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農林水産省

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1 我が国の食料安全保障に関わる情勢の変化等


世界の食料需給については、世界的な人口増加、新興国の経済成長等による食料需要の増加が見込まれる中、地球温暖化等の気候変動の進行による農産物の生産可能地域の変化、異常気象による大規模な不作等が食料供給に影響を及ぼす可能性があり、中長期的には逼迫(ひっぱく)が懸念されます。

さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴うサプライチェーン(供給網)の混乱に加え、令和4(2022)年2月のロシアによるウクライナ侵略等により、小麦、とうもろこし等の農作物だけでなく、農業生産に必要な原油、肥料等の農業生産資材についても、価格高騰や原料供給国からの輸出の停滞等の安定供給を脅かす事態が生じるなど、我が国の食料をめぐる国内外の状況は刻々と変化しており、食料安全保障上のリスクが増大しています。

こうした状況を踏まえ、令和5(2023)年6月には、「食料安定供給・農林水産業基盤強化本部」(本部長は内閣総理大臣)において、「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」が決定され、平時からの国民一人一人の食料安全保障の確立、環境等に配慮した持続可能な農業・食品産業への転換、人口減少下でも持続可能で強固な食料供給基盤の確立といった新たな3つの柱に基づく政策の方向性が取りまとめられました。その後、同本部において、令和5(2023)年12月に「食料・農業・農村基本法の改正の方向性について」が決定されるとともに、「食料・農業・農村政策の新たな展開方向」に基づく施策の工程表を策定し、「食料・農業・農村基本法」(平成11年法律第106号)の改正内容を実現するために必要な関連法案やその他の具体的な施策について取りまとめました。

食料・農業・農村基本法は、食料・農業・農村政策の基本理念や、その下での基本的な施策の方向性を示すものです。しかしながら、制定から四半世紀が経過し、我が国の食料・農業・農村は、制定時には想定していなかった、又は想定を超えた情勢の変化や課題に直面しています。

こうした状況を踏まえ、令和4(2022)年9月から、食料・農業・農村政策審議会に設置された基本法検証部会の下で、現行基本法に基づく政策全般の検証・見直しの議論が行われ、令和5(2023)年5月に同審議会の考え方を中間取りまとめとして公表し、その後、地方意見交換会や国民からの意見・要望の募集を経て、9月に答申が取りまとめられました。

同審議会の答申では、農業施策の見直しの方向の1つとして、食料安全保障の観点から、農業の生産から加工、流通を通じ消費者の手元に届くまでの過程やその課題への理解を深め、国産農産物や環境に配慮した食品等を積極的に選択する意識を事業者も含め国民に醸成するため、子供から大人までの世代を通じた農業体験等の食育や地産地消といった施策を官民が協働して幅広く進めていくべきであるとされており、農業に対する国民の理解醸成を促していくべきであるとされています。

見直しに係る議論の中では、消費者等のニーズに応じて生産された農産物について、市場における合理的な価格の形成を実現し、生産者、加工・流通事業者、小売事業者、消費者等からなる持続可能な食料システムを構築するべきであるとされました。持続可能な食料供給を実現するためには、生産だけでなく、流通、加工、小売等のフードチェーンの各段階の持続性が確保される必要があります。一方で、昨今の原材料価格の高まりや円安の進行など事業環境が大きく変化する中で、食料システム全体で合理的な費用の考慮が図られなければ、食料供給を担う事業者の事業継続が困難になり、食料供給基盤が脆弱(ぜいじゃく)化してしまうことも懸念されています。これらを踏まえ、農林水産省では、令和5(2023)年8月から「適正な価格形成に関する協議会」を開催し、生産から消費までに至る食料システム全体で合理的な費用が考慮される仕組みの構築について検討を行っています。あわせて、円滑な価格転嫁に向けた国民理解の醸成に向けた取組も進めています。

令和6(2024)年2月には、第213回国会(令和6年 常会)に「食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案」が提出されました。この法律案は、「食料安全保障の確保」について目的規定に明記した上で、基本理念に新たに位置付け、消費者の役割として「消費者は、食料の消費に際し、環境への負荷の低減に資する物その他の食料の持続的な供給に資する物の選択に努めることによって、食料の持続的な供給に寄与」することを追加するとともに、食料の価格の形成に当たり、「食料の持続的な供給の必要性に対する理解の増進」等の施策を講ずるものとする条文を追加するなどの内容となっています。

農林水産省では、我が国の食と農について国民の理解を深め、国産の農林水産物を積極的に選択するといった行動変容につなげていくため、「食から日本を考える。ニッポンフードシフト」をスローガンとする国民運動を推進するとともに、省公式YouTubeチャンネル「BUZZ MAFF(ばずまふ)」で、農林水産省職員がYouTuberとなり、その人ならではのスキルや個性を生かして、情報発信するプロジェクトを行うことで、国産農林水産物の良さや農林水産業、農山漁村の魅力を発信しています。

そのほか、食料自給率の向上に資する国産の小麦や我が国で唯一の自給可能な穀物である米を原料とする米粉の利用について理解を深めることも重要です。農林水産省では、国産小麦や米粉の利用拡大に向けて、食品関連企業等の新商品開発等を支援しています。また、米や米粉の魅力を広め、消費を拡大させることを目的として、「米・米粉消費拡大推進プロジェクト」を立ち上げました。令和5(2023)年度は、都市部を中心としたテレビCMの放映や、特設ウェブサイト・SNSでの情報発信、米粉アンバサダーによる米粉料理の紹介のほか、米と米粉の魅力を分かりやすく学習するための教材冊子の作成等の全国的な取組を実施しました。



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消費・安全局
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担当者:食育計画班
代表:03-3502-8111(内線4551)
ダイヤルイン:03-3502-1320

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