小泉農林水産大臣記者会見概要
日時 | 令和7年10月7日(火曜日)10時32分~10時50分 於: 本省会見室 |
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主な質疑事項 |
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質疑応答
記者
自民党総裁選、お疲れ様でした。現職の農林水産大臣として、今回総裁選に出られて、転換期にあると言われる米政策をめぐる論争がどのように展開されるのかというのが非常に注目されていました。結果としてあまり論争が深まらなかった、争点化が避けられていたのではないかという見方がある一方で、大臣以外の4候補は増産を前面に掲げず、需要に応じた生産という言い方をする候補もいて、生産調整を志向しているのではないか、つまり、石破総理が掲げる増産に舵を切るという政策転換とは距離があるのではないか、石破総理が目指す政策転換が難しくなっていることが浮き彫りになっているのではないか、という見方もあります。大臣ご自身は、今回の総裁選での米政策をめぐる論争を、どのように受け止めていらっしゃるか教えてください。
大臣
現実には論争にならなかったというのは、それだけ共通の認識が基本的にはあるということだと評価すべきではないかなというふうに思っています。日農さんからも総裁選のアンケートが来て、あなたは増産ですか、それとも需要に応じた生産ですかという、こういうシンプルな問いだったのですけれども、私はもちろん増産に丸をつけたのですけれど。これは、需要に応じた増産という回答がないという、選択肢が、こういったところだったので、そう答えるという、よくアンケートにあることです。なので、基本的に全員一致してるのは、需要に応じた増産ということに対しての否定的なことはないのではないでしょうか。
記者
増産に関係してちょっと教えていただきたいのですけれども、大臣、以前輸出を拡大して、いざというとき、国内で足りないときに、その輸出分をバッファとして活用できるというようなご発言があったかと思うのですけれども、実際、輸出に取り組まれている農家の方に取材をしますと、海外のお客さんもやっぱり大事でですね、国内が足りないからといってそれをキャンセルしたら、それは信用問題に関わるんだというようなことをおっしゃる方もおられました。大臣改めて、バッファとして活用するということは可能なのか、お考えをお聞かせください。
大臣
これは短期間で輸出からいきなり国内に向けるということは、現実問題なかなか難しいというご指摘は、それはそのとおりだと思います。ただ一方で、本当に国家の緊急事態のときに、国民の皆さんが飢えかねないと。こういったときに、いかなる手段を講じても、国民の皆さんを飢えさせない。そのための措置を政治は執る。これは当然のことだと思います。なので、世界を見てもですね、そういった食糧困難事態に近いようなことになったケースの場合、海外輸出を1回閉ざすと。国内に回す。これは他の国でやっていることもよくあります。ですので、こういった状態に陥らないようにすることがまず大前提ですけれども、これから増産、作れる方には作っていただける環境を作っていく中で、私は備蓄の、第2の備蓄のような選択肢にもなるという表現もしていますけれども、これは中長期で見たときの一つの備えにはなると思いますし、また、攻めという部分においても、やはり日本の中で、人口減少、高齢化、こういったトレンドというのは大きなトレンドとして、当面は変わらない中で、いかに海外のマーケットを開拓をしていくか、この方向性に対しては、私は揺るぎないものがあるのだろうというふうに思っています。
記者
食料システム法が、来年4月に全面施行されます。先週10月3日には「米のコスト指標作成のための準備会合」が開かれました。米のコスト指標は、いつをめどに、品目指定だったり、作成団体の認定といった制度を整えるのが望ましいのか、お尋ねします。
大臣
今ご指摘のあった準備会合は、先日3日(金曜日)に、意見交換を行ったということであります。食料システム法に基づくコスト指標については、来年4月の施行としているため、米については関係者の間でコスト指標作成に向けた検討を進めていただき、いつからかというお尋ねですが、来年4月以降、可能な限り速やかに、指標を公表できることが望ましいというふうに考えています。農林水産省としてはコスト指標作成に向けて、生産・流通・小売の各関係者の議論がスムーズに取りまとまるように、引き続き後押しをしていきたいと思います。
記者
