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特集 多様な暮らしに対応した食育の推進~食卓を囲み食事を共にすることから始める食育の環~


1 第3次食育推進基本計画における位置付け

第3次食育推進基本計画において、重点課題の一つとして、「多様な暮らしに対応した食育の推進」が位置付けられ、地域や関係団体の連携・協働を図りつつ、子供や高齢者を含む全ての国民が健全で充実した食生活を実現できるよう、コミュニケーションや豊かな食体験にもつながる共食の機会の提供等を行う食育を推進することが求められている。

本特集では、多様な暮らしに対応した食育の推進について、食卓を囲み食事を共にすることに着目し、

  • 日常生活の基盤である家庭において、家族と一緒に食べる食事
  • 一日の全ての食事を一人で食べている「孤食」
  • 地域等において、みんなで一緒に食べる食事

の状況や取組について、取り上げた。

コラム:食事を共にする頻度が高い人は、食生活が良好な傾向

近年、食事を共にすることと健康や良好な食生活に関する国内の研究結果を分析した報告(*1)がある。その報告によると、誰かと食事を共にする頻度が高い人は、<1>心の健康状態について、「気が散る・根気がないなどの精神的な自覚症状が少ない」、<2>食生活について、「ファストフードの利用が少ない」、「野菜や果物など健康的な食品の摂取頻度が高い」といった傾向がみられた。

海外の研究結果でも、同様の報告(*2)があり、家族と食事を共にする頻度が高いと、野菜や果物の摂取量が多いなど食物摂取状況が良好であることが示唆されている

主食・主菜・副菜を3つそろえて食べる頻度

農林水産省の「食育に関する意識調査」においても、孤食がほとんどなく、ほぼ毎日誰かと食事を共にしている人は、孤食が週2日以上の人と比べ、ほぼ毎日主食・主菜・副菜を3つそろえて食べると回答した割合が多く、食事のバランスが良い傾向。

さらに、朝食摂取頻度や生活習慣病の予防や改善のために気をつけた食生活の実践状況も、食事を共にする頻度が高い人のほうが、良好な傾向。

*1 會退友美、衛藤久美.共食行動と健康・栄養状態ならびに食物・栄養素摂取との関連 ―国内文献データベースとハンドサーチを用いた文献レビュー―.日本健康教育学会誌.2015;23(4):279-289.

*2 衛藤久美、會退友美.家族との共食行動と健康・栄養状態ならびに食物・栄養素摂取との関連-海外文献データベースを用いた文献レビュー-.日本健康教育学会誌.2015;23(2):71-86

2 家族と一緒に食べる食事の状況と取組

(家族との「共食」の回数は目標に近づくが、20~50歳代で頻度が少ない傾向)

朝食又は夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数

「朝食又は夕食を家族と一緒に食べる『共食』の回数」は、平成29(2017)年度は週10.5回(第3次基本計画の目標:2020年度までに週11回以上)。

20~50歳代で頻度が少ない傾向。

全ての年代で、家族と一緒に食事をすることは重要であると認識(各年代とも約9割)。

家族と一緒に食事をする良い点としては、「家族とのコミュニケーションを図ることができる」(79.4%)、「楽しく食べることができる」(62.3%)が上位。

(家族と一緒に食事をすることが困難な理由は、仕事の忙しさ)

家族と一緒に食事をすることが困難な理由

20~50歳代では、3割強が家族が一緒に食事をする時間を作ることが難しい状況。

家族と一緒に食事をすることが困難な理由としては、自分や家族の仕事の忙しさが最も多い。

男性の長時間労働者の割合は、一貫して30歳代、40歳代が高い。

家族が食卓を囲み、食事を共にするためには、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進が重要。

事例:「ゆう活」による職員のワーク・ライフ・バランスの充実

社員からの声

社員からの声

西武鉄道では平成23年、夏季の始業時間を1時間早めるサマータイム制度を試験的に実施。節電への効果だけではなく、時間外労働が対前年比25%削減。翌年からは就業規則を改正し、今ではゆう活の取組として定着。

健康的な朝型生活になり、自身の健康改善につながったという声や、早く帰宅できることから子供と一緒に食事をとる時間が増え、これまで以上に家族とのコミュニケーションが深まったという声も多く、家庭において家族が食事を共にする機会の増加にもつながっている。

3 一日の全ての食事を一人で食べている「孤食」の状況

(週の半分以上「孤食」の人は、約15%)

