坂本農林水産大臣記者会見概要
日時 | 令和6年1月30日(火曜日)9時49分~10時03分 於: 本省講堂 |
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主な質疑事項 |
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質疑応答
記者
先週公表された食料・農業・農村の役割に関する世論調査の中では食品価格の値上げについて、許容できると答えた人が75.5%いる一方で、受けいれられる値上げ幅は1割高とした人が最多となりました。基本法改正案の通常国会提出を見据える中で、この世論調査の結果について、どう受け止めているか聞かせてください。
大臣
内閣府が公表した「食料・農業・農村の役割に関する世論調査」では、お尋ねの「食品を購入する際の意識」の質問に対して、食品価格の高騰を受け、1割高までであれば許容できると考えている人が37.5%、1割高から2割高までであれば許容できると考えている人が29.8%でありました。さらに、これらを含めて値上げを許容できると答えた人の割合は、全体で75.5%と高い一方で、昨今の食品価格の高騰に対して実際にとった対応は価格の安いものに切り換えたという人が59.5%でありました。このように本調査では、食品の値上げに対して、一定程度許容する意識はあるものの、行動変容まではつながっていないという実態が浮かび上がったものと考えています。いずれにしても、生産資材や原材料の長期的な高騰が見られる中、食料の安定供給を持続的に行っていくためにも、これらの費用の動向について、生産から消費までの食料システムの関係者間で正しく認識されるとともに、消費者に実際に行動を変容していただくことが、適切な価格形成に必要であると考えており、関係者の理解醸成等を促してまいります。
記者
能登半島地震について2点お伺いします。農地の被害に関して、現状更新されて把握しているものがあれば教えてください。2点目が先日の生業支援パッケージで、水産基盤等の緊急調査等も行うということがありましたので、その調査の進捗状況と、まだ途中経過ですが改めて被害についてどのように認識されているか教えていただければと思います。
大臣
今般の地震による、農地の被害については、1月29日現在で、石川、富山、福井、新潟、長野、岐阜の6県で432か所の被害が報告されています。他方で、降雪などにより、現地での被害状況の全体像の把握には、一定の時間を要することも想定されます。引き続き、被災自治体と連携し、被害の速やかな全容把握に努めるとともに、1月25日に取りまとめた「被災者の生活と生業支援のためのパッケージ」を踏まえ、来年度以降の営農への影響が最小限となるよう、査定前着工制度を活用するなど、農地等の早期復旧を図ってまいります。なお、農地被害の全容が明らかになった段階で、同パッケージにおいて対応できないことがあれば、追加措置についても検討していきたいと考えています。
漁港について、今回の緊急調査は、漁業の一日も早い復旧に向け、地盤隆起等の被害実態を把握するための詳細な調査等や復旧方針の検討を行うものです。いずれも、地元自治体との連携が不可欠であることから、現在、速やかな実施に向け、石川県との協議に入ったところです。今後、調査の結果を踏まえて、短期的な生業再開のための仮復旧と中長期的な本復旧を適切に実施してまいります。その際、地元の皆様との対話が重要であり、県とも十分に調整を図りつつ、段階を踏んで、地元の漁業関係者の意向を尊重しながら、丁寧にきめ細かく対応してまいります。
記者
先週、大臣が地元の熊本にいた際にTSMCの第2工場について発言されたと報道がありました。こちらについては、まだその詳細というのは明らかになってない状態でして、TSMC側も否定するコメントなどを述べていると台湾の報道でもあります。加えて、所管は多分、経済産業省だと思うのですけれども、一応、まだ明らかになっていないことなので、それを公の場で明らかにしたことについてのご所感をお答えいただければと思います。
大臣
