このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

3 認定こども園における食育の推進


認定こども園は、就学前の子供を保育の必要の有無にかかわらず受け入れ、教育と保育を一体的に提供する、いわば幼稚園と保育所の両方の機能を併せ持ち、保護者や地域に対する子育て支援も行う施設です。

認定こども園では、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」(平成26年内閣府・文部科学省・厚生労働省告示第1号)に基づき、各園において食育計画を策定し、教育・保育活動の一環として計画的に食育を行うこととしています。認定こども園は教育と保育を一体的に行う施設であることから、食育の推進に当たっては、保育所と幼稚園双方の取組を踏まえることとしています。

また、子育て支援活動の一環として、認定こども園の栄養教諭や調理員等がその専門性を生かして、地域や家庭における食育に関する支援を行っている園もあります。

事例:直接体験 ~一汁一菜を作っちゃおう~

日生東日本橋保育園ひびき(東京都)

日生東日本橋保育園ひびきは、大都会東京のど真ん中、東京都中央区にあります。これまで、小さなプランターを使った栽培活動などに挑戦するものの、失敗の連続。そこで、自園の特徴を見直し、方針である「直接体験を大切にした保育」に沿った食育活動に取り組みました。

田植えから食べるまでを直接体験

当園はビルに囲まれた環境のため、埼玉県の農業体験施設で田植え体験をすることにしました。導入として、保育園でのバケツ田んぼ作りに挑戦しましたが、カラスに邪魔をされて失敗。しかし、その失敗があったからこそ、子供たちの田植え体験への期待は膨らみました。都会の子供たちにとって、どろどろの田んぼの中に足を突っ込む機会はめったにないので、汚れも気にせず楽しみ、大きな達成感を得たようでした。田植えから稲刈りまでの間の田んぼの世話はできませんが、保育園の玄関脇にプランターを置いて夏野菜を育てることで、育てる体験ができるよう工夫しました。

待ちに待った稲刈り体験では、稲穂を見た子供から「これのどこがお米になるの?」という質問がありました。そこで、稲を一束持ち帰り、身の回りにある道具を使った脱穀・精米作業を行い、子供たちは、玄米と普段食べている白米の色の違いや精米作業の大変さなどに気づきました。

最後の仕上げは、自分たちが作ったお米を炊き、だしを取ったお味噌汁を作り、手作りのぬか漬けをおかずに、一汁一菜を作って味わうことでした。お米は、炊飯器を使わず土鍋と子供たちの五感をフル活用して炊きました。美味しいと食べる喜び、作ったことの達成感、みんなで味わう楽しさが食卓にあふれ、その日から、お茶碗の中の米粒を一つ残さずきれいに食べるようになりました。

田植え体験

田植え体験

夏野菜の栽培

夏野菜の栽培

精米作業

精米作業

一汁一菜を味わう

一汁一菜を味わう

東日本橋ならではの食文化に触れる

東日本橋は、作物を育てる環境には恵まれていませんが、食を始めとする文化の発祥に触れる場は豊富にあります。そこで、文化がここから日本中に伝わっていったとされる「日本橋」を歩いて渡ったり、園児の保護者が営む歴史ある鰻屋を見学したり、食文化に触れる体験をしました。鰻の感触・開き方・鰻を捕る時に使う道具に、興味津々でした。

鰻屋の見学

鰻屋の見学

都会のど真ん中の保育園で、食育活動を進めることは難しいと考えていましたが、この直接体験は、経験という形で、子供たちの中に今まで以上に残ったと思います。子供たちは、土の感触、匂い、大変さ、美味しさ、そして苦労するからこその感謝の気持ち等をたくさん感じ取ってくれました。

事例:幼稚園児が高校生との交流を通じて食の体験を深める事例

三重県伊勢市立明野幼稚園

味噌仕込みの様子

味噌仕込みの様子

幼稚園における食育は、まずは幼児自身が教師や他の幼児と食べる喜びを味わい、様々な体験を通じて食べ物への興味や関心を育むことが大切になります。本園は三重県立明野高校と隣接しており、高校生との様々な交流を日頃から行っています。その一環として園児達は高校の広い実習農園の一角で高校生とともに農作業を行ったり、そこでとれた作物で加工品を作ったりする活動を行っています。ここでは5歳児と高校生による味噌仕込みを紹介します。

 

