江藤農林水産大臣就任記者会見概要
日時 | 令和6年11月12日(火曜日)10時20分~11時20分 於: 本省講堂 |
---|---|
主な質疑事項 |
|
冒頭発言
大臣
皆さんこんにちは。このたび、農林水産大臣を拝命した江藤拓です。よろしくお願いいたします。
我が国の農林水産業は、農地を守り、山を守り、漁業を通じて国境を守るといった役割を担っており、まさに「国の基」であり、国民の皆様方にとってかけがえのないものです。
しかしながら、我が国の農林水産業を取り巻く環境は大きく変化しています。ロシアのウクライナ侵略の際には、小麦や肥料、飼料などの価格が高騰し、国民生活は多大な影響を受け、生産現場も苦境に追い込まれました。また、基幹的農業従事者は、現在、約116万人ですが、平均年齢は約68歳、20年後には、約30万人まで減少してしまうおそれがあると指摘されています。
基本法が制定されてから25年が経過する中で、このような環境の変化に対応し、時代にふさわしい基本法とするため、先の通常国会において、農政の憲法とされる「食料・農業・農村基本法」が改正されました。
しかしながら、基本法はあくまでも理念法であります。この理念を実現するためには、まず、食料・農業・農村基本計画をしっかりと策定し、それに基づく制度設計、そして必要な予算、これを確保することが不可欠です。
今まさに、日本の農政は大転換が求められています。このため、初動の5年間を農業構造転換集中対策期間と位置付け、計画的かつ集中して必要な施策を講じることにより、強い生産基盤を確立し、人材の確保を図ってまいります。
さらに、資材費等の恒常的なコスト増を生産者だけで賄うことが困難となっている中、国民の皆様に、持続的な食料供給を可能とするためにも、合理的な価格の形成が必要となってまいります。この点において、消費者の役割として、「食料の持続的な供給に資する物の選択を通じて、食料の持続的な供給に寄与する」旨もしっかりと基本法の条文に書き込まれています。合理的な価格の形成の仕組みの法制化など、関連法案の次期通常国会への提出に向けた検討を進めてまいります。
森林・林業分野については、2050年カーボンニュートラル等の実現に向けて、林道等の整備、森林の循環利用、再造林を確保するため、林業経営体の育成及び集積・集約化、CLT等の活用など、川上から川下までの取り組みを総合的に進めてまいります。あわせて、花粉症対策を着実に進めてまいります。
水産分野については、ALPS処理水の海洋放出を受けて、一部の国・地域による、科学的根拠なき輸入規制に対し、関係省庁と連携し、国産水産物の消費拡大に努めるとともに、支援策等を着実に実行してまいります。また、水産資源管理の着実な実施、海洋環境の変化を踏まえた、新たな操業への転換、養殖業への成長産業化を進めるとともに、「海業(うみぎょう)」の全国的な展開により、地域の所得向上と雇用機会の確保を図ってまいります。
また、先月、今季初となる、高病原性鳥インフルエンザの発生が確認されました。最大限の緊張感を持ちながら、発生予防・まん延防止に引き続き取り組んでまいります。農林水産業の皆様がやりがいと希望、夢を持って働ける、農林水産業・農山漁村を実現するため、2万人の農水省職員とともに、現場の声に丁寧に耳を傾けながら、全力を尽くしてまいりますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。
質疑応答
記者
2019年に続いて2度目の農水大臣に就任されます。かねてより、農業分野については長く活躍しておられたと思いますが、改めて、農水大臣に再任された抱負を伺います。よろしくお願いします。
大臣
さまざまな思いはありますが、党で調査会長として、基本法改正に深く関わってまいりました。なぜ基本法を改正したのか。それは、これまでの農政を今まで通り続けていくことが農業の未来には繋がらないと。現状の変化を踏まえて、まず憲法である基本法を改正して、基本計画をしっかり作って、そして農林水産業の予算を増額し、将来に繋がる、国民の期待にこたえる農林水産業を推進したいという思いで、作業を党内で行ってまいりました。
そして、小里前大臣は非常に農政にも精通した立派な方です。しかし、さまざまな要因が重なり、残念ながら彼がこの業務に携わることが出来ずに私が引き継ぐことになりましたが、これも天の配剤なのかなと思います。党内で作業を行い、そして今度は役所の中に入って、実際の作業を役所の職員と一緒にやれることは、非常に自分としてもやりがいを感じています。責任があると思っていますので、この作業については、全力を注いでやってまいりたいと。
