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参考3 第4次食育推進基本計画(令和3年3月31日食育推進会議決定)


令和3年3月31日
食育推進会議決定

はじめに

食は命の源であり、私たち人間が生きるために食は欠かせない。また、国民が健康で心豊かな生活を送るためには、健全な食生活を日々実践し、おいしく楽しく食べることやそれを支える社会や環境を持続可能なものにしていくことが重要である。

平成17年6月に食育基本法(平成17年法律第63号)が制定され、国は15年にわたり、都道府県、市町村、関係機関・団体等多様な関係者とともに食育を推進してきた。その間、日常生活の基盤である家庭における共食を原点とし、学校、保育所等が子供の食育を進め、都道府県、市町村、様々な関係機関・団体等、地域における多様な関係者が様々な形で食育を主体的に推進してきた。

しかしながら、我が国の食をめぐる環境は大きく変化してきており、様々な課題を抱えている。

高齢化が進行する中で、健康寿命の延伸や生活習慣病の予防が引き続き国民的課題であり、栄養バランスに配慮した食生活の重要性は増している。人口減少、少子高齢化、世帯構造の変化や中食市場の拡大が進行するとともに、食に関する国民の価値観や暮らしの在り方も多様化し、健全な食生活を実践することが困難な場面も増えてきている。古くから各地で育まれてきた地域の伝統的な食文化が失われていくことも危惧される。

食を供給面から見ると、農林漁業者や農山漁村人口の著しい高齢化・減少が進む中、我が国の令和元年度の食料自給率はカロリーベースで38%、生産額ベースで66%と食料の多くを海外からの輸入に頼っている。一方で、食品ロスが平成29年度推計で612万トン発生しているという現実もある。

また、近年、日本各地で異常気象に伴う自然災害が頻発する等、地球規模の気候変動の影響が顕在化しており、食の在り方を考える上で環境問題を避けることはできなくなっている。

国際的な観点から見ると、平成27年9月の国連サミットで採択された国際開発目標である「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は、17の目標と169のターゲットから成る「SDGs(持続可能な開発目標)」を掲げ、「誰一人取り残さない」社会の実現を目指すものである。SDGsの目標には、「目標2.飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する」、「目標4.すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」、「目標12.持続可能な生産消費形態を確保する」などの食育と関係が深い目標がある。食育の推進は、我が国の「SDGsアクションプラン2021」(令和2年12月持続可能な開発目標(SDGs)推進本部決定)の中に位置付けられており、SDGsの達成に寄与するものである。

さらに、新型コロナウイルス感染症の流行は、世界規模に拡大し、その影響は人々の生命や生活のみならず、行動・意識・価値観にまで波及した。接触機会低減のためのテレワークの増加、出張機会の減少等により、在宅時間が一時的に増加するとともに、外出の自粛等により飲食業が甚大な影響を受けるなど、我が国の農林水産業や食品産業にも様々な影響を与えた。また、在宅時間や家族で食を考える機会が増えることで、食を見つめ直す契機ともなっており、家庭での食育の重要性が高まるといった側面も有している。

こうした「新たな日常」の中でも、食育がより多くの国民による主体的な運動となるためには、ICT(情報通信技術)や社会のデジタル化の進展を踏まえ、デジタルツールやインターネットも積極的に活用していくことが必要である。

このような情勢を踏まえ、食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進していくため、令和3年度からおおむね5年間を計画期間とする第4次食育推進基本計画を作成する。

第1 食育の推進に関する施策についての基本的な方針

食育を推進することは、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むことに資するとともに、国民の食生活が自然の恩恵の上に成り立ち、食に関わる人々の様々な行動に支えられていることへの感謝の念や理解を深めることにつながるものであり、持続可能な社会の実現に向けた重要な取組である。

食育により、国民の健全な食生活の実現や、その実現を支える地域社会の活性化、豊かな食文化の継承及び発展、環境と調和のとれた食料の生産及び消費の推進並びに食料自給率の向上を図り、それらを通じて、国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成を目指すとともに、社会全体で連携・協働して持続可能な食料システム(フードシステム)を構築することが期待されている。

本計画では、国民の健康や食を取り巻く環境の変化、社会のデジタル化など、食育をめぐる状況を踏まえ、<1>生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進、<2>持続可能な食を支える食育の推進、<3>「新たな日常」やデジタル化に対応した食育の推進に重点をおいた取組が求められる。

また、持続可能な世界の実現を目指すため、SDGsへの関心が世界的に高まり、ESG投資(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重視した投資)も世界的に拡大する中、持続可能性の観点から食育も重視されており、SDGsの視点で食育に取り組む企業も出てきている。

SDGsが経済、社会、環境の三側面を含みこれらの相互関連性・相乗効果を重視しつつ、統合的解決の視点を持って取り組むことが求められていることにも留意し、SDGsと深く関わりがある食育の取組においても、SDGsの考え方を踏まえ、相互に連携する視点を持って推進する必要がある。

国民の健全な食生活の実現と、環境や食文化を意識した持続可能な社会の実現のために、行政、教育関係者、農林漁業者、食品関連事業者、ボランティア等関係する各主体が相互の理解を深め、連携・協働し、国民運動として食育を推進する。

1.重点事項

今後5年間に特に取り組むべき重点事項を以下のとおり定め、総合的に推進する。

(1)生涯を通じた心身の健康を支える食育の推進

社会における高齢化の進行の中で、健康寿命の延伸が国民的課題であり、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むためには、妊産婦や、乳幼児から高齢者に至るまで、ライフステージやライフスタイル、多様な暮らしに対応し、切れ目のない、生涯を通じた食育を推進することが重要である。

しかしながら、依然として、成人男性には肥満者が多いこと、若い女性にはやせの者が多いこと、高齢者では男女とも低栄養傾向の者の割合が高いこと等、食生活に起因する課題は多い。

少子高齢化が進むとともに、世帯構造や社会環境も変化し、単独世帯やひとり親世帯が増えており、また、貧困の状況にある子供に対する支援が重要な課題になるなど、家庭生活の状況が多様化する中で、家庭や個人の努力のみでは、健全な食生活の実践につなげていくことが困難な状況も見受けられる。

こうした状況を踏まえ、「人生100年時代」に向けて、生活習慣病の予防や健康寿命の延伸を実現し、全ての国民が健全で充実した食生活を実現することを目指し、家庭、学校・保育所、職場、地域等の各場面において、地域や関係団体の連携・協働を図りつつ生涯を通じた食育を推進する。また、子供のうちに健全な食生活を確立することは、生涯にわたり健全な心身を培い、豊かな人間性を育んでいく基礎となることに留意する。

加えて、健康や食に関して無関心な層も含め、デジタルツールや行動経済学に基づく手法の1つであるナッジ(そっと後押しする:人々がより良い選択を自発的に取れるように手助けする手法)を活用する等、自然に健康になれる食環境づくりを推進する。

(2)持続可能な食を支える食育の推進

国民が健全な食生活を送るためには、その基盤として持続可能な環境が不可欠であり、食育関係者を含む国民が一体となって、食を支える環境の持続に資する食育を推進する。

(食と環境の調和:環境の環(わ))

農林水産業・食品産業の活動が自然資本や環境に立脚していることから、国民の食生活が、自然の恩恵の上に成り立つことを認識し、食料の生産から消費等に至る食の循環が環境へ与える影響に配慮して、食におけるSDGsの目標12「つくる責任・つかう責任」を果たすことができるよう国民の行動変容を促すことが求められている。食に関する人間の活動による環境負荷が自然の回復力の範囲内に収まり、食と環境が調和し、持続可能なものとなる必要がある。

さらに、我が国では、食料及び飼料等の生産資材の多くを海外からの輸入に頼っている一方で、大量の食品廃棄物を発生させ、環境への負担を生じさせている。また、年間612万トン(平成29年度推計)の食品ロスが発生しており、この削減に取り組むことにより、食べ物を大切にするという考え方の普及や環境への負荷低減を含む各種効果が期待できる。

このため、生物多様性の保全に効果の高い食料の生産方法や資源管理等に関して、国民の理解と関心の増進のための普及啓発、持続可能な食料システム(フードシステム)につながるエシカル消費(人や社会、環境に配慮した消費行動)の推進、多様化する消費者の価値観に対応したフードテック(食に関する最先端技術)への理解醸成等、環境と調和のとれた食料生産とその消費に配慮した食育を推進する。

(農林水産業や農山漁村を支える多様な主体とのつながりの深化:人の輪(わ))

食料の生産から消費等に至るまでの食の循環は、多くの人々の様々な活動に支えられており、そのことへの感謝の念や理解を深めることが大切である。

一方で、ライフスタイル等の変化により、国民が普段の食生活を通じて農林水産業等や農山漁村を意識する機会が減少しつつある。

そのような中で、生産者等と消費者との交流や都市と農山漁村の共生・対流等を進め、消費者と生産者等の信頼関係を構築し、我が国の食料需給の状況への理解を深め、持続可能な社会を実現していくことが必要である。

このため、農林漁業体験の推進、生産者等や消費者との交流促進、地産地消の推進等、食の循環を担う多様な主体のつながりを広げ深める食育を推進する。

(日本の伝統的な和食文化の保護・継承:和食文化の和(わ))

南北に長く、海に囲まれ、豊かな自然に恵まれた我が国では、四季折々の食材が豊富であり、地域の農林水産業とも密接に関わった豊かで多様な和食文化を築き、「和食;日本人の伝統的な食文化」はユネスコの無形文化遺産に登録された。和食文化は、ごはんを主食とし、一汁三菜(*1)を基本としており、地域の風土を活かしたものであり、その保護・継承は、国民の食生活の文化的な豊かさを将来にわたって支える上で重要であるとともに、地域活性化、食料自給率の向上及び環境への負荷低減に寄与し、持続可能な食に貢献することが期待される。

また、和食は栄養バランスに優れ、長寿国である日本の食事は世界的にも注目されている。

しかし、近年、グローバル化、流通技術の進歩、生活様式の多様化等により、地場産物を生かした郷土料理、その作り方や食べ方、食事の際の作法等、優れた伝統的な和食文化が十分に継承されず、その特色が失われつつある。

このため、食育活動を通じて、郷土料理、伝統料理、食事の作法等、伝統的な地域の多様な和食文化を次世代へ継承するための食育を推進する。

これらの持続可能な食に必要な、環境の環(わ)、人の輪(わ)、和食文化の和(わ)の3つの「わ」を支える食育を推進する。

*1 「一汁三菜」とは、米を炊いた「ごはん」を主食とし、味噌汁やすまし汁等の「汁」、主菜一つに副菜二つの「菜」三品に「漬物」を組み合わせた和食の基本となる献立

(3)「新たな日常」やデジタル化に対応した食育の推進

新型コロナウイルス感染症の拡大前から、生活を支える多くの分野でICTやAI(人工知能)の活用等デジタル技術の進展・普及が加速していたが、当該感染症の拡大防止のため、身体的距離の確保や3密(密接、密閉、密集)の回避が迫られる中、デジタル技術の活用は喫緊の課題となっている。

他方、こうした「新たな日常」は、在宅時間や家族で食を考える機会が増えることで、食を見つめ直す契機ともなっており、家庭での食育の重要性が高まるといった側面も有している。

当該感染症の影響は長期間にわたり、収束後も以前の生活に完全に戻ることは困難と考えられる。そのため、上記(1)及び(2)に示した重点事項に横断的に取り組むため、「新しい生活様式」に対応し、「新たな日常」においても食育を着実に実施するとともに、より多くの国民による主体的な運動となるよう、ICT等のデジタル技術を有効活用して効果的な情報発信を行うなど、新しい広がりを創出するデジタル化に対応した食育を推進する。

一方、デジタル化に対応することが困難な高齢者等も存在することから、こうした人々に十分配慮した情報提供等も必要である。

また、「新たな日常」の中ではテレワークによる通勤時間の減少等から、自宅で料理や食事をすることも増えており、食生活を見直す機会にもなるものであることから、乳幼児から高齢者までの全ての世代において栄養バランス、食文化、食品ロスなど、食に関する意識を高めることにつながるよう食育を推進する。

