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農林水産省

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北海道下川町・バイオマス産業戦略室山本室長に聞く

再エネインタビュー
インタビューを受ける山本室長

下川町(しもかわちょう)は、北海道の北部に位置し、人口約3,200人、面積644㎢のうち9割を森林が占める自然豊かな町で、農業、林業、製材業が基幹産業です。

下川町では、昭和28年に国有林の払下げを受けて以降、60年かけて計画的な伐採と植林を行い、平成26年から町有林の循環型森林経営をスタートしました。
森林の林道等の路網整備、地域材の活用、木質バイオマスのエネルギー利用、林業の人材育成などに取組み、森林を核とした総合産業化の町づくりを行っています。

同町の取組について、下川町森林商工振興課バイオマス産業戦略室の山本室長にお話を伺いました。
(聞き手:北海道農政事務所生産経営産業部事業支援課)

インタビューを行った「まちおこしセンターコモレビ」は下川町産のカラマツなどの地域材を活用した施設で、イベント利用のほか町内在住の木工作家による作品展示などの情報発信も行っています。 

住民発案から生まれた木質バイオマスのエネルギー利用

昭和35年に15,000人でピークとなった下川町の人口は、木材の輸入自由化や鉱山の閉山などにより大きく減少。さらにJRの路線廃止もあり、地域がなくなるかもしれないとの危機感がありました。

人口減少の中で持続可能な町を作るために、地域の資源を活用していこうと、平成10年に町民有志による「下川産業クラスター研究会」が立上がり、地域材を活用した住宅やトドマツ精油などの新産業創出プロジェクトが動き出し、その一つに木質バイオマスのエネルギー利用もありました。
一方、行政では、平成12年に林野庁の「国有林野のエネルギー資源検討会」への参加を機に、木質バイオマスのエネルギー利用に関する調査を開始しました。
これらが統合する形で具現化したのが、五味(ごみ)温泉への北海道初となる木質バイオマスボイラーの導入です。五味温泉は重油ボイラー2基で加温していましたが、うち1基を木質バイオマスボイラーに切替えました。

以降、町内ではボイラー導入が進み、現在は11基が30の公共施設に熱供給しており、町内の全公共施設での熱需要量の7割が再生可能エネルギー由来です。

エネルギー業界の理解を得て進んだ再エネの取組

チップ製造機械チップ製造機械

下川町では、丸太を伐採した際に発生する林地残材等をチップ化し、木質バイオマスボイラーにより熱供給を行っています。
チップは当初、製材工場の端材から製造していましたが、町内のボイラー導入の拡大に伴い、チップの需要が増えたため、町有林の林地残材も活用した安定供給の体制構築を進めました。平成21年にチップを製造する木質原料製造施設を整備した後、25年のバイオマス産業都市選定を機に施設を強化・拡大し、現在は、年間約3,500トンのチップを製造しています。

この3,500トンのチップは、重油換算で110万リットルに相当する量で、地元のエネルギー業界への影響は大きなものです。チップ製造事業は町営で始まりましたが、雇用効果があること等により関係業界の理解が得られ、平成23年度からは、ガソリンスタンドなどの燃料に関係する地元企業5社で設立された「下川エネルギー供給協同組合」が管理運営を担っています。この理解と協力があったからこそ、今の下川町における再生可能エネルギーの取組があると思っています。

一の橋バイオビレッジは住民との10年にわたる話合いの成果

下川町-バイオマスボイラー熱供給施設
(木質バイオマスボイラー、550kW×2基)

下川町-集住化住宅バリアフリーで平屋建ての集住化住宅

平成25年、町の中心部から10kmほどの一の橋地区の中心部を集住化エリアとして、熱供給施設を中心に集住化住宅(町営住宅)や特用林産物栽培研究所(菌床シイタケ栽培施設)を整備しました。