そして、これまでの国会と違って、野党の諸君のご意見にも真摯に耳を傾けてまいりたいと思っています。これまでの委員会質疑は、やもすれば、質疑時間が終われば、閣法、議員立法も含めて与党の原案がそのまま通る場面が多かったと。もちろん、与党としては責任を持って、自信を持って法案を提出しているわけですから、それが悪いということではありません。しかし、私はさらに熟議の国会にすべきだろうと。そして、きっと野党の先生方も、もっと現実路線に立ち、一定の責任をしっかり共有していただきながら政策提言をしていただけるのではないかということを信じています。ですから、丁寧な質疑、答弁を心がけ、農林水産委員会、予算委員会などさまざまな場面で熟議の国会だったと、多様な角度で多様な意見が取り入れられ、最終的には、良いものに昇華されていったという国会にできればいいなと、さまざまな思いがありますが、そういうことを思っています。
記者
大臣が、農水大臣でいらっしゃったときに、日米貿易交渉が妥結したタイミングに確か、次官室の隣に仮設ベッドを置いて、夜通し大臣が見守っておられたと記憶しています。奇しくもまたトランプ大統領が就任しました。当時のTAGの経緯からすれば、その第2段階交渉が残っているという話にもなっていたと思いますし、トランプ政権になり、通商に対して関心が強い大統領ということについて、今後について懸念する声も一様に上がっていると思います。今後の対応方針、見通しについて所見を伺います。
大臣
ディールとおっしゃる方ですから。何が出てくるかということは、自分なりに全く心配していないかというと、それは嘘になります。でも、具体的な内容をお示しいただいているわけではありませんし、今この段階で、トランプ政権が誕生したから、自分としてはこう対応をしたいということを答えるのは、時期尚早であろうと思っています。
記者
先ほど、現下の衆院選の結果を受けた、国会の状況も踏まえて、野党の方の意見に真摯に耳を傾け、委員会、法案審議をという話をしたと思います。当面、注目される点としては、どうしても国民民主党の動向が気になるという中、国民民主党は衆院選の公約でも、農政をめぐっては直接支払いの見直しや、水活については水張り要件の見直しを掲げていると思います。こうした国民民主党が掲げている政策テーマについて、どのように対応するのか伺います。
大臣
私も党内で調査会長として、水活については主導的な立場をとってまいりました。一昨日、東京にいたのですが、その前に、牛の子の競り場に朝早くから行って、生産者の方々の声を聞き、その空気を吸って、それから東京に行こうということで、話を聞いてきました。そこでやはり水活の話は出ました。ただ、多分に誤解があると。
例えば、その方が私に言ったのは、水張りをしたら、認めてもらえると聞いたので、ちゃんと水路も整備して水張りしたと。そしたら、役場の人間が来て代掻きをしないと認めないと言われたので、仕方がないから代掻きをしたと。代掻きはもう田植えの準備だから、あなた方もご存知のとおり、そこまで厳しくされたら、たまったものではないって話。私もびっくりして、そんなことはそもそも要件にしてないんです。
ですから、まだ現場には誤解があるのだろうと思います。農水省の職員も、現場への説明会に回数数えられないくらい行ってもらいました。私からも指示して行ってもらいました。坂本大臣からも指示していただいて行っていただきました。しかし、それでも現場ではまだ混乱がある。ですから、この制度自体が十分に理解されてないということが一つの問題です。
そしてもう一つ、率直に申し上げますが、会計検査院から、JAと本省にも検査が入りました。何も手をつけずに、我々が座して見ていたら、この水活の制度自体が不適切であるという審判をくだされると大変なことになってしまうので、会計検査院のご指摘に沿った形で、現場の意見を活かしながら残すにはどうしたらいいかという難しい議論、党内で議論して。水田活用ですから。名は体を表すではないですか。水ですから、水田活用ですから。水張り要件をつけざるを得ないという判断だったんです。それぞれの地域で、それぞれの事情があることは私もよくわかります。私も地元では、かなりこの水活では苦情をいただいています。しかし、農家の間でも、あの人のところは水田でないばかりか、畑でさえない。なのに水活の金が出ている。おかしいじゃないかという指摘が実はあったんですよ。農家間の不公平感というのもすごくありました。ですから、これを何とか残すための難しい判断のもとで、今の状況になっていることはご理解いただきたいと思います。このことも丁寧な説明を委員会等でしたいと思いますが、そこから一歩も動かないのかということはまた別の話だと思います。この場で譲るとは申し上げません。見直すとも申し上げません。しかし、委員会の場は議論の場ですから、そこで活発な議論が行われて、それを私は受け止めて、そして、当然、自民党の新しい調査会長にも報告し、政調会長、部会長にも報告して、自民党内でもいかにあるべきかの議論をしていただいた上で、新たな方向性が出るかもしれません。ですから、この段階で、国民民主党さんのご要望を受け入れるとか、受け入れないということについては、お答えできないです。
