野村農林水産大臣退任記者会見概要
日時 | 令和5年9月13日(水曜日)13時02分~13時27分 於: 本省講堂 |
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主な質疑事項 |
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冒頭発言
大臣
ここ最近の農林水産大臣の在任期間について、齋藤大臣が426日、私がちょうど今日で400日になりまして、齋藤さんに次いで長い期間務めた大臣となりました。その間、皆さん方には大変お世話になりましたこと、この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。この1年間を振り返って思うところは、8月に農林水産大臣に就任したときに、私は、「今、ターニングポイントに来ている」ということを申し上げました。それは、世界的な人口増加なり、気象変動、そして食料安全保障上のリスクが高まったということ等を踏まえて、今、ターニングポイントにきているのではないかということで申し上げたところです。これから日本の農業を変えていこうではないかということを役所の皆さんに就任の挨拶で申し上げたところです。このために、農政の基本指針であります食料・農業・農村基本法、20年間、全く手つかずでしたが、その頃の基本法を作った背景と、今では相当乖離しているということで、是非この基本法の見直しをしようではないかと申し上げました。早速、昨年の9月に私は(食料・農業・農村政策審議会に)諮問をしたのですけれども、この基本法の見直しについて検証部会を設けていただきました。この検証部会には学者の先生、団体の皆さん、消費者の代表の皆さん、生産団体の皆さん、各界各層の方々に検証部会に入っていただいて、延べ17回の基本法の検証をしていただきました。9月11日に最終取りまとめの答申をいただきました。昨年12月には「食料安全保障強化政策大綱」を策定し、本年6月には、「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」として、政府としての方針を取りまとめ、食料安全保障の強化に向けた新たな取組を推進してきたところです。また、内外の状況に対する取組を実施してまいりましたが、まず直近では、ALPS処理水の海洋放出によって、一部の国・地域が、輸入規制の強化等を行っていまして、水産業を守る政策パッケージを取りまとめたところです。また、肥料や飼料の価格高騰対策や災害対策、過去最大の流行となった高病原性鳥インフルエンザへの対応。あるいは、九州を中心にした養豚の一大生産地での豚熱の発生(への対応)など、緊急性の高い諸課題に緊張感を持って取り組んできたところです。さらに、本年4月に宮崎で開催されたG7農業大臣会合においては、農業の生産性向上と持続可能性の両立等、食料安全保障に関する新たな指針を盛り込んだ閣僚声明を議長国として取りまとめ、発出しました。また、6月に開催されたG20農業大臣会合でも、この閣僚声明に沿った成果文書が発出されるよう、議長国であるインドに働き掛けました。加えて、将来的に花粉発生量の半減を目指すため、(本年5月の)花粉症に関する関係閣僚会議において「花粉症対策の全体像」を取りまとめまして、各省庁で取り組んでいただいています。その他、1月からの通常国会において、林野及び水産の法律(案)4本を成立させていただき、合法伐採木材等の利用促進や、海業振興についての新たな仕組みを整備したところです。今後は、とりわけ基本法について、農政の基本的指針として、時代にふさわしいものとなるよう、令和6年の通常国会への改正案提出に向けた検討を深化させたいと思っていまして、新大臣にもこのことは強くお願いを申し上げておきたいと思いますし、施策の具体化の検討を今後進めていく必要があるだろうと思っているところでして、残された課題もありますが、新大臣に思いを託して、今日で、私は去りたいと思っているところです。以上がこの400日を振り返って、いろいろな諸課題に取り組んできた所感です。
質疑応答
- 在任中の成果と今後の農林水産行政の課題について(1)
記者
