという仕組み。そのためオーナーには仕入れリスクがなく、売れ残った生鮮品などはスーパーに返却できるため、ロスも出ません。

[写真12]
45都道府県で106社、366台のトラックが稼働。地域の見守り隊としての役割も果たしています

[写真13]
常連さんには御用聞きとお届けをすることも

とくし丸
[QRコード4]
http://www.tokushimaru.jp/〔外部リンク〕


移動する便利なコンビニ

セブン-イレブン・ジャパンでは、おにぎりやお弁当にサンドイッチ、カップ麺からソフトドリンク、アイスクリームまで、約150品目の商品をそろえた移動販売店「セブンあんしんお届け便」を稼働させています。

また、高齢化による買い物難民は地方だけの問題ではなく、練馬区と同社は2018年5月に「高齢者見守りネットワーク事業協定」を締結。区の介護予防事業と連動するなど、地域ごとに地元組織や団体と協業しながら巡回営業しています。同社は全国各地でこの協定を締結しており、お届けサービスなども含め、地域の見守り活動としての役割も担っています。

[写真14]
見慣れたデザインの移動コンビニ店が、集合住宅が密集するエリアでも活躍しています

セブンあんしんお届け便
[QRコード5]
http://www.sej.co.jp/csr/consumer/infra.html〔外部リンク〕


八百屋がつなぐ産地と人

生産者が直接野菜を販売。心とおなかを満たす八百屋さん
駅前直売所八〇八(やおや)

[写真1]
食事中のお客さんと談笑する中越節生さん

[写真2]
中越節生(なかごしせつお)さん
不動産会社勤務などを経て2005年に就農。2012年に藤沢市内に自家農園を作り、6年前から現在の場所で直売所を開いています

[写真3]
川口碧子(るりこ)さん
週に一度は来店するという、駅前直売所八〇八の大ファン。4歳の息子さんもよく一緒に店に来ているそう

[写真4]
ランチの日替わりプレート(880円 税込)には季節の野菜がたっぷり

[写真5]
野菜談議に花を咲かせる中越さんと川口さん

藤沢市の善行駅前にある「駅前直売所八〇八」は、市内で農業を営む中越節生さんが経営する八百屋兼カフェ。藤沢産の新鮮野菜や、野菜をたっぷり使ったおいしいご飯を求めて、地元ファンが足繁く通う人気のお店です。

「この店には、スーパーでは見掛けない野菜がたくさん並ぶんです。初めて見る野菜があると、どうやったらおいしく食べられるかな、とワクワクします」

そう話す川口碧子さんは、二年ほど前から駅前直売所八〇八に通う常連さん。新鮮な野菜はもちろん、店に並ぶ野菜を使った総菜やランチも大のお気に入りだそう。

「野菜やお料理を見て『これなんですか?』『どうやって調理するんですか?』と聞くと、何でも教えていただけます。人が温かくて、珍しくて新鮮な野菜があって、食事もできる。ここは心とおなかを満たしてくれるお店ですね」

店に並ぶのは、農薬や化学肥料を使わずに育てた野菜ばかり。生産者であり、店主として日々消費者と接している中越さんは言います。

「作った人間の顔が目の前にあるので、お客さんには安心感があると思います。私もお客さんの顔を見ると、この人に新鮮でおいしいものを食べさせてあげたい、という思いが一層強くなるんです」

中越さんが栽培に力を入れている菊芋をはじめ、販売している藤沢産の野菜は徐々にファンを増やしています。

「この店を通じて消費者の意識を変え、地元の野菜を食べるのが当たり前、という文化をつくりたい。湘南はさまざまなカルチャーが生まれた場所。食と農業の文化も、藤沢から全国へ発信していきたいですね」

[写真6、写真7]
中越さんが普及に取り組む菊芋。自家農園で栽培

駅前直売所八〇八
神奈川県藤沢市善行7-6-1 サンライズビル1階
電話:0466-47-8448

[QRコード1]
http://yaoya808.com/〔外部リンク〕


八百屋からはじまる食文化を体感
京都八百一本館

京都八百一グループとして、1970年代から八百屋を営んできたセントラルフルーツ。伊勢丹や髙島屋をはじめ全国の百貨店に出店、自社農場も持つ高級生鮮食品店として知られていますが、その核となるスペースが、京都八百一本館。モダンな造りながら落ち着きのある建築と内装で、2013年の完成時には京都デザイン大賞を受賞しています。