直接支払いについては、色々な考え方があります。例えば、日本の直接支払いの比率が低いという指摘がありますが、ヨーロッパに比べて、日本は金額ベースで、総農業生産に対して61%という数字を出しています。数字のとり方は色々とあります。それにはマルキンとかも入っています。では農家は自分の手取りの61%を国からもらっているかといえば、そんなにもらってないと思われるでしょう。農家の実感とずれている部分あるだろうと思います。100%否定するつもりはありません。私も地元は中山間地域が多いです。急傾斜を中山間地域直接支払の対象にしています。棚田地域支援法も作りましたが、中山間地域にも平らな農地はいっぱいあるんです。ですけれど傾斜がないと、平らなんです。ではそこは条件不利地じゃないのかと。私はそういう疑問を昔から持っていました。そういったところで大規模に畦畔をとって、区画を大きくすることも難しい。そういうところで営農を続けていただいている農家の方々に対して、中山間地域直払から漏れたところについて、全く手立てがないのかというと、私は考える余地があるのではないかと。この責に就いてからではなくて、ずっと思ってきました。ですから、例えば、非常に農地の条件が良い、区画整理もしっかりやった、暗きょ排水も全部入れた、大型の日本で一番大きいトラクターも全部入る、そういうところまで直払いの対象にすることが適切かどうかということも議論としてあるでしょう。さまざまな議論があると思います。そういうことも含めて、(農林水産)委員会、予算委員会なりでしっかり議論し、そして、私は党との連携も重視したいと思っていますので、党内でも議論をしっかりしていただく。そうなると財務省とも当然話をしなきゃいけない場面も出てくるでしょう。そういったことも考えると、やらなきゃいけないことはたくさんあると。
そして、申し上げておきますが、国民民主党さんだけを見ているということでは決してありません。国民民主党さんからそういう提案があったことは承知していますが、立憲民主党さんであれ、維新さんであれ、等しく、共産党も含めて、もちろん、れいわ(新選組)も含めて等しく、あらゆる政党の所属委員の先生方の意見から、国民民主党さんのいうことは特に尊重するということではなく、委員会での質疑はそれぞれ尊重していきたいと思います。
記者
冒頭の挨拶で、食料の合理的な価格形成の必要性に触れていました。現在も協議会の方で議論が進められています。これは生産者だけでなく、食品産業界も非常に注目しているテーマと認識しています。改めて来年の適正な価格形成に関する法制化への意気込みを聞かせてください。
大臣
意気込みと言われれば、やるしかないと思っています。ただ、フランスのエガリム法をお手本にしようということで、党内議論が始まりました。しかし、現実にフランスでこの法律がどれほどの実効性を発揮しているか。他国の政策について、論評することは避けなければならないかもしれませんが、それを踏まえた上で、あえて申し上げれば、これができたことによって、極めて価格形成が円滑に行われているというような段階にはまだ至っていない。しかし、学ぶところはたくさんあると思います。そして、これは、生産、加工、流通、小売、消費、特に消費者の方々のご理解がなければできません。食料安全保障ということをしっかり国民の皆様方に理解していただく必要がある。先ほど申し上げたように、基幹的農業従事者が恐ろしい勢いで減ってしまう。農地面積も非常に少なくなってしまいました。今の耕作している面積、それから耕作をしていない、耕作放棄をしている面積を合わせても、食料安全保障の確立には足りない面積です。そういった意識をこの業界の人だけではなくて、国民の方々にいかにご理解していただくか、これがこの法律がしっかりと実効性のあるものになるかどうかの一つの鍵になるのだろうと思っています。通常国会には必ず出します。難しい作業ではありますが、これも党と連携をしながら、他党の先生方のご意見も聞きながらよいものにしていきたいと思っています。
記者
カーボンニュートラル2050に向けて森林に対する社会的な関心が非常に高まりを見せていると思うのですけれども、その中で持続可能な森づくりに向けてどのようにするか、非常に大事な時期を迎えているのではないかと思います。その中で、川中だと木材利用の推進拡大、川上だと林業の担い手の育成確保、事業体の強化、そういったテーマが挙がってくるかと思いますが、これに向けてどのように進めていく考えなのか、聞かせていただきたいと思います。
大臣
