坂本農林水産大臣記者会見概要
日時 | 令和6年4月5日(金曜日)8時45分~8時56分 於: 本省講堂 |
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主な質疑事項 |
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質疑応答
記者
静岡県の川勝知事は職員への訓示の中で、「静岡県庁というのは、別の言葉で言うとシンクタンク。毎日毎日野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたり、あるいは物を作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです。」などと発言しました。農業などを引き合いに職業差別とも受け取れる内容ですが、農業を所管する大臣としての受け止めをお願いします。
大臣
ご質問の発言は、国民の食ばかりではなく地域の経済やコミュニティを支える農業者の皆様にとって残念なものであり、農村地域に生まれ育ち、これまで農業の現場における創意工夫を見てきた一人の政治家として、憤りを禁じえません。私自身は、行政は現場の単なるコンサルではなく、現場と価値観や将来構想を共有した上でこれからの日本の農林水産業を作り上げていくものと考えています。引き続き、現場の声をしっかりと伺いながら、現場の皆様とともに、農業が直面する課題に一つ一つ取り組んで参りたいと思います。
記者
環境負荷低減の取組について、大臣は衆議院(農林水産)委員会で営農支援の新たな取り組みについて考えを明らかにされましたけれども、その仕組みの概要とねらいを教えてください。
大臣
農林水産業・食品産業においても、環境負荷の低減を図ることは、待ったなしの重要な政策課題と考えています。このため、農林水産省のすべての補助事業等に対して、最低限行うべき環境負荷低減の取組を義務化する「クロスコンプライアンス」を令和6年度から試行実施しています。さらに、令和7年度より次期対策期間が始まる、環境保全型農業直接支払交付金及び多面的機能支払交付金については、有機農業の取組面積拡大や環境負荷低減に係る地域ぐるみの活動の推進といった観点から見直しを検討することとしています。その上で、より進んだ環境負荷低減に取り組む農業者にとって、十分なインセンティブとなるよう、令和9年度を目標に、みどりの食料システム法に基づき環境負荷低減に取り組む農業者による、先進的な営農活動を支援する新たな仕組みに移行することとしており、具体的な内容についてはまさに検討を進めているところです。
記者
アメリカ向けの牛肉の輸出について、日本が他の国と共同で利用できる、年間6.5万トンの低関税枠を今年は2月までに消化しましたが、今後の輸出への影響をどうみているのかと、低関税枠に関するアメリカへの働きかけについて聞かせてください。
大臣
米国の複数国向けの低関税枠については、2月27日に全量消化された旨、米国時間の3月4日に公表されました。今後、米国向け牛肉輸出がどう推移していくか注視していく必要がありますけども、事業者からは低関税枠の早期消化は想定しているところであり、枠の消化後も安定した輸出を継続していく方針と聞いているところです。農水省としては、枠の消化後も安定的な輸出が続くよう、中西部・南部など未開拓の消費地への浸透に向けたプロモーションや、高級部位であるロイン系に加え、比較的安価なその他の部位の需要開拓等を支援するなど、引き続き、米国向け輸出の拡大を進めてまいります。なお、この牛肉低関税枠の全量消化は、昨年が5月2日、それから一昨年が3月28日、3年前が12月17日と、時期は異なりますが、我が国の年間を通じた米国向け牛肉輸出の総量で見ると、業界と政府が一丸となった輸出拡大の取り組みが功を奏して、それぞれ1,143トン、1,073トン、1,178トンで推移しているところです。いずれにせよ、農林水産省として、この低関税枠が輸出業者にとって、より利用しやすいものとなるよう、今後も、様々な機会を捉えて、米国政府に対して、粘り強く働きかけを続けてまいります。詳細については、相手のある話ですので、コメントを差し控えたいと思います。
記者
食料・農業・農村基本法の改正案で、14条「消費者の役割」をかなり拡充しています。環境の負荷と、価格も含めた持続的な生産ということが(持続的な生産に資する)物の選択に努めると、一歩踏み込んだ表現かと思いますが、ここを盛り込んだ意図・ねらい、どの程度の消費者の行動変容を期待するのか、答えをお願いできればと思います。
大臣
持続的な食料供給が第一ですので、それを可能にするためには、基本法改正案で新たに基本理念に位置付けている環境との調和などについて、生産から流通、消費までの「食料システム」の関係者が一体となって取組を進める必要があると考えています。こうした農業者、食品産業の事業者における基本理念の実現に向けた取組は、最終的には消費者の購買活動によって支えられることが必要であるため、基本法改正案において、消費者の役割として、食料の持続的な供給に資する物の選択に努めることを位置付けたところです。これにより、消費者には、現在の生産現場の実態等にもよく御関心を持っていただき、環境負荷低減などの食料の持続的な供給に資する取組がなされている商品を、積極的に選択するといった行動を期待しています。今回の基本法の改正も踏まえつつ、食料の持続的な供給の実現に向けて、消費者の理解の増進が図れるよう、農水省としても必要な取組を行ってまいりたいと考えております。以前の会見で、(ボードを用いて)星印でこれだけ環境負荷低減が図れるというようなものを示しましたが、あのような形で、消費者の皆さんの行動変容を図っていき、結果的にそれが環境負荷低減に繋がればと思っています。
記者
川勝知事の先日の職業差別ともされる発言において、川勝知事は謝罪はしましたけれども、撤回はしなかったということで、地元の県議団の一部からは、撤回や辞任を求める声もあるが、農水省としてはこの発言に対しての撤回を求めるなどの考えはないのでしょうか。また、撤回を求めないのであれば、その理由等も伺えればと思います。
大臣
発言そのものに対しては、やはり憤りを感じます。しかし、知事の発言ですので、そして辞意も表明されたということですので、あえて撤回は求めませんが、やはり我々の第一次産業から考えた場合には、強い憤りを感じるということを表明させていただいたところです。知事の発言一つ一つについて、政府の立場でコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
報道官
よろしいでしょうか。それでは、これで大臣会見を終わります。
以上