一日の全ての食事を一人で食べる頻度
一日の全ての食事を一人で食べる感想

家族と一緒に食事をすることが重要ではあるが、家庭や個人の努力だけでは難しい状況がある。

週の半分以上、一日の全ての食事を一人で食べている「孤食」の人は約15%で、平成23年と比べて増加。

一人で食べたくないが、他の人と時間や場所が合わない、一緒に食べる人がいないといった理由で、仕方なく一人で食べている状況。

仕方なく「孤食」になってしまう背景として、単独世帯や夫婦のみの世帯、ひとり親世帯が増加。

特に、65歳以上の高齢者では、一人暮らしの者の割合が増加してきており、平成27(2015)年は男性高齢者13.3%、女性高齢者21.1%。2040年には男性高齢者の20.8%、女性高齢者の24.5%が一人暮らしであると推計。

事例:高齢者が仲間たちと食卓を囲むサロン活動

「ひなたくらぶ」の様子

「ひなたくらぶ」の様子

「おばんですサロン」の様子

「おばんですサロン」の様子

宮城県岩沼市のホームひなたぼっこは、保育、介護、障害児支援活動とともに、東日本大震災後の仮設住宅入居者も含めた高齢者の自立した生活を支援するために、誰もが気軽に集える地域サロン活動を実施。

家に閉じこもりがちな高齢者が外出するきっかけとなるように、平成15年から地域サロン「ひなたくらぶ」を開始。週1回、参加者がサロンに集まり、絵手紙教室や健康セミナー、軽体操など様々な活動を実施。月に1回は、昼食会も実施。

平成28年からは、男性にも参加してもらいやすくするため、毎月1回、主に一人暮らしの高齢男性を対象とした夕食会「おばんですサロン」を開催。近所の方や社会福祉協議会から紹介された方などが参加し、回を重ねるごとに、参加者同士はすっかり顔なじみに。

仲間たちと食卓を囲む食事は、「楽しい」「美味しい」と、参加者たちは次回を楽しみに帰宅。

4 地域等において、みんなで一緒に食べる食事の状況と取組

(地域等で共食したいと思う人が共食する割合は、増加)

「地域等で共食したいと思う人が共食する割合」は、平成29(2017)年度は72.6%で、第3次基本計画作成時の64.6%から増加し、既に目標(2020年度までに70%以上)を達成。

地域等での食事会に参加することで、他の参加者とコミュニケーションが図れたり、楽しく食べることができたり、地域の状況を知ることができるなどの効果。

家族と食事を共にすることは難しいが、食を通じたコミュニケーション等を図りたい人にとって、地域や職場等の所属するコミュニティを通じて、様々な人と食事を共にする機会を持つことが重要。

地域等での食事会に参加した感想

(地域等での食事会は、参加しやすい身近な場所で)

地域等での食事会に参加していない人が今後参加するための条件としては、参加しやすい場所や時間で開催されることや身近な人からの声かけがあることが上位。地域等での食事会への参加を更に推進するためには、このような視点が重要。

地域等での食事会に参加する条件

(子供食堂と連携した様々な食育の取組が展開)

子供食堂において行われている食育の取組

近年、地域住民等による自主的な取組として無料又は安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供する子供食堂等が広まっている。家庭において誰かと食事を共にすることが難しい子供たちに対し、その機会を提供している。

農林水産省において、子供食堂を対象としたアンケート調査を行ったところ、主な活動目的として、「高齢者や障害者を含む多様な地域の人との共食の場の提供」や「子供たちにマナーや食文化、食事や栄養の大切さを伝えること」を意識している子供食堂が、それぞれ約7割。

子供食堂における食育の取組としては、子供に対し温かな団らんのある食事の場を提供することや子供に配膳の手伝いをしてもらっていることが多かった。

その他にも、食材の旬や食事のマナー、健康、郷土料理等について話して聞かせたり、調理の体験や農林漁業に関する体験の機会を設けるなど、ほとんどの子供食堂で食育の取組を実施。

参加者は、子供だけではなく、子供に付き添う親や高齢者、それ以外の大人(18歳以上)を対象としている所も多く、幅広い世代が対象。

コラム:子供食堂と連携した地域における食育の推進活動

子供食堂と地域が連携して進める食育活動事例集

子供食堂と地域が連携して
進める食育活動事例集

子供が一人でも来られる無料又は安価で食事を提供する子供食堂は、子供にとって食卓を囲み食事を共にする貴重な場であるとともに、地域コミュニティの中での子供の居場所となっている。そこで、農林水産省では、地方自治体や地域における食育関係者が、食育推進の観点から、子供食堂の活動の意義を理解し、適切な連携が図られるよう、子供食堂と連携した地域における食育の推進に関連する情報を整理し、ホームページで公表。