今、問題点については、具体的におっしゃっていただいたので、それらのことについて、やはり政策を打つ必要があります。しかし私が常日頃から考えていることですが、どうして国土の70%を占める森林面積、そして、もう伐期を迎えてしまっている50年生の木がいっぱいある。よく言われている、切って、使って、植えて、そしてもう一回育てる循環をどう実施するかは、なかなか簡単ではない。今の再植林の補助率、全国的にばらつきがありますが、62%とか65%ですから、30年40年先にしか金にならない木をもう一回植える。そしてシカに食われたりもする。そういったことを考えると、林業の予算も当然増やす必要があると思っています。そして担い手のお話もされましたが、やはり山で暮らしていける人たちの基本的な収入を上げていかないと、そこで暮らして、家族を養い、子を育てて、暮らしていく。その生活が成り立つだけの所得を確保できるようにするには、どうしたらいいのかということは、ずっと悩んでいます。私が大臣になったからすぐできるとは言いませんが、そういう問題意識は強く持っています。私の地元には、林業大学校ができました。しかし卒業生が、全員林業についてくれるかというと、実はそうではありません。そしてこれから外国人の問題も出てきます。研修制度も変わりました。特定技能制度の対象になったということですから、非常に山の仕事は難しいので、私の友人もたくさん山で死んでいます。命を落としています。そういうことを考えると、簡単な仕事ではない。しっかりと研修を行いながら、これだけ人が足りない時代ですから、外国人の利用も含めて、山の活性化については、力を入れてやりたいと思っています。何といっても、私の選挙区は山ばかりですから。やはり中山間地域は農業、林業、それから特用林産物、公共事業、さまざまなものが、一つになって収入を得ているので、やはり林業は柱であると思っています。
記者
水産庁の予算確保に向けた展望、特に未来志向の予算をいかに確保していくかについてお聞きします。例えば、水産庁の予算のうち、物価が高いから、漁船だとか資材を買うのを手当しようとか、漁業者の減収を補填しようとか、ある意味短期目線の予算がちょっと肥大化してしまっているという指摘があると思います。一方で、例えば、気候変動も含めて、どんな魚がどういう理由で減ってしまったからどう対策しようという研究の予算が、しばらく減り続けていたり、それ以外にも養殖の技術だとかを大規模化していかに活かしていこうとか、そういう未来志向で、実際に採算性を高めていくようなところには予算が十分ついてないのではないかというのは、省内も省外も含めて、意見が出ていると思うのですけれども、こういう状況があると言われていても、業界団体とか、周りの先生方からはどちらかというと、短期目線の保証をしっかりしてくれという声が強いと言われているので、いかに合意形成を図って、未来志向の予算を確保、獲得していくという展望が何かあればよろしくお願いします。
大臣
言われることはよくわかります。漁業法改正して、さまざまな変化がもたらされました。育てる漁業を重視していかなければならない。国の方針として、ファーストペンギンという話をするではないですか。新しい産業分野を成長戦略として育てていくということであれば水産業も同じです。そして資源調査とかの予算が減っていることは、私はいいことではないと思います。ただ、ご理解いただきたいのは、非常にタイトな予算の中で、今、おっしゃったように、今すぐ対応しなければ漁業の現場が立ち行かなくなるという場面も多々あったわけです。最近は、獲れるものが変わってしまったり、赤潮が発生したりさまざまなこと起こって、今に対応するのも政治の責任ですから、短期的な政策がおろそかになることもあってはならないのだろうと思います。対症療法だと言われればそのとおりですけれども。その一方で、これだけ水温の変化がある。私の地元でも、もう本当に海が変わりました。私は魚釣りが趣味なので、時々沖縄で釣れるような魚を釣るようなこともあります。実際問題です。そういうことになれば、漁法も変わる漁具も変わる、そして、船の形態も変わるかもしれない。そういった変化に対応するためにも、その変化がどのような変化が起こっているかを知ることは、とても大事なことだと思います。やはりエビデンスに基づいて計画を立てないといけないと思います。
そしてもう一つは、私は門川町というところで生まれたのですけれども、沿岸漁業、底引きとかはえ縄、もういっぱい小さな船でやっているのです。まあ船齢が古い。見事に船齢が古い。儲かる漁業もあるので、大型のまき網とかは、大分更新をされました。しかし、これも問題があって、今の補助率でいうと、これだけ新造船を作るコストが上がってくると非常に負担が大きい部分もあります。そして小型船についてどうするのか。もう本当にサビが表面から見えるような船が一生懸命操業しているのです。ですから沿岸漁業と、まき網のような船と、遠くに行く船と、さまざまな漁業形態あるので、そういったところを私は漁村を守りたいという気持ちがすごく強いので、私が大臣になったからといってすぐできると思っていませんが、ただ問題意識は持っていることだけお答えしておきます。
記者
米政策について、お米の今年の端境期の需給のバランスが崩れて、店頭での品薄が発生し、消費者からの米政策への関心もかなり高まったと思います。石破総理は総裁選のときから、米について、増産と輸出拡大といったことにも言及されていましたが、先ほど大臣からもありましたように、水活等を含めたその交付金とか、生産調整、また備蓄米、輸出といったところに関しまして、米政策の生産調整の見直し等について聞かせてください。
大臣