2.基本的な取組方針

(1)国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成

「国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成に資すること」は、食育を推進する際の目的の要であり、食育に関するあらゆる施策は、これを踏まえて講じられるべきである。また、健康寿命の延伸という観点からは、肥満に加え、やせや低栄養の問題も起きていることや、生活習慣病の発症だけでなく、重症化の予防や改善も視野に入れる必要がある。

このため、健全な食生活の実践に向けて、栄養の偏りや食習慣の乱れを改善するよう、引き続き取組の推進が必要である。

また、我が国では、様々な種類の食材が多様な形で加工・提供されるようになってきており、健全な食生活を自ら実践していくためには、食に関する知識や食品の選び方等も含めた判断力を国民一人一人が備える必要性が従来以上に高まっている。

このため、健全な食生活に必要な知識や判断力については、年齢や健康状態、更には生活環境によっても異なる部分があることに配慮しつつ、国民の生涯にわたる健全な食生活の実現を目指して施策を講じる。

(2)食に関する感謝の念と理解

世界の食料事情は、現在、約6.9億人の人々が飢餓や栄養不足で苦しんでいることを始めとして、楽観視できない状況にある。このような世界の厳しい状況を理解し、食事ができることに感謝の念を持ちつつ、国内では大量の食料が食べられないまま廃棄されているという食料資源の浪費や環境への負荷の増加にも目を向ける必要がある。

これらを踏まえ、「もったいない」という精神で、食べ物を無駄にせず、食品ロスの削減に取り組むことは、食育の観点からも極めて大切である。

また、日々の食生活は、自然の恩恵の上に成り立ち、食べるという行為自体が貴重な動植物の命を受け継ぐことであることや、食料の生産から消費等に至るまでの食の循環においては、生産者を始めとして多くの人々の苦労や努力に支えられていることを実感できるよう、動植物の命を尊ぶ機会となるような様々な体験活動や適切な情報発信等を通じて、自然に感謝の念や理解が深まっていくよう配慮した施策を講じる。

(3)食育推進運動の展開

食育推進運動の展開に当たっては、国民一人一人が食育の意義や必要性等を理解するとともに、これに共感し、自ら主体的に食育を実践できるよう取り組む必要がある。

このため、国民や民間団体等の自発的意思を尊重しながら、産学官による連携等、多様な主体の参加と連携・協働に立脚し、デジタル技術も活用しつつ効果的に国民運動を推進することを目指した施策を講じる。

(4)子供の食育における保護者、教育関係者等の役割

我が国の未来を担う子供への食育の推進は、健全な心身と豊かな人間性を育んでいく基礎をなすものであり、子供の成長、発達に合わせた切れ目のない推進が重要である。

そこで、父母その他の保護者や教育、保育に携わる関係者等の意識の向上を図るとともに、相互の密接な連携の下、家庭、学校、保育所、地域社会等の場で子供が楽しく食について学ぶことができるような取組が積極的になされるよう施策を講じる。

子供への食育を推進する際には、健全な食習慣や食の安全についての理解を確立していく中で、食に関する感謝の念と理解、食品の安全及び健康な食生活に必要な栄養に関する知識、社会人として身に付けるべき食事の際の作法等、食に関する基礎の習得について配意する。

また、社会環境の変化や様々な生活様式等、食をめぐる状況の変化に伴い、健全な食生活を送ることが難しい子供の存在にも配慮し、多様な関係機関・団体が連携・協働した施策を講じる。

(5)食に関する体験活動と食育推進活動の実践

食は観念的なものではなく、日々の調理や食事等とも深く結び付いている極めて体験的なものである。

このため、食との関係が消費のみにとどまることが多い国民が意欲的に食育の推進のための活動を実践できるよう、食料の生産から消費等に至るまでの食の循環を理解する機会や、食に関する体験活動に参加する機会を提供するなどの施策を講じる。

その際は、体験活動を推進する農林漁業者、食品関連事業者、教育関係者等多様な主体により、できるだけ多くの国民が体験活動に参加できるよう、オンラインでの活動も活用しつつ関係機関・団体等との連携・協働を図るとともに、上記(2)の「食に関する感謝の念と理解」にも配慮し、施策を講じる。

(6)我が国の伝統的な食文化、環境と調和した生産等への配慮及び農山漁村の活性化と食料自給率の向上への貢献

食をめぐる問題は、伝統的な食文化や食生活に見られるように、人々の精神的な豊かさと密接な関係を有しており、先人によって培われてきた多様な食文化を後世に伝えつつ、時代に応じた優れた食文化や豊かな味覚を育んでいくことが重要である。また、国民の食生活が、自然の恩恵の上に成り立っており、食料の生産から消費等に至る食の循環が環境へ与える影響に配慮する必要がある。

このため、我が国の伝統ある優れた食文化や地域の特性を生かした食生活の継承・発展、環境と調和のとれた食料の生産とその消費等が図られるよう十分に配慮しつつ施策を講じる。

その際、食料の生産から消費等に至るまでの食の循環は多くの人々の様々な活動に支えられていることから、我が国の食料需給の状況を十分理解するとともに、都市と農山漁村の共生・対流や生産者と消費者との交流を進め、消費者と生産者の信頼関係を構築していくことが必要であり、「食料・農業・農村基本計画」(令和2年3月31日 閣議決定)も踏まえ、農山漁村の活性化と食料自給率・食料自給力の維持向上に資するよう施策を講じる。

(7)食品の安全性の確保等における食育の役割

食品の安全性の確保は、国民の健康と健全な食生活の実現に当たって基本的な問題であり、国民の関心は非常に高い。

また、食品の提供者が食品の安全性の確保に万全を期すだけでなく、食品を消費する立場にある国民においても、食品の安全性を始めとする食に関する知識と理解を深めるよう努めるとともに、自分の食生活について、自ら適切に判断し、選択していくことが必要である。

このため、国際的な連携を図りつつ、国民の食に関する知識と食を選択する力の習得のため、食に関する幅広い情報を多様な手段で、国民が理解し、十分に活用できるよう提供するとともに、教育の機会を充実させるなど、行政や関係団体、国民等との間の情報・意見交換が積極的に行われるよう施策を講じる。

第2 食育の推進の目標に関する事項

1.目標の考え方

食育基本法に基づく取組は、国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成、食に関する感謝の念と理解等の基本理念の下に推進されるものである。

このような考え方にのっとり、食育を国民運動として推進するためには、国や地方公共団体を始め、多くの関係者の理解の下、共通の目標を掲げ、その達成を目指して連携・協働して取り組むことが有効である。また、より効果的で実効性のある施策を展開していく上で、その成果や達成度を客観的で具体的な目標値により把握できるようにすることが必要である。

このため、食育推進基本計画においては、国民運動として食育を推進するにふさわしい定量的な目標値を主要な項目について設定することとし、その達成が図られるよう基本計画に基づく取組を推進するものとする。

第4次食育推進基本計画においては、SDGsの考え方を踏まえた食育の推進や重点事項に対応した食育の推進の観点から、第3次食育推進基本計画を踏まえ、<1>目標を達成しておらず、引き続き目指すべき目標、<2>目標は達成したが、一層推進を目指すべき目標、<3>今日新たに設定する必要がある目標を設定する。

また、食育は、食育基本法の目的や基本理念を踏まえて、個人、家庭、地域等の実態や特性等に配慮して推進されるべきものであり、安易に目標値の達成のみを追い求めることのないよう留意する必要がある。

2.食育の推進に当たっての目標

(1)食育に関心を持っている国民を増やす(*2)

食育を国民運動として推進し、成果を挙げるためには、国民一人一人が自ら実践を心掛けることが必要であり、そのためにはまず、より多くの国民に食育に関心を持ってもらうことが欠かせない。このため、引き続き、食育に関心を持っている国民を増やすことを目標とする。

具体的には、令和2年度は83.2%となっており、引き続き、令和7年度までに90%以上とすることを目指す。

(2)朝食又は夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数を増やす(*2)

家族が食卓を囲んで共に食事をとりながらコミュニケーションを図ることは、食育の原点である。共食を通じて、食の楽しさを実感するだけでなく、食や生活に関する基礎を伝え、習得する機会にもなり、引き続き、取組を推進していくことが重要である。

また、家庭において、子供とその保護者が一緒になって早寝早起きや朝食をとることなどを通じて、基本的な生活習慣づくりへの意識を高め、子供が生涯にわたって健全な心身を培い豊かな人間性を育んでいく基盤づくりを行っていくことが重要である。

「新たな日常」への対応に伴う暮らし方や働き方の変化により、家族と過ごす時間にも変化が見られる。こうした状況は、朝食又は夕食を家族と一緒に食べる頻度が低い人にとって、共食の回数を増やす契機の1つになると考えられる。

このため、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)等の推進にも配慮しつつ、引き続き、朝食又は夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数を増やすことを目標とする。

具体的には、令和2年度は週9.6回となっており、引き続き、令和7年度までに週11回以上とすることを目指す。

(3)地域等で共食したいと思う人が共食する割合を増やす(*2)

近年では、高齢者の一人暮らし、ひとり親世帯、貧困の状況にある子供等が増えるなど、様々な家庭環境や生活の多様化により、家族との共食が難しい人も増えている。家族との共食は難しいが、共食により食を通じたコミュケーション等を図りたい人にとって、地域や所属するコミュニティ(職場等を含む)等を通じて、様々な人と共食する機会を持つことは重要である。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため食事の際に会話することを控えることが求められるなど、短期的には地域等での共食を積極的に推進することは困難な状況であるものの、共食は本来、会話やコミュニケーションが増えること、食事がおいしく楽しく感じられること等のメリットがあり、多くの国民がそのメリットを感じていることから、おおむね5年間という計画期間を通して、「新しい生活様式」に対応しつつ、地域等で共食したいと思う人が共食する割合を増やすことを目標とする。

具体的には、令和2年度は70.7%となっており、令和7年度までに75%以上とすることを目指す。

(4)朝食を欠食する国民を減らす

朝食を毎日食べることは、栄養バランスに配慮した食生活や基本的な生活習慣を身に付ける観点から非常に重要であるため、引き続き、子供の朝食欠食をなくすことを目標とする。

具体的には、令和元年度に4.6%(「全く食べていない」及び「あまり食べていない」)となっている子供の割合を、令和7年度までに0%とすることを目指す(*3)。

当該目標については、健康上の理由から朝食摂取が困難な子供に配慮し、安易に目標値の達成のみを追い求めることのないよう留意する。

また、20歳代及び30歳代の若い世代は、朝食欠食の割合が依然として高く、加えて、次世代に食育をつなぐ大切な担い手でもあるため、引き続き、若い世代の朝食欠食を減らすことを目標とする。

具体的には、令和2年度は21.5%となっており、引き続き、令和7年度までに15%以下とすることを目指す(*4)。

(5)学校給食における地場産物を活用した取組等を増やす

学校給食に地場産物を使用し、食に関する指導の「生きた教材」として活用することは、地域の自然、文化、産業等に関する理解を深めるとともに、生産者の努力や食に関する感謝の念を育む上で重要である。

また、学校給食における地場産物の活用は、地産地消の有効な手段であり、地場産物の消費による食料の輸送に伴う環境負荷の低減や地域の活性化は、持続可能な食の実現につながる。さらに、地域の関係者の協力の下、未来を担う子供たちが持続可能な食生活を実践することにもつながる。

このため、子供たちへの教育的な観点から、栄養教諭による地場産物に係る食に関する指導の取組を増やすことを目標とするとともに、引き続き、生産者や学校給食関係者の努力が適切に反映される形で、学校給食において地場産物を使用する割合を増やすことを目指す。