コストの適正な価格転嫁を進める食料システム法の施行を巡っては、産地はもちろんなのですけれども、消費者理解がとても大事だと思います。コスト指標を含めて、流通各段階や消費者理解の促進は来年4月までに完了ができるのでしょうか。
大臣
これはまさに、生産・出荷団体の皆さんからも、そして卸売団体からも、小売団体からも、今のような消費者理解のための、様々な情報提供だったり、取組が不可欠だと、重要であるということのご指摘があるのはそのとおりです。ですので、こういった準備会合、そしてまた最終的な来年4月以降の実施に向けて、きめ細かな、丁寧な、こういった周知や、説明作業・準備作業というのは不可欠だというのはそのとおりだと思います。
記者
農地バンクの関係で、2点お尋ねします。今年度ですね、来年度の税制改正で拡充要望している固定資産税の関係なんですけれども、全国の自治体で、全農地預けた場合に半減するところを、過大徴収していたという実態が明らかになっております。農地バンクに関しては、今後、集約・集積を行っていく上で、かなり重要な役割を担っていくかと思いますけれども、この過大徴収されていたことに関しての受けとめをまず1点と、さらに、実際に過大徴収していた自治体には、各自で発表している状態なんですけれども、農水省さんとか総務省さんの方で、全容把握に努める考えがあるのか、以上2点よろしくお願いします。
大臣
過大徴収の件は、改めてよく農水省としても、私も1回聞き取りをしたいと思います。担当の方から。そして、適切に行政が運営されることは当然のことだというのはまずあります。その上で農地バンクの役割、この税制改正についてもありましたけれども、やはり今後の構造転換に向けた5年間、この集中期間、この中で最大のテーマの一つは集約化でありますから、この集約化がいかにスピード感を持って進めていけるかは、農地バンクの役割をいかに発揮できるかというのは、極めてその成否を分けるぐらい重要なことだと思っています。なので、全国の中で活躍いただいてる農地バンクもあれば、なかなか現場から課題を指摘されてるような農地バンクがあることも事実であって、そういったことをどのようにクリアをして、今後、しっかりと集約をされて、より人手をかけずに、効率のいい農業経営ができるような基盤を作っていけるか、ご指摘のとおりなので、そこに向けて様々な政策を総動員をして、この集約化を進めていって、農地も守り、そしてまた農家の皆さんの経営も守ると。次世代に農業経営を繋いでいく、そのための大事な存在が農地バンクの取り組みだと思っています。
記者
米増産に関連してですね、高市新総裁から幹事長を打診されたのだけど、それを断ってですね、農水大臣続投を、米増産を引き続いてやりたいみたいなやりとりはなかったのでしょうか。
大臣
なかったです。
記者
打診はなかったということですか。
大臣
なかったです。
記者
それに加えて、農水大臣として残り少ない期間ではあるんですが、石破さんと同じように、80年談話を出したいという石破さんと同じように、大臣として残りの期間でこれだけはやっておきたいとか、視察しておきたいとかいうようなことはないのでしょうか。
大臣
最後の日まで、農水大臣としての務めをしっかりと果たして参ります。特に重要な局面を迎えているのは、米について、収穫量の確定がそろそろ出てきます。これにしっかりと的確なメッセージを、生産者の皆さん、そしてマーケット全体にもお届けをする必要があります。先日から、よければ56万トン、悪くても50万トン近くではないかという有識者の方の声も紹介をしていますが、どうやら現場の様々な情報を、声を見ていると、聞いていると、その56万トンすら上回る可能性も出てきているのではないかというときに、令和の米騒動の収束に向けた、前向きな一歩にしなければいけませんので、この収穫量、最終的によく現場からもデータを聞いて、関係部局とも議論をした上で、発表する際には、これからしっかりとこの米騒動を乗り越えて、マーケットの安定化に繋がっていって、生産者の皆さんも安心して米をこれからも作れて、そして消費者の皆さんも安心して米を買えるスタートになっていくんだと。そういったところまでしっかりと最後まで仕事をしたいと思います。
記者
高市さんに、農水大臣続投の希望を伝えられたことはないんでしょうか。
大臣
こちらから希望を伝えることなんてありません。そんな僭越なことはいたしません。
記者