生産調整という言葉がずっと当たり前に使われているのですが、定義の置き方の問題なのですが、生産調整はしてないのです。あなたのとこはこれだけしか作っちゃいけませんとか、これを超えたらペナルティがありますとか、そういうのはもうないので、あくまでも、農家の自主的な判断によって、飼料米を作るのか主食用米を作るのか、酒米を作るのか、それから、畑に転換する政策は14万円、2年目からは2万円、そういう政策を作ったりして、その国がオブリゲーションとしてやっているのではないということは、まずわかってご質問されていると思いますけれども、わかっていただきたいと思います。そして、米の値段が上がったといって、スーパーの店頭から消えた、これが国のせいだというご指摘も十分ありました。坂本大臣もご苦労されたみたいですけれども、まず、天候不順ということがありました。農林水産業は天候とはガチンコの勝負なので、これはありうべきことなのです。ではそれを見越して、多めに作ってとくかという議論は、なかなか農家の方々はやはり手取りを考えますから、そういうこともされない。ということであると、米1杯、皆さんご存知でしょうけど、大体40円。値上がりする前だと35円。私は、お米の値段が上がって消費者の方々が大変困ったと、家計が苦しいのにというお気持ちはよくわかります。ただ、現場の声をそのまま伝えさせていただくと、ようやく米は我々が望んでいる水準に近いものになったと。これで来年も頑張って米を作ろうと。ようやくこれで米を作ることに張り合いが持てると、ありがたいと言っている農家の方々もたくさんいるのです。我々は、離農を防がなければなりません。農業を諦める人を防がなければなりません。農業をやる人たちは、聖人ではありません。一次産業ですから、産業ですから、収入へはやはり敏感です。ですから、今の値段が高くても仕方がないのだと、高くても当たり前なのだと言うつもりはありませんが、ただ、今回のことによって、農業の現場では一息ついたという声も、多々あるということであります。それから、総理の総裁選におけるご発言については、私もよく承知をしています。これについては、総理とよく話し合いをしなきゃいけないと思っています。まだそういう時間が持てませんが。輸出をいっぱいしたい、輸出をたくさんしたいというのは全く同意です。ただ、安倍政権の時から、私も輸出担当補佐官だったので、中国まで行って必死にやりました。もうそれは売りたいと言っても、じゃあ買ってくれる人たちがどれぐらいいるかという問題はあるので、そこをやはり考えなければならないだろうと思います。自民党内で考えてきた米政策、それから、総理がお考えになっている米政策、そして野党の先生方が求めている米政策、それぞれ少しずつ乖離があると思いますが、それはやはり熟議の国会の中で、整理をしていきたいと思っています。
記者
食料自給率について、基本計画の策定が今、進んでいるかと思います。食料安保という面も含まれて、増産、国民の食料安定供給というところも含めて、食料自給率には国民の関心も非常に高く、それだけではない新たな指標を作るとなっていますが、食料自給率という数字に対する関心が高い中で、現在カロリーベースで45%とされていますが、その数値について何か変更等の考えはありますか。
大臣
これはまだ数字を今日、申し上げることはできません。申し上げることはできませんが、食料を生産するには基盤が必要です。まず、日本にはどれだけ農地面積があって、どれだけの面積が耕作可能なのか。そして、農地があっても、そこで生産してくれる人たちがどれだけいるのかということも大事です。工場であれば、どれだけのラインがあって、どれだけの工員の方々がそこで働いていただけるのかということで生産量が決まるわけです。しかし、日本の国内を見れば、だんだん少子高齢化が進んでいく、なかなか止まらないです。高齢者が増えれば、胃袋の大きさがだんだん小さくなるので、生産量が同等であれば、人口が減れば、これは数学的な話ですけれども、数字的には上がるのでしょう。でも、それが国として、食料自給率が上がったというのは、ちょっと違うと思います。やはりこれだけ国際情勢が混乱して、もう食料自体が戦略物資と言っても過言でもない時代になった、この国際情勢の中にあっては、国民が飢えることがない、飢えという言葉を日本人は忘れたのです。今、格差であったり貧困であったり、そういうのもあって、全く日本に飢えがないというつもりはありません。ですけれども、全体のコンセンサスとしては、お金さえあれば食べ物は手に入るという国ですけれど、しかし、それが10年先も30年先も50年先も続くのかと。その時に、それこそ農業やっている人が10万人しかいない、農地は200万しかない。もう取り合いです。それこそ、この話は受け流しですが、シーレーンだとどんな変なことになるのだとかいうことを考えると、やはり、食料安全保障を確立するために、基本法の改正を行ったのだから、それに基づいて、党内ともしっかり議論を重ねた上で、しっかりとした目標の数字を具体的に示したいと思っています。
記者