館内は3つのフロアに分かれていて、1階には京野菜や旬の青果がそろう京都八百一を中心に、魚屋、肉屋、半調理野菜、ベーカリーなどがあります。2階には野菜本来の味を引き出す焼きもの・蒸しものを中心としたレストラン「きょうのおかず」や、ビオワインと國酒専門店、雑貨、花屋に加え、料理教室なども行われる多目的スペースも。

そして驚くのがこの3階にある、通りの名を冠した「六角農場」。畑の周囲では二十四節気とそれに応じた季節の野菜が紹介され、作物の花粉交配に欠かせないニホンミツバチの巣も設置されています。採れたての野菜たちを「きょうのおかず」や、農場の目の前のレストラン「SAVORY」で食すことができ、農業、流通、食の3層をテーマとするこの場所で、食文化の豊かさを体感することができます。

[写真8]
耕作面積は約300平方メートル、畑土厚50センチメートルを有し、聖護院大根や金時人参など根菜類も育てられる農場です

[写真9]
野菜の香りが匂い立つ「炭火の焼きやさい いろいろ5種盛り」(1,200円 税込)

[写真10]
上質ながらアットホームで落ち着きのある「きょうのおかず」

京都八百一本館
京都府京都市中京区東洞院通三条下る三文字町220
電話:075-223-0801

[QRコード2]
http://www.kyotoyaoichihonkan.com/〔外部リンク〕


生産者と出会うために旅をする
旅する八百屋 青果ミコト屋

高校の同級生という鈴木鉄平さんと山代徹さん。2人は創業のきっかけをこう語ります。「千葉で自然栽培の農家で働いていた頃、せっかく丁寧に育てても、サイズや形によって売れない野菜がたくさんあると知り、自然のものが持つ色艶や、その野菜の背景を伝えること、生産者と消費者をつなぐ役目が必要だなと」。北海道から鹿児島まで生産者を訪ね、交流を深める中でその土地の文化や野菜の味わい方を知り、販売につなげる。そんなスタイルで、今では200軒以上の農家と取引し、全国各地で販売しています。

一方で、旅する八百屋を標榜(ひょうぼう)するも、はじまりは宅配から。ご近所や友達、その親など身近な人に向けて配達をはじめ、そのつながりが徐々に広がっていったといいます。「外にも出なきゃね、ということで新横浜で小さなマルシェにはじめて出店した時は、ムシロを敷いて、コンテナのまま8種類ぐらいの野菜を売ったんです。はじめて売れた時の喜びは大きかったですね」と山代さん。

「若い人たちにおいしい野菜を知ってもらいたいという思いからはじまりましたが、今後は世代を問わず、いろんな方に手にとってもらえるようにしていきたいです」と鈴木さんは抱負を語ってくれました。

[写真11]
キャンピングカーで移動する様子

[写真12]
出荷場の奥にある竹林にて(右)鈴木鉄平さん(左)山代徹さん

[写真13]
自由が丘の「メイド・イン・アース」に月1回出店している「天然市場」の風景

[写真14]
宅配セットに同梱される、二十四節気の暦に合わせて発行されている野菜かわら版

青果ミコト屋
神奈川県横浜市青葉区鉄町1885
電話:045-530-4551

[QRコード3]
http://micotoya.com/〔外部リンク〕


特集2 朝市

みずみずしい野菜、新鮮な魚介類と、どこを見ても欲しいものがたくさん!ついつい買いすぎてしまう朝市の魅力や楽しみ方をご紹介します。

[写真1]
朝市の様子

[写真2]
ほうれん草

[写真3]
魚の干物

[写真4]
コーヒーのハンドドリップ

[写真5]
そろばんを弾く様子

[写真6]
鮮魚

[写真7]
すあま

千年以上続く近隣住民の台所

朝市とはその名の通り、朝から開かれる定期市のこと。歴史は古く、平安時代から続くとされるものもあります。魚介類や野菜などの物々交換がその始まりであることが多く、石川県の輪島や千葉県の勝浦の朝市も、その起源は物々交換です。近隣住民の台所として、今も古くからの形態を受け継ぎ、道路や広場などの屋外の決められたスペースに露店が並んでいます。近年は函館や仙台の朝市に代表されるような、固定の店舗が連なっているショッピングモール形式のものもあり、その形態はさまざまです。


