江藤農林水産大臣記者会見概要
日時 | 令和6年12月20日(金曜日)9時30分~9時51分 於: 本省会見室 |
---|---|
主な質疑事項 |
|
冒頭発言
大臣
本日、私から1点報告がございます。閣議前に総理を座長とし、全閣僚を構成員とする防災立国推進閣僚会議に出席しました。この会議は、令和8年度の防災庁設置を見据えた政府の、組織体制の強化に向け、関係行政機関の緊密な連携を確保することが目的です。
私からは、農水省の取組として、災害対応にあたる人材の確保・育成、防災・減災、国土強靱化の推進、農業保険や、食品の家庭備蓄の重要性の普及等の取組を進める旨を報告しました。
総理からは、各閣僚に対して本日報告した内容について、できるものから早急に実現するよう指示がございました。総理のご指示を踏まえ、今後とも、省をあげて体制強化に努めてまいります。
質疑応答
記者
鳥インフルエンザについて、国内で発生が相次ぎ、価格についてもじわじわ300円に近づいてきています。今後の対応と見通しを教えてください。
大臣
見通しは、私から申し上げることは無理です。私は、口蹄疫を経験した宮崎県の人間ですから、家畜伝染病の恐ろしさは非常によく知っています。どんなに警戒していても、どんなに必死で取り組んでいても、入ってしまう可能性を排除できないことを、養鶏農家の方々には、もう一度ご認識いただきたい。家畜伝染病予防法に基づく、飼養衛生管理基準の徹底を、口を酸っぱくして言わしていただきます。自分のところは一生懸命やっているから絶対にこない、これだけやっているから大丈夫と思っていても、入る可能性はほんの数パーセントでもある。さらに緊張感を持っていただきたいと思います。
11月から1月がピークとなるシーズンです。いよいよ12月も終わりかけていますが、あと1か月半がピークで終わるとも限りません。1月以降も発生の件数も過去にはたくさん出ていますので、さらに都道府県、市町村の皆さんにとっても、緊張感を持って取り組んでいただきたいと思います。
記者
農業のセーフティネット対策について、18日の企画部会で、収穫共済について、「収入保険との関係も含めて、制度を抜本的に検討すべき」とあります。また、「類似制度の集約も含めて、セーフティネット対策全体のあり方を検討すべき」との方向性も示されています。財務省の財政審は、昨年の建議で、収入保険制度への一元化などを求めていましたが、今回示された見直しの方向性は、それに沿ったものなのか、認識を伺います。
大臣
財政審から言われてやるようなものではありません。セーフティネットは、大切な営農を続けるための最後の防波堤ですから、食料安全保障を強化するという方針を定めている以上、これから5年間の集中構造改革の期間の中で見直すことは当然だと思います。 一つあるのは、収入保険の在り方、もう一つは共済制度の在り方です。漁業であれば、「積立ぷらす」など様々あります。さまざまなものについて、セーフティネット対策全体を見直すことは否定しませんが、財政審からの指摘をいただいたからやるということではないと思います。保険を運営するにしても共済は特にそうですが、マンパワーが十分足りているのか。特に、賃上げが叫ばれている昨今、団体において、他産業、周りの企業や団体、会社と比べて、十分な職員の待遇改善ができているかということもしっかり見る必要があると思います。優秀な職員が団体から抜けてしまうことは、共済のしっかりとした査定、執行、早期の支払いにも影響が出ることも考えられますから、そういうことを見る必要があると思います。
それから、共済はご存知のように、最終的な査定は共済の職員がやりますが、その損害を計上する段階では、農家の方にもご協力いただかないとできません。そういう方々がご高齢になっていることも、現場では若干、不安視されている問題です。短期にできることもありますが、多くのものは中期・長期で、拙速に決めることではありませんので、しっかりと腰を据えて考えていきたいと思います。
記者
日米関係について、米国ではトランプ次期大統領の就任が、本日で1ヶ月後に迫っています。トランプ氏は第一次政権時に、TPPを離脱した際、日本に対して自動車への追加関税をチラつかせながら、牛肉などでTPPと同水準の関税に引き下げました。関係者の間では、次期政権下においても自動車の関税引き上げを交渉カードに、農産物での市場開放圧力を強めるのではといった懸念の声も聞かれますが、現時点での見解を聞かせてください。
大臣
農産物の関税については、2国間で経済連携協定を締結済みなので、最終的な合意にすでに至っているというのが基本的な受け止めです。
