野村農林水産大臣記者会見概要
日時 | 令和5年4月4日(火曜日)9時23分~9時50分 於: 本省7階講堂 |
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主な質疑事項 |
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質疑応答
- 民間企業におけるスマート農業の情報漏えいについて
記者
国内の電子機器メーカーに勤務している技術者の中国人男性によって、スマート農業の情報を不正に持ち出された事件が先日、報じられたのですけれども、昨今、農業の現場でも、ITやAIといった先端技術を使われる機会が増えていると思うのですが、こうした不正アクセスによる情報流出やサイバー攻撃といったリスクが増大していることが課題に挙げられていると思います。農水省として、こうした不正流出といったサイバー攻撃に対するリスク、農業現場のリスクに対してどういった対応していくべきだとお考えでしょうか。
大臣
今朝、打ち合わせの時にその話が出てびっくりしました。スマート農業の何が流出したのかというのを知らなかったんですが、ハウスの中の温度管理、水管理といったような仕組み(の情報)が流出したという話でした。実害がどう出てくるのか聞いたのですけれども、まだ今のところは分かりませんと(いうことでした)。シャインマスカットといった物が流出していた(事案)となると大変なんですけれども、(本件のような)そういうもの(の流出)がどういう影響があるのか、どういう必要性を感じて(情報を持ち出して)いたのか分からないのですけれども、いずれにしてもそういった情報管理はきちんとしておかないといけないのですが、その流出した内容自体がそこの会社だけのものなのか、あるいは他の同じような会社が(影響するのか)、そういったいろいろな開発は、農業関係のハウス管理のやり方とか何かについて、いろいろな会社がコンピュータを使った形でやっているものですから、それら(の情報流出)が日本に打撃を与えるようなものなのかどうか。それが盗まれたからといって、日本が何か損害を被るかは(直ちに)分からないのですが、ただ情報管理については、やはりこれは関係者に注意を喚起しておかなければいけないと思いましたけれども、農家が使っているものが流出したのではなくて、そういう技術関係の会社から流出したということなので、どこまで影響、実害が出てくるのか、それを教えてくれと担当課の方には言っておりますが、まだ具体的な中身が分からないので。
- 高病原性鳥インフルエンザ、卵価の現状等について
記者
新年度になりまして、気候も良くなってきましたけれども、鳥インフルエンザは今後終息に向かっていくのかという今後の見通しと、あと鶏の卵が高い状況が続いていますけれども、これについて農水省としての対策と、今後いつ頃には元の値段に戻るのかという見通しをお願いいたします。
大臣
皆さん方にも御心配や御迷惑をかけていますが、鳥インフル、昨年は5月まで最終的に発生しました。昨日も北海道で35万羽の鳥インフル(の感染事例)が発生していますので、そういう意味ではまだ収束したということも言えないし、昨年も5月までは発生しておりますので、まだまだ我々は緊張感を持ってやっていかなければいけないだろうと思っています。そこで影響が出てくるのは卵の値段ですが、4月3日現在で(卸売価格キロ当たり)350円になりまして、これは平年と比べると174%の高い水準になっていますので、物価の優等生と言われていた卵ですけども、350円にまでなったということでして、実はこの前の土曜・日曜、鹿児島に帰ってホテルに泊まったのですが、朝、卵かけご飯が出てきたものですから、大丈夫かとホテルの支配人に聞いたのですけれども、「うちはおかげさまで、卵は順調に入ってきています」と言っているので、久しぶりに卵かけご飯が食えると思って、喜んだ次第です。それで、鹿児島のことを言うと、一番最初に南の方から鳥インフルが入ってきて、鹿児島で感染した農場は13農場あるのですけれども、一昨日から、雛が入りだしたということです。雛を入れるまでは何回もテストをしながら、ウイルスが残ってないことが確認できて、そして雛をテスト的に入れて発病・発症しなければ浄化した鶏舎になっているということでどんどん入れていくのですが、一昨日から、第1号が入りだしたということで、これからおいおい入っていきますので、やはりいつになったら卵の値段が落ち着いて、量的にも潤沢に出回るのかというのはなかなか予断を持って言えないのですけれども、そういう明るいニュースも一方では出てきているということですから、もう少しお待ちくださいとしか言えないです。これはもう感染が拡大をしないという前提での話ですが。