朝市の数だけ訪れる楽しさがある

また訪れる人のお目当ても場所ごとにいろいろあるようです。地産地消の意識の高まりを受けて地元の人が多く来る住民の台所的朝市もあれば、流通コストがかかっていない地場の特産品を求めて、他県からの観光客が多数訪れる場所も。そのほか生鮮食料品だけでなく、郷土料理やご当地グルメなどの加工食品が人気を呼んでいるところもあり、最近は外国人観光客が目立つ朝市もあります。

楽しみはほかにもさまざま。出店者の威勢のいい掛け声を聞きながらそぞろ歩いたり、生産者と直接顔を合わせて言葉を交わしながら買い物をしたりする面白さがあるのです。保存方法や流通システムが発達して、産地から遠く離れていても、鮮度が高い食材を手にすることができるようになった現在でも、多くの人が朝市を訪れる理由は、そんなところにもあるようです。


日本三大朝市

輪島朝市

平安時代から行われていたと文献に書かれている、千年以上の歴史ある朝市。伝統工芸品である漆器も数多く販売されています。200以上の露店が、通称「朝市通り」と呼ばれる約360mの商店街に並び、にぎわっています。

[写真8]
漆器が並ぶ様子

[QRコード1]
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石川県輪島市河井町1-115
電話:0768-22-7653


宮川朝市

遅くとも江戸時代の1860年代には開催されていたとみられています。立ち退きをよぎなくされた時代もありましたが、現在は朝市を守るために発足した協同組合によって安定的に運営され、伝統野菜などが販売されています。

[写真9]
伝統野菜が並ぶ様子

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岐阜県高山市下三之町
電話:0577-35-3145


勝浦朝市

安土桃山時代の1591年に、勝浦城主が農水産物の交換の場として開設したとされています。今年1月には、アンテナショップをオープンさせるなど集客に向けさまざまな工夫が行われています。

[写真10]
魚の干物が並ぶ様子

[QRコード3]
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千葉県勝浦市浜勝浦下本町、仲本町
電話:0470-73-6641


朝市の楽しみ方ガイド!!

朝市の醍醐味は、何と言っても人とのふれあいがあること。生産者との会話や試食しながらの買い物は、産地から遠い都会での買い物とはひと味もふた味も異なります。

1.買い物のコツ

[写真1、写真2、写真3、写真4]
朝市に並ぶ鮮魚、果物、干物、野菜

[写真5]
天候や客足によって開店時間を変える店もあるので気をつけて

「行く時間を見極めよう」

新鮮な朝どれの農水産物が目当てなら、やはり開始早々に足を運びましょう。せりの時間に左右される商品もあるので、まずはひと巡り下見しながら欲しい商品が並ぶ時間を確認するのがコツ。朝市の終盤は、商品を売り切りたい店が値引きしたり、おまけをつけてくれたりすることも。ただし早めに店じまいする店もあるので要注意!


例えば

早い出足に損はナシ!
【愛知県】オアシス21 オーガニックファーマーズ 朝市村

[写真6]
有機農業に取り組む農家が集まり、野菜や米・果物を中心に販売しています。一番混むのは8時30分の開始直後。10時には売り切れてしまう店も!?

[QRコード1]
http://asaichimura.com/〔外部リンク〕

名古屋市東区東桜1-11-1
電話:052-265-8371


出発はお早めに!
【神奈川県】三崎朝市

[写真7]
マグロで名高い漁港の朝市。5時の開始時にはすでに熱気でいっぱいです。店ごとに品ぞろえや値段が異なるので、まずはひと巡りして下見をしましょう。

[QRコード2]
http://misaki-asaichi.com/〔外部リンク〕

三浦市三崎5-3806
電話:046-881-4488


2.朝市ならではの体験をしよう

[写真8]
釣堀で釣り体験をしている様子

[写真9]
買い物以外にもいろいろな体験ができて楽しいね!