味噌仕込みの体験は6月に園児が高校生に大豆の種のまき方を教えてもらって共にまくことから始まります。11月の収穫で行う硬い茎を鎌で刈り取る作業は園児にとっては難しい作業ですが、高校生に手を添えてもらうことで、園児は安心して取り組むことができます。大豆を乾燥させた後はサヤから豆を取り出します。「コロコロしとるな」「黒いのもある」と、高校生と親しく話しながら夏に園で収穫した枝豆との違いや大豆の特徴を感じながら作業をします。1月の味噌の仕込みにあたっては事前に高校生による手作りの紙芝居を見て、味噌は大豆の加工品の一つである事や原材料を知り、そして今年仕込んだ味噌は来年になって食べることを教えてもらいます。材料を混ぜる時に園児は塩の作用によって「手にしみる」体験をしながら、最後まで続けることの大切さを学んでいます。材料を玉にして空気を抜くためにバケツの中に投げ入れる作業では、緊張しながらも楽しそうです。作業後、昨年の5歳児が仕込んだ味噌を使用し高校生に用意してもらった「豚汁」を全園児で食べ、自分達が仕込んだ味噌が来年にはこのように食べてもらえることを実感します。このような活動を通じて、皆で協力をしながら食べ物を作ることや食べることの楽しさを味わい、野菜の生長や旬の時期等、身近な食べ物について体験を通して学びます。

稲刈りの様子

稲刈りの様子

ブロッコリー定植の様子

ブロッコリー定植の様子

味噌仕込みだけではなく、本園では、1年を通じて広い実習農園で野菜の種をまき定植し収穫を行い、そこでの作物を使用した活動を行っています。例えば餅つきでは園児自身が田植えをし、鎌で稲刈りしたもち米を使用します。保護者と共に杵と臼を使って餅をつき、更に高校生にも手伝ってもらいきな粉餅と餡餅にして食べることで、日本の伝統的な行事と食を楽しみながら味わいます。たくさんの人に支えられながら自分達で収穫した作物は特別でおいしく、嫌いだった野菜も園では食べられるようになっていきます。収穫したものを家に持ち帰り、家族に「○○ちゃんがとったじゃが芋はおいしいな」と言われ、園児は達成感や満足感も味わいます。

このように多くの人と交流をしながら行う食育は、皆で協力し共に食事をすることで食べることの喜びを味わい、食への興味や関心が育まれるだけではなく、人と関わる力や協同する大切さ、最後までやり抜く力も育まれています。

事例:あかさかルンビニー園の取組 ~人と人、自然といのちを育む食育~

幼保連携型認定こども園 あかさかルンビニー園(佐賀県有田町)

出汁を使った給食

出汁を使った給食

日本の陶磁器発祥の地で有田焼の産地として知られている佐賀県有田町にある「あかさかルンビニー園」は、平成19(2007)年に幼保連携型認定こども園の認定を受けました。認定こども園になる際に新たに食育の計画を策定し、それまで各家庭から弁当を持ってくることとしていた幼稚園の子供についても全員に給食を提供することとし、「1.栄養のバランスと、日本古来の“うまみ”を常に意識すること」、「2.地産地消にこだわること」という2つの目標を柱として食育に取り組むこととしました。

 

あかさかルンビニー園では、昆布・椎茸・鰹節などで出汁をとり、汁ものばかりでなくひじきの煮物やおからの煮物、里芋の煮物や緑黄色野菜のおひたしなどにも使い、化学調味料を使わない給食を提供しています。家庭の食卓で出てくることが少なくなった日本人が昔から大切にしていた食文化を、幼い頃から味わってもらい、次の世代に伝えていくことを目指しています。

また、有田町は農業が盛んな地域であることから、無農薬での田植えや稲刈り、季節ごとの野菜栽培体験等を、保護者も交えて行っています。収穫したものは、子供たち自身が調理して使うこととしており、野菜の苦手な子供も、自分たちで作ったものであれば食べることができました。

農業体験には町の農家の方々と連携協力が必要となります。今まで何気なく見ていた町の風景の中に、私たちが食するまでにどれほどの人の手があり、どれほどの自然の恵みがあったのかを保育者も改めて感じるようになり、それこそが子供たちに伝えなければならない大切なものとして食育の視点にしています。

食育は子供たちだけでなく地域を交えた保護者活動の一つでもあり、子供・保育者・保護者がともに学び合うものです。そのため、園の食育チームが子供たちの給食の献立の説明や、農業体験の意義、理念等を記載した「食育新聞」を学期ごとに発行し、保護者とも情報や意識の共有を図っています。

様々な体験を通して子供たちは学びます。また、その体験には多くの方々が関わりあって成り立つことも分かってくれています。私たちの食育は、日々の中で口にするものの大切さを感じ、人と人を繋ぎ、自然といのちに感謝する心を育む取組であると考えています。

田植え体験

田植え体験

食育新聞

食育新聞



ご意見・ご感想について

農林水産省では、皆さまにとってより一層わかりやすい白書の作成を目指しています。

白書をお読みいただいた皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。

送信フォームはこちら

お問合せ先

消費・安全局
消費者行政・食育課

担当者:食育計画班
代表:03-3502-8111(内線4576)
ダイヤルイン:03-6744-1971
FAX番号:03-6744-1974