小泉農林水産大臣記者会見概要
日時 | 令和7年8月8日(金曜日)10時37分~10時56分 於: 本省会見室 |
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主な質疑事項 |
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冒頭発言
大臣
本日、私から3点、ご報告があります。今般、農協のコメの買取販売等についてのアンケート調査を行いました。令和7年産米については、コメを取り扱っている農協の約6割が、買取販売を行う予定であることが分かりました。既に米の買取販売を行っていない農協の方が少数になっているわけですが、引き続き、コメの買取販売を行う農協を増やしていきたいというふうに考えています。詳細については、この後、農水省のホームページに情報を掲載をいたします。
2点目は、収入保険の加入者数についてであります。令和7年の収入保険の加入者数が、本年6月末現在で10万1千経営体となり、節目となる10万経営体を初めて超えました。これにより、今年は、青色申告を行っている約32万の農業経営体のうち、概ね3分の1の皆様に加入いただいているということになります。近年、高温・渇水も含め、また今は大雨もあります。自然災害を中心に農業をめぐるリスクは顕在化をしています。高温によりコメの等級が低下したといった、品質低下に伴う収入減少についても収入保険ではしっかり補てんがなされました。収入保険はあらゆるリスクに対応し、個々の経営ごとに、収入減少を補てんできます。まだ加入していない農業者の皆様は、改めて収入保険への加入をご検討ください。詳細につきましては、この後、農林水産省ホームページに更新情報を掲載いたします。
最後3点目ですが、韓国出張についてであります。明日8月9日(土曜日)から11日(月曜日)まで、APEC食料安全保障担当大臣会合及び、日中韓農業大臣会合に出席するため、韓国に出張いたします。APEC食料安全保障担当大臣会合においては、APECの一員として、会合のテーマであるイノベーションの推進について、日本の取組状況を紹介し、議論に貢献したいと考えております。また、2018年以来、7年ぶり、4回目の開催となる日中韓農業大臣会合においては、食料安全保障、動物疾病への対応、持続可能な農業など幅広い農業分野の課題について、3か国間でどのような協力ができるか議論をしてまいります。さらに、この出張機会を捉え、韓国の宋美玲(ソン・ミリョン)農林畜産食品部長官及び趙顕(チョ・ヒョン)外交部長官との会談も予定をしています。貿易上の課題を含む二国間の様々な課題について、率直な意見交換を行う予定であります。詳細はこの後、プレスリリースをいたします。本日冒頭は、私からは以上であります。
質疑応答
記者
まずは関税協議について伺います。先ほど、もう報道はされておりますけれども、赤澤大臣がアメリカ側と協議しまして、適時なタイミングで15%が上乗せではなく、こちらが考えていたとおりの方向になるということで発表されました。また、取り過ぎてしまった分に関しては、アメリカ側から返還するという考えも示されております。これに関して、タイミングを示されなかったわけですけれども、今回の結果について受け止めをまずお願いいたします。
大臣
まず、赤澤大臣が訪米されて、先ほど記者会見、ぶら下がりをやっておりました。私も拝見をしましたが、先日、予算委員会でも申し上げていたとおり、今回の相互関税に関しては既存の関税率が15%以上の品目には課されず、15%未満の品目については、既存の関税率を含め15%が課されるとの認識について、日米間に齟齬はないことをアメリカ側に確認してきていると承知をしています。また今訪米中の赤澤大臣からもありましたとおり、改めて内容確認をした結果、大統領令を修正をする措置を直ちにとるようにアメリカ側に求めているというふうに認識をしております。そして今日、私も会見を拝見をしましたけども、アメリカ側が事務的なことについて、アメリカ側も遺憾の意を表明をされたということも含めて、今回の赤澤大臣の訪米によって安心された方がいるのではないでしょうか。ですので、この農林水産関係で言えば牛肉、これが41.4(%)ということになっているところも含めて、この影響に対して、遡って、これを払い戻すと、こういった形になるわけですから、現在、これがどのような影響を事業者や生産者の皆さん含めて出るのか。そしてまたこれからは、しっかりとこの過払い分、これが確実に払い戻しを受けられるように対応していきたいというふうに思います。
記者