具体的には、栄養教諭による地場産物に係る食に関する指導の平均取組回数を、令和元年度の月9.1回から、令和7年度までに月12回以上とすることを目指す(*5)。

また、学校給食において都道府県単位での地場産物を使用する割合について、現場の努力を適切に反映するとともに、地域への貢献等の観点から、算出方法を食材数ベースから金額ベースに見直し、その割合を現状値(令和元年度)から維持・向上した都道府県の割合を90%以上とすることを目指す(*6)。

加えて、都道府県内において、当該都道府県産の農林水産物の供給が不足している場合にあっては、当該都道府県産に限らず国内産の農林水産物を活用していくことも、我が国の自然や食文化、食料安全保障、自然の恩恵と農山漁村から都市で働く多くの人に支えられた食の循環等への関心を高めることができ、学校給食に地場産物を使用する目的に鑑みれば有効である。既に、学校給食における国産食材を使用する割合については、全国平均で令和元年度は87%と高い数値となっているが、政策目的の重要性に鑑み、引き続き、こうした高い数値を維持・向上することを目標とする。

具体的には、国産食材を使用する割合(金額ベース)を現状値(令和元年度)から維持・向上した都道府県の割合を90%以上とすることを目指す(*6)。

(6)栄養バランスに配慮した食生活を実践する国民を増やす

生涯にわたって心身の健康を確保しながら、健全な食生活を実践するためには、国民一人一人が栄養バランスに配慮した食事を習慣的にとることが必要である。このため、国民にとってもわかりやすく、食事全体における栄養バランスを表している「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事」を栄養バランスに配慮した食事の目安とし、そのような食生活を実践する国民を増やすことを、引き続き目標とする。

具体的には、令和2年度は36.4%となっており、令和7年度までに50%以上とすることを目指す(*4)。

また、生涯にわたって健全な心身を培うためには、若い世代から健全な食生活を実践することが必要なことから、栄養バランスに配慮した食生活を実践する20歳代及び30歳代の若い世代を増やすことを、引き続き目標とする。

具体的には、令和2年度は27.4%となっており、令和7年度までに40%以上とすることを目指す(*4)。

あわせて、栄養バランスに配慮した食生活の実践を促すため、健康寿命の延伸を目指す「健康日本21(第二次)」の趣旨を踏まえ、栄養・食生活に関する目標として掲げられている、食塩摂取量の減少、野菜の摂取量の増加及び果物類を摂取している者の増加を目標とする。

具体的には、令和元年度でそれぞれ1日当たりの食塩摂取量の平均値10.1g、野菜摂取量の平均値280.5g、果物摂取量100g未満の者の割合61.6%となっている現状値を、令和7年度までに、それぞれ1日当たりの食塩摂取量の平均値8g以下、野菜摂取量の平均値350g以上、果物摂取量100g未満の者の割合を30%以下とすることを目指す(*7)。

(7)生活習慣病の予防や改善のために、ふだんから適正体重の維持や減塩等に気をつけた食生活を実践する国民を増やす(*4)

生活習慣病の予防や改善には、日常から望ましい食生活を意識し、実践することが重要である。しかし、エネルギーや食塩の過剰摂取等に代表されるような栄養素等の偏り、朝食欠食等の食習慣の乱れ、それに起因する肥満、やせ、低栄養等、生活習慣病につながる課題は、いまだ改善するまでには至っていない。

このため、ふだんから適正体重の維持や減塩等に気を付けた食生活を実践している者を増やすことを、引き続き目標とする。

具体的には、令和2年度は64.3%となっており、引き続き、令和7年度までに75%以上とすることを目指す。

(8)ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やす(*4)

国民が健やかで豊かな生活を送るには、口腔機能が十分に発達し、維持されることが重要である。健康寿命の延伸のために噛み方や食べる速さにも着目し、口腔の健康や口腔機能の獲得・維持・向上と関連させた食育が重要となっていることから、引き続き、ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やすことを目標とする。

具体的には、令和2年度は47.3%となっており、引き続き、令和7年度までに55%以上とすることを目指す。

(9)食育の推進に関わるボランティアの数を増やす(*8)

食育を国民運動として推進し、国民一人一人の食生活において実践してもらうためには、食生活の改善等のために全国各地で国民の生活に密着した活動に携わる食生活改善推進員等のボランティアが果たしている役割は重要である。

一方、人口減少や高齢化の進行により、ボランティアの数は減少する可能性があり、ボランティア活動の活発化に向けた環境の整備が引き続き必要である。

このため、食育の推進に関わるボランティアの数を増やすことを目標とする。

具体的には、令和元年度に36.2万人となっており、引き続き、令和7年度までに37万人以上とすることを目指す。

(10)農林漁業体験を経験した国民を増やす(*4)

食に関する関心や理解の増進を図るためには、広く国民に農林水産物の生産に関する体験活動の機会を提供し、農林水産業についての意識や理解を深めてもらうことが重要である。特に、農林漁業体験を経験した子供は、食べ物を生産する現場をしっかり見たことにより、食べ物を大切にする意識や食べ物への関心を持つようになり、食べ残しが少なくなること等が報告されており、子供の頃の農林漁業体験は重要である。

国民の更なる食や農林水産業への理解増進を図る観点から、「新たな日常」に対応しつつ、子供を始めとした幅広い世代に対する農林漁業体験の機会の提供を拡大していくことが必要である。

このため、引き続き、農林漁業体験を経験した国民(世帯)を増やすことを目標とする。

具体的には、令和2年度に65.7%となっており、令和7年度までに70%以上とすることを目指す。

(11)産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民を増やす(*4)

農林漁業者や農山漁村人口の著しい高齢化や減少及び耕地面積の減少という事態に直面する中、できるだけ多くの国民が我が国の農林水産業の役割を理解し、自らの課題としてその将来を考え、それぞれの立場から主体的に支え合う行動を引き出していくことが必要である。

このため、産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民を増やすことを目標とする。例としては、地元産品や、被災地の産品など自分が応援したい地域の産品や、応援したい生産者を意識して選ぶことが想定される。

具体的には、令和2年度に73.5%となっており、令和7年度までに80%以上とすることを目指す。

(12)環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民を増やす(*4)

食料の生産から消費等に至る食の循環において、温室効果ガスの排出、化学農薬・化学肥料の過剰投入、食品廃棄物等、地球の資源量や環境に与える影響を配慮しない生産や消費により環境への負荷が生じ得る。国民の食生活が自然の恩恵の上に成り立つことを認識し、環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶことは、環境への負荷を減らし、持続可能な食料システム(フードシステム)の構築につながる。

このため、環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民の割合を増やすことを目標とする。例としては、化学農薬や化学肥料の使用を避けることを基本とした有機農産物・食品や輸入に伴う輸送に係る二酸化炭素の排出量が抑制される国産飼料を活用した畜産物、過剰包装でなくゴミが少ない商品など、環境への負荷をなるべく低減することに配慮して農林水産物・食品を選ぶことが想定される。

具体的には、令和2年度に67.1%となっており、令和7年度までに75%以上とすることを目指す。

(13)食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民を増やす(*9)

食品ロスは、年間612万トン(事業系328万トン、家庭系284万トン(平成29年度推計))発生していると推計されている。

持続可能な開発目標(SDGs)のひとつに、「持続可能な生産消費形態を確保する」ことが掲げられ、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」ことがターゲットとなるなど、食品ロス削減は国際的にも重要な課題であり、国民一人一人が食品ロスの現状やその削減の必要性について認識を深め、自ら主体的に取り組むことが不可欠である。

このため、引き続き、食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民を増やすことを目標とする。

具体的には、令和元年度は76.5%となっており、引き続き、令和7年度までに80%以上とすることを目指す。

(14)地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えている国民を増やす(*4)

四季や地理的な多様性による特色を有し、地域の伝統的な行事や作法と結び付いた我が国の豊かで多様な食文化は、世界に誇ることのできるものである。しかし、近年、核家族化の進展や地域のつながりの希薄化、食の多様化により、日本の食文化の特色が徐々に失われつつある。「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコの無形文化遺産に登録され、その継承のため必要な措置をとることが重要である。

このため、伝統食材を始めとした地域の食材を生かした郷土料理や伝統料理、地域や家庭で受け継がれてきた料理や味、箸使い等の食べ方・作法を受け継ぎ、地域や次世代(子供や孫を含む)へ伝えている国民を増やすことを目標とする。

具体的には、令和2年度は50.4%となっており、令和7年度までに55%以上とすることを目指す。

また、日本の食文化の特徴である地域の多様な食文化を体現している郷土料理の継承状況は、令和元年度の調査で、「教わったり、受け継いだことがある」(17.1%)、「教えたり、伝えたりしている」(9.4%)と、次世代に確実に継承されているとは言い難い結果であった。地域や家庭で受け継がれてきた郷土料理を調理し、様々な場面で食べることにより、将来にわたり、着実に料理や味、食文化を次世代へ継承していくことが重要であることから、郷土料理や伝統料理を食べる国民の割合を増やすことを目標とする。

具体的には、郷土料理や伝統料理を月1回以上食べている国民の割合を、令和2年度の44.6%から、令和7年度までに50%以上とすることを目指す。

(15)食品の安全性について基礎的な知識を持ち、自ら判断する国民を増やす(*4)

健全な食生活の実現に当たっては、食品の選び方や適切な調理・保管の方法等について基礎的な知識を持ち、その知識を踏まえて行動していくことが重要であり、引き続き、食品の安全性に関して、基礎的な知識に基づき自ら判断する国民を増やすことを目標とする。

具体的には、令和2年度は75.2%となっており、引き続き、令和7年度までに80%以上とすることを目指す。

(16)推進計画を作成・実施している市町村を増やす(*8)

食育を国民運動として推進していくためには、全国各地で、その取組が推進されることが必要であり、食育基本法においては、都道府県及び市町村に対して、食育推進計画を作成するよう努めることを求めている。

いまだに食育推進計画が作成されていない市町村があることから、引き続き、食育推進計画を作成・実施している市町村の割合を100%とすることを目指す。

食育推進計画を既に作成・実施している市町村については、その効果的な実施に資するよう、食育推進計画の見直し状況等の把握に努める。

*2 農林水産省による「食育に関する意識調査」について、令和2年度から調査方法を調査員による個別面接聴取から郵送調査に変更した。同調査において、数値を把握している目標は、(1)、(2)、(3)、(4)のうち若い世代、(6)のうち「主食・主菜・副菜を組み合わせた食事」を実践する国民、若い世代、(7)、(8)、(10)、(11)、(12)、(14)、(15)。なお、(10)については、農林水産省による「食生活及び農林漁業体験に関する調査」で把握していたが、令和2年度に同調査を「食育に関する意識調査」に統合し調査している。

*3 文部科学省による「全国学力・学習状況調査」で把握

*4 注釈2を参照

*5 文部科学省による「学校における地場産物に係る食に関する指導の取組状況調査」で把握

*6 文部科学省による「学校給食における地場産物・国産食材の使用状況調査」で把握

*7 厚生労働省による「国民健康・栄養調査」で把握

*8 農林水産省による把握

*9 消費者庁による「消費者の意識に関する調査」で把握

第3 食育の総合的な促進に関する事項

1.家庭における食育の推進

(1)現状と今後の方向性

食に関する情報や知識、伝統や文化等については、従来、家庭を中心に地域の中で共有され、世代を超えて受け継がれてきた。

家庭においては、基本的な生活習慣づくりへの意識を高め、生涯にわたって切れ目なく、心身の健康の増進と豊かな人間性を育む基盤づくりを行うことが重要である。

また、家庭での共食は食育の原点であり、食を楽しみ、家族とのつながりを大切にする食育を推進していくことが重要である。家族との共食については、全ての世代において、家族とコミュニケーションを図る機会の1つである等、重要と考えられている一方で、若い世代における実際の共食の頻度は少ない傾向にあり、若い世代を含む20~50歳代では、仕事の忙しさが困難な要因の一つとなっている。

