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農林水産省

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2025

12月号

森林総合研究所

直撃インタビュー 森林を研究する人たち

森林総合研究所の研究者たちは、それぞれの分野で工夫しながら実績を積んでいます。研究を続ける喜びが詰まった研究者たちの生の声をお届けします。

私と森林総合研究所のカンケイ

4人の若手研究者に、研究所のことや仕事のことを聞きました。研究に集中できる環境で、課題に対して真摯に取り組んでいる姿が浮かび上がってきます。

きのこ・森林微生物研究領域 小河澄香さん 学生時代からきのこの研究に携わり、任期付職員として学業と兼務。2017年に入職後もきのこの外生菌根菌に特化した研究を続ける。 新素材研究拠点 松本悠佑さん 大学院で高分子材料を研究し、2021年に入職。現在は木材中のリグニンを活用した高性能エンジニアリングプラスチックの開発に従事。 立地環境研究領域 関口覧人さん 大学で土壌化学を、大学院で土壌物理を研究し、数多くの実験に取り組む。2022年に入職。現在は土の中の水・物質移動の数値計算に従事。 森林防災研究領域 藤田早紀さん 大学で樹木の根についての研究を始め、大学院でも樹木の根に対する滞水の影響について研究。2021年に入職。現在は海岸林の研究に従事。

Q 私が研究職を選んだ理由

  • 小河さん 小学生の頃から顕微鏡で微生物を見るのが楽しくて研究者になりたいと思っていました。きのこを研究対象に選んだのは、菌類のなかでもきのこは、姿を変えて子実体(しじつたい)を作り出すところが面白いからです。
  • 松本さん 親が研究職に就いていることから大学院への進学は自然な流れでした。大学院で研究を続けるうちに、達成すべき目標に追われるような仕事よりも自分のペースで取り組める研究職が自分には合っていると感じました。
  • 関口さん ずっと研究職を目指して突き進んできたということではなく、大学から修士課程、さらに博士課程と進むなかで、自分の好きなこと、やりたいことを突き詰めていったところ、行き着いたのが研究職でした。
  • 藤田さん アメリカのマサチューセッツ州で育ち、小さな頃から動物や植物が好きでした。中学校の頃に森林科学という学問があることを知り、大学では森林学科のある大学を選び、今に至ります。

Q 森林総合研究所に就職して驚いたこと

  • 小河さん 職員の方たちがどなたも元気です。年齢に関係なく、調査地をすごい速さで歩いたり、土日にスポーツの大会に出場したりしています。私自身も体力があると思いますが、みなさんはもっとあります。
  • 松本さん 木材の耐久性を測定する装置やリグニンを作るプラントなど、大規模な実験機器や設備があることに驚きました。研究者自身がそういった工場のような設備を管理していることも面白いです。
  • 関口さん どなたも木の見分けがつくので、調査で森林に行くと、会話に樹木の名前が頻繁に出てくることに驚きました。私は入職するまで研究場所が農地だったので、樹木の見分けがほとんどつきません(笑)。
  • 藤田さん 昼休みの活動が充実していることです。バドミントンやダンス、サッカー、テニスのほか文化系の活動も盛んで、高校の部活動のようです。毎年文化祭のようなイベントもあります。

Q この仕事のやりがい

  • 小河さん これまで見たことがないきのこを見つけた時や面白い実験結果が出た時にやりがいを感じます。きのこは姿を現す時間が短く、知らない間に森の中で朽ちてしまうことが多いので、その瞬間に立ち会えた時は特別な感覚を覚えます。
  • 松本さん 新しい材料について勤務時間に関わらず四六時中考えていて、時には夢に見るほどです。それがうまく実を結ぶ時があります。そういう瞬間に快感ややりがいを感じます。仕事と関係ないところで突然浮かぶことも多いです。
  • 関口さん 論文を書き上げた時は、やりきったという手応えがあります。論文は書くことそのものよりもデータを取ることが大変です。それが終わって書く段階に入ると目指す場所が見えてきて、大体ひと月くらいで書き上げます。
  • 藤田さん 研究は、自分で計画を立ててひとりで進めることが多いので、論文を書いた時や学会発表などで「面白い」と言われると、とても嬉しいです。特に異なる分野の人たちから評価されると、「やった!」と思います。