大臣就任1年あまり、内外の重要な諸課題に取り組んでこられました。何か心当たりがあることとか、何か手応えがあったこととか、それぞれについて、お聞かせください。
大臣
大きく印象に残っているのは2つありまして、1つは議長国として、G7(農業大臣会合)を日本で開催したというのが、私にとっては、一番大仕事でした。7か国の農林大臣が全てお見えになりまして、3日間、討議を重ねたのですが、その中で、食料の安全保障という視点を強く申し上げてきたところでして、各国の賛同を得て、食料の安全保障を確認事項として、内外に発表したところでしたが、これの1つのエピソードを申し上げますと、来年(の開催国)がイタリアなのですが、私の隣にいたイタリアの農業大臣が、「おい野村。俺は来年イタリアで、G7農業大臣会合は開きたくない。」とおっしゃるものですから、「どうしてですか。」と聞いたら、「俺達は、こんな日本の皆さん方がもう隙間なくといっていいほど、きちっと時間どおり、しかも、全てのことを漏らすことなく、やり遂げたというのは、俺たちにはとてもではないけれどもできない。」と。できないというのは謙遜だったのでしょうけれど、「来年、イタリアでの農業大臣会合は、俺はやりたくない。」というお話をされたぐらいに、役所の皆さんがしっかりとした決意を持って、農林水産省職員140人の体制で対応しました。会合を開くのに140人のメンバーが宮崎に乗り込んでいって、全てのことを隙間なくやってくれたというのが、非常に評価を受けたと思っています。私もこの任期中に2回ほど海外に行きましたけれども、時間どおりに会議が始まる(国)というのは、ほとんどないと言っていいぐらい、時間的にもルーズな面が他の国にはあったようですが、日本の場合は、きっちりと時間どおり始まって時間どおり終わるという、1つの形ができ上がっていると言っていいと思うのですが、職員の皆さん方が全てパーフェクトにやってくれたと思っていまして、そのエピソードが印象に残っていることの1つです。2つ目は、ようやく基本法の見直しの道筋ができたので、(最終取りまとめの)答申も先般いただきましたので、これを基に新たな法律の改正に向けて、新大臣に申し送っておきたいと思っていますので、一つの方向性を、私の在任中に出せたということは本当にありがたいと思っているところで、(就任の際に)ここで幹部の職員の皆さん方に、「ターニングポイントだ」ということも申し上げて、そして、「日本の農業、変えていこう」ということを、皆さんに申し上げたということが、いよいよこの法律として実現していくというのも、私が農林水産省に来てみて、大きく印象に残ったことでした。他にもいろいろありますけども、大きくはその2つだろうと思っています。
- 今後の農政への関わり方について
記者
大臣、お疲れ様でした。今、基本法の見直しに道筋をつけることができたというお話をいただいたのですけれども、議員として、ずっと一貫して農政に携わってこられたと思いますけれども、今後、党の方で、どのように農政に関わられるか、お考えをお聞かせください。
大臣
党の方には農林部会がありますから、農林部会に入らせていただいて、その中で皆さんと議論をしようと(思います)。役所でいろいろ検討した事項も、全部が全部、党に伝わっているわけではないと思いますので、そういったことも踏まえながら、党の方で議論をさせていただこうと思っています。
- 新大臣の印象について
記者
後任に宮下さんが決まりました。一緒に農政に携わってこられたかと思うのですけれども、宮下さんの印象についてお聞かせください。
大臣
新大臣も私とずっと農林部会で仕事をしてきた仲間です。ですから、宮下さんが基本法の改正に向けて取り組んでいただけると、自信を持ってお伝えできるし、それに十分応えるだけの力量を持った人だと(思っています)。党の農林部会長もやりましたし、そういった意味でも心配することもないし、今度は党の方からエールを送っていこうと思っています。
- 在任中の成果と今後の農林水産行政の課題について(2)
記者
基本法の関係で、1つ道筋をつけられたという成果を評価されましたけれども、法案の国会の提出まで見届けたかったという心残りや、その他やり残した課題についても教えていただけますか。
大臣