加えて、朝食を食べる習慣には、規則正しい就寝・起床などの基本的な生活習慣による影響が考えられ、親世代の朝食を食べない習慣が、朝食を食べない家庭環境に影響している可能性があることも考えられる。

さらに、「新たな日常」への対応として、テレワークが増加し、通勤時間が減少していることにより、家庭で料理や食事をする機会が増加している。こうした状況は、家族で食について考え、食生活を見直す機会となっていると考えられる。

これらを踏まえ、食育活動を通じて学んだことが家庭で共有されること等により、家庭においても食育に関する理解が進むよう、引き続き取組を行うことが必要である。

また、成育過程にある者及びその保護者並びに妊産婦に対し必要な成育医療等を切れ目なく提供するための施策の総合的な推進に関する法律(平成30年法律第104号。以下「成育基本法」という。)が令和元年12月に施行されたこと等を踏まえ、引き続き、妊産婦や乳幼児に対する栄養・食生活の支援を行うことが重要である。

(2)取り組むべき施策

国は以下の施策に取り組むとともに、地方公共団体等はその推進に努める。

(子供の基本的な生活習慣の形成)

朝食をとることや早寝早起きを実践することなど、子供の基本的な生活習慣づくりについて、個々の家庭や子供の問題として見過ごすことなく、社会全体の問題として捉えることが重要である。子供の基本的な生活習慣づくりや生活リズムの向上に向けて、地域、学校、企業を含む民間団体等が家庭と連携・協働し、子供とその保護者が一緒に生活習慣づくりの意識を高め、行動するための取組を推進する。

また、乳幼児期を含む子供の頃からの基本的生活習慣づくりに資するよう、科学的知見を踏まえながら、引き続き、優れた「早寝早起き朝ごはん」運動の推進に係る文部科学大臣表彰、保護者向け啓発資料の作成等を始めとする「早寝早起き朝ごはん」国民運動、「健やか親子21(第2次)」等により全国的な普及啓発を推進する。

特に、生活圏の拡大や行動の多様化等により生活リズムが乱れやすい環境にある中高生以上への普及啓発を推進する。

(望ましい食習慣や知識の習得)

子供が実際に自分で料理をつくるという体験を増やしていくとともに、親子料理教室等による食事についての望ましい習慣を学びながら食を楽しむ機会を提供する活動を推進する。

また、学校を通じて、保護者に対する食育の重要性や適切な栄養管理に関する知識等の啓発に努めるとともに、各地域で実施している食育に関する保護者向けプログラムを始めとした様々な家庭教育に関する情報をホームページに掲載し、様々な学習機会等での活用を促す。

さらに、栄養教諭の食に対する高い専門性を最大限生かすとともに、学校はもとより、スクールソーシャルワーカー等、福祉の専門性を有する者とも積極的に連携を行いながら、貧困家庭やひとり親家庭等、様々な困難を抱える児童生徒の家庭に対しても、食に関する支援や働きかけを行っていく。

このような活動等に際し、主食・主菜・副菜を組み合わせ、栄養バランスに配慮した食事を組み立てる力を伸ばす食育を推進する。

(妊産婦や乳幼児に対する食育の推進)

妊娠期や授乳期においても、健康の保持・増進を図ることは極めて重要である。妊産婦の望ましい食生活の実現に向けて、各種指針やガイドライン等を活用した食育の取組を推進する。

加えて、乳幼児期は成長や発達が著しく、生涯にわたる健康づくりの基盤となる重要な時期であることから、授乳や離乳の支援に関する基本的な考え方等を示したガイドラインを活用した食育の取組を推進する。

また、成育基本法を踏まえ、成育過程(出生に始まり、新生児期、乳幼児期、学童期及び思春期の段階を経て、おとなになるまでの一連の成長の過程)にある者及び妊産婦に対する食育を推進する。あわせて、疾病や障害、経済状態等、個人や家庭環境の多様性を踏まえた栄養指導等による母子保健の取組を推進する。

(子供・若者の育成支援における共食等の食育推進)

様々な子供・若者の育成支援に関する行事、情報提供活動等において、食育への理解を促進する。

特に、家族や友人等と一緒に食卓を囲んで共に食事をとりながらコミュニケーションを図る共食を、「新しい生活様式」に対応しながら推進するとともに、食に関する学習や体験活動の充実等を通じて、家庭と地域等が連携した食育を推進する。

(在宅時間を活用した食育の推進)

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が推進されていることや働き方や暮らし方の変化により通勤時間が減少したこと等により、自宅で料理や食事をすることも増えていることを踏まえ、家族との共食や栄養バランス、食文化、食品ロスなど、食に関する意識を高めることにつながるよう食育を推進する。

2.学校、保育所等における食育の推進

(1)現状と今後の方向性

社会状況の変化に伴い、子供たちの食の乱れや健康への影響が見られることから、学校、保育所等には、引き続き、子供への食育を進めていく場として大きな役割を担うことが求められている。例えば、様々な学習や体験活動を通し、食料の生産から消費等に至るまでの食の循環を知り、自然の恩恵として命をいただくことや食べ物が食卓に届くまでの全ての人に感謝する気持ちを育むことは重要である。また、子供への食育は家庭へのよき波及効果をもたらすことを期待できるため、農林漁業体験の機会の提供等を通じた食育の推進に努めることが求められている。

学校においては、学童期、思春期における食育の重要性を踏まえ、給食の時間はもとより、各教科や総合的な学習の時間等、農林漁業体験の機会の提供等を通じて、積極的に食育の推進に努め、子供たちの食に対する意識の変容の方向性や食に対する学びの深化の程度等を、食を営む力として評価していくことが求められている。

学校給食における地場産物・国産食材を使用する割合については、様々な取組を進めるも、第3次食育推進基本計画作成時の値からほぼ横ばいで推移している。地域によっては、域内農産物の入手が困難であったり、価格が高い、一定の規格を満たした農産物を不足なく安定的に納入することが難しいなどにより使用量・使用品目の確保が困難であること等も一因となっている。そのような現状がある中、生産者や学校給食関係者の様々な努力により当該数値を維持してきた。

一方、給食現場と生産現場の互いのニーズが把握されていない等の課題も存在しており、地場産物・国産食材の使用割合の向上には、供給者側の取組並びに学校設置者及び学校等の取組の双方が重要である。このため、目標に記載した重要性を関係者が共通認識として持ち、両者の連携・協働が促進されるような施策の展開が重要であり、目標についても両者の努力が適切に反映される形とすることが必要である。

給食における地場産物使用等の取組により、地域の文化・産業に対する理解を深め、農林漁業者に対する感謝の念を育むことが重要であり、そのためには、給食における地場産物等の安定的な生産・供給体制の構築を図ることが求められている。

加えて、栄養教諭・管理栄養士等を中核として、保護者や地域の多様な関係者との連携・協働の下で、体系的・継続的に食育を推進していくことが一層重要となっている。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う食生活の変化など子供たちの食をめぐる状況が変化する中で、バランスのとれた食生活を実践する力を育むため、健康教育の基盤となる食育の推進を担う栄養教諭の役割はますます重要になってきており、学校栄養職員の栄養教諭への速やかな移行を図るなど栄養教諭の配置促進を進めることが重要である。

(2)取り組むべき施策

国は以下の施策に取り組むとともに、地方公共団体等はその推進に努める。

(食に関する指導の充実)

学校においては、体育科(保健体育科)、家庭科(技術・家庭科)及び特別活動はもとより、それ以外の各教科等においてそれぞれの特質に応じ、令和2年度より順次実施される新学習指導要領や本計画に基づき、学校教育活動全体を通じて主体的に行動できる子供を育成するための食育を組織的・計画的に推進する。

栄養教諭は、学校の食に関する指導に係る全体計画の策定、教職員間や家庭との連携・調整等において中核的な役割を担う職であり、各学校における指導体制の要として、食育を推進していく上で不可欠な教員である。栄養教諭・管理栄養士等を中核として、関係者が連携した体系的・継続的な食育を推進する。

全ての児童生徒が、栄養教諭の専門性を生かした食に関する指導を等しく受けられるよう、栄養教諭の役割の重要性やその成果の普及啓発等を通じて、学校栄養職員の栄養教諭への速やかな移行に引き続き努める。また、栄養教諭配置の地域による格差を解消すべく、より一層の配置を促進する。

学校教育活動全体で食育の推進に取り組むためには、各学校において食育の目標や具体的な取組についての共通理解を持つことが必要である。このため、校長や他の教職員への研修の充実等、全教職員が連携・協働した食に関する指導体制を充実するため、教材の作成等の取組を促進する。

また、食に関する指導の時間が十分確保されるよう、栄養教諭を中心とした教職員の連携・協働による学校の食に関する指導に係る全体計画の作成を推進する。

さらに、給食の時間等での栄養教諭による指導、校内放送、教材作成・配布等を充実する。また、学校における農林漁業体験の推進、食品の調理に関する体験等、生産者等と子供たちとの交流促進、地産地消の推進等、食の循環を担う多様な主体のつながりを広げ深める食育を推進する。あわせて、各都道府県の創意工夫を促すため、都道府県ごとの栄養教諭の配置状況や学校給食における地場産物等の使用割合の見える化を図る。

加えて、効果的な食育の推進を図るために、各地域において、校長のリーダーシップの下、栄養教諭を中核として、学校、家庭、PTA、関係団体等が連携・協働した取組を推進するとともに、その成果を広く周知・普及する。

(学校給食の充実)

児童生徒が食に関する正しい知識や望ましい食習慣を身に付け、適切な栄養の摂取による健康の保持増進が図られるよう、引き続き、十分な給食の時間の確保及び指導内容の充実を図る。

また、各教科等の農林水産業や環境、健康等を含む食に関する指導と関連付けた活用がされるよう献立内容の充実を図るなど、学校給食を「生きた教材」として活用することで、食育を効果的に推進する。

さらに、食生活が自然の恩恵や食に関わる人々の様々な活動の上に成り立っていることについて、児童生徒の理解を深め、感謝の心を育むよう、学校給食への地場産物活用に向けて、市町村が中心となり、食材需要に対応できる生産供給体制の構築などの供給者側の取組並びに地場産物の生産供給体制や地域の実情を踏まえた学校設置者及び学校等の取組の双方が重要であり、密接に連携・協働することが必要である。そのため、給食現場と生産現場の互いのニーズを調整する「地産地消コーディネーター」の養成や各地域への派遣など、生産側と学校側の連携・協働を推進するための取組を引き続き行い、多様な優良事例の普及の横展開を図る。

加えて、引き続き米飯給食を着実に実施するとともに、児童生徒が多様な食に触れる機会にも配慮する。また、地場産物や国産食材の活用及び我が国の伝統的な食文化についての理解を深める給食の普及・定着等の取組を推進するとともに、児童生徒が世界の食文化等についても理解を深めることができるよう配慮する。

地場産物の活用は、生産地と消費地との距離が縮減されることにより、その輸送に係る二酸化炭素の排出量も抑制される等、環境負荷の低減にも寄与するものであり、SDGsの観点からも推進する。

加えて、学校給食の一層の充実を図るため、関係各省と連携しながら、全国学校給食週間に係る取組の充実を図る。

(食育を通じた健康状態の改善等の推進)

栄養教諭は、学級担任、養護教諭、学校医、学校歯科医等と連携して、保護者の理解と協力の下に、児童生徒への指導において、やせや肥満が心身の健康に及ぼす影響等、健康状態の改善等に必要な知識を普及するとともに、偏食のある子供、やせや肥満傾向にある子供、食物アレルギーを有する子供、スポーツをしている子供等に対しての個別的な相談指導を行うなど、望ましい食習慣の形成に向けた取組を推進する。

(就学前の子供に対する食育の推進)

乳幼児期は成長や発達が著しく、生涯にわたる健康づくりの基盤となる重要な時期である。就学前の子供が、成長や発達の段階に応じて、健康な生活を基本とし、望ましい食習慣を定着させるとともに、食に関する体験を積み重ねていくことができるよう、保育所、幼稚園及び認定こども園等において、保護者や地域の多様な関係者との連携・協働により食に関する取組を推進する。