また、子供食堂や食育に詳しい有識者、子供食堂やそのネットワークに携わる実践者、地方公共団体の担当者の協力を得て、子供食堂と地域とが連携して食育に取り組む事例の収集や普及啓発に関する検討を実施。アンケート調査や子供食堂のヒアリングにより、子供食堂の現状・課題、地域との連携状況を取りまとめるとともに、地域が子供食堂と連携している具体的な事例を、課題や食育の取組ごとに整理した事例集を作成。

子供食堂が抱える課題の解決や食育の取組の充実に向けて、行政・団体関係者や地域の方々に活用してもらえるよう、事例集の普及啓発を図る。

事例:生産者と連携して地産地消に取り組む子供食堂

JA中野市が提供したきのこに子供は大喜び

JA中野市が提供したきのこに
子供は大喜び

生産者の話「命をいただく」を聴く

生産者の話「命をいただく」を
聴く

信州こども食堂ネットワークは、NPOホットライン信州が事務局を務め、長野県全域の子供食堂をつなぐ。

各地の子供食堂に対して、フードバンクに寄付された食料品の配布等の支援を行っているほか、子供食堂を開きたい人を対象としたセミナー開催や、子供食堂の活動をまとめた「信州こども食堂ネットワーク便り」の発行など、情報発信。

子供食堂を開催するに当たり、「子供たちに栄養のある食事を提供したい」という思いから、生鮮食品へのニーズが高いため、個別生産者や地区農協(JA中野市、JAグリーンながの)から農産物の提供を受け、生鮮食品のフードバンク活動を実施。

平成29年度からは、子供食堂が地元の農産物直売所やAコープで購入した生鮮食品を中心とした食材等の費用を、JAながのと長野県みらい基金が協力し、キャッシュバックする制度を開始。

生産者や関係団体と連携することで、地場産物を多く使った食事を提供するとともに、子供たちが生産者らから食に関する話を聴く機会もある。

事例:農業と食を通じて、多様な世代や暮らしの人々の居場所を作る「畑食堂」

農作業の様子

農作業の様子

多世代が食卓を囲む昼食

多世代が食卓を囲む昼食

島根県安来市にある眞知子農園は、無農薬有機栽培にこだわった野菜や果物の栽培と、子供や若者に対する学習支援や居場所作りの取組等を実施。

開催する「畑食堂」には、小学校や養護学校の生徒、不登校の子供や引きこもりの若者、大学生、デイサービスの高齢者、地域のボランティアなど様々な方が参加。苗を植えたり、草むしりをしたり、野菜を収穫したり、収穫した大豆や落花生の選別をしたり、一人一人に役割。畑で採れた野菜を使った昼食を皆で作った後は、様々な世代が食卓を囲み、食事を共にしながら、その日の農作業や料理の話、地域の昔の話など会話も弾む。

「畑食堂」は子供たちの食育の場であるとともに、社会に出にくい子供や若者が世代を超えた人たちとコミュニケーションを図ったり、高齢者が好きな農作業をしていきいきと過ごせる心地よい居場所として、地域の支え合いの要となっている。

(地域の力で、食卓を囲み食事を共にすることから始まる食育の環)

家族と一緒に食事をすることは重要であると認識しているものの、自分や家族の仕事の忙しさで、実践が困難な状況。また、少子高齢化や世帯構造等の変化で、「孤食」の人は、更に増加する可能性がある。

そのような中、子供から高齢者まで幅広い世代を対象とし、地域の力で、様々な人たちが食卓を囲み食事を共にする取組が広がっている。

これらの取組は、バランスよい食事を楽しく食べることに加えて、農業体験などにより生産から食卓までの食べ物の循環への理解を深めたり、幅広い世代の交流で、次世代へ食文化や食に関する知識・経験を伝えることにもつながっている。さらには、地域が連携するきっかけにもなっているなど食育の環が広がっている。



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消費・安全局
消費者行政・食育課

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代表:03-3502-8111(内線4576)
ダイヤルイン:03-6744-1971
FAX番号:03-6744-1974