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農林水産省

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コマツ粟津工場・三谷主幹に聞く

再エネインタビュー
コマツ三谷主幹お話を伺った三谷主幹

石川県が創業地である建設機械の大手メーカー、株式会社小松製作所(以下「コマツ」)では、自社の粟津(あわづ)工場(小松市)で使用するエネルギーを、地元の森林組合から調達する木質バイオマスから生み出すとともに、地域活性化に貢献する取組を進めています。

世界屈指の大企業が行う地域に根ざしたプロジェクトに、当初から中心となって携わってこられた、コマツ粟津工場の三谷典夫主幹にお話を伺いました。
(聞き手:北陸農政局経営・事業支援部食品企業課)

コマツと石川県のトップ会談をきっかけに、農林業支援が決定

当社では、平成23年の東日本大震災を契機に、将来の電力需要が逼迫することに備えて、自社で一定程度電力を賄えるようにするとともに、粟津工場内に新設する組立工場は省エネの「モデル工場」として、電力使用量を平成22年度比で90%削減する方針を掲げました。

また、平成25年に当社会長(当時)の野路と石川県知事が会談した際、県知事から「第2次産業で石川県に貢献しているコマツの力を、地方創生に不可欠な地元農林業に貸して貰えないか」と相談されたことを受けて、創業地である石川県の農林業への支援について、当社のCSR活動の一環として取り組むこととなりました。

『WIN-WIN』でないと事業は続かない

バイオマスボイラーセンターバイオマスボイラーセンター

国内全工場で購入電力を平成22年度比で50%削減し、モデル工場では電力使用量を90%削減するという目標は、あらゆる省エネ対策を講じるとともに、自ら電気を生産する「再生可能エネルギー(太陽光発電)+α」に取り組まないと達成できないと考えていました。

そんな折、石川県森林組合連合会から「間伐材や建材とならない曲がったりした未利用材は、鳥獣害、森林事故、下流域の流木被害の原因となるため、それらを木材チップにしてバイオマス燃料として使ってもらえないか」との相談がありました。

未利用材を原料とした木材チップを当社が購入すれば、森林組合にとって新たな収入になること、さらに木材チップの価格が従来のボイラ燃料である重油より安価ならば、エネルギーコストとCO₂排出量の両方の削減になるため、木質バイオマスボイラの導入の検討を開始しました。 会長からは「誰かが損をしたら持続的な取組とならないので、当社も森林組合も損をしない『WIN-WIN』の関係とするように」との指示があり、この解決策に頭を悩ますこととなりました。

県も加わり、森林組合と林業に関する包括連携協定を締結

連携協定石川県、コマツ、石川県森林組合連合会による協定の締結式

重油ボイラを木質バイオマスボイラに替えた場合の燃焼カロリーを比較して、どの程度の量の木材チップが必要か、その必要量を森林組合が賄えるか、重油価格と比較して木材チップの価格がいくらなら損をしないか等の検討を重ね、森林組合と交渉を進めました。

木材チップの2者間の交渉協議には石川県にも加わっていただき、供給量や価格、長期購入契約等の合意に至り、平成26年2月に石川県森林組合連合会、当社、石川県の3者で「林業に関する包括連携協定」を締結しています。

木質バイオマスの雇用効果と効率の良いボイラの開発

チップ投入
ボイラへの県内産チップの投入の様子

今回の未利用材を活用する取組は、森林の荒廃の抑制につながるとともに、長期安定した木材チップの製造を担う森林組合には新たな雇用も生まれました。また、大量の木材チップの運搬を地元の運送業者に依頼することにより、地域経済の活力向上に少なからず貢献していると受け止めています。

なお、粟津工場では、平成26年に木質バイオマス給湯ボイラを試験的に導入し、食堂とシャワールームに活用して燃焼効率等の実証を行い、翌年には木質バイオマス蒸気ボイラを4台(令和2年7月に2台増設)設置しました。

このボイラから発生する蒸気は蒸気コンプレッサーにより圧縮空気として工場機械の動力に活用し、次に蒸気式発電機により電気供給を行った後、低圧となった排蒸気は冷暖房に使用することにより、システム全体として熱効率約70%を実現しました。その結果、平成27年には当社の省エネ目標を達成することができています。

自社の技術で地方創生に繋がる取組を継続

地下水を使ったトマト栽培地下水による冷房装置を使ったトマトハウス
醸造用ブドウ運搬
建機を使った醸造用ブドウの運搬

地産地消型でのバイオマスの利活用を進めることは、地域への経済波及効果も大きく、それが地方創生につながり、自然環境、生活環境の維持、若者の定着、人口の増加が期待できます。今後も石川県の農林業の支援には、当社の「S(安全)、L(法令遵守)、Q(品質)、D(納期)、C(コスト)」という行動基準に則り、PDCAサイクルを回しながら進めていく方針です。なお、粟津工場の木質バイオマスを活用した電熱併給の取組は、国内の他工場でも地域の特性を踏まえた展開をはじめています。

また、木質バイオマスボイラの燃焼灰は産業廃棄物として処理していますが、重金属等の有害物質を含まずカリ分を多く含んでいるため、今後は肥料として活用することを目指しています。

当社の技術力は、圃場均平化を行う農業用ブルドーザの開発や、石川県内における地下水を使ったトマトのハウス栽培、ワイナリーの傾斜地で行うぶどう収穫の実証試験など様々な取組に応用されています。こうした農林業の困りごとに使える、又は提供できる技術がないかどうか、石川県とも打合せを重ねていき、地域の活性化に向けてさらに取り組んでいく考えです。

三谷主幹、インタビューのご協力
ありがとうございました。

お問合せ先

大臣官房環境バイオマス政策課再生可能エネルギー室

担当者:再生可能エネルギー地域普及班
代表:03-3502-8111(内線4340)
ダイヤルイン:03-6744-1507
FAX番号:03-3502-8285