その際、保育所にあっては「保育所保育指針」に、幼稚園にあっては「幼稚園教育要領」に、認定こども園にあっては「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」に基づき、食育を教育及び保育の一環として位置付けている。食育の指導に当たっては、施設長や園長、保育士・幼稚園教諭・保育教諭、栄養士・栄養教諭、調理員等の協力の下に食育の計画を作成し、各施設において創意工夫を行うものとする。

また、特に保育所及び認定こども園にあっては、その人的・物的資源を生かし、在籍する子供及びその保護者のみならず、地域における子育て家庭からの乳幼児の食に関する相談への対応や情報提供等に努めるほか、地域の関係機関等と連携しつつ、積極的に食育を推進するよう努める。

取組を進めるに当たっては、保育所にあっては、健康な生活の基本としての「食を営む力」の育成に向け、その基礎を培うことを目標とし、子供が生活と遊びの中で意欲をもって食に関わる体験を積み重ねていくことを重視する。その際、自然の恵みとしての食材や、調理する人への感謝の気持ちを育み、伝承されてきた地域の食文化に親しむことができるよう努める。

また、児童福祉施設における食事の提供に関するガイドラインを活用すること等により、乳幼児の成長や発達の過程に応じた食事の提供や食育の取組が実施されるよう努めるとともに、食に関わる保育環境についても配慮する。

幼稚園においては、先生や友達と食べることを楽しむことを指導する。その際、<1>幼児の食生活の実情に配慮し、和やかな雰囲気の中で教師や他の幼児と食べる喜びや楽しさを味わうこと、<2>様々な食べ物への興味や関心を持つようにすることなど、進んで食べようとする気持ちが育つよう配慮する。

さらに、幼保連携型認定こども園にあっては、学校と児童福祉施設の両方の位置付けを有し、教育と保育を一体的に行う施設であることから、食育の実施に当たっては、保育所と幼稚園双方の取組を踏まえて推進することとする。

加えて、保育所、幼稚園、認定こども園における各指針、要領に基づいて、生活と遊びを通じ、子供が自ら意欲をもって食に関わる体験を積み重ねていく取組を進めるとともに、子供の親世代への啓発も含め、引き続き、就学前の子供に対する食育を推進する。

3.地域における食育の推進

(1)現状と今後の方向性

心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らしていくためには、人生の各段階に応じた一貫性・継続性のある食育を推進することが求められる。

日本人の最大の死亡原因となっている生活習慣病を予防し、健康寿命を延伸する上では健全な食生活が欠かせない。このため、生活習慣病の予防及び改善や健康づくりにつながる健全な食生活の推進等、家庭、学校、保育所、生産者、企業等と連携・協働しつつ、地域における食生活の改善が図られるよう、適切な取組を行うことが必要である。

また、主食・主菜・副菜がそろう栄養バランスに優れた「日本型食生活」の実践の推進も重要である。

特に、若い世代から健康な生活習慣を身に付ける必要があり、食物や情報へのアクセスなど、健康な生活習慣を実践しやすい食環境づくりが重要である。そのためには、食品関連事業者等による健康に配慮した商品等の情報提供等を推進し、健康に配慮した食事や健康づくりに資する情報を入手しやすい食環境の整備が求められている。さらに、多くの国民が一日のうち多くの時間を過ごす職場(企業等)における健康の保持・増進の取組が重要である。

様々な家庭の状況や生活が多様化することにより、家庭での共食が困難な人が増加するとともに、健全な食生活の実現が困難な立場にある者も存在する。このため、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため共食の機会が減少している中にあっても、感染防止策を講じた上で、希望する人が共食できる場の整備が必要である。また、食品ロスの削減の取組とも連携しながら貧困等の状況にある子供等に食料を提供する活動等、地域で行われる様々な取組が一層重要となっている。家庭における食育の推進に資するよう、関係省庁が連携して地域における食育を促進し、支援する。

加えて、近年多発する大規模災害に対する備えの観点から、食料備蓄を推進するなど災害に備えた食育の推進が必要となっている。

(2)取り組むべき施策

国は以下の施策に取り組むとともに、地方公共団体等はその推進に努める。

(「食育ガイド」等の活用促進)

「食育ガイド」や「食事バランスガイド」について、食をめぐる環境の変化等も見据え、国民一人一人が自ら食育に関する取組を実践できるよう、関係機関や関係団体はもとより、家庭や学校、小売や外食、職場等を通じて国民への普及啓発に努める。

また、国民の食生活の改善を進めるとともに、健康増進や生活の質的向上及び食料の安定供給の確保等を図るための指針として公表した「食生活指針」について、引き続き普及啓発を進める。

これらについては、食に関する指針や基準の改定等や本計画の第1の1.(2)持続可能な食を支える食育の推進の考え方も考慮しつつ、必要に応じて見直しを行う。

(健康寿命の延伸につながる食育の推進)

「健康日本21(第二次)」や「スマート・ライフ・プロジェクト」の推進等、生活習慣病の予防及び改善や健全な食生活、健康づくりのための身体活動の実践につながる食育を推進する。

特に、20歳以上の糖尿病が強く疑われる者及び可能性が否定できない者は約 2,000万人と推計されていることから、生活習慣病の重症化予防も重要である。糖尿病については、ひとたび発症すると治癒することはなく、症状が進行すると腎臓の障害等の様々な合併症を引き起し、生活の質を低下させることから、日頃より、適切な食事管理を中心とした取組を推進する。

また、減塩は血圧を低下させ、結果的に循環器疾患を減少させると考えられる。日本人の食塩摂取量は減少傾向にあるが、ほとんどの人は必要量をはるかに超える量を摂取していることから、引き続き、食塩摂取量の減少に向けた取組を推進する。

加えて、減塩を軸に、健康に資する食育に対しての無関心層への啓発を含め、適切な栄養・食生活情報の提供方法の開発など自然に健康になれる食環境づくりを、産学官等が連携して推進する。

「『野菜を食べよう』プロジェクト」、「毎日くだもの200グラム運動」、その他生産者団体が行う消費拡大策やそれにつながる生産・流通支援等や「スマート・ライフ・プロジェクト」等の取組を通じて、減塩及び野菜や果物の摂取量の増加を促進する。

食育を通じて、生活習慣病の予防等や健康寿命の延伸を図るため、保健所、保健センター等において、管理栄養士が食育に関する普及や啓発活動を推進するとともに、市町村等が行っている健康診断に合わせて、一人一人の健康状態に応じた栄養等指導の充実を図る。

また、複数の学会による民間認証である「健康な食事(スマートミール)・食環境」認証制度の活用など、外食や中食でも健康に資する食事の選択がしやすい食環境の整備のために、食品関連事業者や消費者に対して周知を図る。

さらに、「栄養ケア・ステーション」等の民間主導の取組や、食生活改善推進員や食育ボランティア等の活動を推進する。

(歯科保健活動における食育推進)

健康寿命の延伸には、健全な食生活が大切であり、よく噛んでおいしく食べるためには口腔機能が十分に発達し維持されることが重要である。このため、歯科口腔保健の推進に関する法律(平成23年法律第95号)に基づき、摂食・えん下等の口腔機能について、乳幼児期における機能獲得から高齢期における機能の維持・向上等、生涯を通じてそれぞれの時期に応じた歯と口の健康づくりを通じた食育を推進しており、その目標として、12歳児でう蝕のない者や60歳で24歯以上の自分の歯を有する者、80歳で20歯以上の自分の歯を有する者、60歳代における咀嚼良好者の割合の増加などを掲げている。

具体的には、80歳になっても自分の歯を20本以上保つことを目的とした「8020(ハチマル・ニイマル)運動」やひとくち30回以上噛むことを目標とした「噛ミング30(カミングサンマル)」等の推進を通じて、乳幼児期から高齢期までの各ライフステージに応じた窒息・誤えん防止等を含めた食べ方の支援等、地域における歯と口の健康づくりのための食育を一層推進する。

(栄養バランスに優れた日本型食生活の実践の推進)

高齢化が進行する中で、生活習慣病の予防による健康寿命の延伸、健康な次世代の育成の観点から、健全な食生活を営めるよう、関係府省が、地方公共団体等と連携しつつ、食育を推進する。

ごはん(主食)を中心に、魚、肉、牛乳・乳製品、野菜、海藻、豆類、果物、お茶など多様な副食(主菜・副菜)等を組み合わせ、栄養バランスに優れた「日本型食生活」の実践を推進するため、内容やメリット等をわかりやすく周知し、誰もが気軽に取り組めるよう推進する。

また、これらの推進に当たっては、年代、性別、就業や食生活の状況等に応じて国民の多様なニーズや特性を分析、把握した上で類型化し、それぞれの類型に適した具体的な推進方策を検討し、実施する。

さらに、健康で豊かな食生活を支える役割を担う食品産業において、「日本型食生活」の推進に資するメニューや商品に関する消費者への情報提供等の取組を促進するとともに、米に関して企業等と連携した消費拡大運動を進める。

こうした「日本型食生活」の実践に係る取組と併せて、学校教育を始めとする様々な機会を活用した、幅広い世代に対する農林漁業体験の機会の提供を一体的に推進し、食や農林水産業への国民の理解を増進する。

(貧困等の状況にある子供に対する食育の推進)

「子供の貧困対策に関する大綱」(令和元年11月閣議決定)等に基づき、フードバンク等と連携し子供の食事・栄養状態の確保、食育の推進に関する支援を行う。

また、ひとり親家庭の子供に対し、放課後児童クラブ等の終了後に学習支援や食事の提供等を行うことが可能な居場所づくりを行う。

さらに、「子供の未来応援国民運動」において、民間資金による基金の活用等を通じて、貧困の状況にある子供たちに食事の提供等を行う子供食堂等を含むNPO等に対して支援等を行う。

加えて、経済的に困難な家庭への食品等の提供や子供の居宅を訪問するなどして子供の状況把握・食事の提供等を行う、子供宅食等の取組に関する支援を実施する。

(若い世代に関わる食育の推進)

栄養バランスに配慮した食生活の実践について、若い世代はその他の世代よりも割合が低く、男性は将来の肥満が懸念されることや女性はやせの者が多いなど、食生活に起因する課題が多い。

このような状況を踏まえ、若い世代が食育に関心を持ち、自ら食生活の改善等に取り組んでいけるよう、マスコミ及びインターネット、SNS(ソーシャルネットワークサービス:登録された利用者同士が交流できるWebサイトの会員制サービス)等デジタル化への対応により、若い世代に対して効果的に情報を提供するとともに、地域等での共食によるコミュニケーションを通じて、食に関する理解や関心を深められるように食育を促進する。

また、一日のうち多くの時間を過ごす職場等で朝食や栄養バランスに配慮した食事を入手しやすくする等、健全な食生活を実践しやすい食環境づくりを促進する。

(高齢者に関わる食育の推進)

高齢者には、咀嚼能力の低下、消化・吸収率の低下、運動量の低下に伴う摂取量の低下等の課題がある。特に、これらは個人差が大きく、高齢者の多くが何らかの疾患を有しているという特徴が挙げられることから、年齢だけでなく、個人の状態に応じた取組を推進することが重要である。

健康寿命の延伸に向けて、高齢者に対する食育の推進においては、個々の高齢者の特性に応じて生活の質(QOL)の向上が図られるように食育を推進する必要がある。また、増大する在宅療養者に対する食事支援等、地域における栄養ケアサービスの需要増大に対応できるよう、管理栄養士の人材確保等に取り組む。

加えて、高齢者の孤食に対応するため、「新しい生活様式」を踏まえながら、他の世代との交流も含めた地域ぐるみの様々な取組が促進されるよう、優良事例の紹介等の情報提供を行う。