一の橋地区は、人口が最盛期の約2,000人から林業の衰退に伴い平成21年には95人まで減少し、地域社会の維持が困難なほどの状況に陥っていましたが、桜の植樹などの地域活動が盛んな地区でもありました。10年ほどにわたり、この地区の将来について住民の皆さんと議論を重ねた結果、町営住宅の建替え時期に合わせてJR駅の跡地に町営住宅エリアを新設。必要な施設はその近隣に集約化して、熱をバイオマスで供給し、産業も興そうということになりました。この取組が平成23年の環境未来都市の選定に繋がり、環境未来都市先導的モデル事業などを活用して、この地区を整備しています。

現在は木質バイオマスボイラーから集住化エリア内の施設のほか、近隣の9施設へ熱供給を行っていますが、将来的には熱電併給にも取り組みたいと考えています。

集住化住宅には、住民センター(集会所)、郵便局や地域食堂(カフェ)も併設し、集住化エリア内に日常生活を支えるサービス機能を集約しています。

取組の効果は子育て支援や仕事づくりにも波及

下川町のしいたけ生産しているシイタケ

木質原料製造施設では、持ち込まれた林地残材等を購入、チップ化して主に下川町(公共施設用)へ販売しており、年間の売上げが4,500万円、2,000万円の利益があがっています。この利益は下川エネルギー供給協同組合と町とで折半し、町では、チッパーや車両更新を見据えて基金として積立てているほか、林地残材の運搬のための計画的な路網整備も進めています。

下川町では、各公共施設の熱源を木質バイオマスボイラーに切り替えたことにより、平成30年度は燃料費を灯油換算で約3,800万円削減できました。この削減益の一部をボイラーの更新費用として積立て、残りはバイオマス活用の取組効果を町民に還元するため、保育料の補助や子どもの医療費無償化といった子育て支援に充当しています。また、一の橋地区の特用林産物栽培研究所では、熱供給施設からの熱を利用して菌床シイタケを栽培し、道北地域の小売店に出荷されるとともに、30名の雇用を生んでいます。

この一の橋地区では町外からの地域おこし協力隊が、集住化住宅の除雪や熱供給施設の管理、地域食堂の運営などを行っており、卒業した協力隊が事業や法人を立ち上げるなどの活動も見られます。
これらの結果、一の橋地区では若い住民が増え、人口構成が大幅に改善しています。

「誰ひとり取り残されず、しなやかに強く、幸せに暮らせる持続可能な町」を目指して

昔の一の橋地区林業で栄えた昔の一の橋地区

現在の一の橋地区現在の一の橋地区

下川町では平成30年4月に「2030年における下川町のありたい姿」(下川町版SDGs)を策定しました。このコンセプトは「誰ひとり取り残されず、しなやかに強く、幸せに暮らせる持続可能な町」で、その実現を目指すために「エネルギーの地消地産」と「脱炭素社会の構築」などの7つの目標を設定しています。更に、事業者や町民の方と議論を重ね、平成31年3月に「下川町再生可能エネルギー導入促進ロードマップ」を策定しました。

ロードマップでは、2030年以降順次更新時期を迎える木質バイオマスボイラーの更新に合わせて、一の橋地区のように市街地中心部にエネルギーセンターを設置して集約化を図ることや、太陽光発電や風力発電の導入も盛り込まれています。太陽光発電は、平成30年に北海道全域で発生した大規模停電を背景に、避難施設にも電源を確保して欲しいとの多数の住民意見を踏まえたもので、風力発電は導入ポテンシャルはあるものの、設置費用と接続経費が課題と考えていますが、どちらも長期的に検討していきたいと思います。

今後も地域での勉強会などを通じて、事業者・町民の皆さんとともに町の資源を活用した再生可能エネルギーの導入を推進していきたいと考えています。

山本室長、インタビューのご協力
ありがとうございました。

お問合せ先

食料産業局バイオマス循環資源課再生可能エネルギー室

代表:03-3502-8111(内線4340)
ダイヤルイン:03-6744-1507
FAX番号:03-3502-8285