若手研究者が感じた森林総合研究所の印象

  1. 1 研究第一! 研究者は自分の研究に対する興味が強いためか、会話においては互いに無理に同調せず、研究の話をする傾向があります。でもなぜか、それぞれが研究のことばかり話していても、不思議と雰囲気よくまとまります。 (松本さん/新素材研究拠点)
  2. 2 うまくいかない 研究の過程では、最初はうまくいかないことが多いです。そこから自分なりに方法を模索して、試行錯誤が続いた末にようやくゴールが見えてきます。だからうまくいかないことには慣れています。 (小河さん/きのこ・森林微生物研究領域)
  3. 3 森林で道に迷いがち 樹木にくわしくないので景色が同じように見えてしまい、調査地内で自分のいる場所を特定するのにいつも苦労しています。電波が届かないのでスマホも使えませんが、目印を頼りに測定地点を見つけて調査をしています。 (関口さん/立地環境研究領域)
  4. 4 いつも楽しそう 研究者はどなたもいつも楽しそうで若々しく、いい意味で前向きな人が多いです。それが研究者になりたいと思ったきっかけのひとつでもあります。 (藤田さん/森林防災研究領域)

ひらめきを支える相棒たち 私たちの必需品

  • ピンセット 実験では必ず使います。外出時も持ち歩きますし、室内にいる時もだいたい手が届くところにあります。自宅にも置いてあるので、30個くらい持っています。 (小河さん/きのこ・森林微生物研究領域) ノート 実験やプロジェクト、プラント管理など複数の業務のことや、プライベートの用事を全てこのノートにメモしています。パソコンよりも素早く記録できるところがいいですね。 (松本さん/新素材研究拠点)
  • スナック菓子 基本的にはデスクワークが多く、研究室にはいつもスナック菓子を常備しています。高校生の頃から試験勉強の時はいつもそうしていました。スナック菓子は箱でまとめ買いしています。 (関口さん/立地環境研究領域) 野帳とカメラ 樹木の観察では成長を記録しておくことが重要です。まだ確証はないけれど「こうではないか」と推測することも多いので、気づいたことはその場でメモを取り、撮影します。 (藤田さん/森林防災研究領域)

森林産業実用化カタログ

社会のさまざまな場面で研究成果の活用が広がるよう、これまでの研究成果をまとめたカタログを作成しています。そこから4つの研究を紹介します。

  1. 1 大雪による倒木の危険性評価のための着雪モデル 大雪による倒木の危険性を把握するため、樹木への着雪状況を把握し、正確な着雪量を予測するシステムを開発しました。本州以南の中山間地域での活用を想定しています。 2 造林作業を省力化する、電動クローラ型1輪車の開発 傾斜不整地や障害物の乗り越えが必要な現場で、力をかけずに苗木や植栽器具等を運搬できるクローラ型の1輪車です。林業、農業、土木、電力関係などさまざまな業種で活用できます。
  2. 3 日本に自生する菌根性きのこであるトリュフの人工的発生 日本に自生するトリュフの菌を苗木に共生させ、栽培管理を行うことで、安定的にトリュフを発生させる技術を開発しました。各地でトリュフ菌共生苗木の植栽試験を行っています。 4 未利用の針葉樹樹皮を原料とした素材生産技術 針葉樹の樹皮を有効利用するための研究を行っています。樹皮に多く含まれる成分は、石油化学系の樹脂や香料等の代替原料として利用することができます。
森林の恵みを活かした循環型社会の形成には、研究開発によって得られた成果を社会に還元することが必要です。森林総合研究所では、利用希望者、研究への協力者を募集しています。 森林産業実用化カタログ:https://www.ffpri.go.jp/sangakukan/catalog/documents/catalog2025.pdf
森林の恵みを活かした循環型社会の形成には、研究開発によって得られた成果を社会に還元することが必要です。森林総合研究所では、利用希望者、研究への協力者を募集しています。 森林産業実用化カタログ:https://www.ffpri.go.jp/sangakukan/catalog/documents/catalog2025.pdf

今週のまとめ

若手研究者たちは、それぞれ工夫しながら、日々研究に取り組んでいます。そして時間をかけた研究が成果をあげられるよう、組織で支えています。森林は、これからの社会を豊かにする可能性を秘めています。

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お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449

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