さらに、地域の共食の場等を活用した、適切な栄養管理に基づく健康支援型配食サービスを推進し、地域高齢者の低栄養・フレイル予防にも資する、効果的・効率的な健康支援につなげる。

(食品関連事業者等による食育の推進)

食品関連事業者等は、様々な体験活動の機会の提供や、健康に配慮した商品やメニューの提供等に、「生活習慣病予防その他の健康増進を目的として提供する食事について(目安)」等も活用しつつ、積極的に取り組むよう努める。あわせて、地域の飲食店や食品関連事業者等の連携を通じて、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事や地域の食文化を反映させた食事を入手しやすい食環境づくりに取り組むよう努める。

また、健康で豊かな食生活を支える役割を担う食品関連事業者等においては、減塩食品や健康に配慮したメニュー開発などの健康寿命の延伸に資する取組を行うことが重要である。そのため、地域の農林水産物を活用し、地域の食文化や健康等にも配慮した持続的な取組(ローカルフードプロジェクト(LFP))の創出を推進する。食品関連事業者等は、消費者に対して、商品やメニュー等食に関する情報提供、工場・店舗の見学、調理体験、農林漁業体験、出前授業の開催等の多様な取組を行うことを推進する。

加えて、「地域高齢者等の健康支援を推進する配食事業の栄養管理に関するガイドライン」を踏まえた健康支援型配食サービスの推進により、地域高齢者の低栄養やフレイル予防に資する効果的・効率的な健康支援につなげ、高齢者等に向けた健康な食事の普及を図る。また、介護食品の普及促進に努める。

さらに、国産農林水産物等を活用した介護食品等の開発支援やスマイルケア食等の普及促進に努める。

また、野菜や果物摂取を促すため、カット野菜、カットフルーツ等新たな需要に向けて、加工設備への支援を行い、とりわけ現在食べていない人が手に取りやすい食環境づくりに取り組む。

これらの活動を支援するため、国及び地方公共団体において必要な情報提供等を行う。

(専門的知識を有する人材の養成・活用)

国民一人一人が食に関する知識を持ち、自らこれを実践できるようにするため、大学、短期大学、専門学校等において、食育に関し専門知識を備えた管理栄養士、栄養士、専門調理師等の養成を図るとともに、食育の推進に向けてその多面的な活動が推進されるよう取り組む。

また、地域において、食育の推進が着実に図られるように、都道府県や市町村における管理栄養士等の配置を推進するとともに、高度な専門性を発揮できる管理栄養士の育成を図る。

あわせて、食生活に関する生活習慣と疾患の関連等、医学教育の充実を推進するとともに、適切な食事指導、ライフステージに応じた食育の推進等、歯学教育の充実を図る。

(職場における従業員等の健康に配慮した食育の推進)

従業員等が健康であることは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に企業の業績向上につながると期待されている。

従業員等の健康管理に資する健康経営が広がっていることも契機とし、企業の経営層がコミットした職場の食環境整備が進むよう、関係者と連携・協働を深め、健康づくりに取り組む企業への支援が広がるよう、必要な情報提供を行う。

(地域における共食の推進)

高齢者の一人暮らしやひとり親世帯等が増えるなど、家庭環境や生活の多様化により、家族との共食が難しい場合があることから、地域において様々な世代と共食する機会を持つことは、食の楽しさを実感するだけでなく、食や生活に関する基礎を伝え習得する観点からも重要である。「新しい生活様式」に対応した形で推進する必要があり、屋外で農林漁業体験等と併せて実施するなどの工夫が考えられる。

このため、食育推進の観点から、子供食堂や通いの場など地域での様々な共食の場づくりを進める活動の意義を理解し、適切な認識を有することができるよう、国及び地方公共団体は必要な情報提供及び支援を行う。

(災害時に備えた食育の推進)

近年、頻度を増す大規模災害等に備え、防災知識の普及は重要である。国の物資支援による食料品の提供や、地方公共団体、民間企業等における食料品の備蓄に加え、家庭での取組も重要であり、普及啓発を推進する。

また、家庭においては、水、熱源、主食・主菜・副菜となる食料品等を最低でも3日分、できれば1週間分程度備蓄する取組を推進する。主に災害時に使用する非常食のほか、ローリングストック法(普段の食料品を少し多めに買い置きし、消費した分を補充する方法)による日常の食料品の備蓄を行い、各家庭に合った備えをするよう情報発信を行う。特に、災害時には、物流機能が停滞する可能性もあることから、高齢者を始め、食べる機能が弱くなった方、食物アレルギーを有する方等に配慮した食品を備えておくことが重要である。

加えて、栄養バランスへの配慮や備蓄方法など、災害時の食の備えの重要性について、家庭のみならず、学校教育の現場、食品小売店等においても、必要な知識の普及啓発を推進する。

地方公共団体は、被災者が災害発生時も健全な食生活の実践ができるよう、家庭における食料品の備蓄について普及啓発を行うほか、災害時の栄養・食生活支援に関して、その体制や要配慮者への支援体制などに関する地域防災計画への記載やマニュアルの整備等を通じ、関係者が共通の理解の下で取り組めるよう努める。

4.食育推進運動の展開

(1)現状と今後の方向性

食育の推進に当たっては、今後とも国、地方公共団体、教育関係者、農林漁業者、食品関連事業者、ボランティア等、食育に係る多様な関係者や食育に新たな広がりをもたらす多方面の分野の関係者が主体的かつ多様に連携・協働して地域レベルや国レベルのネットワークを築き、明るく楽しく多様な食育推進運動を国民的な広がりを持つ運動として全国的に展開していく必要がある。

食育の推進に関わる食生活改善推進員等の食育ボランティアは、令和元年度時点で36.2万人にのぼり、今後とも地域での食育推進運動の中核的役割を担うことが期待される。

また、若い世代等、食育に対し無関心な層に食育への関心を持ってもらうことが課題であるため、幅広い食育関係者が参画する「全国食育推進ネットワーク」を通じた食育推進の取組に関する情報等の発信力の強化が必要である。

特に、若い世代は働く世代でもあることから、企業等(職場)においても食育を推進することが、若い世代が食に関する知識を深め、健全な食生活を実践できるようになる一つの方策でもある。このため、企業等(職場)における食育の推進事例や企業等(職場)側のメリットを発信していくことが重要となっている。

加えて、デジタル技術の活用により「新たな日常」の中でも新しい広がりを創出する食育の推進が求められている。

また、一部の都道府県では域内の市町村食育推進計画の作成割合が低い状況であることから、食育推進計画の作成・実施の促進が必要であり、地域で多様な関係者が課題を共有し、各特性を活かして連携・協働して実効的に食育を進めることが重要である。

(2)取り組むべき施策

国は以下の施策に取り組むとともに、地方公共団体等はその推進に努める。

(食育に関する国民の理解の増進)

食をめぐる諸課題や食育の意義・必要性等について広く国民の理解を深め、あらゆる世代や様々な立場の国民が、自ら食育に関する活動を実践できるよう、「新たな日常」の中でもライフステージに応じた具体的な実践や活動を提示して理解の増進を図り、全国において継続的に食育推進運動を展開する。

また、年代、性別、就業や食生活の状況等に応じて国民の多様なニーズや特性を分析、把握した上で類型化し、それぞれの類型に適した具体的な推進方策を検討し、実施するとともに、地方公共団体、関係団体、教育関係者、農林漁業者、食品関連事業者、ボランティア等、食育関係者による国民の多様なニーズに対応した取組を支援する。

その際、世代区分やその置かれた生活環境や健康状態等によっても必要な情報が異なる場合があることに配慮するとともに、各種広報媒体等を通じて提供される食に関する様々な情報に過剰に反応することなく、国内外の科学的知見や伝統的な知恵に基づき、的確な判断をすることが重要であるとの認識が国民に十分理解されるよう留意しつつ取り組むこととする。

(ボランティア活動等民間の取組への支援、表彰等)

食育を国民に適切に浸透させていくために、国民の生活に密着した活動を行っているボランティア活動の活発化とその成果の向上に向けた環境の整備を図り、地域での食育推進の中核的役割を担うことができるよう支援する。

その際、食生活改善推進員を始め、各種ボランティアの草の根活動としての食育活動を、学校等との連携にも配慮して促進する。

また、教育関係者、農林漁業者、食品関連事業者、ボランティア等の民間等の食育関係者が自発的に行う活動が全国で展開されるよう、関係者間の情報共有を促進するとともに、優れた活動を奨励するため、民間等の食育活動に対する表彰を行う。

(食育推進運動の展開における連携・協働体制の確立)

食育推進運動の展開に当たっては、教育関係者、農林漁業者、食品関連事業者、ボランティア等、食育に係る多様な関係者による主体的な取組を促すとともに、国や地方公共団体も含めた関係者による広範かつ横断的な連携・協働を呼びかけ、関係者相互間の情報及び意見の交換が促進されるように実施する。

また、国民にとって身近な地域において、新たな食育の推進が図られるよう、地方公共団体の食育推進会議を設置・活性化し、食育推進計画の中で地域の地産地消に関する目標や本計画を踏まえた目標を設定する等、地域の関係者の協力による取組を推進する。

(食育月間及び食育の日の取組の充実)

毎年6月を「食育月間」と定め、関係者の緊密な連携・協働を図りつつ、食育推進運動を重点的かつ効果的に実施することにより、国民の食育に対する理解を深め、食育推進活動への積極的な参加を促し、その一層の充実と定着を図る。

特に、「食育月間」中、国は、地方公共団体、民間団体等の協力を得て、「食育推進全国大会」を毎年開催して、食育について国民への直接的な理解促進を図るとともに、関係者相互間の連携が推進されるよう実施する。

「食育月間」の実施に当たって、食育推進を担当する大臣は、同月間で重点的に実施していくテーマ等を示した実施要綱をあらかじめ定め、関係機関、団体等に通知するとともに公表する。

また、一年を通じて継続的に食育推進運動を展開するため、毎月19日を「食育の日」と定め、「家族そろって食卓を囲む」など実践的なものになるよう十分配慮しつつ取り組む。

(食育推進運動に資する情報の提供)

様々な分野での食育を推進し、全国的な運動として、全国各地において食育推進運動を促進するため、食育を推進して成果を挙げている地域の事例や手法を収集し、広く情報提供する。

また、「スマート・ライフ・プロジェクト」において、生活習慣病予防の啓発活動や、健康寿命を延ばすことを目的とする、優れた取組を行っている企業・団体・自治体を表彰する。

さらに、食と農のつながりの深化に着目した新たな国民運動を展開し、我が国の食と環境を支える農業・農村への国民の理解の醸成を図っていく中で、食育推進にもつながる情報等を消費者へ発信する。

(全国食育推進ネットワークの活用)

「新たな日常」やデジタル化に対応した食育など、最新の食育活動の方法や知見を食育関係者間で情報共有するとともに、異業種間のマッチングによる新たな食育活動の創出や、食育の推進に向けた研修を実施できる人材の育成等に取り組む。

加えて、食育の取組を分かりやすく発信し、食品関連事業者や食育に関心のある企業が共通して使用することにより効果的に食育を推進することができる啓発資材の周知を図る。

(「新たな日常」やデジタル化に対応する食育の推進)

デジタルトランスフォーメーション(デジタル技術の活用による社会の変革)が一層進展する中で、SNS活用やインターネット上でのイベント開催及び動画配信、オンラインでの非接触型の食育の展開などを推進する。

また、個人がいつでも手軽に使える優れた食育アプリ等について情報提供を行い、国民の行動変容を促す。

5.生産者と消費者との交流の促進、環境と調和のとれた農林漁業の活性化等

(1)現状と今後の方向性

食育の推進、特に食に対する感謝の念を深めていく上で、食を生み出す場としての農林漁業に関する理解が重要であり、「食」と「農林水産業」のつながりの深化を図ることが求められている。

そのような中、農林漁業体験は、農林水産物の生産現場に対する関心や理解、食生活が自然の恩恵や食に関する人々の様々な活動により成り立つことについての理解を深める上で、引き続き重要である。