先ほど行われた自民党の部会で、農林水産省幹部が説明に伺いまして、一連の需給見通しを誤ったことについて説明し、謝罪もされました。なかなか異例のことかなとは思ったのですが、これに対して、どういった意味合いがあるのかと、あとその受け止めについてうかがわせてください。
大臣
これは今回、国民的な大きな関心事となりまして、そしてまた、多くの方にご迷惑をおかけしたのは、今回の検証にあるとおり、令和5年、6年、このコメの需給見通しを我々農水省が誤っていたことにより、国民の皆様にご迷惑をおかけしてしまいました。このことは、農林水産省の責任として、私、大臣含めお詫びをしなければならないと思っております。今日自民党の本部で行われた会合において、異例なことだと思いますけれども、次官を含め、農水省からお詫びをさせていただいたというのは、これだけコメの政策という歴史的にも、大変重い積み上げなった政策の部分。そしてこの近年、国民の皆さんに対しても大変なご迷惑をかけてしまった、令和の米騒動とも言われる、こういった状況を作ってしまった一端は、間違いなく我々農水省にあると。そのことを認めた上で、今後同じような過ちを繰り返さないように、需給見通しを改善をしていかなければならないと思っております。
そして、総理からメッセージもありましたが、これから「需要に応じた増産」と、こういったことについても、党の方からいろんな声が出ているのは承知をしております。そういったことに対しても、よく丁寧にご説明をさせていただいた上で、それでもなお、今このようなメッセージと、そして大きな転換点を迎えているときに、様々な思いはあると思いますけど、心一つに、一緒になって前に進んでいけるような環境整備というのを、私としては心砕いていきたいというふうに思っています。特に、もちろん今、様々な現場からも声出ています。すぐにはそんな増産なんかできないよとか、そんな簡単な問題じゃないと。それはそのとおりです。ただ、今回一連の私が5月に就任して以降、この需給とコメの関係をずっと当事者として責任者として携わっていると、これだけ気候変動リスクが高まった中で、そしてマーケットは多様化をしている中で、需給が正確にぴたっと合わなければ、少しでも需給が振れたら、こんなにコメの価格に大きな影響が出てしまう、その政策運営は、私は持続可能性がないと思っています。仮に今回の「需要に応じた増産」という思いの中に反対をする声や、不満を持たれている方がいらっしゃるのはよく承知をしておりますが、であれば、全く変えずに今までとおりやるっていうことをやったときに、本当にそれが困難を伴わないものなのかといったら、私は全く違うと思います。もちろん、これから仮に「需要に応じた増産」という方向に行けば、その中での困難さも課題もあるのは承知をしています。ただ、今までと同じような中での課題は、私は縮小均衡に陥ると思いますね。これから新たな方向性の中で、その課題を皆と向き合って乗り越えていけば、私はむしろその先にある可能性や希望に、農業現場を含めて、私はきっとご理解をいただけると。前向きな方向へ進んでいく、それを確実に関係者の皆さんと頭も心も一つにしていくことが、今回の反省を受けて、我々農水省が責任を果たさなければいけないことだと思っております。
記者
今の増産の関係で1点確認があるんですけれども、大臣、かねてから増産というのは基本計画にもすでに増産という方向性が示されているとおっしゃっていましたけれども、基本計画では2023年度・791万トンを、2030年度に818万トンにするという、確かにこれは増産になっているんですけども、今回の増産の方向性というのは、これを上回る増産を目指すということなのか、それとも基本計画はしっかり履行していく目標だということなのか、どちらということでしょうか。
大臣
まずは需要に応じ、2030年までに818万トンまで増産をするという目標達成はしなければいうふうに思います。その818万トンを超えて増産ができるかどうかということについては、もうすでにこの総理のメッセージが出た後から、例えば高齢化とか人手不足とか、高温とかこういったことも含めて、そんなに簡単に増産はできないという現場の声も出ていますよね。そういったこともよく現場の声も聞いて、状況も確認をしつつも、やはり私が再三申し上げているとおりですけれど、今、今後5年、10年で農業現場、農村地域に起きてくることというのは、今まで以上に加速して農業者の減少が起きてくる。高齢化もそうですしね。そのことを考えると、今、国が前向きなメッセージを発信をするというのは、私はすごく重要なことだと思っています。ですので、今後、意欲を持って、例えばもうすでに次世代の方に農地が集積をされ始めて、今までだったらやっていた方が、もう次の世代に任せるよという方も、もうこれ以上は受けられないという方もいるわけですよね。