- 花粉症対策について
記者
昨日、岸田総理が花粉症に関する関係閣僚会議を開催することを表明しました。そこで大臣に改めて伺いたいのですが、花粉症が社会に与える影響ですとか、大臣御自身の花粉症との向き合い方など、花粉症についてどのようなものであると捉えられていますでしょうか。また林野庁としては今後どのような対策に特に力を入れていくお考えでしょうか。
大臣
今、マスクをしていますけれども、今日閣議で突然くしゃみが出だしたものですから、迷惑をかけてはいけないと思って、ここでもマスクをしているのですが、私は花粉症なのかアレルギーなのか分かりませんが、花粉症というのはなった人は大変きついんだと、昨日(委員会で)質問をした山田先生も、(以前も)彼が委員会で質問したのを覚えているのですが、やはり彼も花粉症だったんだと思いました。総理が「関係閣僚会議を設置します」と言ったものですから、びっくりしたのですが、総理がおっしゃった以上は関係閣僚会議をやらなければいけないし、作らなければいけないと思っています。総理もそういった気があるのか分かりませんが、私も自分のこととしてやっていきたいと(思います)。原因としては確かにスギ花粉が多いわけですから、私どもの(所管業務の)守備範囲である林野庁関係が一番元凶になっているのだろうと思うのですが、林野庁の方では、この前答弁しましたが、できるだけ花粉の飛ばないスギの苗を今どんどん生産して広げています。花粉の出ないスギというのができていますので、広がっていけば少しずつ収まっていくのではないかというのが一つあります。我が省としては、林野庁中心に花粉のあまり出ないスギの苗を全面的に広げていくというのが1点。それからもう一つは、農研機構の方で、花粉症緩和米という、(症状を)緩和するというお米を今作っているのだそうです。私は見たことがないのですが。花粉症緩和米については、臨床研究なり、消費者の皆さんの理解が必要で、これは遺伝子組換えをしていかないとできないのだそうですが、そういうものを今研究中でありますので、(花粉を)出しているのは山の方ですけれども、(その対策とともに、)それ(の症状)を緩和していくお米の方も農研機構の方で今、研究中ですので、こういったことの実用化に向けて取り組んでいきたいと思っています。ただ、どこがイニシアチブをとって関係閣僚会議をするのか、厚労省なのか、農水省なのかは、官邸の方で調整をしていただけるのではないかと思います。
- 新年度を迎えての抱負について
記者
新年度の1回目の会見ということで、新年度の抱負についてお伺いできればと思います。基本法の検証の本格化に向けてと、あとはロシアによるウクライナの侵攻や、直接的な関係はないかもしれないのですが、欧米の金融不安など、世界情勢が不安定化する中でどのように日本の食を守るのかといったことについても、改めてですがお願いします。
大臣
今、私ども農水省の最大の業務というか、使命は、今作りつつある食料・農業・農村基本法(の見直し)です。これは総理から5年度中に改正案を国会に提出することを視野に6月を目途にまとめ上げなさいという指示を受けていますので、まずはこの食料・農業・農村政策の新たな展開方向をまとめていきたいと思っています。それによって、これからの日本の農業というのをどういう形で変えていくのかということが大きなポイントになろうと思います。皆さん方が考えているようないろいろな課題を抱えていますので、その課題に対して、この基本法(の見直し)の中でどういう整理をしていけるのか、これを6月を目途に我々がまとめたいと思っています。それが新たな我が省の展開方向になってくると思っていますし、今日の新規採用職員への挨拶の中でも、そういったことを私は言おうと思っています。昨年私が就任した時には、今年はターニングポイントになる、日本の農業を変えていかなければいけないし、変わっていくということを申し上げたのですが、いよいよその初年度になってきますので、これらを食料・農業・農村政策の基本的な方向の中に盛り込んで、そして5年なのか、あるいは10年がかりになるのか分かりませんが、要は日本の農業を変えていこう、新たな展開方向に誘導していこうと思っているところです。