農林漁業体験に参加していない理由の中では「体験する方法が分からない」という意見が多いことから、参加方法等の周知や優良事例の横展開等を通じ、更なる参加者の増加に取り組む必要がある。

農林水産物の生産、食品の製造及び流通等の現場は、地域で食育を進めていく上で食に関する体験機会を提供する貴重な場であり、人々のふれあいや地域の活性化を図るためにも、これを支える農山漁村コミュニティの維持・再生が必要である。

加えて、農林水産業・食品産業の活動が自然資本や環境に立脚していることから、その持続可能性を高めるよう、環境と調和のとれた食料生産とその消費にも配慮した食育を推進する。

我が国では、食料や飼料等の多くを輸入に頼る一方で、毎年大量の食品ロスが発生しており、国、地方公共団体、食品関連事業者・農林漁業者、消費者など多様な主体が連携し、国民運動として食品ロスの削減を推進する。また、その際には、様々な家庭環境や生活の多様化に対応し、貧困の状況にある子供等に食料を提供する活動にも資するよう取り組む必要がある。

(2)取り組むべき施策

国は以下の施策に取り組むとともに、地方公共団体等はその推進に努める。

(農林漁業者等による食育の推進)

農林漁業に関する体験活動は、農林水産物の生産現場に関する関心や理解を深めるだけでなく、国民の食生活が自然の恩恵の上に成り立っていることや食に関わる人々の様々な活動に支えられていることなどに関する理解を深める上で重要であることから、農林漁業者等は、学校、保育所等の教育関係者を始めとした食育を推進する広範な関係者等と連携・協働し、幅広い世代に対して教育ファーム等農林漁業に関する多様な体験の機会を積極的に提供するよう努める。

その際、食に関する体験活動をより充実させるため、オンラインでの活動を実体験と組み合わせる等新たな取組を進めることが必要である。

これらの活動を支援するため、国や地方公共団体において必要な情報提供等を行う。

(子供を中心とした農林漁業体験活動の促進と消費者への情報提供)

子供を中心として、農林水産物の生産における様々な体験の機会を拡大し、食に対する関心と理解を深める必要があることから、農林漁業体験活動を促進するため、情報提供の強化、受入体制の整備等を進める。その際、子供の学びや生産者のやりがいにつながるような異世代交流が進むよう配慮する。

また、子供の農山漁村体験については、「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づく「子ども農山漁村交流プロジェクト」の一環として、送り側(学校等)への活動支援や情報提供、受入側(農山漁村)の体験プログラムの充実・強化などの受入体制整備への支援を行うなど、送り側、受入側双方への体系的・総合的な支援を関係省庁が連携して行う。

さらに、国民の体験活動への関心を高めるため、SNSなど様々な媒体の活用により周知し、食料の生産から消費等に至るまでの継続した体験につながるよう、関係機関等の連携を深める。

(都市と農山漁村の共生・対流の促進)

農泊やグリーン・ツーリズムを通じた都市住民と農林漁業者の交流を促進するため、都市住民への農山漁村の情報提供と農山漁村での受入体制の整備等を推進する。

(農山漁村の維持・活性化)

食を生み出す場である農山漁村は、農林漁業者だけでなく、多様な地域住民により支えられていることから、関係府省が連携した上で、<1>農業の活性化や地域資源の高付加価値化を通じた所得と雇用機会の確保、<2>安心して地域に住み続けるための条件整備、<3>地域を広域的に支える体制・人材づくりや農村の魅力の発信等を通じた新たな活力の創出の「三つの柱」に沿った施策を総合的かつ一体的に推進することにより、維持・活性化を図る取組を推進する。

(地産地消の推進)

直売所等における地域の農林水産物の利用促進を図るため、多様な品目の生産・供給体制の構築及び加工品の開発を推進するとともに、学校、社食等施設の給食における地域の農林水産物の安定的な生産・供給体制を構築し、地域の農林水産物の利用拡大を図る。また、農林漁業者と加工・販売業者、外食・中食業者など地域の多様な関係者が参画して、地域資源を活用した持続的な取組(ローカルフードプロジェクト(LFP))の創出を推進する。

また、食と農のつながりの深化に着目した新たな国民運動を展開し、地域の農業・農村の価値や生み出される農林水産物の魅力を伝える取組や、「地理的表示保護制度」(GI保護制度)(*10)の登録推進や認知度向上を図る取組等、地産地消の推進にもつながる取組を実施する。

さらに、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成12年法律第116号)の再生利用事業計画(食品リサイクル・ループ)制度の活用等により、地域で発生した食品循環資源を再生利用して得られた肥料や飼料を利用して生産された農林水産物の地域での利用を推進する。

(環境と調和のとれた持続可能な食料生産とその消費にも配慮した食育の推進)

SDGs時代にふさわしい農林水産業・食品産業を育成するためには、環境と調和した生産方法で作られた農林水産物・食品を消費することが、消費者の幸福や満足度の向上につながるとともに、その評価が農山漁村に還元され、環境と経済の好循環が生まれるという社会システムへの転換が必要であり、消費者に持続可能な農林水産物の価値を伝えるため、消費者の役割の自覚と日々の購買行動の変化を促す取組を推進していくことが必要である。

我が国の食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」の策定に向けて検討が進められている。引き続き、有機農業をはじめとした持続可能な農業生産や持続可能な水産資源管理等、生物多様性と自然の物質循環を健全に維持し、自然資本を管理し、又は増大させる取組に関して、国民の理解と関心の増進のため普及啓発を行う。例えば、学校給食での有機食品の利用など有機農業を地域で支える取組事例の共有や消費者を含む関係者への周知が行われるよう、有機農業を活かして地域振興につなげている地方公共団体の相互の交流や連携を促すネットワーク構築を推進する。

持続可能な食料システム(フードシステム)につながるエシカル消費を、「あふの環プロジェクト」を活用して、関係省庁や参画する企業・団体と連携・協働して推進する。

多様な食の需要に対応するため、大豆等植物タンパクを用いる代替肉の研究開発等、食と先端技術を掛け合わせたフードテックの展開が産学官連携の下進められており、新たな市場を創出する中で、その理解醸成を図る。

(食品ロス削減に向けた国民運動の展開)

我が国においては、食料を海外からの輸入に大きく依存する一方、年間612万トン(平成29年度推計)の食品ロスが発生している。これは、国連世界食糧計画(WFP)による食料援助量約420万トンの約1.5倍に相当する。

このような現状を踏まえ、令和元年10月に食品ロスの削減の推進に関する法律(令和元年法律第19号)が施行され、国、地方公共団体、事業者、消費者等の多様な主体が連携し、国民運動として食品ロスの削減を推進していくこととされた。政府としては、法律に基づき、関係省庁が連携しつつ、様々な施策を推進していく。

特に、食品ロスの約半分は家庭からの排出であることを踏まえ、国民がそれぞれの立場で食品ロスの削減に「もったいない」という精神で、自発的に取り組んでいくため、食品ロス削減の重要性についての理解と関心を増進するための教育や普及啓発を推進する。加えて、食品ロス削減に配慮した購買行動や、外食時における食べ残しが発生しないよう、料理の食べきりや、食品衛生面に配慮した食べ残しの持ち帰りについて、事業者からの理解・協力を得ながら普及啓発を図る。

(バイオマス利用と食品リサイクルの推進)

地域で発生・排出されるバイオマスの計画的な活用に向けて、「バイオマス活用推進基本計画」(平成28年9月16日閣議決定)に基づき、効率的な収集システムの確立、幅広い用途への活用、バイオマス製品等の標準化・規格化など、バイオマスを効果的に活用する取組を総合的に実施する。

また、食品リサイクルについて、食品関連事業者、再生利用事業者及び農林漁業者等の関係主体の連携の強化を通じて、特に取組の少ない地域を中心に、飼料化を含めた食品リサイクルの取組を促進する。

加えて、食品廃棄物の発生抑制や再生利用等の必要性等を普及啓発するため、ホームページ等を通じた情報提供を実施する。

さらに、家庭や外食における食品の廃棄状況等を把握するための調査や、食品産業における食品廃棄物等の発生量や再生利用等の実施状況を把握するための調査を実施するとともに、必要な取組を進める。

*10 伝統的な生産方法や気候・風土・土壌などの生産地等の特性が、品質等の特性に結びついている産品の名称(地理的表示)を知的財産として登録し保護する制度

6.食文化の継承のための活動への支援等

(1)現状と今後の方向性

長い年月を経て形成されてきた我が国の豊かで多様な食文化は、世界に誇ることができるものである。

戦後、和食の基本形である一汁三菜の献立をベースに、ごはん(主食)を中心に、魚、肉、牛乳・乳製品、野菜、海藻、豆類、果物、お茶など多様な副食(主菜・副菜)等を組み合わせ、栄養バランスに優れた「日本型食生活」が構築され、国民の平均寿命の延伸にもつながった。

しかしながら、長期的には経済成長に伴う所得の向上等を背景として、国民のライフスタイル、価値観、ニーズが多様化する中で、「日本型食生活」や、家庭や地域において継承されてきた特色ある食文化や豊かな味覚が失われつつある。

このような社会構造の変化に伴い、食の多様化が進む中で、引き続き伝統的な食文化を次世代に継承していくため、食育活動を通じて国民の理解を深めるべく、次世代を担う子供や子育て世代を対象とした取組を始め、地域の多様な食文化を支える多様な関係者による活動の充実が必要である。

特に、「和食;日本人の伝統的な食文化」が、「自然の尊重」という日本人の精神を体現し、<1>多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重、<2>健康的な食生活を支える栄養バランス、<3>自然の美しさや季節の移ろいの表現、<4>正月などの年中行事との密接な関わり、という4つの特徴を持つ食に関する社会的慣習としてユネスコの無形文化遺産に登録されたことも踏まえ、和食文化の保護・継承を本格的に進める必要がある。

また、和食は、栄養バランスのとれた食生活に資するものであり、循環器疾患死亡等のリスクが低いとの報告もあることから、このような健康面でのメリットも発信していくことが必要である。さらに、地域の風土を活かした和食文化の保護・継承は、地域活性化及び環境への負荷低減に寄与し、持続可能な食の実現に貢献することが期待されるとともに、他国の多様な食文化や食習慣への理解にも資することが期待される。

(2)取り組むべき施策

国は以下の施策に取り組むとともに、地方公共団体等はその推進に努める。

(地域の多様な食文化の継承につながる食育の推進)

「和食;日本人の伝統的な食文化」のユネスコ無形文化遺産の登録の趣旨を踏まえ、国民の関心と理解が深まるようにするため、地方公共団体、教育関係者、食品関連事業者等からなる各都道府県の体制を構築・活用し、各地域の郷土料理の調査・データベース化及び活用、SNS等を活用した国内外への情報発信等デジタルツール活用を推進することにより地域の多様な食文化の保護・継承を図るとともに、管理栄養士等や地域で食にまつわる活動を行う者を対象とした研修等による和食文化の継承活動を行う中核的な人材の育成に取り組む。

また、調査研究の促進等による食の文化的価値の明確化とその普及・発信が必要であり、和食の栄養バランスの良さや持続可能な食への貢献について、国内外への発信を強化し、理解を深める。

さらに、和食文化の保護・継承に当たっては、食育に関わる国、地方公共団体、教育関係者、農林漁業関係者、食品関連事業者、ボランティア等、多様な関係者が密接に連携し、産学官一体となって効果的に進める。

加えて、手軽に和食に接する機会を拡大するため、簡便な和食商品の開発や情報発信等、産学官協働の取組を推進し、「いいにほんしょく」の語呂合わせで「和食の日」として定められている11月24日を中心に学校給食における取組等も含め、国民に対する日本の食文化の理解増進を図る。