基本法につきましては、最後までとなると、これは非常に期間の要る仕事でしたから、大まかな方向性の確認をいただいて、検証部会を17回やったということを申し上げてきましたけれども、いろいろな人達のご意見も伺ってきましたので、それらが全部議事録として残っていますので、新大臣には、その辺も見ていただきながら、法律(改正)をやってもらおうと思っているところです。期待するところ大です。やり残したというか、少し気になっているのが、九州の豚熱の発生でして、ようやく研修会も開かれて、今月末からワクチンの接種が始まります。それで収まってくれればいいなというところが非常に心配でして、担当局の方には重々言っています。農家一戸一戸がワクチンを打つ前に、こちらの方まで豚熱が広がってきたらどうしようと、皆さん大変気になっていましたので、役所の方でも県と連携しながら、早く研修会をやろう、早くワクチンを打とうと、努力していますので、当初の計画よりは前倒しで進んでいると思います。今後、豚熱が広がらないことが一番の大きな課題だと思っています。もう一つが、鳥インフルエンザです。昨シーズン1700万羽の殺処分をしましたので、今シーズンも同じように、鳥インフルエンザが流行していけばこれはまた大変なことだなと。卵を消費者の皆さん方が、ほとんど毎日食べているものでしたので、価格上昇、数が足らない、こういったこともありました。鳥インフルエンザを完全に防ぐのは難しいと思いますので、発生したらすぐに処理して、広がらないようにするということが大きなテーマだろうと思います。これは法定伝染病ですから、鳥インフルエンザと豚熱が拡大しないようにすることが一番の大きなテーマだと私は思っています。
- ALPS処理水の放出に係る今後の取組について
記者
処理水の関係で伺います。失言を受けて大臣自身感じたことと、処理水の放出が始まったばかりということで、対策についてはまだまだこれからというところがあるかと思います。こういったその一連のこの処理水をめぐるところで、感じられたことを通して、次の大臣にはどんな姿勢でこの問題取り組んで欲しいというふうにお考えかお聞かせください。
大臣
処理水につきましては、第1回目の放出は終わり、基準値以下だということも、経済産業省の方から発表されていますので、これで一つの課題をクリアしたのではないかと思っていますし、総理がいろいろな会合に行かれて、このことについての理解を深めようと各国にも話し掛けられています。だんだんとこれが科学的な根拠に基づいた問題のない放出なのだということを理解してもらえるのではないかと思っています。皆さんがそういった意味で、ご納得いただけるような説明を、日本はずっとやってきましたし、総理自身もそういったことを、海外でも発信されていますので、少しずつ理解を深めていかれるのではないかと思います。後任の宮下一郎大臣も、当然農林部会でずっと今までの経過なり、今の取組内容についてもよくご存知の方ですから、私の方から申し伝えるということは、ほとんどないのではないかと思います。
- 農林水産大臣職について
記者
大臣お疲れ様でした。大臣就任期間は今日でちょうど400日ということで、今、ご功績をお話されましたけれども、大臣に昨年初入閣という形で大変お忙しかったと思うのですけども、大臣職についてどう思われていた、どんなことが大変だとお感じか、お伺いしてもよろしいでしょうか。
大臣
皆さんあまりご存知ないかもしれませんけれども、国会議員は大体、日程は自分で作れるものなのです。自分の意思によって、これには出るとか出ないとか選別できて、日常のスケジュール管理というのは自分でできるのですけれども、大臣となりますと自分で日程表を作れるわけではなく、こちらの方の会議に出てくれと言われれば出席しますし、今度、北海道で全国豊かな海づくり大会があるのですが、これは天皇陛下、皇后陛下もお見えになるので、大臣が行かなければならない行事なので、宮下大臣も(就任)早々からそういう仕事があるので大変だと思っていまして、私も最初は面食らったのですが、だんだん慣れて、次はいよいよ北海道だと思っていた矢先に、内閣改造により行けなくなったのですが、今回の失言についても、皆さん方にお詫びを申し上げられる機会にもなるのではないかと思っていたのですけれども、内閣改造となった次第です。
報道官
よろしいでしょうか。それでは、これで大臣会見を終わります。
以上