江藤農林水産大臣記者会見概要
日時 | 令和7年1月24日(金曜日)10時07分~10時26分 於: 本省会見室 |
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主な質疑事項 |
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冒頭発言
大臣
私から冒頭発言があります。皆様方も、現在の市場における米の値段については、大変関心が高いと思います。産地において集荷競争が激化していることは、報道でも流れているところですが、昨年よりも集荷業者(全農、経済連、全集連)に集まっている米が17万トン少ないということは、ご存知の通りです。これまで、私は国会の答弁の中で、これだけ米価が上がれば備蓄米を出すべきというご質問をたくさんいただきました。しかし、食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)の3条の第2項には、備蓄米は、生産量が大幅に減ったときに出すものと明確に書いてあるので出せませんと答弁をさせていただきました。49条には、貸付という条項がありますが、これは、海外の他の国に対して貸し付けるということで、これを国内に適用することは、適切ではないということでした。29条には、売り渡しという条項がありますが、これもこのままの状態ではいかがなものかということで、省内で検討してまいりました。正直なところ、新米が出てくれば、市場が落ち着くという見通しを農水省として持っていましたが、今年に入っても、高い状況が続くのではないかという予測がある。そして、メディアの中でも、卸の方々が、先高を見込んで、在庫を抱えているのではないかという報道も最近は目立つようになりました。そのような状況を受けて、内閣法制局と協議をしてまいりました。法改正が必要なのか、法改正を経なくても備蓄米の活用が可能か、協議してきたわけですが、貸し付けるということであれば、法改正を行わなくてもいけるだろうと。必ず返していただくということです。これは、生産者の方々にとっては、やはり備蓄米を出すことになれば、せっかく米価が高いところまで上がってきて、生産コストを賄え、将来に明るい兆しができた。そこで、国が在庫を出すことについては、反発もあるかもしれません。その一方で、あまり高止まりをしてしまうと、米離れが逆に起こって、それが消費者にとっても、生産者の方々にとっても良いことか、なかなか判断が難しいですけれども、よく考えなければいけないことだと思っています。私自身、迷いがあるというのが正直な気持ちです。生産者に対しても責任を負わなければいけない。何度も申し上げましたが、生産基盤を守るために、生産意欲を持っていただかなければいけない。しかし、消費者の方々にも、安定的に食料を供給する義務が農水省としてある。ですから出すと決めたわけではありません。いつでも状況を見て、この食糧法の理念に則って、備蓄米の活用ができる状況にしたいと思っています。これは今日決定ではなくて、1月31日(金曜日)に食糧部会がありますので、ここに諮らせていただいて、政府備蓄米の買い戻しの条件付きの販売を可能とすることを、議論いただきたいと思います。
2点目ですが、本日、日本農業遺産について、新たに兵庫県北播磨六甲山北部地域、兵庫県朝来(あさご)地域、徳島県県南地域、沖縄県多良間 地域の4地域を認定しました。今回認定した地域は、酒米や伝統野菜の保存・生産、択伐(たくばつ)による照葉樹林の維持、特殊な防風林により、台風から作物を守る離島農業など、長きにわたり、自然や風土と調和した特色ある農林水産業が営まれており、将来にわたり受け継がれるべき取組です。今回の認定が、地域の皆様の自信や誇りにつながるとともに、国民の皆様にも、農林水産業や農山漁村が有する、多様な価値に関してご理解を深めていただく きっかけとなることを期待しています。詳細は、プレスリリースします。
3点目は、地理的表示についてです。いわゆるGI産品ですが、愛知県の八丁味噌について、本日、八丁味噌協同組合を、生産者団体に追加登録しました。八丁味噌は、平成29年に愛知県味噌溜(たまり)醤油工業協同組合を、生産者団体としてGI登録しました。それから7年の時を経て、ともに八丁味噌を守り続けている両組合が、GI登録に至ったことは大変良かったと思います。両組合は今後、八丁味噌のさらなる普及発展に向けて、お互い尊重し取り組んでいかれると聞いており、農水省としても、両組合の未来志向の取り組みを後押ししてまいります。私からは以上です。
