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農林水産省

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静岡県浜松市・エネルギー政策課内山さんに聞く

再エネインタビュー
浜松市内山さん内山さんと市マスコットキャラクター「出世大名家康くん」

静岡県の西部に位置する静岡県浜松市(はままつし)は、県内最大の人口を有し、全国の市町村で2番目の面積を有する都市です。

「浜松市エネルギービジョン」のもと、独自のエネルギー政策を積極的に推進する市の取組について、エネルギー政策課の内山さんにお話を伺いました。
(聞き手:関東農政局経営・事業支援部食品企業課)

市独自のエネルギー・スマートシティの構築に向けて

浜松市では平成24年度から、東日本大震災を契機とした電力の安定供給に対する懸念の全国的な高まりや、国によるエネルギーミックス実現への検討などを背景として、市民生活や産業活動を支えるエネルギー、特に電力を持続的かつ安定的に確保していくことが重要かつ喫緊の課題であるとの認識のもと、「エネルギーに対する不安のない強靭で低炭素な社会“エネルギー・スマートシティ”」の実現を目指し、官民一体となって独自のエネルギー政策を積極的に推進してきました。

令和2年度には、浜松市のエネルギー政策の羅針盤である「浜松市エネルギービジョン」を改訂し、 これまでの再生可能エネルギーの導入実績を踏まえ、導入目標を上方修正するとともに、「浜松市域“RE100”」として、二酸化炭素排出実質ゼロを目指し、2050年までに市内の総電力使用量に相当する電気を市内の再エネから生み出すことを宣言しました。

全国トップクラスの日照時間を活かした太陽光発電に加え、小水力発電や風力発電、バイオマス発電など、市内にある豊富な資源を活用した多様な再エネの導入拡大や地産地消を目指しています。

RE100とは、企業や自治体等が自ら使う電力を100%再生可能エネルギー(Renewable Energy)で賄うことを目指す取組です。

豊富なエネルギー資源を活用した再生可能エネルギーの取組

浜松・浜名湖太陽光発電所最終処分場跡地を活用したメガソーラー
(浜松・浜名湖太陽光発電所)
浜松市の営農型太陽光発電(OIKOS天竜)
市内の営農型太陽光発電設備
(NPO法人OIKOS天竜の茶畑)

浜松市では、日照時間の優位性を活かし、太陽光発電を中心に導入を進めてきました。太陽光発電の相談窓口である「ソーラーセンター」の設置や、廃棄物の最終処分場や廃校の跡地を活用した大規模発電(メガソーラー)の誘致、地元金融機関と「はままつ太陽光発電パートナーシップ協定」の締結による太陽光発電用金融商品の販売促進、住宅用太陽光への設置補助等を行ってきた結果、太陽光発電の導入容量が計522,533kW、10kW以上の導入件数9,400件(いずれも令和2年6月時点)となり、全国の自治体でもトップクラスを維持しています。

現在、地域と調和した発電事業が求められている中、農業と地域の活性化につながる営農型太陽光発電が注目されています。 平成30年度末時点で、静岡県内での営農型太陽光発電の許可件数は264件と、都道府県別では全国第2位、浜松市はそのうち89件と3割強を占めており、中には高品質の抹茶生産や茶製品開発等の新産業開拓を目指す取組などの事例もあります。

今後は静岡県において実施された、営農型太陽光発電の高収益農業の実証事業のデータ等も参考にしながら引続き推進していきたいと考えています。しかし、取組の中には、発電に偏った事業も一部見られることから、農地の一時転用許可の際には、営農と発電の両立ができるか慎重に見極めることや営農の指導等も重要になってきています。

再エネを農村振興や農業者の所得向上に

畜産バイオガス発電所畜産バイオガス発電施設

畜産・加工品製造・販売(レストラン経営等)の6次産業化の取組を展開している畜産事業者が、自社の養豚場で発生する豚のふん尿を原料とする「バイオガス発電所」を建設し、令和2年12月に操業開始しました。従来の堆肥化処理に比べて、臭気の低減、排水負荷の軽減、エネルギーの地産地消等の環境面でのメリットのほか、事業収益性の向上も期待できます。

その他、市内の民間事業者が検討を進めている「生ごみバイオマス発電事業」においては、未利用の農業残さ等を安価な処理費用で受け入れを行うこと、また発酵残さを肥料として農業者に安価に供給することで、農業者の所得向上に貢献することを目指しています。

さらに、市北部の天竜区佐久間地区では、令和元年9月に、NPO・民間企業・森林組合・JA・市からなる協議会「夢プロジェクトさくま」を立ち上げ、森林保全や再エネの導入につなげるため、地域の木質バイオマス資源等を活用した地域活性化事業の実現に向けて検討を進めており、事業では中学校の跡地で、バイオマス資源から生まれる電気・熱を活用した地域の新たな特産品の栽培等も計画しています。

今後も市では、再エネの導入による地域活性化や農村振興、農林漁業者の所得向上につながる事業を引き続き支援していくとともに、優良事例の横展開も後押ししていきたいと考えています。

地域新電力会社を活用した地産地消

エネルギー・スマートシティの実現を目指して、平成27年10月15日、政令指定都市では初となる官民が出資する新電力会社「株式会社浜松新電力」を設立しました。株式会社浜松新電力では、主に市内の太陽光発電やごみを燃料とした発電などから再エネ電気を調達し、小・中学校等の公共施設や企業、一般家庭に供給しており、令和2年4月からは航空自衛隊浜松基地にも電気供給を開始するなどエネルギーの地産地消を推進しています。

地域循環共生圏のモデルを目指して

浜松市は、都市部と中山間地域の特色を併せ持つ「国土縮図型政令指定都市」です。平成26年に策定した「浜松市バイオマス産業都市構想」では、市域の約7割を占める森林から発生する「未利用材」と、人口が集中する市街地・郊外で発生する「生ごみ」及び「下水汚泥」の3つのバイオマスの活用を柱とし、民間主導による経済性を重視した発電プロジェクトの推進を掲げています。

このように本市は、市域内での資源・エネルギー循環が可能な都市であり、このことは中山間地域等の農山漁村と都市部がお互いの特性を活かすことで、自立・分散型の社会を形成し、地域間で補完し、支え合う「地域循環共生圏」の概念に通じています。

今後も多様な再エネの導入やエネルギーの地産地消を通じ、エネルギー政策を推進していきます。

内山さん、インタビューのご協力
ありがとうございました。

お問合せ先

大臣官房環境バイオマス政策課再生可能エネルギー室

担当者:再生可能エネルギー地域普及班
代表:03-3502-8111(内線4340)
ダイヤルイン:03-6744-1507
FAX番号:03-3502-8285