江藤農林水産大臣記者会見概要
日時 | 令和7年1月21日(火曜日)10時37分~10時55分 於: 本省会見室 |
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主な質疑事項 |
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冒頭発言
大臣
一点、ご報告させていただきます。先週1月14日(火曜日)から16日(木曜日)にかけて、第11回日台漁業委員会が、東京で開催されました。2025年漁期の操業ルールについて、合意に至り、日本側にとっては大きな前進と受け止めています。
八重山北方三角水域では、日本漁船の操業する水域に、台湾漁船がはえ縄を大きく流出させていました。こっち側(日本側)に流れ出てしまっていて、クロスすることで操業に支障が出ていました。漁具流出時の対応について、台湾の操業ルールが極めて曖昧だったことが原因です。
今回の交渉の結果、(2019年以来)6年ぶりに操業ルールの見直しができました。台湾側の漁具流出を抑制するための措置を明確に規定することができました。これは日本の漁業者にとっては、安心して操業できるようになることですから、水産庁がよく頑張ってくれたと思います。私からは以上です。
質疑応答
記者
先週後半に中国を訪問し、政府のカウンターパートの方と協議されたと思いますが、日本産の牛肉、水産物、精米の輸出再開や拡大に向けてどのような成果があったのか。また、今後のステップについて、どのように進めていく考えか聞かせてください。
大臣
韓俊(かんしゅん)部長は農業農村部のトップで、農業大臣といったお立場です。私は日本の行政の農林水産業の長をやらせていただいているので、両国のトップ同士が直接話をできたことは、それだけでも成果があったと思います。内容については、詳しく申し上げられない部分がたくさんありますが、予定の時間をオーバーして話をすることができ、極めて打ち解けた雰囲気で話をすることができました。大変ありがたかったと思います。そして、前向きな姿勢も確信しました。前向きに考えてくださっていることも確認することができました。人と人との会話は、言葉の調子であったり、表情であったり、そういったもので感じ取るものだと思っています。全体として非常に行った甲斐があった。やはり中国まで直接行って、向こうのトップに会えたことは、よかったと思います。
海関(総署)は、残念ながら今、トップが空席ということあり、次席の方とお会いしてお話をしました。当初1時間の予定でしたが、約2時間にわたって、かなり実務的な話をしました。動植物検疫と税関を担当する部署ですから、極めて大事な部署です。私からは、指摘するべきことはしっかり指摘させていただいて、お返事を次の日まで持ち越すような場面もありました。しかし、実務的な話ができたことは、大変実り多かったと思っています。今後、より一層、意思疎通を深めていくことも一致することができましたので、牛肉や精米についても、前に進んでいくことが確認できたと感想を持っています。それが今回の成果と思います。
記者
本日、米国ではトランプ大統領が就任しましたが、2月1日からカナダとメキシコに25%の関税を検討している旨の発言があったとの報道もあります。改めて、農業分野の影響について見解をお願いします。
大臣
私も緊張感をもってテレビに貼りついて、発言を聞いていました。ご指摘があったように、カナダとメキシコについては25%、2月1日からということですから、本気だということがよくわかりましたが、その他の国については、メンションは今回ありませんでした。対日関税についてどうするかということは、今のところはっきりしたことはわかりませんので、申し上げることはできませんが、仮に関税が幾らかでも上がるということであれば、影響がないということはあり得ませんので、今後の米国政府の発表を注視していきたいと思います。今のところ言えることはこれくらいです。
記者
中国出張に関して、現地では、牛肉は輸入再開目前まで迫っているというご発言もあったかと思いますが、水産物については今回どのように議論され、どういう段階にありますか。
大臣
決して後ろ向きではないことは明確に確認できました。しかし、海関(総署)のトップが不在ということもあり、商務部との連携もしっかり取らなければならないということで、なかなか意思決定が明確ではなかった部分はあったと思います。次の日の、韓部長との話の中での雰囲気の感じ方は、私は希望を持って会談を終えることができましたので、いつかは言えません。我々が決めることではありませんが、私を受け入れてくださり、時間をしっかりとって話をすることができた。特に、部長との会談では、先方からなかなか日程がタイトという話だったので、予定の時間を大分過ぎ、私から、お忙しいのではないですか、そろそろ切り上げましょうかと言うぐらいの雰囲気で話ができました。私は楽観視していません。やはり粘り強く、重層的な交渉を重ねていく必要があると思いますが、実現されるものだと感じています。
記者
鳥インフルエンザについて、昨夜、愛知でも新たに発生しました。緊急会議でも異常な事態とおっしゃっていましたが、改めて受け止めを教えてください。
大臣
皆さんご存知のように、口蹄疫を経験した宮崎県の政治家です。あのときは一日も欠かさず、朝から晩まで、7時半か8時にはJA尾鈴に入って、暗くなるまで毎日通っていました。その時、もちろん現場には入れませんけれども、様々な悲惨な場面、悲痛な場面を、身をもって体験しています。家きんといえども、それを殺処分するということは非常につらいことですし、経営にも大きな影響がありますし、国民生活にも大きな影響があります。(今シーズンの殺処分数の累計羽数は、)700万羽になりました。採卵鶏も629万羽を超えました。まだ大きな値上がりには繋がっていませんが、このトレンドが続けば、かつて我々が経験した、たまご1キロ350円という状況も考えられます。何としても止めたいと思っています。現場は真剣にやっています。