そういった方からすれば、もちろんその方々にとっても増産は楽なことではないとは思います。ただ、青森県だったり、山形県だったり、いろんな各地から今増産をするという報告が出てくることも事実ですし、今回、私も何人かの知事とすでに総理のメッセージが出て以降、意見交換をさせていただく機会が様々あるんですけども、大きな方向性として理解できていると。ただ、もちろん、例えばインフラをどういうふうにこれから水関係とか整えていくのかとか、こういったことも含めて課題もあるよねと。なので、そういった課題をクリアをしていきつつ、国として、輸出や新たな需要開拓も今まで以上にやっていく必要はもちろんありますので、まず、818万トンまで目標を立てているということが達成できずに、それを超えた増産なんて言えませんから、しっかりと、この増産の目標に向けて、一つ一つの課題をクリアしていきたいと、そういうふうに思っています。
記者
終戦の日が近づいています。靖国神社への参拝についてご意向をお尋ねできればと思います。
大臣
これは閣僚としてのこの場でのコメントは差し控えます。個人としては適切に判断をしていきたいと思います。
記者
韓国行きの狙いについてお尋ねします。今回、向こうの外務大臣に当たるような外交部長官とも面会をされるということです。韓国は、東北を中心に8県からの水産物の輸入を停止していますが、そういった措置についても何らかの進展というものを求めていく、ねら狙っていくということなんでしょうか。
大臣
これは今回の私の訪韓に限らず、常に日本に、特に福島県をはじめとして、規制がかかっているようなところについて、1日も早く措置を撤廃するようにと、当然の訴えであります。一方で今回、私がAPECの会合の機会に、先方の外務大臣にあたる外交部の長官との会談、こういった中では、特に両国間の貿易上の課題について、1日も早く解決できるように、ハイレベルで韓国側の責任者に働きかけをしたいというふうに考えていますので、そういった結果からの会談の実現ということになります。
記者
冒頭最初に言及のあったコメの買取の話なんですけど、概算金ではなくて買取だということで大臣が発信された成果が数字として出てきたものだと思うんですが、一方でおそらく、JAの中では概算金がベースで、一部で買取もやっていますというところも多いんじゃないかなと思います。全体の農協単位じゃなくて数量ベースで見れば、まだまだ買取の比率というのは低い現状もあるんじゃないかなと思うんですが、その辺りの現状というか、実態の把握をどう今後どう進めていくかという点と、これまでの手応えであったり、今後の課題というのをもう少しご所感をお聞かせいただければと思います。
大臣
数量ベースで見ればどうかとかは、より詳細な分析が必要かなと思います。ただ、まず1つ大きな動きだととらえているのは、買取を求めている理由の中で、私は農家の方が、委託にしても買取にしても販売をする選択肢を農協が提供することが大事だと。農家あっての農協ですから、そういった中で、今までは買取の選択肢を設けていないという農協の方が多かったのが、今回のアンケートでわかったのは、買取も含めた選択肢を提供している農協の方が多くなり、委託販売という選択肢しか、提供していない農協の方が少なくなったと。こういったことをもって委託の選択肢しか用意されていない農協の方々については、どこの農協に所属しているかによって、農家の方の選択肢があるかないかが起こらないような対応を求めたいと思いますし、私は実際、三重県のJA鈴鹿で意見交換に臨んだときに、JAの組合員の方から、うちのJAは、JA鈴鹿さんはやっているんですけど、その方が所属をしているJAさんは委託販売しかやっていないから、うちの農協も、買取もやってもらいたいっていうことを私に訴えてこられたんですね。なので、その発言はずっと農業関係者も聞いていましたから、そういった声を受けて、ぜひこの機会に、多分今までだと一部誤解もあって、「そんな買取なんかできるか」って言っている人たちがいたじゃないですか。だけど今回のアンケートを見たら、いやいや、買取の選択肢を設けている農協の方が多いんですよと。いうことを改めて受け止めていただいて、別に誰かとの勝負をしているわけではなくて、農家の皆さんにとっての選択肢があるかないかという純粋の話ですから、この機会に改めて、「そうか、もう6割が選択肢があるんだ」ということが、結果、選択肢のない農協が変わっていくきっかけになれば、それは農家の皆さんにとっても素晴らしいことだと思いますし、そういったことが結果として農協にとっても、農家の方から選ばれる農協になる、そういったプラスのことだと私は思います。
報道室長
以上で大臣会見を終わります。
以上