- 食料安全保障の強化について
記者
政府の食料安全保障の姿勢について御質問します。岸田政権は前政権の方針を引き継いで、軍事的な安全保障には力を入れていますが、食料の安全保障の強化には目が向いておらず、いざ有事を想定すると穴だらけであるように思われます。例えば、昨年の12月16日に閣議決定をした安保3文書では、中露を敵国視して有事に備えるとありますが、化学肥料のカリウムはロシアから、リンは中国から、これまで購入してきました。ウクライナ紛争でロシアへの対露制裁に加わり、中国に対しては、台湾有事を想定して敵国扱いし、結果、自ら輸出規制等物流停止を招いており、食料生産において、これではセルフ兵糧攻めと言っていいような状況だと思います。早急な備蓄こそが資源のない日本、島国である日本が行うべき政策と思われますが、いかがお考えでしょうか。また、大臣は安保3文書の閣議決定に賛同されました。その安保3文書で食料安全保障を達成できるとお考えでしょうか。もしそうであるならばその根拠についてお聞かせいただけますでしょうか。
大臣
日本の農業の方向を変えていこうという中には、今、御指摘のありました、特に生産資材、なかんずく肥料について、日本にはその原料がないわけですから、どう確保していくのかということが大きな課題になってきています。そこで今お話がありました、ロシア・中国からの輸入が途絶えてしまったら、日本は物を作れなくなるのではないかということも、一つ懸念されているんだろうと思いますが、一番私どもが懸念したのが、リンが中国から一昨年まで9割、中国から輸入していましたので、それが入らなくなるとなったときに、さてどうするかと。そこで、世界を見渡して、それまでも少し取引のあったモロッコに行って、話だけでは駄目だから礼を尽くした方がいいと、私は(大臣就任前)党の中で、それは大臣がリンを生産するモロッコに行って(直接)お願いしてこないと駄目じゃないかと言った覚えがあるのです。そうしたら早速、農水省の方では、武部副大臣がモロッコに飛んだということで、モロッコから今、リンも入ってきています。調べてみますと、モロッコはリン鉱石の埋蔵量は世界一なんです。中国、ロシアよりずっとあるのです。モロッコと流通でちゃんとやっていけば、心配は要らないと思っていたのですが、一つ欠点は、輸送費が高いということです。今まで中国だと3,000トンクラスでよかったのですが、モロッコになるとやはり1万トン級の貨物船でないとコストが合わない。ですから、運賃代が高くなってきていることは事実です。そういったことで、現状として日本にないものですから、そこで、リンを一番含んでいるものは日本では何があるのかと言いますと、鶏の糞、鶏糞です。今まで鶏糞については、なかなか使い道がないということで、私の地元・鹿児島も全国で3位と鶏の羽数は多いのですが、鶏糞の始末に困っていたのです。そうしたら、宮崎の会社が引き取って燃料に使い、それから出る灰が今、引く手あまたになっているそうです。リンを含んでいるものですから、リンを産出するのに鶏糞が一番いいということで重宝がられてきているのです。日本にあるものをなんとか使えないかということで、鶏糞しかり、豚糞しかり、あるいは牛糞もしかり。国内にあるものを使って肥料を何とか、全部が全部はできないのですけれども、ある程度まで確保できれば非常に取り組みやすくなっていくのではないかと(思います)。もう一つは、やはり誰も考えなかったのですけれども、肥料などの原料を備蓄することも考えていかなければならないということで、本年度の予算の中に、その備蓄の費用も予算化しました。資源のない日本ですから、できるだけいろんな組み合わせで、(供給が)途絶えないようにしなければいけないと思っていまして、ロシア・中国から(肥料が)もう来なくなったら、日本はお手上げではないかと思われているかもしれませんが、いろいろ手を使いながら、そういう組み合わせをしながら、日本の生産者の皆さんが困らないようにしたいと思っています。