水田政策について、農水省では来年春の次期食料・農業・農村基本計画の策定に合わせて、2027年度以降の水田政策の見直しについて議論されると思います。全国の農家さんからも非常に関心の高いところと思うのですが、昨日、財務省の方から水田政策について指摘がありまして、2027年度以降の水田活用の直接支払交付金の対象から飼料用米を外すような提言や、備蓄米の備蓄量を減らすというような提言がありました。今後の水田経営を考えたときに、農家さんから不安の声も上がるかと思うのですが、この提言の受けとめと、今後どのように対応するのか考えを聞かせてください。
大臣
いろいろなご意見があるでしょう。ただ、飼料用米について申し上げますが、私は食べたことがあります。飼料用米、炊いて皆さん方も食べてください、炊き立ては十分美味いですよ。冷えるとまずいけど。あれは米ですから。それから、備蓄については、いろいろご意見もあるでしょう。しかし、それは一つのご意見として承るというだけです。
記者
少子高齢化が進んでおり、担い手が少なくなってくると、スマート農業でちょっと手を借りないといけなくなってくるかと思うのですが、やはりちょっと高額だったりとかそういった問題点があったりすると思います。そこでスマート農業を広げていく上での考えなどを伺います。
大臣
導入できる人はいいですね、率直に言うと。素晴らしいのが出来てきています。ただ高い。では本気で国がスマート農業を導入しなさいということであれば、国が考えないとダメだろう。補助率もこれまで50%補助ということで、例えば、ハウスを建てるにしても。そういうことでずっとやってきたけれども、これだけ資材が上がってくると、10年前に1,000万円でできたハウスが2,000万になっていれば、半分補助してもらっても、1,000万円。10年前だったら補助率ゼロではないかという話にもなるわけです。
今回、総裁選を見ていて、みんなスマート農業って言っていたけれども、ではどうするのと私自身思っています。批判されるかもしれないけれども、それを本気で国が進めるのであれば、国がしっかり支援すべきです。ですから農水省の予算を大きくしないとできないんです。そうじゃないですか。一般の企業は新しい分野に進出しよう、新しい製品を作ろうとなったら必ず設備投資をしますね。今の農家、それぞれの個別の農家に大規模な設備投資をするだけの余力と体力があるかというと、ないです。それどころか、例えばクラスター事業で畜舎を建てましたという人たちが、償還が始まって苦しいと言っているのが現実ではないですか。やはり現実の声に耳を傾けながら、スマート農業の議論をしていかないと。スマート農業さえ推進すれば日本の農業は明るいという認識は間違いだと思います。よく考えます。
記者
今回の大臣就任にあたって、石破首相からどのようなご指示があったか、具体的に教えていただけますか。
大臣
そんなに長い時間、話をしてないです。とにかく、党の取りまとめとして、これから5年間を集中的構造改革の年になると。構造の改革だから。これまでの農政の継続ではないわけで、構造変えるのだから。野党の先生方との対応もなかなか難しいから、とにかく丁寧にやって欲しいと。そして、私は新聞では農政通と書いていただいたけれども、自分のことをそんなふうに評価してないの。ただ、農政を一生懸命やってきました。やってきただけに自分の中にフラストレーションがあります。これだけ必死に考えてやってきたけれども、今この現状かという気持ちがあるんです。総理のご指示はとにかく、江藤君大変だけど頑張ってくれ、期待してると言っていただけたのです。それなら期待に応えるように頑張ろうと。
そしてここで申し上げますが、私は大胆に農政を運営しようと思っています。これまで、ややもすると、農水省は、これまでの殻を破れなかった場面が多分にあったような気がして、でも、大転換点だというのであれば、殻を破らなければならない。ですから、私が大魔神のようにやるわけではありませんが、大胆に思い切ってリーダーシップを取っていこうと思っているので。そのことについては、総理のご了解もいただいているんのです。しっかりやらせていただきたいと思います。
記者
地域計画について、地域農業の将来の姿を農家同士が話し合って描いていくということで、策定期限が来年3月ということであと4ヶ月半ほど迫っています。改めてこの取組の重要性と、現場で今ラストスパートに入っていると思うのですけれども、農業委員会、市町村に対して、期待するところのコメントがいただければと思います。
大臣
非常に期限が迫っていて正直焦っています。率直な気持ちを言うと。1,632市町村ですか。今ある中で2万2,000地区策定を予定されていると。しかし、出来上がったらまだ635しかないということです。もう11月、あと4ヶ月ですよね。これは法律を作ってやったことなので、何としても作っていただかなければいけないのです。