しかし、トランプ氏は、例えばカナダなど、さまざまなところに対して、極めて厳しいことをおっしゃっているので、予断を持って申し上げませんが、1月20日の就任までは前哨戦だと思いますけれども、体制が本格的に動いてきた後、どのようなことをおっしゃってくるのか。関税自主権は、アメリカにはアメリカにあり、日本には日本にあります。独立国ですから当たり前の話です。そういうこともあり、警戒しているのかと言われれば、個人的にはしていないといったら嘘になりますが、具体的に何も言われていないのに過剰に反応することは、逆に国益を害することになりますので、米国新政権がどのようなことをおっしゃってくるのか、まずは見極めさせていただこうと思います。
記者
日ロの問題で伺います。1点目は、地先沖合交渉について、昨日から交渉が再開され、本日まで予定されていますが、本日中に妥結できそうな見込みはありますか。もう1点は、安全操業について、北方四島周辺での操業がウクライナ侵攻後にできなくなっていますが、再開の見込み等はありますか。
大臣
地先については、ご地元の鈴木委員からも、一昨日(衆議院農林水産委員会で)ご質問いただきました。非常に大事なことだと思っています。しかし、相互乗り入れなので、ロシアの船もこちらの領域に入ってくる。こちらが行くことだけではありません。我々の国益は守られるという水準は守らなければなりません。合意すればいいというものではない。我々の国益が守られ、特に、漁業者の方々が、これまでの歴史を振り返って納得のいく内容でなければ、合意を急ぐべきではないと思います。いたずらに引き延ばすつもりは、もちろんありません。水産庁の担当者も、一生懸命、誠実に協議をしていますが、11月25日(月曜日)から29日(金曜日)までやりましたが、だめでした。そして、(12月)19日から協議を再開しましたが、まだ結果が出ていません。これから先、見込みがあるのかは、予断を持って申し上げませんが、まずは、日本の国益・権益がしっかり守られ、資源が守られることを基本に考えながら、腰の入った交渉をさせていきたいと思います。
安全操業については、なかなか難しい交渉が続いています。かつても、令和4年とか令和5年に、日ロ漁業協定関係漁業者対策事業をやってきました。漁場の転換が必要になることも考えられますから、そういうことであれば、ホッケとタコとスケソウダラの船に対しては、かつて支援してきたようなことも、しっかり考えていかなければならないだろうと思います。
記者
これまで何度か同様の質問があったと思いますが、先ほど消費者物価指数が発表され、11月の米の指数が162.9となりました。5月は103とかぐらいだったものが、6割近く値上がりしていると。これまで農水省の説明としては、新米が出回れば、価格は下がる、落ち着くだろうという話だったと理解しています。それが備蓄米を放出しない理由の一つだったと認識していますが、一向に高止まりして下がらない状況について、どのように考えているのか伺います。
大臣
米が高くてもいいという立場には、もちろん立っていません。農水省は、消費者、国民の方々に、安定的に安心な食料をお届けするという責任を一義的には負っています。しかし、それを実現するためには、生産基盤をしっかり守らなければいけない。そういう責任も片方では負っています。このバランスをとることは難しいと思います。ただ、申し上げておきたいことは、この夏の米の値上がりの場面で、農家は、全く利益は得ていません。前の年に集荷しているわけです。前の年に、店頭価格で高くなった部分は、流通コスト、精米コストといったものです。卸の方々が儲けたとは申しませんが、この夏は、生産者の方々の利益には繋がっていない。新米以降は違います。新米以降は、ちょっと極端だと思っています。この集荷競争は今まで来たこともないような人が、農家の庭先まで来て、今まで決まったところに出荷をしていたのに、これだけ出すから、うちに米を売ってということも報告されています。委員会の中でもその話をされた委員がいました。過熱気味だと思います。
農産物に限らず、全てのものの価格は市場で決まる。これは大原則だと思います。求める人がたくさんいれば、ものは高くなる。しかし、高くなっても農水省は何もしないのかと言われれば、先ほど申し上げたように、消費者、国民の方々に、安定的に安心できる安全な食料をお届けする責任を負っていますから、その点については、考えなければならないと思います。(委員会での)話の中には、前大臣、前々大臣の時から備蓄米の放出について、世論も背景にして、いろんなご意見が出たと承知していますが、食糧法の規定の中に、価格の変動に対応して備蓄米を出すという条項はありません。全ての政策は、根拠法に基づいて、その趣旨に基づいて予算が執行されることが基本です。大原則は曲げるわけにはいきません。そういったことを、もし活用するということに踏み込むのであれば、食糧法の改正も含めた議論が必要。(米価が)上がった、では備蓄米を出すと。