質疑応答
記者
通常国会が今日(24日)召集されると思いますが、意気込みを教えてください。
大臣
大きな転換が求められているときです。基本法の改正を行いましたので、この理念に基づいて、基本計画を作らなければなりません。そして、これまでとは一風違う熟議の国会としなければならないと思います。提出予定法案、基本計画など各種の施策につきましては、野党、与党の垣根を越えて、丁寧にご説明して、ご意見を聞いて、良いものに仕上げていきたいと思います。
記者
政府備蓄米の買い戻しの条件付きの販売につきまして、食糧部会で可能となれば、今後、どのような動きが生じる見通しを持たれていますか。また、米価が高騰していることの国民の反応に、どのような効果があると見ていますか。
大臣
集荷業者(に集まる米)が17万トン足りないが、生産量は18万トン増えている。ですから、足りないはずがないのです。必ず米はある。しかし、商取引ですから、出さないことはけしからんとか、そういうことは言えないのだと思います。しかし、その状況が、前回の記者会見でも申し上げましたけれども、健全ではないと思っています。特に、スーパー等に主に出す集荷業者(経済連、全農、全集連)が、集荷ができないというのは、非常に困る状況です。食糧部会の方でご議論いただきますが、卸に出すという話ではありません。集荷業者の方々に限定してお出しすることが、消費者の方々にとって良いのだろうと思っています。そういう方向性を国が出したことによって、卸の方々がどういうご判断をされるのかは、私が予見をもって言えませんが、このまま米が高ければ、まず、食べる量を減らすということも考えられます。3杯食べている人が2杯しか食べず、2杯食べている人が1杯しか食べない。もしかすると、米が高いからお米以外のもの(パスタとかパン)にしようということになる。結局、国内の消費が落ちて、生産者にとっても、決して良いことではない。ですから、価格を国がコントロールすることは、決して王道ではないと思っています。価格は市場で決まるべきということが、私の農政における基本的な考え方ですから、正しいと思いません。ただ、前回申し上げたように、健全な状態ではないということであれば、できるだけ正常の状況に戻せるような手だての準備だけはしっかりやっておかなければと思っています。出すと言っているわけではありません。準備、米価がどう動くかについては、私の方から予見を持って申し上げることは避けさせていただきます。
記者
米国に低い関税で牛肉を輸出できる低関税枠が過去最速で埋まりましたが、今後の輸出への影響と政府としての対応を聞かせてください。
大臣
毎年のことですが、ブラジル産が、あまり値段の張らない肉を大量に出して、あっという間に枠が埋まるのは今年だけの話ではありません。今年は特に早いですけれども。私が(党総合農林政策)調査会長の時代から、米国に対しては、農水省を通じて米国の方々も日本のハイエンドの方々が食べるような肉を求めているのではないかと、随分と働きかけて、何とかなりませんかと話もしましたが、何ともならずに今回に至っているわけです。牛肉は、日本政府としても、日本の業者としても大分早めに出す努力をしてきました。しかし、1、2の3でスタートして、量が決まっている話です。何とかならないかという気持ちは、農水大臣としては強く持っていますが、ブラジルはけしからんというのも筋違いな話です。枠全体を増やしたとしても、その増やした分を、ブラジルが全部使ってしまうということであれば、ほぼ意味ありませんし、あまり日本にとってありがたくはありませんが、また今年もかというのが率直な感想です。
記者
米国への低関税での輸出の増加は、これからも働きかけていくということでしょうか。
大臣
この枠全体を増やしたからといって、日本が増えるとは限らないではないですか。低関税枠自体が大きくなったからといって、もっと買ってくれるのだったら、もっとブラジル側が売ろうとするかもしれません。理想としては、難しいですけれども、国別とか、とてつもなくハードルが高いけれども、そういうことがもしできればと。