非常にいいなと思うのは、空振りの通報がものすごく増えています。怪しいという通報の中で、陰性で鳥インフルではなかったというのが、かなり増えています。これは、現場が真剣に緊張感を持って取り組んでいることの証左ですから、非常に良いと思っていますが、それでも収まりません。千葉県と愛知県には現地対策本部を設置し、笹川副大臣が千葉、山本政務官は愛知に派遣し、より一層、農水省と現場との連携を深くする。そして、乾燥していますので、消石灰だけではなく、液状の消毒液も使う。これは国費10分の10で行います。欲しいものが手に入らないというのは問題ですから、消毒液、その他の資材が円滑に調達されるような手配も、今しっかりやっています。先日申し上げましたが、不織布のシートによる防止も、家畜伝染病予防法上、10分の10補助はできません。10分の9ではありますけれども、経営を守るために、それぞれの現場でやっていただきたいし、昨日は緊急全国会議もやりましたので、やれることは全部やって、やっておけばよかったということが、行政としても、現場としてもないようにしたいと思います。
記者
お米について、先日の農水省の発表で、2024年産の相対取引価格が2万3,715円で、過去最高という数字が出ました。先月の会見で、需要に対して供給は十分とお話しされましたけれども、この数字に対する受け止めと、どうしてこのような数字が出たのか、考えを聞かせてください。
大臣
どうしてかと言われれば、あなたたちが一番ご存知のように、集荷競争が起こりました。いわゆる(JA)系統は、本当に集荷できていません。量は増えているのに全農系はマイナス17万トンですから、これはあり得ないことです。米はあるんです。中小を含めて様々なところに、農地でいう分散錯圃みたいな感じで、それが出てこない。先高感があれば、出すのはちょっと待つという判断もあるのかもしれません。それは各個人の判断あり、商売ですから、干渉できませんが、農水省は、国民の皆様に、安定的に食料を供給する責任を負っておりますので、この自体が決して健全の状態だと思っていません。そして作付も、それぞれの県のご判断で、3%、4%増やす県が増えています。来年度については、今年度は作付も増えていますので、業者の方々も、在庫として抱えることは、いい判断ではないのではないと思っています。あなたがおっしゃったように、2万3,715円は、平成2年以降過去最高です。しかし、現場の感覚からいうと、肥料や燃料費、様々な物財費が上がっているので、それを考えると、値上がりを歓迎する声もあるのも事実です。農水省は生産基盤も守らなければなりませんけれども、消費者の方々にも目配りする責任があります。
記者
鳥インフルエンザの関係で、供給量への影響としては、まだ限定的というお話もありましたが、卵価格への影響の懸念、養鶏業者等に対しての供給量や飼育期間の呼びかけや、メーカー流通業者への今後の呼びかけなど、対応の検討状況についてもお考えをお願いします。
大臣
まず、前回の価格高騰のときの経験があって、特に、メーカーさんは在庫を持つようになりました。前回は在庫がない状況で鳥インフルがきたので、輸入に頼るという状況もありましたが、メーカーさんもそういったものの在庫をしっかり持っていらっしゃるということもあります。特に加工用のものについて、大手に限っては、そんなに急にタイトになることはない。そこが一斉に買いに走ると卵価が上がってしまいますから、そういうところについては業界の方々も対応してくださっている。発生していない県についても、融通していただくように農水省から要請しています。にわとりの飼養期間についても、卵をすぐ産んでくれるわけではありません。例えば一定期間であると、生き物ですから、ちょっとかわいそうな言い方ですけれども、生産性が落ちるので、どんどん更新していくのですが、その飼養期間のペースを長くして、できるだけ長い期間、卵を産んでという要請を養鶏業界の方々にさせていただいています。我々としては、養鶏の現場を守ることも大事ですけれども、この卵価、鶏肉の高騰は何とかして抑えたいと考えています。ただ、この発生状況が続くと、何度も申し上げていますが、この1月の発生のトレンドは、過去に経験のない、右肩上がりではなく垂直上昇に近いぐらいの発生状況なので、足りなくなれば価格上昇はあると思いますけれども、それがなるべく起こらないように、まずは発生を抑える。発生があっても、業界の方々と意思疎通をして、市場価格の上昇を抑える努力はしっかりやっていきたいと思います。
記者
トランプ大統領について、まだ米国の反応も、あまり農林水産物には言及がなく、特に言えることはないということですけれども、国・地域別で輸出先として3位であり、牛肉についても93億円、米国向け輸出も一定量確保しているといったことも含めて、注視はされているということでしょうか。
大臣
もちろんそうです。低関税枠は米国はありますけれども、今年も例年にない勢いで、低関税枠は主にブラジルに取られてしまい、埋まってしまう。それを超える26.4%の関税が今でもかかっているわけです。それにも関わらず、円安もあって、米国に対して、宮崎牛なんかは大変な勢いで売れて、伸びています。そこに一定程度の関税がかかれば、当然小売価格も上昇するということですから、影響がないはずはないと思います。しかし、出している肉の質が、ハイエンドの方々、富裕層の方々を顧客として、掴んでいるという現場の実態もあります。無茶苦茶な値上がりをするとあれかもしれませんが、ニューヨークは、ラーメンが1,500円、2,000円とか、3,000円するところです。そういうところで、関税が上がらないことを切に願っています。特に農産物については。それがあっても、日本のものがしっかり売れるように、マーケットインで対応していく必要があるのだろう。まだわかりませんので、それが出たら、またしっかり考えます。
報道官
よろしいでしょうか。それでは、これで大臣会見を終わります。
以上