委員会でもいろいろと議論がありました。運用の改善でなんとかなるのではないか、法律まで踏み込まなくてもいいのではないかというご意見がありましたが、根拠法に基づいて、多額の国費を使って、国民のいざという時に備え、国民の生命・財産を守るために備蓄している米を大量に出してしまったとときに、もし大変な事態が起こって所定の備蓄量がないというのも問題ですし、これは広範な議論が必要な課題だと思います。
記者
これまでの大臣の発言を伺っても、農家の方が再生産できる価格になってきたのかという問題意識をもとに、消費者に対して一定の理解を求めるということが多かったと記憶しています。生産資材価格の上昇を見ると、大体、令和2年と比べて3割から4割ぐらいの上昇だと。これに対して米価は6割上昇しているという、足元の状況を考えると、その説明では、もう説明がつかない状況になってきているのかなと。
米については、小麦、麺類とか、他に比べて値上がりが小さかったと思うのですが、これについても消費者物価動向を見る限り、他の主食の価格をすでに凌駕するところまで、価格が上昇しているという状況だと思います。かねてより合理的な価格形成をおっしゃっていましたが、生産コストが上昇した以上に、異常な価格形成が行われた場合に農水省としてどう対応するのか、議論があまり進んでいるように見えなくて、大変失礼ながら、生産者側の声を聞いて、役所が動くという状況からなかなか脱皮できていないという印象は抱いています。これについてどのような考えなのか、見解を伺います。
大臣
米について特化して申し上げますと、例えば今でも8,000円でコスト計算ができる農家もいます。中山間地域では、本当に1万2,000円でも採算に合わないという人もいます。米農家は専業でなく、兼業農家の比率も極めて高いという産業構造もあります。まだらなのです。生産コストをどこに見るか、今畜産物価格についての議論をしていますが、経営体によって生産コストはそれぞれ全く違う。これが農業の難しいところです。数字を出すときには、全国平均を出すしかやり方がありませんから。それを出すと、生産現場の方からは、実態に合ってない、我々の肌感覚は全く違う、農水省は我々の実態を全く掴んでないと批判を受けます。その数字が自分の生産コストより上回っていても、それより下の人は何も言わないということがあります。最初に申し上げましたように、両方に責任を負っているのです。
米は難しいです。話すと長いですけれども、昭和42年に米が完全に自給ができる体制が築けました。それまでは輸入しなければ、日本人は米を食べられなかった。私の時代もまだ麦飯を食べていました。正直なところ、そんなに豊かではありませんでした。麦飯を食べている時代があった。しかし、その次の年には大豊作。(昭和)42年、43年には大豊作になって、720万トンを超える大量の在庫が生まれて、その後もまた生まれた。当時のお金で、3兆円。今の貨幣価値に変えると、7兆円近いお金を使って処分しなければならなかった。そして、そのあとに減反政策がスタートして、ペナルティが(昭和)46年から始まったわけです。民主党政権になった時も、生産コストと販売価格との差額を埋める1万5,000円を払い始めました。これも、生産数量目標を達成した者にのみ支援するということでした。ですから、米は極めてコントロールが難しいのです。
基本的には、市場価格に国が介入することは、私は正しいことだと思っていません。物の値段が市場で決まるのは当たり前の話であって、米の値段が上がっていることは、市場は市場だからと、農水省は責任がないと言うつもりはありませんが、求める方がたくさんいて、それを「良」とする方がいれば、物の価格は上がるのだと思います。ただ、米は主食です。そして、唯一、食料自給率100%を達成できる作物だということに着目すると、考える余地があるのかなと思います。
先ほど生産コストの話をされました。生産コストを上回った分以上に値上がりしているではないかと。生産コストが上がらなかった時点で赤字だった人たちがたくさんということです。生産コストが上がった分だけ上乗せすれば、経営が安定するということではないです。そこは少し考えていただきたい。確かに、その数字だけ見れば、3割生産がコスト上がったのだから3割ぐらいの値上がりでいいではないかという理屈はあるかもしれませんが、3割上がる前の段階で、どれだけの農家経営状況だったか考えなければいけません。8,000円でやれる人がいれば、1万2,000円でもやれない人がいる。なかなか農政、特に米政策は難しい。しっかり取り組んでいきたいと思います。
報道官
よろしいでしょうか。それでは、これで大臣会見を終わります。
以上