第2節 食品表示の適正化の推進
食品表示は、「消費者基本法」(昭和43年法律第78号)において消費者の権利として位置付けられている、消費者の安全の確保や消費者の自主的かつ合理的な選択の機会の確保等を図る上で重要な役割を果たすものです。
平成27(2015)年には「食品表示法」が施行され、これまで食品表示について一般的なルールを定めていた「食品衛生法」(昭和22年法律第233 号)、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(昭和25年法律第175号)及び「健康増進法」(平成14年法律第103号)の3法の食品表示に関する規定が統合されたことにより、食品表示に関する包括的かつ一元的な制度が創設されました。
新たな食品表示制度では上記3法を統合するだけでなく、必要な見直しを行いました。主な制度の変更点として、消費者へ販売する加工食品等への栄養成分表示の義務化、アレルギー表示に係るルールの改善、機能性表示食品制度の創設等があります。
令和元(2019)年度も、消費者庁において、新たな食品表示制度について、消費者、事業者等への普及啓発を行い、理解促進を図りました。特に新たに義務化された栄養成分表示については、都道府県や事業者団体等が企画する研修会等に積極的に講師派遣を行うとともに、義務化周知のリーフレットの改定、利用者の利便性向上のためのウェブサイトの刷新等を行いました。
第三期消費者基本計画(平成27(2015)年3月24日閣議決定)において、インターネット販売等における食品表示、加工食品の原料原産地表示、食品添加物表示、遺伝子組換え表示の在り方等の個別課題については、順次実態を踏まえた検討を行うこととされており、機能性表示食品制度の検討過程において残された課題についても、制度への反映等を行うこととされています。これを受け、平成27(2015)年12月より「食品のインターネット販売における情報提供の在り方懇談会」、「機能性表示食品制度における機能性関与成分の取扱い等に関する検討会」、「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」及び「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」を順次開催し、それぞれ報告書の公表を行い、その内容を踏まえ、以下のような対応を行いました。
機能性表示食品制度については、平成30(2018)年3月28日に「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の第3次改正を行いました。
加工食品の原料原産地表示については、平成29(2017)年9月に、「食品表示基準」の一部を改正し、輸入品を除く全ての加工食品を義務表示の対象としました。加えて、平成31(2019)年3月に「冠表示における原料原産地情報の提供に関するガイドライン」を制定しました。
遺伝子組換え表示については、遺伝子組換えに関する任意表示制度について、消費者の誤認防止や消費者の選択の機会の拡大の観点から、平成31(2019)年4月に「食品表示基準」の一部を改正しました。
そして、最後の検討課題である食品添加物表示については、平成31(2019)年4月から「食品添加物表示制度に関する検討会」を開催し、令和2(2020)年3月に報告書を取りまとめ、公表しました。
また、「健康増進法」に基づく特別用途食品制度については、平成30(2018)年8月に新たに乳児用液体ミルクの許可基準を策定しました。加えて、乳児用液体ミルクを必要とする人に適切に使用していただけるよう、消費者向けに乳児用液体ミルクの正しい使い方、安全性、表示等について解説したリーフレットを平成31(2019)年3月に作成し、公表しました。
さらに、令和元(2019)年9月に新たに糖尿病用組合せ食品及び腎臓病用組合せ食品の許可基準を策定し、併せて総合栄養食品の許可基準の見直しを実施しました。
農林水産省では、地域の農産物等の機能性に着目して健康関連の食市場を開拓するため、食による健康都市づくりに関する地域の取組を支援するとともに、制度活用ノウハウの情報提供など、機能性表示食品制度等の活用を促進するための環境整備を支援しています。
食品表示を食品選択に役立ててもらうためには、消費者への普及啓発が重要です。文部科学省が学校における食育を推進するために教職員向けに作成した「食に関する指導の手引」においても、正しい知識・情報に基づいて食品の品質及び安全性等について自ら判断し、食品に含まれる栄養素や衛生に気を付けていくことが重要であるという視点で、「食品表示など食品の品質や安全性等の情報を進んで得ようとする態度を養う」などの記載をしており、学校現場で活用されています。
コラム:地域特性をいかした栄養成分表示等の活用に向けた消費者教育に関する取組について
栄養成分表示は、食品を見ただけでは分からない「食品に含まれる栄養成分等」の情報を消費者に届けることで、消費者の健康づくりに役立つ重要な情報源となります。
消費者庁では、「食品表示法」の施行に伴い、消費者向けの加工食品等に表示が義務付けされた栄養成分表示(令和元(2019)年度末で経過措置期間終了)について、理解促進を図るため、消費者や事業者に向けて普及啓発を行っています。
栄養成分表示の活用に向けた主な取組として、平成30(2018)年度には、栄養成分表示等の活用に向けた消費者教育に関する調査事業を、消費者庁新未来創造オフィスのプロジェクトの一環として、実証フィールドである徳島県において、実施しました。その結果については、「地域特性をいかした栄養成分表示等の活用に向けた消費者教育に関する調査事業報告書」として取りまとめ、令和元(2019)年8月に公表しています。
消費者教育の実践の場面は、食品に関する知識や食品を選択する能力等を養う場である学校、食品購入の場であるスーパーマーケット、地域の人々が集う地区活動の場など様々な場面があります。そこで、当該実証事業の成果を踏まえ、各場面において栄養成分表示の活用に向けた消費者教育を推進するプログラムやその実践を取り組む際のポイントをまとめた「栄養成分表示を活用した消費者教育実践マニュアル」を作成しました。
また、令和元(2019)年11月には、平成29(2017)年度及び平成30(2018)年度に行った栄養成分表示等の活用に向けた消費者教育における教育プログラム等の検証成果について、その実証フィールドである徳島県において報告会を開催しました。そこでは、事業に御協力いただいた大学関係者、スーパーマーケット、地区組織の代表が一堂に会し、調査事業の実施後も、自らの健康や地域の人々の健康を考え、栄養成分表示を活用した消費生活を行っているなどの発表がなされました。
栄養成分表示を活用した消費者教育実践マニュアルや当該事業報告書等は、普段の食生活や地域の健康づくり、食育等に役立つ情報源として消費者庁ウェブサイトに掲載し、活用促進を図っています。
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