「特別な思い出を作ろう」

朝市の楽しみは買い物だけではありません。さまざまな体験ができる朝市がたくさん開催されています。例えば海や川に近いところでは釣りが楽しめたり、せりに参加できたり、購入した新鮮な食材でバーベキューをできたり。ただし時間で限られている場合も多いので、買い物+αを楽しみたいなら事前にチェックして出かけましょう。


例えば

欲しい物をせり落とそう
【宮城県】ゆりあげ港朝市

[写真10]
新鮮な魚介類と地場野菜などを販売。毎週日曜には、誰でも気軽にせりに参加できる「セリ市」を開催。番号入りのうちわを手に、気分も盛り上がります。

[QRコード3]
http://yuriageasaichi.com/〔外部リンク〕

名取市閖上5-23-20
電話:022-395-7211


あがったばかりの魚をさばこう
【千葉県】船橋漁港の朝市

[写真11]
魚介類をはじめ、農産物や加工品などが並びます。また漁師などが先生を務める「お魚さばき教室」を開催。有料ですが、魚を持ち帰れるので人気です。

[QRコード4]
http://gyoko-asaichi.com/〔外部リンク〕

船橋市湊町3-16-1近辺
電話:047-433-1125


3.新鮮なグルメを食べよう

[写真12]
海鮮をたっぷり使った丼ぶりと味噌汁の写真

[写真13]
勝運カツの写真

[写真14]
ハンバーガーの写真

[写真15]
素材を知る土地の人が作った料理は格別!ぜひ、お越し下さい

「土地ならではのグルメを味わおう」

朝市では、特産品を使ったグルメも楽しみのひとつ。とれたてならではの味を堪能したり、郷土料理に舌鼓をうったり、産地だからできるボリュームの多さを満喫したり、さまざまな楽しみ方があります。食べ歩きも楽しいものですが、その場合は食べ終わった後のゴミを決められた場所にきちんと捨てるように気をつけましょう。


例えば

行列ができる人気店も多数
【青森県】館鼻岸壁(たてはながんぺき)朝市

[写真16]
800mの岸壁に沿って300店以上が立ち並ぶ活気あふれる朝市。回転式魚焼き器で焼く炭火焼きの魚介類など、ここでしか食べられない、買えない商品がたくさん。

[QRコード5]
https://hachinohe-kanko.com/10stories/asaichi/tatehanaganpeki-asaichi〔外部リンク〕

八戸市新湊館鼻岸壁
電話:080-5734-3251


イカ三昧で、満腹に!
【佐賀県】呼子朝市

[写真17]
江戸時代から続く、歴史ある朝市。イカ漁で有名なまちだけに、散策しながらイカの活きづくりやイカしゅうまいなど“イカづくし”を楽しめます。

[QRコード6]
https://www.asobo-saga.jp/feature/archives/000270〔外部リンク〕

唐津市呼子町呼子 呼子朝市通り
電話:0955-82-0678

取材・文/柳澤美帆、撮影/小倉和徳


あっぱれ 全国の日本一を訪ねて vol.11

日本一南にある中央卸売市場
沖縄県中央卸売市場

今年で開設から35年となる同市場。ここでは、暖かい気候や独自の食文化を持つ地域ならではの生鮮食料品の取引が行われています。


多くの生鮮食料品を集め県民の食卓を豊かにする

農林水産大臣の認可を受けて、自治体が開設した公営の中央卸売市場は、現在33都道府県に64カ所あります。そして日本最南端にあるのが沖縄県中央卸売市場です。その土地柄ゆえに、バナナやパインアップル、マンゴウなどの南国フルーツの取り扱い量や金額がともに多いのが特徴です。

同市場ができる以前、沖縄では朝市のように生産者と消費者が相対して商品が売買されるのが中心でした。1984年に開設されて以降は、県内の生産者からはもとより、他府県や海外からも多種多様な青果・花き類を集荷。公正な価格と安定した品ぞろえで、仲卸業者や小売業者に販売して県民の食卓を豊かにしています。1日の取引で、平均して約6000万円の売買が行われています。