この発言は、今度知事選がある中で熊本として、これからの備えとしてこういうものが必要であるというような文脈の中で、私が以前に新聞等でも読んでいた第2工場について触れたというようなことです。今、おっしゃいましたように、TSMCの方からは、第2工場については進捗はないというコメントがあったと承知しています。そういうことで、私のコメントは差し控えたいと思いますけれども、今後、緊張感を持って対応してまいります。
記者
温室効果ガスの排出削減量を認証するJ-クレジット制度で、水稲の中干し延長による削減実績が初めて認証されました。これについての受け止めと、J-クレジット制度について、期待することがあれば聞かせてください。
大臣
農林水産省では、みどりの食料システム戦略に基づき、温室効果ガスの排出削減に資する取組を後押しするため、J-クレジット制度の活用を推進しています。先週26日、J-クレジット制度の認証委員会が開催され、水稲栽培における中干し期間の延長、家畜排せつ物管理方法の変更の2つの方法論に基づく、排出削減量が初めて認証され、J-クレジットとして取引可能となりました。特に、水稲栽培における中干し期間の延長は、生産現場において比較的容易に取り組め、かつ水田からのメタン排出が3割削減できる、大変効果的な手法であり、今後、さらに取組が広がっていくと期待しています。引き続きJ-クレジット制度を推進することで、地球温暖化対策に加え、販売収入も期待できることをしっかり周知しながら、農業分野における取組を拡大してまいります。
記者
今日、農林水産物と食品の輸出実績、去年の分が公表される予定となっていますが、改めて中国による水産物の輸入停止措置が及ぼした影響についてどのように考えているかと、足元で輸出先の多角化の取組の進捗についてどのように評価し、これからさらに輸出を伸ばしていくためにどのような取組が必要と考えているか聞かせてください。
大臣
2023年12月の農林水産物・食品の輸出実績については、本日夕方公表予定ですので、詳細についてのコメントは差し控えます。これまで公表された昨年11月までの農林水産物・食品の輸出実績では、中国向けの輸出については、昨年1月から6月までは、毎月対前年比増で推移しましたけれども、放射性物質等の検査措置が強化された7月以降は、毎月対前年比減に転じました。9月以降は、真珠等を除く水産物の輸出額がゼロになりました。中国については、我が国水産物の主要な輸出先国であったことから、中国による水産物の輸入停止措置については、少なからず影響があったことは否定できませんが、中国以外の輸出先の開拓に取り組んでいるところであり、アメリカ向けのホタテの輸出額は、昨年9月から11月でみますと、対前年同期比で約2倍となるなど、一定の成果が見られるところであり、これらの活動の今後の成果に期待しているところです。ホタテ等の輸出先の転換、多角化を進めるため、「水産業を守る」政策パッケージに基づき、ホタテ等の一時買取・保管支援、海外を含めた新規の販路開拓の支援、ビジネスマッチングや飲食店フェア等の支援を現在実施しているところです。昨年12月の輸出実績は現在集計中ですけれども、9月から11月までの実績を見ると、一部で輸出先の転換が進んでいます。アメリカ向けのホタテの輸出額が前年同期比で約2倍となっているということを先ほど申し上げました。また、ベトナムにおいても、殻むきを行い米国へ輸出するルートの開拓のため、国内の生産者、輸出事業者による現地視察商談ミッションの派遣や、外国人バイヤーの国内産地への招へいにも取り組んでいるところです。今後もホタテ等の輸出先の転換、多角化を進めてまいります。
記者
先ほどのTSMCの件ですが、熊本ではおそらく交通渋滞とか、農地の転用とか様々な問題が出てくると思うのですが、その中で発言されたという趣旨だと思うのですが、一方で、まだ未公表情報で合弁会社の上場企業に株価にも影響を与える可能性もあるような発言でもあるので、その中でさっきおっしゃったように緊張感を持って、少し言い過ぎだったとかそういう思いを持っているということでしょうか。
大臣
今後の熊本の備えとして、私が発言したことであり、今後しっかり緊張感を持って取り組んでまいります。
報道官
よろしいでしょうか。それでは、これで大臣会見を終わります。
以上