例えば、こういう価格帯についてはこうとかの表示をするには、膨大な時間もかかると思いますので、今すぐには(難しい)。私は、肉にはこだわりがあるので、中国にこだわってきましたけれども、世界中に対してこだわっていますし、一番買ってくれているのは米国(※正しくは輸出額1位台湾、2位米国)です。低関税枠を超えると、26.4%かかってしまう。そうすると米国民にとっても、決して良い話ではないわけです。割高で買わなければいけないわけですから。日本の生産者にとっても、米国の、和牛を愛好していただいている方々にとっても、何とかしたいと思っています。
記者
全国の養鶏業者の中で、鳥インフルエンザの発生を受けて、廃業を検討するという声も聞きますが、こうした声が上がっていることについてどう受け止めているか。鳥インフルエンザが毎年のように再発したという業者もいる中、経営への影響や、廃業の検討、そういった状況を、今後どのように把握、調査する考えか聞かせてください。
大臣
家畜伝染病予防法に基づく経営再開支援は、ご存知のとおり10分の10です。国としては100%です。フルパッケージで経営再開を支援するスキームはできていると思います。それにも関わらず廃業されるということであれば、発生されたことはお気の毒だと思いますが、そのご判断について、農水省として適切、不適切ということはできませんので、経営者のご判断によるものだと思います。できるだけ廃業に追い込まれないようにするのも必要なことだと思いますが、評価額の10分の10を見ているということであれば、これ以上どうしたら良いのかと。
これまでの議論の中で、今までは一経営体の中で発生したら、他の鶏舎も全て殺処分するということをやっていました。しかし、今は分割管理ができるようになりました。今回の発生状況の中でも、同じ農場の中でも違う鶏舎は、生き残っている鶏舎があります。政策的にも、なるべくダメージが大きくならないように、運用の改善や、経営者の方々にもご理解いただきながらやってきたつもりですが、こういう不幸な事態が起こった後に、経営を断念する人が出ないように、できるだけのサポートはしようと思っています。過去には廃業に追い込まれた業者さんもいました。ただ、(今シーズンは)今のところ、そういう話は聞いていません。令和4年の時の数字を申し上げますと、77経営体が鳥インフルエンザが(発生し)、73経営体が再開か、再開予定です。4経営体がそれに至っていないというのが現状です。
記者
去年から今年にかけてのシーズンで、経営への影響の調査は、今後どうお考えですか。
大臣
それは個別に聞くしかないです。今のところ、廃業を考えるという報告は聞いていませんが、1月に入って対策本部を1週間に1回はやらなければいけない状況です。卵価も285円まで上がってきています。これは国民生活にも大きな影響が、すでに出てきたと思っています。このことを考えると気が重いです。みんな一生懸命やっているのです。通報についても、空振りがすごく増えて、緊張感を持って現場でやってくれていると思うのですが、それでもこの発生状況です。まずは発生を止め、それが止まった後の経営再開は、個別に相談に乗って欲しいことがあれば、役所としても、しっかり個別に相談に乗っていこうと思います。
記者
卵価格は現状、鳥インフルエンザの影響はどの程度出てきていると認識されていますか。
大臣
採卵鶏(の今シーズンの殺処分は国内全体の約)5.4%になりました。大体、たまごは2~3%で影響が出始めるので、5.4%だと影響がでるのは当然です。(殺処分の)羽数は695万羽ですから、これが増えていけば当然です。そして、地域の偏りがあります。集中的に出れば、その地区は、地域でのたまごの確保が難しくなる。地域間の融通も極めて大事だと思います。JA全農たまご等がありますので、地域での融通をしっかりやってくれとお願いしています。特に、マヨネーズとか卵を大量に使うメーカーさんについては、在庫を持つ努力もしていただいていますし、凍結液卵等を使っていただいて、なるべく市場価格に影響がないように、業界一体となって、卵価に注視していきたいと思います。
報道官
よろしいでしょうか。それでは、これで大臣会見を終わります。
以上