また、郷土料理や伝統野菜・発酵食品を始めとする伝統食材等の魅力の再発見や「日本型食生活」の実践を促すため、地域における地方公共団体、農林漁業者、食品関連事業者等が連携した食育活動を推進する。

さらに、我が国の食文化の理解の助けとなるものであるため、お茶の普及活動を行っている団体等の多様な主体と連携・協力するなど、お茶に関する効果的な食育活動を促進する。

(ボランティア活動等における取組)

食生活改善推進員等のボランティアが行う料理教室や体験活動等において、地域の郷土料理や伝統料理を取り入れることにより、食文化の普及と継承を図る。

(学校給食等での郷土料理等の積極的な導入や行事の活用)

我が国の伝統的な食文化について子供が早い段階から興味・関心を持って学ぶことができるよう、学校給食を始めとした学校教育活動において郷土料理の歴史、ゆかり、食材などを学ぶ取組を推進する。

さらに、各地の食関連行事や文化関連行事等も活用し、我が国の伝統的な食文化や地域の郷土料理等とその歴史や文化的背景等を学ぶ機会の提供を促進する。その一環として、毎年度開催している国民文化祭を活用し、地域の郷土料理やその歴史等を全国に発信する。

(専門調理師等の活用における取組)

我が国の食事作法や伝統的な行事等、豊かな食文化を醸成するため、高度な調理技術を備えた専門調理師等の活用を図る。

7.食品の安全性、栄養その他の食生活に関する調査、研究、情報の提供及び国際交流の推進

(1)現状と今後の方向性

健全な食生活の実践には、科学的知見に基づき合理的な判断を行う能力を身につけた上で、食生活や健康に関する正しい知識を持ち、自ら食を選択していくことが必要である。国民の食に関する知識と食を選択する力の習得のためには、食に関する国内外の幅広く正しい情報をSNS等の多様な手段で提供するとともに、教育機会の充実を図ることが必要である。

一方、SNSの普及等により、食に関する様々な情報があふれ、信頼できる情報を見極めることが難しいといった状況もあり、健全な食生活の実践に当たっては、国際的な研究を含めた最新の科学的知見に基づく客観的な情報の提供が不可欠である。また、情報の提供に当たっては、国民自身がその内容を理解し、自律的に健全な食生活の実践につなげられるよう配慮が必要である。

国は、各種関連団体等と連携を深めながら、食品の安全性、栄養成分等の食品の特徴、食習慣その他の食生活に関する国内外の調査、研究、情報の提供等がなされるよう、適切な取組を行うとともに、我が国の食育の理念や取組等を積極的に海外へ発信していくことが必要である。

(2)取り組むべき施策

国は以下の施策に取り組むとともに、地方公共団体等はその推進に努める。

(生涯を通じた国民の取組の提示)

国は、子供から高齢者まで、生涯を通じた食育を推進するため、一人一人の国民が自ら食育に関する取組が実践できるように、「食育ガイド」を活用するとともに、国民のニーズや特性を分析、把握した上で、それぞれの対象者に合わせて具体的な推進方策を検討し、適切な情報を提供する。

(基礎的な調査・研究等の実施及び情報の提供)

食育に関する国民の意識や食生活の実態等について調査研究及び分析を行うとともに、その成果を広く公表し、関係者の活用に資する。

また、食育に関する関心と理解を深めるために、必要な情報を容易に入手することができるよう、総合的な情報提供を行う。

(リスクコミュニケーションの充実)

国、地方公共団体、各種団体が連携しつつ、食品の安全性についてのリスクコミュニケーションを積極的に実施する。

特に、国民の関心の高いテーマについては、科学的知見に基づいた正確な情報提供によって、消費者を始めとする関係者間での意見交換会を開催し、理解の増進に努める。

(食品の安全性や栄養等に関する情報提供)

国民が健全な食生活を実践するために必要な食品の安全性や栄養等に関する様々な情報について、国民が十分に理解し活用できるよう考慮しつつ、SNSなどの様々な媒体や各種イベント、食育ツールなどを活用し、国民にとってわかりやすく入手しやすい形で情報提供する。

地域において地方公共団体、関係団体やNPO等が行う意見交換会等への取組を支援する。

また、「健康日本21(第二次)」による健康づくり運動として、国内外の科学的知見に基づく食生活の改善に必要な情報の普及啓発を図る。

さらに、摂取すべきエネルギーや栄養素等の量を定めた「食事摂取基準」を定期的に作成・公表し、その活用を促進するとともに、食品成分の基礎データを収載した「日本食品標準成分表」の充実を図り、幅広く提供する。

また、国民健康・栄養調査を実施し、食育推進の基礎的なデータとして、その成果を活用するとともに、肥満や糖尿病等の生活習慣病を効果的に予防することや、食物アレルギー対策をするためには、食生活や栄養と健康に関する医学的知見・科学的根拠の蓄積が必要であることから、関係府省や関係研究機関が連携しつつ、様々な分野にわたるデータの総合的な情報収集や解析等を推進するとともに、その成果を公表し周知する。

農林漁業や食料の生産、流通、消費に関する統計調査を実施し、公表する。

(食品表示の理解促進)

令和2年度から全面施行された食品表示法(平成25年法律第70号)に基づく新たな食品表示制度について、消費者の更なる食品表示の活用に向け、原料原産地表示、栄養成分表示等を含め、戦略的な普及啓発に取り組む。

(地方公共団体等における取組の推進)

地方公共団体や関係団体等は、本計画の内容を踏まえながら、地域の実情に沿った情報や当該団体等の活動内容に即した情報を収集・整理し、より多くの国民が関心を持ち、また、活用できるよう、その提供に努める。

(食育や日本食・食文化の海外展開と海外調査の推進)

我が国の食育の理念や取組等を積極的に海外に発信し、「食育(Shokuiku)」という言葉が日本語のまま海外で理解され、通用することを目指す。

また、「食育ガイド(英語版)“A Guide to Shokuiku”」について、インターネット等を活用して海外に対する食育推進の普及啓発を図る。

さらに、オンライン配信も利用しながら、海外に向けて日本食・日本の食文化について情報発信する。

加えて、海外において行われてきた食生活の改善等に関する取組について、その具体的な手法と成果を調査し、その活用を図る。

このほか、2020 年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会におけるホストタウンを通じた異文化交流等の機会を積極的に活用し、食を通じた相互の理解を深めつつ、日本食や日本の食文化の海外展開を戦略的に推進するため、官民合同の協議会を通じて、関係者が連携した取組を推進する。

(国際的な情報交換等)

国際的な情報交換等を通じて、食育に関する研究の推進や知見の相互活用等を図るため、海外の研究者等を招へいした講演会の開催や海外における食生活等の実態調査等を進める。

また、国際的な機関の活動に協力するとともに、これを通じて積極的な情報の共有化を推進する等、国際的な連携・交流を促進する。

さらに、国際的な飢餓や栄養不足の問題等に対して、国民の認識を深めるために、その実態や国際的な機関による対策等の情報を積極的に提供するほか、栄養改善事業の国際展開に取り組む。

第4 食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

1.多様な関係者の連携・協働の強化

食育に関連する施策を行っている主体は、国の関係府省庁や地域に密着した活動を行っている地方公共団体、教育、保育、社会福祉、医療及び保健の関係者、農林漁業の関係者、食品の製造、加工、流通、販売、調理等の関係者、料理教室、その他の食に関わる活動等の関係者、更には様々な民間団体やボランティア等に至るまで多様かつ多数である。

また、「第1 食育の推進に関する施策についての基本的な方針」や「第3 食育の総合的な促進に関する事項」で述べたように、食育は幅広い分野にわたる取組が求められる上、様々な家族の状況や生活の多様化といった食育をめぐる状況の変化を踏まえると、より一層きめ細やかな対応や食育を推進しやすい社会環境づくりが重要になっている。

したがって、食育に関する施策の実効性をこれまで以上に高めていくためには、食育に係る多様な関係者や食育に新たな広がりをもたらす多方面の分野の関係者が、その特性や能力を生かしつつ、主体的に、かつ、互いが密接に連携・協働して、地域レベルや国レベルの緊密なネットワークを築き、多様な取組を推進していくことが極めて重要であるため、「全国食育推進ネットワーク」も活用しつつ、その強化に努める。

2.地方公共団体による推進計画に基づく施策の促進とフォローアップ

食育基本法第17条及び第18条においては、都道府県及び市町村に対し、国の基本計画を基本として、都道府県及び市町村の区域内における食育推進計画を作成するよう努めることを求めており、令和元年度までに全都道府県及び87.5%の市町村において食育推進計画の作成がなされた。

食育推進計画を既に作成した都道府県及び市町村においては、食育推進計画に基づき、また、第4次食育推進基本計画を基本として、新たな計画の作成や改定を行い、その食育推進会議を活用しながら多様な主体との連携・協働を推進することが求められる。

このため、国は、都道府県及び市町村における食育の推進が一層充実するよう、食育推進計画を把握しつつ適切な支援を行う。

一方、全国各地で地域に密着した食育に関する活動が推進されるためには、食育推進計画の作成がなされていない市町村についても可能な限り早期に作成することが求められる。

このため、国は都道府県とともに、市町村における食育推進計画の作成が促進されるよう積極的に働きかけ、地産地消を始めとする地域での食育の推進がより一層充実するよう必要な資料や情報を提供するとともに、技術的な支援にも努めていくなど、適切な支援を行う。

また、都道府県及び市町村は、食育に関する活動を行う教育関係者、農林漁業者、食品関連事業者、ボランティアや関係機関等の協力も得つつ、地域において多様な関係者の連携・協働の下、食育を推進する中核となる人材の育成と地域の特性に応じた実効性の高い食育の推進に一層取り組むことが期待される。

国は、そのための情報の提供等適切な支援を行う。

3.積極的な情報提供と国民の意見等の把握

食育は、個人の食生活に関わる問題であることから、子供から成人、高齢者に至るまで、国民一人一人による理解と実践を促進することが何よりも重要である。

このため、ライフステージのつながりを意識しつつ、生涯にわたって大切にしたい食育について具体的な取組を促す「食育ガイド」や効果的な情報発信を行う「全国食育推進ネットワーク」の活用も含め、多様な手段を通じて積極的な情報提供を行うよう努める。

また、食育に対する国民の関心や意識を高めていくためには、対象者の特性や多様なニーズも考慮しつつ、国民の意見や考え方等を積極的に把握し、できる限り施策に反映させていくことが必要であることから、その促進に努める。

4.推進状況の把握と効果等の評価及び財政措置の効率的・重点的運用

食育に関する施策を計画的に推進するためには、その推進状況を把握しつつ取り組むとともに、限られた予算を有効活用することが必要である。特に「1.多様な関係者の連携・協働の強化」で述べたように、食育は幅広い分野に関わり、多様な関係者による一体的な取組が必要であることに鑑みると、その必要性は一層大きいと考えられる。

このため、本計画に基づく施策の総合的かつ計画的な推進を図るとともに、目標の達成状況を含めたその推進状況について、毎年度、適切に把握し、その効果等を評価し、広く国民にも明らかにするとともに、評価を踏まえた施策の見直しと改善を図る。また、厳しい財政事情の下、限られた予算を最大限有効に活用する観点から、引き続き、選択と集中の強化、施策の重複排除、府省庁間連携の強化、官民の適正な役割分担と費用負担、執行状況の反映等の徹底を図る。

5.基本計画の見直し

国内外の社会経済情勢は常に変化しており、今後、食育をめぐる状況も大きく変わることも十分考えられるため、基本計画については、計画期間終了前であっても必要に応じて見直しの必要性や時期等を適時適切に検討する。

また、基本計画の見直しに当たっては、「4.推進状況の把握と効果等の評価及び財政措置の効率的・重点的運用」において述べた施策の成果の検証結果を十分活用する。



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消費・安全局
消費者行政・食育課

担当者:食育計画班
代表:03-3502-8111(内線4578)
ダイヤルイン:03-6744-2125
FAX番号:03-6744-1974

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