1 農の現場への国民理解と農林漁業体験の現状
食育を推進することは、国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむことに寄与するものであるとともに、国民の食生活が自然の恩恵の上に成り立ち、食に関わる人々の様々な行動に支えられていることについて感謝の念や理解を深めることにつながるものです。
一方、社会経済情勢の変容はめまぐるしく、生活環境等の「食」をめぐる状況は日々変化しており、国民がふだんの食生活を通じて農林水産業を意識する機会は減少しつつあります。
生産者と消費者との距離を縮めるためには、両者の交流等を進めることによって信頼関係を構築するとともに、我が国の食料安全保障や合理的な価格形成への理解を深め、持続可能な食料システムを実現していくことが必要です。
そのためには、特に、広く国民に向けて農林水産物の生産に関する体験活動の機会を提供していくことにより、農林水産業についての意識や理解を深めてもらうことが重要です。
こうしたことから本特集では、「食育に関する意識調査」(*1)の結果を踏まえ、農林漁業体験への参加状況や参加することによってどのような結果が得られているかを明らかにするとともに、食卓と農の現場を縮めるために必要な農林漁業体験に参加するための工夫等について紹介します。
農林漁業体験への参加状況
農林水産省では、毎年「食育に関する意識調査」を実施しており、この中で農林水産業に対する国民理解の現状についても調査を行っています。
令和6(2024)年度の調査結果によれば、家族の中で、田植え(種まき)、稲刈り、野菜の収穫、家畜の世話などの農林漁業体験に参加したことがある人が「いる」と回答した人の割合は57.0%という結果でした。過年度の状況を見てみると、近年はこうした体験に参加したことがある人の割合は減少傾向で推移しています(図表1-1-1)。
1 全国20歳以上を対象に、令和6(2024)年11月に、郵送及びインターネットを用いた自記式で実施
農林漁業体験に参加して変化したこと
家族の中で農林漁業体験に参加したことがある人が「いる」と回答した人に、農林漁業体験に参加して変化したことがあるか聞いたところ、「自然の恩恵や生産者への感謝を感じられるようになった」と回答した人の割合は64.8%で最も高く、次いで「地元産や国産の食材を積極的に選ぶようになった」と回答した人の割合は41.5%であり、「変化はなかった」とした人を大きく上回りました(図表1-1-2)。
農林漁業体験に参加しない理由
家族の中で農林漁業体験に参加したことがある人が「いない」と回答した人に、農林漁業体験に参加していない理由を聞いたところ、「体験に参加する方法が分からないから」と回答した人の割合が36.2%で最も高く、次に「関心がないから」(34.6%)、「時間が取れないから」(32.4%)の順に多いという結果でした(図表1-1-3)。
農林漁業体験に参加するための工夫
家族の中で農林漁業体験に参加したことがある人が「いない」と回答した人に、どんな工夫があれば参加したいと思うか聞いたところ、「親子や友人など、いろいろな参加の仕方ができること」と回答した人の割合が31.2%で最も高く、次に「地域の伝統行事などのイベントに合わせて参加できること」(28.4%)、「収穫物の調理体験ができること」(26.4%)の順に多いという結果でした(図表1-1-4)。
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