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農林水産省

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第1回 (平成28年8月2日) 議事概要

1 開催日時

平成28年8月2日(火曜日)  15時00分~17時10分

2 開催場所

農林水産省 第2特別会議室

3 出席者

【委員】
雨宮宏司座長、黒田栄喜委員、竹川元章委員、中園江委員、平澤正委員、山岸順子委員、吉永悟志委員

【ヒアリング対象者】
◎生産者
  船川 由孝  (有)神扇農業機械化センター 代表取締役 (埼玉県)
  高田 法定  農業生産法人(有)耕 代表取締役           (富山県) 
  北原 靖章                                                      (佐賀県)
◎県担当者
  原  弘信   埼玉県春日部農業振興センター農業支援部技術普及担当部長
  高橋  渉   富山県農林水産部農業技術課広域普及指導センター副主幹普及指導員
  牧山 繁生 佐賀県農業技術防除センター専門技術部農業専門技術員(普通作物)

【事務局】
大臣官房統計部長、生産流通消費統計課長 ほか

4 議事概要

生産者及び県担当者から本年の水稲の生育・作柄、栽培管理状況等の説明を受けた後、委員との質疑応答・意見交換を行った。主な内容は、次のとおり。

(1) 本年の気象と生育・作柄の状況について

○埼玉県では、5月から6月にかけて高温・多照で推移したことから、生育は平年並みないし若干進んでいる状況である。埼玉県内では麦の収穫後に田植えをするほ場があること等から田植えの期間が4月下旬から6月下旬となっており、このうち、ゴールデンウィーク頃に植えたものについては生育が進んでいるが、田植え時期が遅くなるに従って、5・6月の高温・多照の恩恵が少ないことから、生育は平年並みに近づく傾向となっている。病害虫については、7月下旬に曇天が続いたことから丘陵地の陰になっているような地域では葉いもちが散見されたため、7月下旬にいもち病の発生予察注意報が出されたが、梅雨明け以降の好天でいもち病の発生は止まっていると考えている。なお、利根川水系を中心とした取水制限については、今のところ水稲の生育に影響はないものと考えている。

○富山県では、田植期以降、気温が高めに推移しているが、本年の特徴としては気温が平年を下回った期間がほとんどなく、つまり、生育が停滞した期間がなかったため、生育が平年よりも早まったと考えている。また、日射量も5月第4・5半旬及び6月第1半旬で特に多く、田の水温が高かったことから、活着が良好で初期分げつも旺盛となったと考えている。穂数についてはやや多く、目標である1m2当たり400本程度となるのではないかと見込んでいる。葉色についても平年並みとなっており、今後これを維持していくことが重要である。生育量については平年より多めとなっていることから、もみ数は平年を上回るものと見込んでおり、今後は登熟を良好にするため稲体の活力維持と日射量が確保できるかどうかが重要となる。

○佐賀県では、4月初めから5月中旬にかけて田植えをする早期米については気温が高く推移したことから活着が良く、生育も平年より早く順調である。一方6月に田植えを行う普通栽培については、田植え後に雨が多かったことから深水となり茎数が少なかったが、梅雨明け後は天候が回復したことから茎数については現在は平年並みとなっている。今後懸念される事項としては、トビイロウンカといもち病があげられる。これらは、今後の天候次第では被害が広がる可能性があるので注意する必要がある。また、佐賀については今後10月頃までに発生する台風の被害がもっとも大きい。さらに、スクミリンゴガイについては、冬場暖かく越冬率が高かったため、一部では例年よりも被害が大きく出ているようである。いずれにしても、佐賀県の作柄については、今後の気象条件が大きく影響するので引き続き注視してまいりたい。 

(2)稲作技術の展開方向が作柄・収量に及ぼす影響について

ア 疎植化、施肥体系の変化等の稲作技術の展開が作柄及び収量に及ぼす影響について

○埼玉県では、高齢化に伴う作業の効率化やコスト削減の観点から、疎植栽培は徐々に県内に広がっている状態であるが、ここ数年、5月の気象条件が良いことから、初期分げつが順調で有効茎数はむしろ増加している状況である。気象条件が悪い年の状況について言及することは難しいが、現状十分茎数を確保できていることから、大幅な減収になることはないのではないかと考えている。

○過去10年程度疎植を行っていて、収量には全く影響はないが、コシヒカリの場合穂長が長いので、気象条件によっては品質に多少影響が出る場合がある。

○富山県では、疎植ではなく、逆に植え付け株数を従来の1m2当たり60株から70株に増加させる指導を行っている。これは、富山県ではコシヒカリが中心で、穂数と一穂当たりもみ数のバランスが重要であるからであり、1m2当たり穂数が400本、一穂当たりもみ数が70粒を目標としている。この結果、県内の収量及び品質ともに向上している状況である。

○どの程度まで疎植が行えるかは、品種によって異なると考えるが、極端な疎植は収量や品質に影響を与えるものと考えている。

○ 特徴的な栽培方法として、代を掻いたら翌日には田植えを行うことで作業の効率化を図っている。また、苗が良くないと良い米はできないと考えており、苗作りは重視している。施肥については、一発施肥ではなく基肥と穂肥に分けており、特に穂肥が重要で、一発施肥では収量を確保することはできないと考えている。

イ 規模拡大、コスト削減、新品種の導入等経営の方向性が作柄及び収量に及ぼす影響について

○これまで直播を積極的に取り組んでこなかったのは、雑草対策に時間が取られるためである。特に生産調整が始まって田で畑作を栽培するようになってから、雑草が多くなってしまった。ただ、V溝直播であれば、収穫直後に代かきしてほ場作りをすればうまくできるようなので、V溝直播の導入を検討している。

○農業機械については、ほ場の大規模化等に対応するため、最新のものを購入するようにしており、GPS機能等を活用することで作業の効率化を図っている。

○本年初めて鉄コーティングの湛水直播を行ったが生育が非常に順調なので来年以降少しずつ増やしていきたいと考えている。

○多収性のハイブリッド米を栽培しており、10a当たり収量は県平均が500kg程度である中、700kg程度となっている。分げつはあまりしない傾向のようであるが、穂長が長く粒も大きくなり、千粒重は24、25gはあるのではないかと思う。

(3)主食用米の需要が減少しているなかで、飼料用米の導入も含め、水田経営をどのように考えていくのかについて

○現在所有しているほ場は一区画当たり40a程度なので、これを倍にして更なる低コスト化を実現したい。また、美味しくなくては売れないので、多収性と同時に食味の良い米を作ることを目指していきたい。

○耕作地のほとんどが借地であるので、自分たちの経営だけでなく地域とともに発展できるよう、これからも水田を有効活用したいと考えており、主食用米を中心としつつ飼料用米の栽培も行っていきたい。

○平成30年に生産調整が撤廃され、米の直接支払い交付金もなくなると言われているなかで、各県がどの程度の米を生産するのかが不安である。今後は地域間の競争が今まで以上に生じると思われる。それに、ウンカ等の防除は必須であり、無農薬栽培等の付加価値の付いていない一般米は首都圏から遠い西南地域は輸送費も含め不利となる事を危惧している。将来的にさらに米の需要が減少していくようであれば、作柄が安定していて国産の需要も高まっている大豆にシフトしていき、米については需要のある無農薬米等を栽培していきたいと考えている。

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