やはり農地に対する農業者の思いは強いので、こちらから、ここはこういうふうにまとめたほうがいいから、こうやってまとめて、なんて言えないではないですか。地域の方々には、当然プライベートプロパティとしての所有権もあるわけだから。地域の話し合いなくして、地域の将来像の絵は描けないけれども、宮崎でも苦労している。ですから、これを何とか、すべての当該地区で作っていただけるように努力するのは、農水省の今のとっても大きな仕事だと思います。しかし、これもやっつけ仕事ではだめなので、とりあえず期限がきたから、あまり練り込みが足りないけれども、出しておこうというのでもなかなか困るので。そういう未来は想定したくないけど、間に合わないところも出てくると思う。なぜ間に合わないのかということをちゃんと知らなければいけない。中心になる人がいないのか、それともうガンガン議論をしたけど、話がまとまらないのか。まとまらないなら何が問題なのか、役所としてお手伝いできることがないのか。そういった丁寧な対応を、地域が多いので大変だけれども、しっかりやる上で、できれば年度末までに、すべての地域で計画が上がるように、役所の職員には頑張ってもらいたいと思います。
記者
先ほど林業は柱という話をされましたが、実際の中山間地域、日本の国土の3分の2を占めていますけれども、なかなか手入れが行き届かない地域もあるというのが、周知のところと思います。実際、今、森林環境をめぐっては、今年度から森林環境税の徴収も始まりましたし、譲与税も今年で5年目、森林経営管理制度等もある中で、今、森林をめぐって最も課題だと受け止めているところと、どういうところに力を入れていきたいかお伺いさせてください。
大臣
一番問題がどこか、難しい質問ですね。まず担い手の確保が難しい、所得が低い。これも全国にばらつきが出てきて、林業従事者でも、市役所の職員よりも給料取れるような経営体もある、実際。そういう成功事例というのは、私が調査会長のときに随分勉強したけれども、役所でももう一回勉強し直して、そういうものが全て真似られるとは思わないけれども、なぜそんなに所得確保できるのか、これを横展開できないのか考えなければいけない。
山もとにかく金になるサイクルが長いので、植えてぐるっと回って30年、40年経ってここに戻ってきて、また伐れれば一番いいのだけども、なかなか息の長い話です。私の地元でも、製材所が3か所閉鎖になりました。それをやると、畜産にも影響があるんです、おがくずがないから。敷料として敷くので足りなくて困る。これも国民の理解、先ほど言った価格形成と同じように、国民の皆様方が、山が荒れたら大変だという意識をぜひ持っていただきたい。私が党内で、主導的な立場で、森林環境税をなんとか5%、町場から、都会からいただくことができましたが、本当は10%欲しかった。ですから、できれば今年の税調の議題にあと5%上げたいところだけれども、税の性質上、すぐに5%上げるのが決まって、次の年にまた5%上げるというのは、政調会長に言ったら何考えているんだと。税の本質を知らないだろうと怒られそうなので、なかなか難しいかもしれません。とにかく、山でちゃんとやっていけるようにするにはどうしたらいいかということでしょう。
あと、鹿の害です。植えて植えても食べてしまう、その辺のこともよくよく考えないと。もう2回食われると嫌になっちゃうから。それから、その植えた後、まだ木になっていない、下草を払ったりする作業というのはすごく大変です。そういったことにも、もう少し着目したほうがいいのかなと思う。
何にしても金がないとできないので。予算がないとできないので、予算さえあれば、ああしたい、こうしたいということはいっぱいあります。林業に限らず、一回目大臣になったときに、最初の会見でもっと予算が欲しいと言ったら記者の方から怒られました。金の話ですかって。お金の話なんですよ。ばらまいてはいけません、税金を使っているんですから。あくまでも国民に説明ができる、お金の使い道には万全の注意を払わなければなりませんが、予算が足りないがゆえに、ここにこうすればこうなるのにという、いわゆるグランドデザインは書けるのに、予算がないからできないというのは、とても残念だと思うので、ぜひ基本計画に基づいて予算増額をした上で、林業政策もしっかりやりたいと思っています。
記者
現在、子牛及び枝肉の価格が低迷しています。この問題についての認識と、今後どのように対策されていくかご教示ください。
大臣
先ほども申し上げましたが、私は牛の仔の競りには政治生活20年、できる限り行くようにしています。ですから、良かったときも知っているし、悪かったときも知っています。一昨日は、私が大臣に内定だということで、皆さんニコニコしておめでとうと言ってくれましたが、状況としては厳しい。そして今は、保証基準価格を56万4,000円まで上げました。これも、思い切ってあげたつもりです。でもそれでは足りませんので、60万円事業を作りました。これについては、正直に言いますと、法的根拠がまるでない。もう財務省とゴリゴリの交渉をやって、とにかくこの水準じゃないと、とてもじゃないけど続かないよと訴えてきました。繁殖の世界は厳しいです。決して肥育の方々を悪く言っている訳ではありません。誤解のないようにと言いますが、肥育の方々は、仔牛の導入の金額を下げればコストを下げられます。