[写真1]
野菜のせりの様子

[図1]
沖縄県中央卸売市場
【DATA】浦添市と那覇市にまたがる埋立地に位置。甲子園球場の約3倍、約11万平方メートルの敷地面積があり、朝5時から売買が行われている。


市場のある浦添市ってこんなところ

その1 演舞が圧巻!てだこまつり

[写真2]
「てだこ」とは「太陽の子」という意味。昔、琉球の王府であった浦添で活躍した英祖王(えいそおう)に由来する祭りです。総勢1,000人で王統の歴史を、舞いや太鼓で表現する演舞は見事です。


その2 やさしい風合い「うらそえ織」

[写真3]
浦添市の新しい特産品として約10年前に誕生した「うらそえ織」。桑の葉の栽培から養蚕、織り、商品化まで一貫して市内で行っており、とても肌触りのよい布です。


その3 ハンドボール王国都市を宣言

[写真4]
国体のハンドボール会場になったことで盛んになり、小学校から始める子どももいっぱい。日本ハンドボールリーグ唯一の地域密着型クラブチーム・琉球コラソンの本拠地です。


日本一にズームイン

沖縄の食文化を守る県民の台所

この市場は主に、県民の食生活を支えるための多種多様な青果と花きを県内はもとより県外からも集荷。仲卸業者やスーパーなどの売買参加者に商品を卸しています。

沖縄は気温が高いため、暑さに弱い葉物野菜などは、せりの直前まで低温で保管するなど工夫を実施。そして青果については毎朝6時から、並べられた商品を順番に見ながら取引する「移動せり」が行われています。

最近は若い人を中心に島野菜離れが起きていることから、伝統野菜を守るために、食べ方などを発信する野菜ソムリエを雇用。沖縄の食文化を守ることにも力を注いでいます。


観光客増加に向けて施設の充実を目指す

仲卸業者には、せりの前に商品の下見という大仕事があります。例えば沖縄ではこの時季からとうもろこしが出回っていますが、実際に皮をむき、粒のつまり具合をチェックしたりします。目利きがうまくいかなければ商品の返品につながってしまうので、下見がせりの成否を握ると言っても過言ではありません。

今後沖縄はますます観光客が増え、青果の需要もそれに伴って増加することが予想されています。県と一体となってさらに設備を充実させたり、6次産業化を推進したりするなどし、生産者が安心して商品を任せられる施設にしたいと考えています。

[写真5]
(写真右)沖縄県農林水産部 中央卸売市場 主任技師 福満(ふくみつ) 宏治さん
(写真左)有限会社 山元商店 代表取締役 渡久平(とくひら) 元信さん

市場を管理する県職員の福満さんと、仲卸業者の渡久平さん。観光客が増加する中で青果の需要の高まりを強く感じ、市場のさらなる発展に向けタッグを組む。


鰹だしが効いたスープが絶品!沖縄そば

麺は小麦粉で作られた太麺、スープは鰹だし、もしくは豚骨を加えたものが一般的。具には豚バラ肉、ネギ、紅しょうががのる。にんにくや島とうがらし酢で味を変えても美味。

[写真6]
沖縄そばの写真


新鮮な野菜を卸売市場内で加工

[写真7]
地元野菜を新鮮なうちに、敷地内にある青果物加工工場に運び、カット野菜やスープなどに商品化


青果冷蔵庫棟で鮮度を保って管理

[写真8]
気温の高い沖縄では、他府県や海外との取引商品の鮮度を保つため、室温5℃の冷蔵庫棟で青果を保管


年に一度、一般向けに卸売市場を開放

[写真9]
普段は一般客が利用できない市場を、年に1日開放。島野菜やマンゴウ、パインなどの県産農産物の即売会を開催


取材・文/柳澤美帆、撮影/川本聖哉


MAFF TOPICS

「MAFF TOPICS」では、農林水産省からの最新ニュースなどを中心に、暮らしに役立つさまざまな情報をお届けいたします。

NEWS1

6次産業化で地域の未来をつくる

異業種や地域と連携して、付加価値の高い商品と地域の元気を生み出している農林漁業者を表彰する6次産業化アワードの受賞者が決まりました。

今年度は、全国から72団体が応募。書類審査や現地調査の結果、最高賞の農林水産大臣賞には、熊本県の株式会社オオヤブデイリーファームが輝きました。このほか、食料産業局長賞には4団体が選ばれ、10団体が奨励賞を受賞。表彰式は、3月5日火曜日に東京都内で行われます。

地域の農林水産物を使った商品開発をはじめ、観光誘客、海外輸出などの多様な取り組みが広がっています。

6次産業化ってなに?