- 「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」について
記者
物流のいわゆる2024年問題について伺います。先週の金曜日に物流の関係閣僚会議がありまして、総理から、6月を目途に政策パッケージを取りまとめるよう指示があったかと思いますけれども、農水省として今後どのように進めていかれるか、また重点課題と考えていることがあればお伺いします。
大臣
3月31日に物流各種に関する閣僚会議があったのですが、総理からその時に指示がありましたのは、6月上旬を目途に、政策パッケージとして取りまとめるので、農水省、経産省、あるいは国土交通省、そういうところはきっちり(連携)して、総合的な対策の内容を取りまとめるようにという御指示でした。ですから、6月(上旬)までには、政策パッケージとしてとりまとめなければいけません。どこが中心になってその政策パッケージをまとめていくのかというと、農水省だけでも、経産省だけでもできないので、これは官邸の方でその辺のところ(の調整)をやっていただきながら、国交省、経産省なりとそういったことを(連携してまとめます)。我々農水省としては、(課題は)もうはっきりしているわけです。一つは、物を納めるときに3分の1ルールというのがあって、農協のAコープに卸す場合などにその商慣行を見直さなければ在庫が溜まってしまうのではないかという、3分の1ルール。もう一つは、これは大きい(課題な)のですけれども、物を入れて運送するためのパレットというのがあります。これはいろいろ(サイズが)まちまちなのです。それぞれJAはJA、あるいは商系は商系でやっているものですから、積む時に形がバラバラだとさっと積めない問題が出てくるので、やはり統一していかないとトラックに乗せられず、しかも運転手さんが自ら(積載を)やっているものですから、時間がかかるということがあります。私は先般、三ヶ日農協に行ってきたのですが、そこのみかんで有名な三ヶ日みかんというのがあって、そこのオートメーション化された選果場を見に行ったのですが、そこはもうパレットが全部統一されています。今までいた人達を40人減らすことができたと組合長が言っていました。もう全て自動化した感じでトラックに乗せて、トラックの運転手さんはただ運ぶだけ、あとは重機でそれを下ろしてという形で、非常に労働力の軽減に繋がったということを聞きまして、やはりパレットというのは重要な要素になってくると思っています。それから、今ほとんどがトラック運送なのです。他方、一番JRを使っているのは北海道で、ジャガイモ列車とかタマネギ列車というぐらいに、タマネギ、ジャガイモを大量に本土に北海道から持ってくるのですが、それはJRの貨物車を使っている。そこで(他地域でも)トラックからJRへの移行というのも考えていかなければならない。ただ、九州辺りはもう新幹線が通ってしまっていて、貨物列車の便数が少なくなってきているので、今考えて話をJRとしているのは、新幹線を活用した物流はできないかということで、テスト的に、先般から、鹿児島、あるいは熊本から大阪とかに(向けた)、新幹線を活用した流通の仕組みを試験中です。こういった形でいろんな方法で、このトラック問題というのをクリアしていかないとこれはもう待ったなしですから。私はこの前も言ったのですが、要は、これは生産者だけに迷惑をかけるのではなくて、消費者にも迷惑をかける話で、商品が並ばないということになってくると、これはもう農家だけの責任ではなくて、消費者にも大きな迷惑をかける話だから、それを担うところのJAとか、あるいは物流を賄っている方々の責任にもなってくるのではないかと思います。これについては、各省庁と連携しながら3分の1ルールの商慣行の見直しとか、他のものを使った形で(荷積みの効率化など)できないのか、あるいはもう少し物流のコスト、時間の削減なり、労働力を軽減する仕組みはできないのかといったことを(各省庁で)持ち寄って、そして6月上旬を目途に政策パッケージとして打ち出そうではないかと思っているところです。
報道官
よろしいでしょうか。それでは、これで大臣会見を終わります。
以上