ただ繁殖の人たちは、コストの下げようがありません。コストを下げたいと思ったら、えさを絞るしかない。えさを絞ると、当たり前ですが、きちんと育ちません。小さい牛しかできない。そうなると、競り場でたたかれる、手取りが減る。そうなると、手持ちの資金が減るから、さらに、えさを絞る、もしくは、繁殖雌牛を肉用牛として出してしまう。本来だったらあと2産、3産させたいにも関わらずです。こういったことは、もう実際に起きています。本当だったら、あと2産も3産も4産もしてもらいたいのに、えさ代がないから飼養頭数自体を減らさざるを得ない。もう、その姿を見ていると辛くてたまらないです。60万円事業を開始して、喜んでいただいています。11月にこれから1頭当たり9万5,100円が出ます。それは、畜産以外の方々から見れば、1頭当たり9万5,000円も出る畜産はいいなあ、施設園芸は何もないのにとか、露地野菜は何も出ないという不満も、正直なところ出てきています。しかし、今その支援をしなかったら、いなくなってしまうから。本当に。繁殖がいなくなったら、肥育もないのです。
そして、今、石破内閣は地方創生ということに重点を置く、それが政権の要とおっしゃっています。もし、宮崎のこと、鹿児島のことだけで言わせてもらえば、この和牛文化がだめになってしまったら、もう地方はガタガタです。牛だけの話ではありません。牛にぶら下がっている産業はたくさんあります。地域経済を支えると言っても過言ではありません。ですから、何が何でも、この和牛を守らなければいけないのです。ご批判をいただいたとしても。私が調査会長として60万円事業を作ったことが、非常にけしからんというご意見があるということも仄聞しています。しかし、それをやっていても、辞めていく農家が続出している。一昨日の競り場に行っても、現実に出品頭数は少ないです。そして今、共進会の予選会をやっています。この選挙が終わったあと、共進会の予選会に何か所も行ってきました。本来であれば、もっと頭数が出るはずなのです。共進会の予選に出てくる牛の数も減っている。そういうとんでもない状況なので、何かしっかりやらなければいけない。
根本的な解決として必要なのは、やはり出口対策です。高齢化が進み、サシの入っている肉をあまり食べなくなった、インバウンドが増えたけれども、そんなに食べてもらえない。ということであれば、何としても海外に売りたい。ですから、私が前回の総裁選挙で林さんを推したのも、林さんは、中国にネットワークを持っていて、この人なら中国に売ってくれるのではないか、という期待を寄せたからなので。ただ、石破総理も、習近平国家主席になるべく早いタイミングで会いたい、中国を重要視するとおっしゃっているので、もちろん中国だけではありませんが、マーケットを中国にも設けていきたい。やはり、30万トンという数字は、もし、中国のマーケットに出たら、もしかすると全部買うかもしれない。それぐらいの量です。ですから、そういったことにも対応していきたいし、もう一つは、党の派遣でブラジルとアルゼンチンに行ってきました。そうしたら、ほとんどの輸出先が中国でした。買い叩かれていると言ってましたが。しかしながら、ハラルの要求をしていなくても、全頭ハラル処理しています。ですから、日本の処理場を全部ハラル対応にすると言いませんが、やはり世界の宗教人口を考えたときに、イスラム圏、中東、そういったところにもっと出しやすくするために、日本の食肉処理場も、しっかりハラル処理ができるようなところをつくることは、輸出に繋がるんじゃないか等、さまざまなことを考えています。とにかく、坂本大臣も、小里大臣はちょっとまだ手をつけられなかったかもしれないけれども、同じ問題意識を持っていますので、意気込みというか、何とかしようと思っています。
記者
首相補佐官として農林水産物輸出を担当されていたとお聞きしていますが、水産物輸出について、今回、ALPS処理水等、揺れ動いていた状況の中で、拡大基調をもう一度目指していくことは、漁村を守る一つの大きな手段としても注目されています。今後の展望と新たな展開など、考えがあればお聞きしたいと思います。
大臣
中国が一歩前に出ていただけたのはありがたいと思います。今、モニタリングをしていますから、それに対して、日本国政府としても、電力会社としても、十分に協力をしていただきたいと思います。国際的な貿易についてもそうですが、あらゆるものは、科学的根拠に基づいてやることが当たり前ですから。私たちの立場としては、根拠がないというのは、農水省としての立場で、政府としての立場でもありますから。しかし、こちらは買ってもらう立場なので、根拠がないじゃないかとガンガン言うことが果たしてプラスなのかどうかよく考えなければいけないと思っています。しっかりとした協力をしながら、私も機会をとらえるたびに、中国の関係者の方々には、一日も早く、元に戻していただきたいという要請はしっかりやっていきたいと思います。
報道官
それでは、大臣の就任会見を終わります。
以上