[図1]
1次産業(生産)× 2次産業(加工)× 3次産業(流通・販売):農林漁業者などがこれらを一体的に取り組む
=6次産業:所得向上・雇用の場の創出・地域の活性化


農林水産大臣賞:株式会社オオヤブデイリーファーム(熊本県)

[写真1、写真2]
自家製堆肥で栽培した飼料などによりジャージー牛乳を生産し、成分や味わいの差別化を図ったヨーグルトを製造。地域の学生等を受け入れ、搾乳などの体験学習も実施している


食料産業局長賞

農事組合法人サンエスファーム(長崎県)

[写真3]
肉厚な生しいたけの生産のほか、規格外品を活用して多様な加工品を製造。観光農園事業にも取り組む


鹿児島堀口製茶有限会社(鹿児島県)

[写真4]
茶葉を生産し、女性をターゲットとした多様な加工品を販売。観光地化を目指す「大隅ティーナリー構想」も展開している


株式会社ジェイエイフーズみやざき(宮崎県)

[写真5]
冷凍野菜の需要増に着目してほうれん草の産地形成を推進。生産、冷凍加工、販売を一貫して行っている


カミチクグループ(鹿児島県)

[写真6]
牛の飼料生産から飼育・加工・販売までを一貫して実施。耕作放棄地の活用や事業の海外展開も行っている


[ロゴ1]
「6次産業化」のロゴ

受賞者の情報など詳細はこちら
[QRコード1]
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renkei/6jika/good_practice_awards.html


NEWS2

10月から消費税率が変わります

今年10月1日、消費税率が10パーセントに引き上げられます。それに伴い、飲食料品などの品目には軽減税率(8パーセント)が適用され、現行の税率に据え置かれます。

対象となるのは、食品表示法に規定する食品(人の飲用または食用に供されるもの)。また、テイクアウトと宅配は軽減税率の対象ですが、外食やケータリングは対象外となります。そのほか、酒類や医薬品も適用されません。

政府では、駆け込み需要を防ぎ、税率引き上げ前後の消費の平準化を図るため、今後一定の支援策を講ずる予定です。さらに中小企業や小規模事業者には、複数税率に対応するレジの導入、受発注システムの改修などにかかる経費の一部を補助する支援策を実施します。

この制度は、すべての事業者の方に関係があります。

消費税率の引き上げや軽減税率の対象に関する詳しい情報は、国税庁のWebサイトをご覧ください。

国税庁Webサイトはこちら
[QRコード2]
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/index.htm〔外部リンク〕

中小企業庁Webサイトはこちら
[QRコード3]
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2018/181225keigen.htm〔外部リンク〕


軽減税率の対象となる飲食料品の範囲

軽減税率対象

[イラスト1、イラスト2、イラスト3、イラスト4]
飲食料品(食品表示法に規定する食品)=人の飲用または食用に供されるもの

[イラスト5]
有料老人ホーム等で行う飲食飲料の提供

[イラスト6]
テイクアウト・宅配等

[イラスト7]
一体資産(一定の一体資産は飲食料品に含まれる)


標準税率対象

[イラスト8]
ケータリング等

[イラスト9]
外食

[イラスト10]
酒類

[イラスト11]
医薬品・医薬部外品等


[イラスト12]
これって軽減税率の対象?

[イラスト13]
Q.いちご狩りや梨狩りなどの入園料は?

A.適用対象外。果樹園での果物狩りの入場料は軽減税率の適用対象にはなりません。なお、収穫した果物を入園料とは別で支払う場合は、「飲食料品の譲渡」に該当するため適用対象となります。

[イラスト14]
Q.お菓子とおもちゃがセットで販売されているものは?