最後に、今日の東京新聞の論説に「相次ぐクマ出没 猟友会頼み見直さなければ」という記事が出ているのですが、岩手県ではシカのジビエの事業を展開して、それでジビエの肉を、高品質なものを提供して、地域おこしをしながら若手のハンターも増えているという事例があるので、岩手ジビエということでブランド化をして、広げようともしていると。こういう取り組みが広がれば、若手のハンターの増加にもなって、害獣被害、農産物への被害も減るんじゃないかというふうに思うのですが、この辺の取り組みについてお考えをお聞きしたいのですが。
大臣
ジビエの活用は農水省も進めているところですから、しっかりと後押しをすることも、地方創生の観点からも、そしてまた、鳥獣被害の拡大をいかに前向きな方向に向けていくかという点についても、大事なことだと思います。今の岩手ジビエのことも、しっかりと後押しをして、いかにこの消費拡大を後押しできるかというのがあると思います。また、私は環境大臣をやっていましたけれども、あのときに、これは環境省と農水省の連携も含めた、各省連携も必要で、例えば、環境省は動物愛護の行政も所管していますが、ペットフードに対してジビエの活用というのもだいぶ進んでき始めました。こういった相乗効果なども含めて、どのように後押しできるかというのは、ご指摘のとおり、農水省としても考えていくことだろうと思います。
記者
昨日、米穀機構から、9月の米の景況調査について、向こう3ヶ月の需給見通し指数が45で、米価見通し指数も57と、前月よりどちらも下げた結果になりましたが、こちらについての受け止めと、また、一部需給が緩和するんじゃないかというような声も聞こえますが、今後の需給だったり、価格についての見通しについて改めてお伺いできればと思います。
大臣
今数字についてはご指摘があったとおりですので、繰り返すのは控えますが、今回の調査結果では現状で依然、逼迫や高値感があるものの、向こう3ヶ月では緩和・低下傾向、低下方向が強まっていると受け止めています。そして、近いうちに、先ほど言及もした収穫量が出てくる訳ですから、そこの何万トンかというところのメッセージは、マーケットに対して極めて大きなインパクトを与える可能性があると思っています。今までもずっと繰り返してきましたが、仮に56万トンということになれば、それは過去5年間で最大だと。もしかしたらその過去5年間で最大も上回るかもしれない。そういった状況に加えて、民間の在庫はこのままのペースでいけば、過去10年間で最大に匹敵をする。こういった、数字やデータも含めて、マーケット全体に、今の新米の最初のときの高値だけを見ないで、1年間トータルで見ていただきたいということを繰り返し繰り返し言ってまいりました。ですので、今回のこの米穀機構からの先行きなども含めて、そのことのメッセージも含めて冷静に受け止められ始めている一つかもしれないし、また、これからまさに収穫量の確定が出ていってからも、冷静なマーケットの動きになるように、繰り返しこちらからもメッセージを届けていく必要性があるなと思います。ただ、今までの課題は、ずっととにかく需給がタイトで、もう足りなくて、お米が無くてという課題から、今、ご指摘があったとおり緩和傾向になっているということになってきたのは間違いなく、米価高騰を安定化に向けていく、この過程の中で必要なプロセスなので、それをソフトランディングに向けてしっかりと運びきる。こういった、私としては5月からやってきた中で、石破内閣、残りわずかかもしれませんが、最後まで緊張感を持って、この米の安定化に向けて仕事をしっかり果たしていきたいと思っています。
記者
政務のことで恐縮です。先ほど自民党の新執行部が誕生しましたけれども、この執行部の顔ぶれなどについて受け止めをお願いいたします。
大臣
まだ正式な顔ぶれは見ていませんので、特にコメントすることはありません。石破内閣の一員として、最後までしっかりと公務を努めていきたいと思います。
記者
米の収量が確定すると思うのですけれども、かねてよりおっしゃっていた備蓄の水準といったものは、今後どういったタイミングで示していかれるんでしょうか。方向性についてお聞かせください。
大臣
これはよく、マーケットの環境が整うかどうか見ていく必要があると思っています。収穫量の確定は、近いうちに確定をしますけども、この米穀機構の3ヶ月後の先行きを見ても、まだ50を割っていないですよね。こういったことを見れば、一定高値で掴んでいるプレイヤーとこの収穫量が出てから、そのあとの全体の量が確定をした中での取引というのはまた局面違うと思いますから、そういったこともよく見ながらの判断であると思います。ただ、何度も申し上げているとおり、必要なことは、政治の判断としてやるべき局面がきたら、それはマーケットの状況を見て備蓄水準を戻す。このことはもうずっと、繰り返し言っているとおりです。
報道官
よろしいでしょうか。それでは大臣会見を終了いたします。
以上