A.食品と食品以外のものが一体として販売され、次のいずれの要件も満たす場合、軽減税率の適用対象。
・販売価額(税抜)が1万円以下のもの
・その価額のうち食品に係る価額が3分の2以上を占めているもの


NEWS3

東北の今~復興・創生~

東日本大震災の発生から8年が経ちます。過去に類を見ない甚大な被害に見舞われた被災地域では、農地や漁港、海岸防災林の「復旧」の段階から「復興」するための新たな事業や取り組みが進んでいます。

農林水産省では、被災地の現場が直面しているさまざまな課題に対して、先進的な技術を使い、解決を試みる事業を行っています。

農業分野では、人手不足の中、営農再開と経営規模の拡大に対応するため、農地内を誤差数センチメートル程度で自動走行するロボットトラクタの開発・実証に成功。既にトラクタの販売が開始されています。

林業分野では、津波で被害を受けた海岸防災林を再生するため、苗木植栽ロボットを開発し、実証試験を実施。現在、実用化に向けた取り組みをさらに進めています。

水産業分野では、卸売市場における販売業務の効率化と衛生管理の強化のため、約100台のタブレット端末を使い、入荷や入札情報を処理できるシステムの導入を行っています。

農林水産省では、今後も、被災地の農林水産業の復旧・復興に向けて取り組んでいきます。

農業分野

ロボットトラクタと有人トラクタによる協調作業。有人トラクタの単独作業より、作業効率が向上するため、少ない人数で大面積の作業が可能

[写真7]
前方:ロボットトラクタ、後方:有人トラクタ

[写真8]
トラクタに搭載したGPSアンテナで受信した衛星測位情報を用い、自動走行させる仕組み

[写真9]
リモコンで、自動走行の開始や停止等の操作を行う


林業分野

[写真10]
海岸防災林の造成地において、平坦地・密植という条件下での苗木植栽ロボットを開発・実証

[写真11]
苗木植栽ロボットにより植栽したクロマツコンテナ苗木


水産業分野

[イラスト15]
毎日の入船・入荷情報や入札結果を場内の大型モニターに表示するほか、水産物に関する情報をインターネットにて発信する大船渡市独自の総合情報管理システム

[写真12]
買受人がタブレットで入札販売、商品情報を見ながら下見


福島の高校生、食を届ける

大好きな福島が誤解されて悔しい─。震災後に一人の女子高生が抱いた思いをきっかけに、2015年4月にスタートした福島の高校生が取材や編集に携わる情報誌「高校生が伝えるふくしま食べる通信」。まもなく創刊から5年を迎えます。

震災後のさまざまな苦難を乗り越え、おいしい食べものをつくる県内の志ある生産者。消費者が普段知ることのできない努力や作物への愛情を記した情報誌と、生産者が手がけた自慢の食材をセットで購読者にお届けしています。

初代メンバーが卒業した後も、そのバトンを受けた後輩たちが生産者の熱い想いを伝え続けます。

[写真13]
いわき市内で西洋野菜の栽培に取り組む生産者を取材している様子

[写真14]
2019年冬号の表紙

[ロゴ2]
「こう×ふく:高校生が伝える ふくしま食べる通信」のロゴ

詳しくはこちら
[QRコード4]
https://taberu.me/koufuku/〔外部リンク〕

クイズの答え

モーダルシフト

環境負荷の低減やドライバー不足への対応策として、トラック以外の輸送手段の活用が注目されています。その一つに鉄道がありますが、貨物列車だけでなく路面電車も活躍中です。

ヤマト運輸は、京都市内を走る京福電鉄と共同で荷物を輸送。環境面だけでなく、道路渋滞の緩和にも貢献しています。

[写真15、写真16]
ヤマト運輸は、京都市内を走る京福電鉄と共同で荷物を輸送
写真提供/京福電気鉄道株式会社



編集・発行 農林水産省大臣官房広報評価課広報室
〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1
TEL:03-3502-8111(代表)
FAX:03-3502-8766

編集協力 株式会社文化工房
〒106-0032 東京都港区六本木5-10-31 矢口ビル4F
TEL:03-5770-7114(代表)
FAX:03-5770-7132
編集/中村麻由美、小尾悠梨子、糸瀬早紀、 藤田紫糸、小竹結女、伊藤高
アートディレクション/釜内由紀江
デザイン/石川幸彦、清水桂